私気づいた。銃より拳のほうが強いんじゃないかって。   作:まっしろたまご

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『平穏な1日』

 アリウス自治区の第二射撃演習場。

 普段利用する者が少ないそこに、小気味のいい発砲音が響く。

 

 数少ない利用者である風音ホノカは、『邪魔が入らない』というだけでこの自治区外れにあるこの場所に足を運んでいた。

 

 足繁く射撃場に通い詰め、彼女の命中精度はおよそ九割九分九厘に達していた。

 与えられた天性のフィジカルに、膨大な神秘。先を求め続けるハングリー精神によってそこまでの力を得て尚、ホノカは命中率100%を誇る姉の背を追っている。

 

 銃身の冷却のため、小休憩に入る。長時間の射撃で固まった筋肉をほぐしていると、演習場の入り口の方から、人影が一つ現れた。

 

「やはりここか。ホノカ」

「サオリお姉さん。何か御用でしょうか」

「いや、姿が見えなかったのでな。探しにきただけだ」

「そうですか」

 

 彼女とて、弱いわけではない。むしろ、実力的に言えばアリウスの中でも屈指、三本指に入るレベルである。

 上があるなら目指す。ただそれだけの純粋な向上心で今日も修練に励んでいる。

 

「ところでホノカ」

「なんでしょう」

「その羽根はどうした」

「えっ?」

「は?」

 

 見れば、ホノカの腰辺りから真っ白な羽根が一対生えていた。

 

「え、ちょ、なにこれ?!ちょっと待ってなに?!怖い怖い!!」

「気づいていなかったのか……」

 

 朝の時点では、何も生えていなかった。現在一番パニックとなっているのはホノカ自身である。

 

「え、ええ〜……っと……ど、どうしよっか……?」

「とりあえず、医者に行くぞ。カオリも連れて来い」

「わ、わかった!すぐ行ってくる!!」

「落ち着け。ぶつかるぞ———」

 

 そう言いかけるサオリの前にはもう誰もいなかった。

 瞬きすればホノカはもう遥か彼方、風を纏いながら自宅の方へまっしぐらだ。

 

(相変わらずのスピードだな)

 

 いつ、いかなる状況であろうと弾丸を命中させる力を賜った姉とは対照的に、圧倒的なフィジカルを賜ったホノカ。

 そのタフネスを元手に血の滲むような鍛錬の末に今の射撃精度を身につけた。『天は二物を与えず』とはなんだったのか、疑いたくなるほどだ。

 

「……歩いて追いかけるか」

 

 そう呟いたサオリは、ブラブラと土煙の舞う帰路を辿り始めたのだった。

 

 


 

 

「おッッッ姉ちゃん!!大変だよどうしよう!!!」

「やかましいぞホノカ。どうした?」

「羽根が生えた!!!」

「は?」

「サオリお姉さんにも同じ反応されたよ!!!」

 

 ドアを蹴破って帰宅するホノカ。ちょうど休憩中だった姉の足元にヘッドスライドで飛び込む。

 声だけでなく絵面もかなりやかましい。

 

「射撃の練習してたらいつのまにか生えてたんだよねぇ。怖い」

「生えてたのはわかったから。それで、どうするんだい?」

「お医者さんに見てもらおうってお姉さんが」

「いい案だね。発案者はどこにいるのかな?」

「置いてきたけど?」

 

 カオリの口から今世紀最大の溜息がでた。

 ホノカはその天真爛漫さ故他人を置き去りにしがちな節がある。基本的にかなり優秀ではあるものの特例として単独での任務しか任されていないのは性格に難があるからだ。

 

「ホノカ……お前はいい加減協調性というものをだな……」

「今回はしょーがないじゃん。知らない間によくわからないものが体に生えてたんだからさー!」

 

 ぶーぶーと口を尖らせて抗議するホノカを押し退け、外出の用意を整えるカオリ。と言ってもコートを羽織るだけだが。

 

「よし。行くよ。ホノカ」

「はーい」

 

 服についた埃を落とし、姉の後に続く。

 外に出ようと廊下を歩いていると、ガチャリとドアが開き、錠前サオリが現れた。

 

「失礼……ホノカが走っていってしまったものでッ……急いで追いかけてきた……」

 

 大きく肩を上下させ、息を整えるサオリ。そして同じ道をかなり早く帰ってきて息一つ切らさないホノカはなんなんだろうか。カオリは訝しんだ。

 

「サオリ……落ち着きたまえよ。いや妹がすまない……」

「いや……無理に追いつこうとした私が悪い……謝るな……」

「いやほんとに落ち着いてくれ。水を持ってくるから」

 

 くるくるとその場を歩き回りながら息を整え、ホノカに向き直る。

 

「しかし、さすがの体力だな」

「取り柄だからね。喋らない方がいいんじゃない?」

「私も日々鍛錬は積んでいるからな。しかし、体力面ではどうしてもお前には敵わない」

「わたしもチームワークじゃスクワッドに敵わないし、どっこいでしょ」

 

 しばし歓談。サオリの頬はまだ赤いが、話ができるまで回復した。

 さすがはスクワッドのリーダー。タフネスも並じゃないとホノカは思う。

 

 家の前で他愛のない雑談をしていると、玄関扉が蹴破られ、二つのコップを持ったカオリが現れた。

 

「おやサオリ。今日もスクワッドに勧誘中かい?」

「……いつもそうみたいに言うな。今は違う」

「そうか。はい水」

「礼を言う」

「ホノカも飲みな?」

「ありがと〜」

 

 受け取ったホノカはさっと飲み干し、コップを回収。目にも止まらぬ速さで片付けを済ませた。

 

「家の中は走るなと言ってるだろう」

「ごめんじゃん……悪かったけど殴ることないでしょ……」

「……行っても大丈夫か?」

「「大丈夫」」

「こう言う時は息ピッタリだな……」

 

 こうして、三人連れ立って医者にかかったものの、帰ってきた返事は『多分成長期』であった。

 

 徒労感に苛まれつつ歩く帰路で遭遇したアズサには、

 

「お揃いか。嬉しいな」

 

 なんて言って喜ばれた。

 カオリの溜息は、今日も今世紀最大を更新し続けている。

ホノカちゃんに使わせたいよって武器や技

  • パイルバンカー
  • グレード類
  • ジョジョみたいなラッシュ
  • そこらへんに落ちてたパイプ
  • その他(コメントへ)
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