私気づいた。銃より拳のほうが強いんじゃないかって。   作:まっしろたまご

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『“同じ”力を持つ少女達』

 温かな陽気が降り注ぐバルコニー。

 お茶会用の用意がされた机に、三つ並べられた椅子。そこに腰掛けるのは二人の少女達だ。

 

 一方は、色の薄い緑髪をストレートに下ろし、風紀委員会の制服に身を包む細身の少女、風音ホノカ。

 もう一方は、大きな狐耳をピンと立てた金髪の少女。『セクシーですまない』と言わんばかりに大胆なノースリーブの制服。【ティーパーティー】の百合園セイア。

 

 双方じっと見つめ合い、気まずい沈黙が場を支配する。

 先にそれを破ったのはセイアだった。

 

「初めまして、だね。風音ホノカ」

「ええ。初めましてですね。百合園セイアさん」

「おや、私のことを知っているのかい?」

「ええ。私も似たような力を持っていますから。シンパシーを感じていました」

 

 冷静な応対を続けつつも、内心ホノカはかなり困惑していた。

 先生と別れて、適当な飴を食べながら帰宅。いつものルーティンをこなしたのち就寝……何もおかしいところはない。

 そのあと、目が覚めたらここにいたのだ。だとしたら、ここは夢の中ということになるのだろうか。と。

 

「困惑しないんだね。君のように冷静な会話ができる者はかなり少ないよ」

「いつかこういうことがあるのでは、と思っていましたから。これは、『夢が繋がった』という認識で間違い無いですか?」

「ああ。その認識で相違はない。君はゲストとして、私の夢に招かれたわけだ」

「なるほど」

 

 これは、ブルーアーカイブの本編でも見られたワンシーンだ。あのときは先生がこの夢に招かれていた。今はまだ未来を見ただけの段階だから、誰にも相談をしていないのだろう。

 

「ゲストとして……ということは何か御用でもありましたか?」

「用……用というほどのことではないが、強いて言うなら、『友人の妹と会ってみたかった』というところかな」

「……は?」

 

 ホノカの声色が一気に変わる。

 それもそのはず、セイアは今、『お前には姉がいる』と言い切ったも同義なのだ。

 彼女の知りうる範囲内で、原作に『風音』という苗字を持つキャラクターは存在しない。

 自分が知らないだけで存在していた、という場合なら問題はないが、一番恐ろしいのは……姉もまた、転生者である場合

 

 この世界に生を受けたからと言って、みんながみんなハッピーエンドを目指すわけではない。

 中にはきっとバドエン厨や曇らせ厨だっていてもおかしくない。それらが明確な悪意を持って行動していた場合、この世界で初めて私は『敵』が生まれることになる。それだけは避けたかった。

 

「……もしかして、姉の存在を知らなかったのかい?」

「ええ。今初めて知りました」

「ああ……まあ、姉も姉だし、致し方ない」

 

 セイアはコホンと小さく咳払いをし、『それよりも』と話題を切り変える。

 

「さっき、同じ(未来を見る)力があると言っていたが、君も……『アレ』を見たのかい?」

「ええ。それはもう、最後まで」

「……そうか」

 

 この2人の言う『最後』は、全く違う。ホノカのソレは色彩騒動の後の平和であり、セイアのソレはエデン条約編での見るに耐えない惨状だ。

 その違いを知っているのも、円満な終わりを知っているのも、ホノカだけである。

 

「……君は、恐ろしくはないのかい?」

「恐ろしいですよ。でも、何もせずにじっとしている方がもっと恐ろしいとは思いませんか?」

「……その心は?」

「だって、自分が動かずに大切な人が傷つく方が、もっと怖いじゃないですか」

 

 それは、紛れもない彼女の本心であり、生きる上での信条としていることだった。

 彼女とて、痛みを受けたいわけでもないし、それで人を悲しませたいわけではない。それは最近痛感したばかりだ。

 だが、もしも歩まねばならない未来で誰かが傷つかねばならないのであれば、それは当然自分であるべきと彼女は思っている。

 

 自分がうまく負担を請け負って、適当に流せれば御の字。ダメでもライフで受ければ問題ない。

 

「……君も、強いのだな。彼女にそっくりだ」

 

 ここにいない誰かを思い、遠い目をするセイア。きっと『彼女』とは、まだ見ぬ自分の姉のことなのだろうと、ホノカは思った。

 

「そんなことないですよ。いつもいつも周りに迷惑をかけてばかり」

「私はいま、この夢から覚められなくてね。なんとかしようともがくだけでも、君を尊敬するよ」

 

 そう聞き終えたが最後、じわじわと体の感覚があやふやになる。夢の終わりは近い。

 

「もうこんな時間か……また会えることを願っているよ」

「ええ。今度は現実で会えるといいですね」

 

 ピピピピ、と言う音が意識を現実へと引き戻す。

 

 最後にパクパクと口を開いたセイアの声が、ホノカに届くことはなかった。

 

 

***

 

 

 温かな陽気が降り注ぐバルコニー。

 お茶会用の用意がされた机に、三つ並べられた椅子。そこに腰掛けるのは三人の少女達だ。

 

 今回は間違いなく現実、トリニティ総合学園のティーパーティーそのものだ。

 

 先日、何者かにより襲撃を受け、ホストを遂行しきれなくなった百合園セイアに変わり、一人の代理が立てられた。

 彼女の名は、風音カオリ。サンクトゥス派に所属する三年生だ。

 

 尤も、内政に関わることの経験はないため、ほぼ穴埋め的な扱いとなっている。

 ホストの代理は桐藤ナギサが務め、なんとか今日もトリニティは平和である。

 

「最近、ゲヘナで風紀委員会の副会長に貴女と同じ苗字の方が就任されたそうです。ご存じですか?」

「ああ。もちろん。自慢のが活躍しているようで何よりだね」

 

 妹よろしく薄緑の髪をボブカットに切り揃え、整然と茶会の席に着く様子はなかなか様になっている。まだまだ着なれないはずのティーパーティー専用の制服も、初めからそうであったようによく馴染んでいた。

 

「妹さんとは最近も関わりが?」

「いや、きっとあの子はわたしの存在すら知らないだろう。少し特殊な事情があってね」

「そう、ですか……これは失礼しました」

「いや、いいよ。ナギちゃんにならいつか喋ろうと思っていたんだ」

 

 堅苦しい口調ではあるものの、和気藹々とした会話をする2人。と、それをいかにもつまらないと言った様子でマカロンを頬張るミカ。今の彼女らは生徒会でなくただの友人同士。

 お茶会で雑談に興じるただの高校生だ。

 

「ね〜ゲヘナの話なんかやめようよ〜」

「そうはいかない。なにしろ我が愛しの妹君のことだからね」

「でもゲヘナはゲヘナじゃ〜ん」

「いや、生まれはこっち(トリニティ)だ。今は事情があって向こう(ゲヘナ)に通っているがね」

 

 ふぅん、と返事をして、依然とその態度を崩さないミカ。

 ナギサの手がふるふると震えるのをカオリが静止した。

 

「ミカさん。少しその態度は失礼では?」

「まぁまぁナギちゃん。これはわたしの自語りのようなものだからそう怒らないでやってくれ」

「はぁ……今日はカオリさんに免じて許して差し上げます。ですが、次はお覚悟を」

「きゃー!ナギちゃんこわーい!☆」

 

 百合園セイア不在の彼女らを落ち着かせるのはカオリの役割だ。代理として呼び出されているとは思えないほど他2人と相性が良く、且つ頭も切れる人物。これまでちょうどいい人がよくも身近にいたものだ、とナギサは思う。

 

「それで、事情というのは?」

「体質だよ。セイアが未来を見れるように、我が妹もまた特殊な力を有している。そんな逸材がここ(トリニティ)にいたら派閥に取り込まれていいように利用されることは間違いないだろう?」

「ええ。おそらくはそうでしょう」

「それは、私も母上も……いや、マダムも望んではいないんだ。あくまで普通の、青春を送ってほしい」

「いいお母様なのですね」

「ああ。とても」

 

 ホノカの持つ、『体質』。未来が分かるということと、たぐいまれなフィジカルを持つこと。ヒナやツルギまでとはいかない強さではあるものの、その二つの異常な力を持っているというだけで派閥争いではかなり有利になる。

 

 それに巻き込まれて思うようにいかない青春を過ごすぐらいなのであれば、外部に逃がしてしまえという魂胆だ。

 

 事実、それによって彼女は自分の意志で生き方を選択することができている。

 

「ただ、どうにも最近無理を重ねているようでね。心配なんだ」

「ニュースでしていたあれですか?」

 

 ナギサのいう()()

 カイザーPMCが生徒を襲撃し、瀕死の重体にした後合流した仲間たちとともに壊滅させられたというニュース。

 

 『仲間』の生徒たちの正体はつかめなかったものの、重体にされた生徒である風音ホノカは立場上すぐにマスコミに情報が渡り、『企業による計画的殺人未遂』としてキヴォトスでは物議をかもしている。

 

 現在では事態が一時鎮静化しているものの、彼女の動向は現在つかめない。

 言動から察するにかなり妹を大切に思っているようで、カオリの心中はとても穏やかではないだろう。

 

「でしたら、一度お会いしてみるのはいかがでしょう?」

「それができればいいんだけどね……」

「エデン条約を締結するうえで、風紀委員会と正義実現委員会の連携は欠かせません。それを口実によんでみるのはいかがでしょう?」

「ナギちゃんもなかなかえぐいことをかんがえるな……でも、それができればかなりうれしい」

「では、決まりですね」

 

 そうして出された『お茶会への招待状』。これがホノカの元へ届き、かなり警戒されるのはこの少し後のお話である。

 

 

***

 

 

 謹慎もとい休学が明けての登校一日目。

 道中では、ネームド、モブちゃん含めなかなかの人数に声を掛けられた。

 

 学校について迷惑をかけた謝罪周りでも途中でなかなか声をかけられたし、昨日ヒナが言っていたことはどうやら本当らしい。万魔殿が戦車で祝砲を上げて怒られていた。

 

 そしてたまっていた仕事。風紀委員会に復帰した私をデスクで迎えてくれたのは山積みになった書類たちでした。それはもう、シャーレにも負けないぐらいのトンデモ物量でありました。

 

 偶然仕事で来ていた先生をとっ捕まえて何とか整理。なんとほとんどが心配のお手紙でした。家の住所はヒナと黒服しか知らないので当然ですね。ですがまた訪問先が増えてしまったようです。菓子折りを買い増ししておかねば。なむなむ。

 

 

 ほとんどはお手紙でしたが、二通だけ、お手紙の書類……まあどちらもお手紙ですけど、ミレニアムとトリニティから届いていました。

 

 

 ミレニアムからの分はヴェリタスや特異現象調査部、エンジニア部からと別件でC&Cの招集がセミナーの名前で届いていました。

 

 心当たりがあるのはエンジニア部だけなのでかなり怖い。私は彼女らに何をしてしまったのでしょうか。

 

 そしてトリニティからの分は……『お茶会への招待状』。

 

「いやこっっっっわ?!」

 

 ただでさえ胡散臭い秘密の多いお嬢様校。条約前でかなりピリついているこの状況で単独の呼び出し。

 果たし状招待状なんて頂いたのは人生で初めてなので、正直ビビりまくってウキウキしてます。

 

 ヒナや先生に見せたらシワシワのピカチュウみたいな顔で行っていいよと言ってくれました。わたしとしても正直行きたくはないのですが、呼び出しがあった以上行かなければ失礼にあたるとのことで行くことに決定していました。

 

 先にミレニアムに行きたかったんです私は。でも先に届いていたのがトリニティからだったのでやむなくそっちを優先。復帰初日から憂鬱です。

 

 

 

 本当に、何事もないといいんですけどね。




転生者さんと転生者さんがエンカウントする現場見たいなってことで。
自己完結させるにはこうしかなかった……三次創作の勇気はないんや……

ホノカちゃんに使わせたいよって武器や技

  • パイルバンカー
  • グレード類
  • ジョジョみたいなラッシュ
  • そこらへんに落ちてたパイプ
  • その他(コメントへ)
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