ティーパーティーの田舎令嬢   作:サンタクララ

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05 初陣

 面接からちょうど一週間が経った日の午後。合否はいつ分かるんだろう、今日こそ手紙とか届いてるかな、と思いながら郵便受けを見てみると……あった。この前と同じくシーリングスタンプで封をされた白い手紙だ。

 

 居ても立ってもいられず早歩きで部屋に戻って開封した結果は──合格だった。

 

「あたくしが…本当にティーパーティーに……」

 

 ただ、合格したからそれで終わりというわけではない。手紙に同封されていた登録用紙に必要事項を書いて入会手続きをしないといけない。それが済めば晴れてティーパーティーの一員というわけだ。

 

 登録用紙に書く内容は氏名や連絡先、愛銃といった個人情報の他に、ティーパーティーに入るに当たって制服のデザインを決める欄があった。白をベースとしたケープ付きの長袖セーラーワンピースにベレー帽、というのが基本スタイルだけどある程度細かい改造も可能らしい。

 

 デフォルトのままでもいいかな、と思ったけど……やっぱり独創性が欲しいなと思い直して、自分はまだ未熟で未完成な存在、という意味を込めてケープを取り外したデザインにした。

 

 この登録用紙をティーパーティーに返送し、それが受理されれば手続きは完了。だけどそれが確認できるまでまた時間がかかるわけで。ただ、今度は手紙ではなくメールで受理完了の通知が届くらしいので、わざわざ郵便受けを見に行かずとも分かるのは助かる。

 

 

 

 

 授業も順調に進んで、休日を迎えた。少しずつ夏に向けて日差しが強くなりつつあるこの頃だが、最近不穏な話ばかり聞く。

 

 停学中の生徒が連邦矯正局から脱走しただの、登校中のトリニティ生が不良生徒に絡まれる頻度が高くなってるだの、違法な武器の流通が増加してるだの。この前のカツアゲもその影響なんだろうか?ただでさえお世辞にもよろしくないキヴォトスの治安がさらに悪くなるなんてやんなるね。

 

 そんなわけで正直あまり外に出たくないんだけど、色々買うものがあるのでやっぱり買い物しに行かなきゃいけない。夏用の服もそろそろ買いたいし。

 

 そしてやってきました、あまり良い思い出のないショッピングモール。今日は変な人に絡まれないといいなー。

 

「おい、そこのご令嬢」

 

 うわでた。マスクで顔半分を覆ったポニーテールのスケバンに声をかけられる。

 

「なんでしょう……」

 

「ウチらのシマで一人で呑気にお散歩なんてナメてンの?」

 

 ダルいよぉ……絡み方クッソダルいよぉ……。治安悪いよぉ……動いてないのに暑いよぉ……。

 

「テメェ、なんだそのあからさまに『ウッザ……』みたいな目は!気に入らねぇ、やっちまうぞ!」

 

 その怒号と共に周囲に潜んでいたらしい手下が飛び出してきて、一斉に銃を構える。人数は……ざっと10人くらい。この前の倍か……とりあえず退こう。

 

「あ、逃げンじゃねぇよ!追うぞ!!」

 

 エスカレーター……急いで降りるのは危険だ。エレベーター……たぶん待ち伏せされる。そういうわけで向かうは階段。さっき見たフロア案内で場所は分かってる。そして目的地は地下、ロイアルティー号とその荷台の愛銃だ。

 

「いたっ、痛いですわ!」

 

 階段へ向かうまでの通路は直線。後ろから銃撃を浴びる。痛みに耐えて走りながらブラウン・ベス銃を抜く。さすがに移動しつつの装填は経験がないのでもたつくけど、撃鉄を完全に起こして準備完了。前を向いたまま後ろの、発砲音の方向に撃つ。直撃はしてなくてもいい。とりあえず怯ませられれば問題ない。

 

「くっ……!なんだあいつ!?後ろ向かずにこっちを、だと!?」

 

 ほんのちょっとの足止めの間に階段まで来て、踏み外さないよう確実に、しかし早足で降りる。他の来店客はエレベーターやエスカレーターがあるのにわざわざ階段を使う理由がないので人はいない。ぶつかる心配もなく3階へ、2階へ、1階へ。

 

 そして地下階に入り、駐車場のある地下2階。すぐに出庫準備をして駐車場出口に向かう。AIに自動制御させつつ、荷台で愛銃に弾薬を供給する。ようやく追いついたらしい不良の銃撃が襲ってくるが、どうせ致命傷は与えられない。お構い無しに地上へ出る。

 

「ちぃっ、外に出ちまったか……ん?」

 

「あいつの車に積んであるのって……」

 

「ま、まずい……!撤た」

 

「射撃準備よし!落ちなさい!」

 

 クランクを回し始めると共に2つの砲口が同時に首を引っ込めて出しての動きを繰り返しながら、ボンボンとリズムを刻んで音を立てる。そしてその砲口の先では、40mmの榴弾が路面に当たって爆発を起こし煙を上げる。弾倉が空になって動きを止めたのを見て、次のベルトを持っていつでも装填できるように構える。だけど煙が晴れた先には倒れ伏す不良集団が見えて、これ以上の追撃は不要だと判断した。

 

「正義実現委員会です!何がありましたか!?」

 

 そしてやってくる正実の部員。なんだかデジャヴ。

 

「えっと……そちらの方々にショッピングモール内で絡まれて撃たれたので、外まで出て応戦しましたの」

 

「そ、そうでしたか。最近多いと聞きますね、我々も見回りを増やしているのですがどうにも対処しきれなくて」

 

 ああ、やっぱり治安悪くなってるんだね。ずっと田舎暮らしだったから、前がどのくらいの治安でどれほど治安が悪化したかとかは分からないけど。

 

「ええ、お疲れ様です」

 

「あとは一応、事情聴取に同行願えますか?」

 

「はい、構いませんわ」

 

 そうしてまたこの前みたいに少し詰所に寄って話を聞かれて、買い物に戻った。日用品に食材、それに服もばっちり買って帰宅。

 

 いやー、それにしても初めてポンポン砲を本格稼働したけど、すごい威力。次の給弾ベルトを使うまでもなく一瞬で終わったし、相手の方も地上に出てこれを見た瞬間撤退しようとしてたし。そう思い返しながら、荷台で砲身を撫でた。

 

 

 

 

 それから数日後、学校を終えて寮に戻ってくると、寮の管理人から預かっていた手荷物を渡された。もしや、と思ってお礼を言ったらすぐに荷物を抱えて部屋に戻り、箱を開けると。

 

「やっぱり、この白い服は……!」

 

 ついに届いたティーパーティーの制服と、ついでにティーパーティー支給品の拳銃のウェブリー・リボルバー*1。早速着替えて試着してみる。……覗きは禁止ですよ?

 

「うふふふ、とても素敵ですわ……!」

 

 制服は要望した通りのデザインとなっており、白地に金色の線が入った、上下が分かれてるように見えるセーラーワンピース。リボンは黒色で、かわいらしいベレー帽もセットになっている。気品があって、清楚で、そして何より可愛らしい衣装に僕は大満足だった。

 

「明日の登校からはこの制服にしましょう♪」

 

 名残惜しいながらも寝巻きに着替えてティーパーティーの制服をクローゼットにしまう。登校する時を想像して、今から明日が待ちきれない。

 

*1
19世紀末~20世紀前半のイギリス及びイギリス諸連邦で改良を重ねつつも広く、長く用いられた回転式拳銃。




通算8話目にしてようやく愛銃に戦闘の出番。あと1章02の後書きで言及だけされていた支給品の拳銃が今さら登場です。
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