私気づいた。銃より拳のほうが強いんじゃないかって。   作:まっしろたまご

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『儀式』

 ホノカに羽根が生えた翌日。

 風音姉妹はベアトリーチェから直々に呼び出されていた。

 

「マダム。ご所望の通り、妹と共に参りました」

「宜しい。では、そこの寝台に横になりなさい」

 

 大きなステンドグラスから光が漏れる礼拝堂。その真ん中に大理石でできた寝台が二つ並んでいる。

 

「マダム。差し支えなければ、これから何をなさるのかお聞かせいただいても?」

「生意気な……まぁ、いいでしょう。もしかすれば、冥土の土産話になるかもしれませんからね」

 

 

「カオリには以前話をした通り、私は『崇高』へと至ろうとしています。その足がかりとなるのが『色彩』である……と言うところまでは覚えていますか?」

「ええ。マダム。勿論です」

「殊勝な心がけですね。では、その『色彩』に接触するとして、必要なものは何か、わかりますか?」

 

 突然投げかげられた質問。二人は全く同じ動きで悩むそぶりをして見せた。が、先に口を開いたのはカオリだった。

 

「当然のことではありますが……万全の用意ですか?」

「半分正解、と言ったところですね。より厳密に言うのであれば、『十分な戦力』です」

「十分な戦力、ですか?」

「ええ。『色彩』は『神秘』を持つ生徒にとって致死毒にもなり得る。故に、この世界で調達できる兵力では全く太刀打ちできないでしょう」

 

 ベアトリーチェの口から飛び出した突拍子のない言葉。しかし、今まで信じられるものはマダムだけだと刷り込まれた彼女らはなんの疑いもなく受け入れる。

 

「ここで問題となるのは、肉体の変質ではなく神秘が反転されたことによる魂の崩壊なのです」

「し、しかし、それがこの儀式となんの関係があるのですか?」

「もっともな質問ですね。ではあなたたちにもわかりやすく端的に説明するのであれば……『恐怖』に耐えうる魂を、あなたたちの体に降します」

 

 魂の降臨。それは色彩を呼び寄せる儀式の転用。『恐怖』の性質を持つ魂を『神秘』の性質を持つ器に入れることにより、その両方を扱うことのできる存在を生み出す秘術である。

 

 簡単な話、色彩に暴露して尚戦い続けられる駒がほしいと言うことだ。

 

「優秀な神秘を持つあなたたちであれば『器』たり得ると考え、この儀式に臨んでいるのです。これ以上の説明が必要ですか?」

「いえ、これ以上マダムを煩わせるわけには」

「そうですか。では、目を閉じて、体を委ねなさい」

 

 


 

 

 言われた通りに目を閉じると、じきに周囲が暗くなっていくような錯覚に陥る。

 先程まで背を預けていたはずの寝台はいつの間に消え、宙を漂うような感覚になる。

 ぼんやりとした思考の中、自分のものではない声が響く。

 

 先程まで一直線だった思考が急にまとまらなくなり、雑念が混ざる。

 やがて人格が分離し、自己と対話できるようになった。

 

 

 

 

 ゆったりと体を起こし、目を擦る。目に映ったのは満足げな表情を浮かべる繝槭ム繝?と隣で眠る■■■だった。

 

「繝槭ム繝?。■■■の様子はいかがですか?」

「カオリ。そう焦らなくても大丈夫ですよ。すぐに目を覚まします」

 

 繝槭ム繝?の言った通り、■■■が起き上がり、周囲を見渡す。寝台から降りようとしたところで、地面に転がってしまった。

 

「■■■!大丈夫か?!」

「縺薙%縺ッ荳?菴凪?ヲ窶ヲ縺ゅ↑縺溘?窶ヲ窶ヲ?」

「ッ!しっかりしろ!」

 

 肩を揺さぶって正気を確かめる。■■■は、虚な目をしたまま空を見つめている。

 

「繝槭ム繝?!繝槭ム繝?!!■■■が!」

「どうやらホノカは……『適応』仕切れなかったようですね。残念ですが、ヘイローが消えているのが何よりの証拠です」

「そんな……ッ!」

「適応できなかった以上、廃棄するしかありませんか……素体が優秀だっただけに残念ですね」

 

 適応、廃棄、恐怖、色彩。先程までに飛び込んできた名前がぐるぐると頭の中で巡る。

 色彩に、恐怖(テラー)。どこかで聞き覚えがあったような、なかったような。

 

 前、何か板のようなもので、文字で、映像で、

 私は……いや。『僕』は……これを、『ブルーアーカイブ』を、知っているのでは?

 

「カオリ。指示が聞けないのであれば、あなたも同じ道を辿りますよ?」

「……あ……ああ。問題ない。私の方で処理しておこう」

 

 

 錯乱状態の■■■を抱え、礼拝堂を後にする。ベアトリーチェが怪訝そうな顔をしていたが問題ない。

 これが、『適応』すると言うことなのだ。しかと目に焼き付けるがいい。

 

 しかし、風音■■カ、か。このような生徒は存在しなかったはずだが……いや、私の妹として確かに存在しているわけで……

 

 まあいいだろう。今はとても清々しい気分だ。

 晴れやかな青く透き通った世界。愛する妹。

 

 愛してやまないものたちに囲まれて、『ここ(キヴォトス)』に生まれ落ちることができたのだ。いまはどうでもいいだろう。

 

 (随分とやかましい魂だな。まぁ、妹を愛していると言うところは同感だがね。)

 

 

「「しかしまぁ、なんと美しく透き通ったいい天気だろうか」」

 

 そうして、私こと僕……こと風音カオリは、妹を廃棄(解放)するため、カタコンベへと向かうのだった。

ホノカちゃんに使わせたいよって武器や技

  • パイルバンカー
  • グレード類
  • ジョジョみたいなラッシュ
  • そこらへんに落ちてたパイプ
  • その他(コメントへ)
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