私気づいた。銃より拳のほうが強いんじゃないかって。 作:まっしろたまご
『ヒナは強し』
学園都市キヴォトスには、今日も銃声が響き渡る。
チンピラたちとゲヘナ風紀委員の大合戦。
最近、ブラックマーケットを飛び出し、大挙してゲヘナ自治区で好き勝手始めた集団があった。そいつらは圧倒的な人数差でなまっちょろい治安維持機関を蹴散らし、ついには風紀委員と
そんな地獄の様相を俯瞰して実況している私は一般ゲヘナ生徒。少し無断欠席が8割を占めているだけの一般生徒です。
ええ、ほんの少し体を鍛えることにハマっていて、前世の記憶があるってだけの一般的なゲヘナ生です。そして現行で戦闘に巻き込まれているゲヘナ生でもあります。ど う し て こ う な っ た 。
軽く、この世界に来るまでのきっかけを語ろうかと思います。前世の私はコミケに向かうため、寝ぼけ眼で家を出て不幸にも黒塗りの高級車に撥ねられ記憶がありません。目覚めたらこの世界で一人暮らしてました。
おそらくきっと転生というやつでしょう。『あ!これブルアカ二次創作で見たところだ!』ってなりましたもん。
しかし現実は非情、転生特典で銃が扱えるとかはありませんでした。というか痛いで済むからといって
鏡に映る自分の姿を簡単に説明するなら……ゲヘナの制服を着た正実モブちゃんと言った感じでしょうか。気がついたらそんな感じの女の子に転生していました。以上、これがきっかけです。
いやぁ頑張りましたよ。『俺』だった一人称を『私』に変えて、なんとかかんとか普通の学生としての生活を送れるようになるにはそれなりの時間を要しました。
そんでもって何でこんな一人語りをしているのかといいますと、実は今走馬灯を見ているからなんです。チンピラ達のど真ん中で近接戦してたらヒナ委員長にメッタ撃ちにされました。ほら、今にも意識が沈んで———
窓から差し込む光に照らされて、意識が覚醒へと導かれます。
「知らない天井だ……」
「医務室よ。初めてだったかしら」
ベットの右から、少しけだるげな声がしました。
「これはヒナ委員長。医務室になにか御用ですか?」
「貴女に謝りに来た。申し訳ないことをしたわね」
「ああ、あれですか。あれは勘違いされるような立ち回り*1をしていた自分にも非があるので......」
「まあ、私にできることがあれば何でも言って頂戴。できる限り力になるわ」
そう言い残して、ヒナ委員長は部屋を後にしました。原作ではかなり恐れられている人物ですが、実際に会話してみると思っていたよりも優しい人ですね……
もっとも、先生へのデレ様を知っていれば恐れることはないのですが、それでも優しさの奥には物を言わせぬ圧というか、強さみたいなものが感じられました。
ゆっくりと体を起こして、怪我をした個所を確認してみます。チクリとした痛みこそまだ残っているものの、傷自体はほとんどふさがっているようですね。
ベッドから体を起こし、ヒナ委員長に続いて出口へ向かいます。
「もう行くんですか」
「ええ、セナさん。あらかた治りましたので」
「そうですか。お気をつけて」
「止めないんですね」
「死体以外には興味ありませんので」
校舎から出て帰宅する途中、そこそこな数の生徒たちから畏怖の視線を向けられたり、ヒソヒソとうわさ話の標的になっていたような気もしましたが、おそらくは自意識過剰の勘違いでしょう。
今日はいろいろなことがあった。早めに帰って、休みを取ることにします。
次の日。授業をいつも通りBDで済ませ、日課の筋トレに励んでいた時のことです。ピロンという通知音と共に、スマートフォンが一つのビッグニュース*2を告げる。内容を端的に説明するのであれば、『連邦捜査部シャーレに先生が着任した』というニュースでした。
ついに来ました。
こうしてはいられません。ついにブルーアーカイブが始まるのです!!そして私の計画———名付けて、『原作の名シーンを生で見ちゃおう大作戦』も同時に発足します。そのためのステップワンが今日というわけです。
思い立ったが吉日。私は筋トレのダウンもそこそこに、私はゲヘナ中央部の駅を目指して爆走を始めたのでした。
砂まみれの大地を抜けて数十キロ。まだまだ砂は残っていますが、文明の片鱗が見え始めたぐらいで電車は止まりました。ガタガタという音を立ててスライド式のドアが開き、ホームへと一歩外に踏み出します。カラリと乾いた風が頬を撫で、髪を
「ついに……辿りついたぞ!!アビドス!!すっごいアビドスっぽい景色!!」
「うへ、ここに来てそんなにはしゃぐなんて珍しいねぇ」
「ワッ……びっくりした……えっと……あなたは?」
「私は小鳥遊ホシノっていうんだ〜。気軽におじさんって呼んでね〜」
ホームの外から、うへうへとした雰囲気を醸し出しているホシノさん。彼女こそ、こんなところにいるということはパトロール中でしょうか。どんな理由にせよ、最近強者とのエンカウント率が高い気がしますね。
ひとまず駅を出て、彼女の元へ向かいます。時期的にはまだ先生と出会う前のはずですが、態度が柔らかめなのは私が生徒だからでしょうか。ともあれ、好感度がゼロからスタートできるのは助かります。
「それで、君はなんでこんなところに来たの〜?」
「少し、会わなければいけない人が居まして。これから探すところです」
「うへ〜。それは大変だぁ。アビドスの案内ならおじさんに任せてよ〜」
そう言った感じの雑談をしながら中心部の街へと向かう途中、前方から十個ほどの足音が向かってきました。アビドス、二人、私はマンモス校の生徒……間違いなく『ヤツら』でしょう。
前から響いていたはずの足音はいつのまにか消え去り、私たちを囲むような形で人影が現れます。
「お前たち!止まれ止まれ!!」
セーラー服を思わせる制服に、特徴的なヘルメット。そして極めつけは顔を覆い隠すガスマスク。カタカタヘルメット団でした。てっきりスケバンたちとエンカウントするものだと思っていたのですが、バッチバチに人違いでした。取り合えず一旦戦闘態勢に移ります。
「我々はこれよりお前を人質に、アビドス高校襲撃の軍資金を頂戴する!!大人しく身柄をよこせ!!」
「うへ、話し合いじゃあ解決できなさそうだね〜」
「右半分はホシノさんがお願いします。もう半分は私が」
「了解〜。無理しないでね〜?」
殲滅開始の判断はすぐでした。背後はホシノさんに任せて前に集中します。
まず手始めに正面にいた子に殴りかかります。間合いは4mほど。これなら、私の場合は殴った方が火力が出ますね。
単純なパワーだけでいえば、ミカやアリスなんかのゴリラ達には到底敵いませんが、私の武器は超スピード、もとい爆発的な加速。モブなりにこの世界で生き残るために鍛えていたら奇跡的に身についた力*3です。
急に動き出す私達に驚いてヘルメット団が慌てて銃を構えます。が、すでに私は懐に潜り込んでいました。その流れでみぞおちに一発。次。腕をつかんで側頭部に肘打ち。キヴォトス人なら死なない、はず……死にませんよね?
あとは2人適当に武器を奪って足払い。バランスを失って盛大に吹っ飛んで行くのを横目に最後の1人をヘッドロックしていると、ホシノさんに止められました。
「そろそろ離してあげな〜?ギブって言ってるよ〜」
「おっと失礼」
「華奢な見かけによらず強いんだね〜。おじさんの出る幕はなかったかな?」
「いえいえ。そっちを受け持ってもらって助かりました」
平静を装いながら、2人でそそくさとその場を後にします。こいつらの仲間に見られれば速攻で増援を呼ばれること間違いなしです。
スタスタと早足で歩きながらも、ホシノとの会話は続きます。
「ねぇ、君はなんでこんなところまで来たの?様子を見るに、遊びに来たわけじゃ無いんでしょ?」
「はい。実はとある人?に会いに来まして。そろそろアビドスの校舎にいるはずなんです」
「わざわざ会いに来たのに疑問系なんだね〜」
「ええ、まあ人間か怪しい相手ですから……」
そういえば、彼女はストーリーが始まる以前からヤツとの交流はあったはず……ここで所在を聞いておくのはリスキーでしょうか。しかし、ここで機会を逃してしまった後、1人で目的地を探すのもなかなかに骨が折れます。そう考えれば、ダメ元でも聞いておくが吉でしょう。
「ねぇ、ホシノさん」
「うへ、ホシノでいいよ〜」
「黒いスーツに身を包んだ不気味な『大人』に、心当たりがありませんか?」
そう聞いた途端、一瞬彼女の目が警戒一色*4に染まったのを私は見逃しはませんでした。
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