ティーパーティーの田舎令嬢   作:サンタクララ

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05 ダドエルの荒野

 一通り落ち着いたところで先生はマアサとマイハに僕を託してシャーレへ戻り、二人が持ち出したロイアルティー号で一緒にトリニティへと帰る。まあ今回については状況的に仕方ないし、それに二人なら別にいいかと思って気にしてないと伝えておく。

 

 

 

 そしてその翌日、まあ当然というべきかナギサに呼び出しを受けた。向かおうとすると、なぜかマイハとマアサも付いてきて三人で執務室に入る。

 

「マイハさんとマアサさん……?まあ、お二人もあの場に向かったようですし、同席するのは構いませんが」

 

 それからナギサに言われた通り、昨日僕がサンクトゥムタワーで起こした事件、それに至るまでの動機について説明した。手紙に書いたようにセイアみたいな未来視の一種だと言おうかと思ったけど……本当のことを話しておくことにした。もちろん、この事は他の人が知るとかなり混乱するだろうから秘密にしておいてほしいとも。

 

「はぁ、なるほど……とにかく、アイカさんがその事で思い詰めていらっしゃったのは分かりました。アイカさんも、受け止めたお二人も、それに先生もご無事で良かったです」

 

 ナギサは「ですが」とその先の言葉を続ける。

 

「ティーパーティーの一員でありながらこのような事件……サンクトゥムタワーを制圧し、身投げを図るなど、あまりにも……もう……言葉が出ません」

 

「申し訳、ありません……」

 

 自治区外のD.U.地区でこんな騒ぎを引き起こしちゃったわけだし、どんな処分でも受けるつもりだ。

 

「……30日間、ティーパーティー護衛部隊としての権限停止、ならびに自室での謹慎処分とします。反省してくださいね」

 

 ……あれ、意外と処分軽いな?最低でもトリニティの監獄か連邦生徒会矯正局にブチ込まれるのは覚悟してたのに。

 

「……先ほど、先生から電話がありました。『アイカなりにキヴォトスのことを思っての行動だから、あまり重い処分はしないであげてほしい』と。それにアイカさんは……これまでよくトリニティのために尽力してくれましたから」

 

 最初は裏切り者候補扱いだったのに相当評価されてるんだな、そんな大したことしてない気がするけど。まあ、ティーパーティーホストであるナギサがそう処分を決定した以上僕はそれに従うだけだ。

 

「はい……慎んでお受けいたしますわ」

 

「……この後、今回の件について連邦生徒会との会談に向かいます。ですが、決してこちらで下した処分について口出しさせるつもりはありませんのでご安心ください」

 

「は、はい……」

 

 そういうわけで、処分についての詳細な内容が書かれた書状を手渡され、ナギサが会談のためD.U.地区に向かうということで見送った。

 

 

 

 

「あなたがあたくしの監視官ですの?」

 

「は、はい!へ、変なことはしないでくださいね……」

 

 その翌日から自室謹慎が始まった。具体的には、僕の寮の部屋の前にシフト制で正義実現委員会の生徒が監視につき、不要不急の外出をしないよう見張り、どうしても外出する必要がある場合は側で監視すると言うものだった。

 

 ちなみに、ナギサの連邦生徒会との会談後も内容に特に変更はなかった。何でも、カイザーからD.U.地区を奪還する際の活躍を筆頭に連邦生徒会並びにシャーレへの貢献、そして普段の様子からの再犯性の低さを認めさせて─連邦生徒会からの処分については、サンクトゥムタワーで破壊した設備の弁償費支払いのみになったらしい。さすがにその程度なら普通に払えるので、貯金してる口座から引き落としてそれで終わり。あとは1ヵ月おとなしく過ごすだけだ。

 

 

 

 

 

 

 自室謹慎の期間を満了した頃には、先生が百鬼夜行連合学院で起こった事件、つまり百花繚乱編の内容も無事解決してシャーレに戻っていた。そういうことで諸々の報告を兼ねて、シャーレに出向いた。

 

「先生、お久しぶりですわ」

 

「"やあ、アイカ。どうだったかな?"」

 

「ええ、あまり重い処分にはならず自室謹慎で……それも昨日に終わったので、こうしてシャーレへ参りましたの。改めて、ご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした……それと、ありがとうございました」

 

 先生のデスクには相変わらず書類が積み上げられている。内容は百鬼夜行から送られてきたものが多いようだ。

 

「"そっか、これからも頑張ってね。あ、そう言えば……。"」

 

 そうして先生は、あの時言っていた前世の記憶で分かる範囲はどうなったのかと聞いた。

 

「それなら、先生が百鬼夜行で解決された事件の辺りまでですわ。なのでこれからは本当に未知数ということになります」

 

「"そうなんだ、せっかくだから私も未来を知る気分を味わいたいと思ったのに。"」

 

 ぶっちゃけろくなもんじゃないと思うよ、前世の記憶(これ)。それに、僕が思うには。

 

「そう惑わされることはないと思いますが……先生が、先生として選択することが大事ですので」

 

 連邦生徒会長もプロローグとかで言ってたけど、先生は同じ状況なら同じ選択をするだろうからね。大事なのは経験ではなく選択だ。

 

「"うん、それもそうだね。それじゃあ私の選択は……アイカに書類仕事を手伝ってもらうことにしようかな。"」

 

「……全くもう」

 

 そうして、前世の記憶がどうであろうと僕は僕として生きていくことを決心した。

 

 

 

 

 シャーレでしばらく業務処理をした後、トリニティに戻ってくるとマアサとマイハが正門前で出迎えた。

 

「アイカちゃん、おかえり~!謹慎も明けたし早速お出掛けしようと思ったけど、寮の部屋にいなくて……どこ行ってたの~?」

 

「シャーレに、先生に改めて挨拶をしに行きましたわ」

 

「先生ですか……そう言えば」

 

 マアサが聞いてきたのは、あの日言っていた「告白」とは一体なんなのかということ。

 

「そう、ですわね……サンクトゥムタワーから足を踏み外して、そのつもりはなかったのですが先生も道連れにしてしまって……どうせ死ぬならと半ば自暴自棄で先生に『愛しています』と、そう言いまして……」

 

「で、断られたと」

 

「うぐぅ……」

 

 改めて言葉にされるとショックだからやめてほしい。

 

「あはは……先生、そういう人だもんね~」

 

 状況が状況とはいえ、先生にガチ告白しちゃった生徒の一人ってことになるんだよなぁ、僕は。

 

「えっと、お出掛けはどちらへ行きますの?」

 

 これ以上この話をしていると頭が恥ずかしさで沸騰しそうになる、それでやや強引に話題転換するとマイハが答える。

 

「そうだな~、いつものショッピングモールでスイーツフェスがあるからそっちに行こっかなって」

 

「調べたらアイカの実家の果物を多く使っているそうなので、是非行ってみたいなと」

 

「実家……あっ」

 

 そう言えば冬休みに実家に帰ろうと思ってたけど、自室謹慎のせいで行けてなかったことを思い出す。

 

「どうしたの~?」

 

「いえ、その……冬休みの間に実家に一度顔を出そうと思っていたのですが、謹慎で行けませんでしたの」

 

 絶対心配させてるよなぁ……次は春休みまで帰れそうにないし。そう考えていると、マアサが。

 

「ふむ……それなら、次の土日に三人でまたアイカの実家に行くのはどうですか?」

 

 確かに、実家は一応トリニティの中心部からでも一日以内に往復ができる距離ではある。土日だと一泊二日になるだろうか。

 

「そうですわね……それも良いかもしれません」

 

「その辺りはまた追々計画を立てるとして、まずはスイーツだよ~」

 

 マイハが僕とマアサの手を引いて、駅の方へと駆けていく。

 

「ま、待ってくださいまし……!」

 

「待たないよ~!せっかくアイカちゃんが無事に戻ってきたんだからね~」

 

 最終編の辺りから色々なことがあったけど、ようやく日常に戻ってこれたんだな。それをマイハとマアサの楽しそうな声を聞いて改めて実感する。

 うん、二人となら……きっと何だって楽しめるし、何だって乗り越えられる。心からそう思える。

 




次回投稿で本編部分は完結です。長かったですね……いやホントに。
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