ティーパーティーの田舎令嬢   作:サンタクララ

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03 初めての銃撃戦

 入学式後最初の一週間が無事に過ぎて、休日。本当ならだらだらゲームでもして一日を過ごしたいところだ。でも、今の僕は外出用の服を持っておらず買いに行く必要があるので出掛ける準備をする。荷物が多くなりすぎても困るし、制服と部屋着さえあればどうにかなると思って実家からは持ってきてなかったけど、やっぱり必要かなと思い直したのだ。

 

 寝巻きのまま行くわけにはいかないので制服に着替え、ブラウン・ベス銃を右肩に、財布などが入ったバッグを左肩に提げて出発。

 

 駐車場に入ったらロイアルティー号のところまで歩き、学生証をスキャンして出庫する。そのまま十数分ほど走らせたら、目的地のショッピングモールだ。

 

 

 

 モールのある、トリニティの中心街へは数えられる程しか行ったことがない。ずっと田舎で暮らしてきたし、中心部へ行くのはちょっとした旅行のようなものだった。でもこうやってトリニティ総合学園へ通うからには、今までよりずっと近くになるというわけで。嬉しいような、寂しいような、そんな不思議な感覚がする。

 

 無事に到着して地下の駐車場にトラックを停め、ショッピングモールの中に入る。辺りを見回すと、トリニティの中心エリアだけあってセーラー服の生徒が多数見える。黒い制服の正実もちらほらと見える……けど、みんな複数人で行動している。いいなぁ、仲良くて。僕なんかボッチだよ。

 

 そんな呑気なことを考えながら歩いていると、目の前を塞ぐように人影が現れて、立ち止まる。

 

「よう、トリニティのお嬢ちゃん」

 

「な、なんでしょう……?」

 

 眼前に現れたのは、いかにも柄の悪そうなスケバン5名。当然面識はないので首を傾げていると、最初に声をかけてきたリーダー格っぽいスケバンが続ける。

 

「アタシらよ、金無ぇンだわ」

 

「だからさ、可哀想なアタシらに恵んでくれない?金たんまり持ってそうなお嬢ちゃん」

 

 あーなるほど、カツアゲですか。それで周囲のトリニティ生が複数行動してる理由が分かった。一人でいるとこうやって絡まれるからだな。

 

 丸腰なら降参して差し出してたところだけど……こちらには骨董品とは言え散弾銃がある。それにここはトリニティのど真ん中だ。騒ぎが起きれば正実がすっ飛んでくるだろう。それまでの辛抱だ。

 

「なるほど……もし、嫌だと言った場合は?」

 

「……力ずくで奪うまでだ!」

 

 相手の先制攻撃、アサルトライフルの銃撃。ちょっと痛い。

 

「……先に手を出したのはそちらですわよ」

 

 銃を肩から下ろしたら火薬と散弾を詰め、撃鉄を半分起こす。火皿に点火薬を入れて蓋を閉じ、撃鉄をさらに起こして、ちょうど装填中の相手めがけて引き金を引いた。実家で何度も何度も獣狩り(れんしゅう)したから手慣れたものだ。ああ、この懐かしい感覚。

 

「ぐあっ?!この距離で……ショットガンは……卑怯だろ……」

 

 一人ダウンしたの確認したら、次弾を装填する。こちらに突進してこない分、猪や熊よりも楽な相手だ。

 

「ちっ……一人やられたか!お前ら、早く次撃て!」

 

「分かってるっスけぉっ!?」

 

 モタモタしてる一人に再び散弾を叩き込む。口より手を動かした方がいいと思うけど。

 

「おい、クソッ……あれ、どこに……がっ?!」

 

「隙だらけですわ」

 

 マシンガンを抱えたリーダー格の背中に回ってゼロ距離射撃。倒れ伏したその後ろから残る二人に声を掛ける。

 

「……まだやりますか?」

 

「リーダー!?……ああ、リーダーの仇を取らねえと、なあ!」

 

 狙い済まされたタイミングで二方向からサブマシンガンの銃撃を浴びる。…めっちゃ痛い。何とか耐えつつ装填し、発射する。直撃を免れて気絶とまでは行かずとも怯んだ様子のところに、片方に二発目を顔面めがけて。そして最後の一人は。

 

「な、なんなんだよこいつ……!?」

 

「ブレブレです、当たりませんわよ」

 

 動揺して狙いが定まらないのか弾道はめちゃくちゃで、脅威にはならない。そのまま最後の一発をくれてやって終了だ。

 

「……あら?」

 

 倒した5人のスケバンを見下ろす。あれ、なんか勝っちゃったよ。正実が駆け付けるまでしのげれば充分だと思ってたのに。

 

 それに戦闘に入る直前から、思考するよりも数フレームだけ早く体が動くような……何て言うんだろう、勝手に体が動く……とはちょっと違うかも。体が覚えている、そう、そんな感じだった。

 

 思えば、大抵は一発打ち込めば終わるから意識してなかったけど、鹿やら猪やら熊やらを銃で仕留める時もそんな感覚があった気がする。

 

「正義実現委員会です!何事ですか?!」

 

「えっと……その……」

 

 遅れて到着してきた正実部員への返答に窮す。「カツアゲされたけど全員返り討ちにした」って言っても信じてもらえるのかな……。

 

「この方達にその……恐喝?されまして……」

 

「そうでしたか、念のため聴取に同行していただいてもよろしいですか?」

 

「ええはい、構いません」

 

 近くの詰所で十数分程度の聴取を受け、解放されてモールに戻ってくると例の5人は消えていた。近くにいた正実の生徒に聞くと。

 

「意識が戻ったので事情聴取を行っています。入れ替わりだったようですね」

 

「……あの、あたくしは買い物をして大丈夫でしょうか?」

 

「はい、周辺にいた人々にあちらの方から一方的に因縁を付けられたという証言は得られましたので」

 

「そうですか、それでは失礼いたします」

 

「ええ、ただトリニティ自治区は比較的治安が良いとはいえ、あまり一人で行動するのは気を付けた方が良いかもしれません」

 

「そう、ですわね」

 

 耳が痛い。だってぼっちなんだもん、しょうがないじゃん。……うーん、友達作った方がいいのかなぁ。友達とまでは行かずとも、一緒に行動するような人とか。

 

 

 

 その後は何事もなく、服と食料を買って帰路に着いた。一人でいる方が気楽だけど、やっぱり帰宅部じゃなくて部活とか委員会とか入った方がいいのかな。

 

 それに初めての銃撃戦だったはずなのに、あんなにもあっさりと5人倒してしまったのも気になる。別に手練れというわけではないそこら辺のチンピラだったみたいだけど、それでもね。

 

 というか、前世は実銃を撃つなんてまず無理な現代日本人だったはずなんだけどなぁ。この8年ですっかりキヴォトスに染まったということだろうか。

 




アイカは元ネタが元ネタなので一年生にしてはかなり強いです。あくまで一年生にしては、なのでトリニティで言えばツルギなどのキヴォトス屈指の戦力には勝ち目がないですね。
ただ順当に研鑽を重ねれば、三年生になる頃にはキヴォトス最強格かそれに準ずる立ち位置には至れると思います。その頃にはツルギ達は卒業してますが。
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