ティーパーティーの田舎令嬢   作:サンタクララ

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5章
01 非常対策委員会


 ナギサに他の二人の士官候補生と共に呼び出された。場所はいつものベランダで、用件は重要な話があるとしか言われず。一体なんだろうと思ってその場に行くと、ナギサだけでなくセイアも同席していた。

 

「皆さん、お集まりいただきありがとうございます。早速ですが今朝方、連邦生徒会からある連絡が届きました」

 

「非常対策委員会という臨時の組織を設立するそうだ。先生が私の予知夢のことを伝えてくれたとは聞いていたが……」

 

 非常対策委員会召集、つまり最終編が本格的に始まるわけか。

 

「ええ、ただ……それだけであの腰の重い連連邦生徒会が動くとは思えません。何か、異常な事態があちらの方でも観測できたのでしょう」

 

「連邦生徒会を取り巻く状況は芳しくない。連邦生徒会長が未だに不在であり、それを皮切りにしたキヴォトス各地で起きている事件。先生とその行く末を話し合う必要がある」

 

 僕らトリニティが当事者であるエデン条約についても、元々は連邦生徒会長が考案したものな訳だしねぇ。まあ途中で失踪したせいで色々と拗れるきっかけになっちゃったわけだけど。

 

「……うん、先生が一緒ならばどうとでもなるはずだ」

 

 そう言うセイアに、ナギサはやや不安そうな表情で続ける。

 

「ですが、委員会のリストにはゲヘナの万魔殿にミレニアムのビッグシスター、レッドウィンターの独裁者、山海経の黒い君主などあらゆる学園の代表が名を連ねています。尤も、このほとんどは出席に応じないでしょうが」

 

 求心力ないもんなぁ、連邦生徒会長が居ない連邦生徒会。

 

「仮にこのメンバーが出席し、一同に会したとしてもまともに議論を進めることが可能かどうかも定かではありません。戦争が起きないだけでも奇跡でしょう……」

 

「あ、ナギちゃん、セイアちゃんに士官候補生のみんな!こんなところで集まって何してるの?」

 

 そこに一人、今となっては一般生徒の少女が間に入ってきた。

 

「み、ミカさん……!?なぜ今頃……先刻集まると連絡したではありませんか」

 

「えー?だって、あの寮めちゃくちゃ電波の繋がりが悪くてさー。それより何これ、非常対策委員会?連邦生徒会の呼び出し、ティーパーティーは全員参加で……へぇ、ゲヘナのあの万魔殿も来るんだ?」

 

 参加者リストを見たミカは何やら含みのある言い方で尋ねる。ゲヘナ嫌いだもんなぁ、この御仁。

 

「ミカさん……お願いですから……」

 

 ナギサは冷や汗を流しながら、頼むから揉め事を起こさないでくれという意味を込めてミカに目配せする。

 

「先生もいるんでしょ?トラブルなんか起こさないってば、ね?」

 

「は、はぁ……そういうことにしておきます。そして、士官候補生の皆さん。おそらくもうお分かりでしょうが……」

 

「ええ、会議場までの護衛を、ということですわよね?」

 

 士官候補生がこれまで宛がわれてきた仕事を考えれば、その答えに辿り着くのは容易だった。

 

「はい、その通りです。これからD.U.地区へ向けて出発しますので、皆さんも準備をお願いします」

 

「承知しましたわ」

 

 そういうわけで、準備を済ませたらロイアルティー号を出す。それから、ティーパーティー三人と運転手の生徒が乗ったシルバークラウドの後に付いてサンクトゥムタワーへと移動した。

 

 

 

 

 そして到着した、連邦生徒会会議室。僕らはナギサ達三派閥のトップと別のルートでこちらに来て合流したサクラコ、ミネの後ろにトリニティの護衛官として待機する。そして反対側には……。

 

「なんだ、先生はいないのか?とんだ徒労だな」

 

「マコト先輩、声が大きいです……ほら、あっちの人たちがかなり怪訝そうにしてますから」

 

「キキキッ、トリニティの連中がどう思おうがこのマコト様の知ったことではないわ!」

 

 一応ゲヘナの代表である万魔殿のメンバー達。風紀委員会は……確かマコトが情報封鎖したせいでうまく情報が届いてないんだっけ。

 

「……では皆さん、本日お集まりいただいた要件についてお話しさせていただきます」

 

 ミカが不快そうに顔を歪めたところで、先生の到着を待っていたものの、これ以上空気が悪くなる前に始めてしまうことにしたらしい。リンは非常対策委員会の設立についての説明に入った。

 

 

 

「──この超高濃度エネルギー反応は、アビドス砂漠、D.U.近郊の廃遊園地、ミレニアム郊外の閉鎖地域、トリニティとゲヘナの境界付近、ミレニアム近郊の新都市……そしてここ、サンクトゥムタワー」

 

 冷静に考えるとすごいエネルギー反応がある中で会議とか怖くね?いやまあ、今さら言ってもしょうがないことではあるけどね。

 

「キヴォトス全域で観測されたものの、実際の現地には目に見えた異変などは起こっておらず……しかし、この現象には何らかの原因があるはずです。その解明には、キヴォトスの各学園の協力が必要です。何卒ご理解のほどよろしくお願いします」

 

「その前に、一つよろしいでしょうか」

 

 そこまでリンが説明したところで、サクラコが挙手した。

 

「先生はどちらに?シャーレもこの非常対策委員会に参加すると伺ったのですが」

 

「そ、それは……」

 

「シャーレと話し合わなければならない、急を要する案件があるのですが……」

 

 シスターフッドがこの前、ほとんどもぬけの殻のアリウス自治区に調査へ行ってたらしいけどそれ関係かな?そう思っていると、ミネがサクラコに訊ねる。

 

「一体どのような案件なのですか、サクラコさん」

 

「それは……ここでお話しするには……」

 

「シスターフッドは、まだ私たちに隠し立てをするつもりですか!」

 

 あーあ始まっちゃったよ、ナギサが頭を抱えてるのが後ろから見てても分かる。それに強引に割り入って、止めさせるセイア。

 

「……私からも、先生に伝えたいことがある。本件と密接に関わるであろうことだ」

 

 そして今度は、それまで退屈そうに周囲を眺めていたミカが口を開いた。

 

「あの子、寝てるけど大丈夫?セイアちゃんが話してるのに」

 

 その視線の先には、いびきをかいている万魔殿議長。多分風紀委員会より求心力ないの、こういうのが原因じゃないかな……。

 

「マコト先輩、起きてください。悪い意味で目立ってます」

 

「キキキッ……寝ていたのではない、子守唄にも劣る騒ぎが不愉快だっただけだ」

 

「ねえ~、これいつ終わるの?イブキ、朝ごはん食べてないしお腹空いたぁ……」

 

 そしてその様子を見て立ち上がろうとしたミカに、マアサが制止する。

 

「やめてください、ミカ様」

 

「あははっ、椅子を引こうとしただけだよ☆」

 

 ……空気最悪なんだけど。早く帰りたい。マイハもポケットから飴取り出して食べ始めたし。

 

「……結局、先生の行方は?」

 

「どうせ連邦生徒会が陰謀のためにどこかへ匿っているんだろう、聞いても無駄だ!」

 

 いや、そんなことするのあんただけだよ。

 

「この程度の目論みも見抜けず学園の頂点に君臨しようとは、とんだ笑い種だな?キキキッ」

 

「ああもう、先輩が余計なことを言うから事態がさらにややこしく……」

 

 段々グダり始めたところで、リンが気を引き締めようと一喝する。

 

「皆さん、静粛にお願いします。先生の行方は、私たちも捜索している最中ですので」

 

「行方を探している……先生が姿を消したということでしょうか?」

 

 ミネがリンに聞くが、マコトが口を挟んで言う。

 

「相手がシャーレならまだしも、連邦生徒会と話すことなぞない、これ以上の議論は無意味だ。帰るぞ!」

 

「えっ、待ってください……!」

 

 そうして本当に万魔殿達は退室していってしまった。それを見て、トリニティ側も……。

 

「確かにこの状況、不審な点が多くあります」

 

「そうですね、私たちの方でも現状を分析しましょうか」

 

「……これは、どうにも協力できる状況ではなさそうだね」

 

 結局トリニティも退室することになり、僕もぞろぞろと出ていく各組織の代表に付いて出ていった。

 

 

 

 

「先生はどこに行ったの?」

 

「その事を含めて、トリニティに戻ってから状況をまとめるつもりですよ。ミカさん」

 

 サンクトゥムタワーから降りて、待機していたシルバークラウドに乗り込むティーパーティーの三人。僕らも護衛としてロイアルティー号に乗り後ろから付いていく。

 

 しばらく車を走らせたところで、見覚えのある迷彩の軍勢が見えて……。

 

(カイザー……あっ)

 

 思い出した、今起こっている状況、前世で知っていた知識。なんで今まで素通りしていたんだろう。

 

(先生が拉致されてる、助けないと)

 

 そして僕はブラウン・ベス銃を持ってトラックから降り、歩道に着地して先生がいるはずのヴァルキューレの建物へ向かった。

 




いよいよ最終編スタートです。と言っても、この作品の最終章は5章の次なんですが。
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