私気づいた。銃より拳のほうが強いんじゃないかって。 作:まっしろたまご
「あっぶない……バリアがなければ即死でした……」
「申し訳ありませんご主人様。ゼロツーのカバー、間に合いませんでした」
“いや、これは不意打ちを想定出来なかった私のミスだよ”
角楯カリンさんこと『コールサインゼロツー』を気絶させたほんの次の瞬間、床が抜けて私は下の階に叩き落とされました。
扉に窓の下、そして手に持っている一つで最低でも三つ。あとは認識外の場所に幾つ仕掛けられていることやら。
本家ブルアカで、アカネさんはボンバーマン顔負けの爆弾魔だったと記憶しています。それも単発ではなく逃げた先を予測して連鎖するタイプの。
……正直苦手ですね。搦手で戦うタイプと不意打ちはどうしても意識のリソースを割く場所が多くて相手に集中でません。
それなりに防御にも回せるとはいえ私は紙装甲、火力全振りの一撃必殺タイプなのでここはどうしても仕留め切っておきたい。
「戦略がぶっつけ本番ばっかですね。私……」
“出来るだけ身の回りにC4を設置して。ホノカは近づかれたら勝てないよ!”
「承知いたしました!」
今は1v1とはいえ、いつ00と01が来るか。だったら、物理的に外界と隔絶して仕舞えばいいのでは。
対強者想定で日々イメトレを重ねてきた大技。血の滲むような筋トレで多分出来るようになった努力の産物です。
「……領域展開」
なんてカッコつけて言ってみましたが、生成されたのは半径10メートルほどのドーム。どっちかというと近いのは帳でしょうがまあかっこいいからよしです。
簡単に言うなれば巨大化させたバリア。ジブ○ルタルのドームって言ったらイメージしやすいかも。ただ、それとの明確な差異は『私がドームを閉じるまで外界と完全に隔絶する』ということ。正直1v1の空間を作り出せればいいなって感じで使ってみました。フハハ!これで直接対決です!
“アカ———大丈夫?…………通信が———“
「……ご主人様?———なるほど」
「おや。おやおやおやおやぁ……これは嬉しい誤算ですねぇ……まさか通信まで……」
空間だけ切り分けられればと思いましたがまさか通信まで持って行けるとは。やはり神秘には無限の可能性が秘められています、
……さて。これで一時的に先生を排除できたものとして考えて間違いなさそうですがいかんせんどう攻めたものか。ただ、自爆の恐れがある爆弾はこれ以上置けないフィールドを作れただけでもかなりアドと考えていいでしょう。
「やられましたね。事前情報では接近戦を得意とすると聴いていたのですが」
「銃が使えないからそうしているだけですよ。こうやって騙し討ちや初見の技なんかを使わなきゃあなた達のような人には勝ちようがありません」ー
「ゲヘナの副委員長様にそう言っていただけるとは……大変光栄なお言葉ですね」
「それが皮肉じゃないことを祈りますよッ」
注意を他に割かなくても良くなった分感覚は極限まで研ぎ澄まされ、今までは見えなかった物が、あるいは聞こえなかった音が聴こえて来る。
深く踏み込んで大きく前へ。合わせられたハイキックを左手で受けつつ右ストレートをねらうも不発。アカネは既にバックステップの要領で一歩下がり、代わりに謎の箱が飛来するのが確認できた。
「火薬の匂い」
十中八九は爆弾だろうと判断し、念のため手首あたりに盾を生成してパリィの要領で弾き返す。爆発。周囲は硝煙に包まれる。
はっきり言って見通しは最悪。しかし煙の動きで大体は把握できるため問題なしだ。
おそらくここに拳を叩き込めば———。
「ッづぅ!?」
ドスンと何かを叩きつける感覚。ドンピシャだ。おそらくアカネであろう物体が吹っ飛んでドームの反対側で倒れる音がした。これ以上の追撃は必要ない。
用は無くなったので一旦ドームを消失させ、確認のため近寄る。よし。気絶しているだけだ。怪我をしていたら後で謝ればいいだろう。
「後二人……か。ちょっと気が重いなぁ」
脳内麻薬がドバドバと溢れ出し、不思議な万能感に包まれる。今ならばミレニアム最強と評される彼女らにもいい勝負が……いや、勝利を収めることもできるかもしれない。
極度の集中による脳のフル回転。全力で肉体の記憶を辿り戦闘経験を引っ張り出した彼女の精神はアリウスで過ごした幼少期に類似したものへと回帰していた。膨大な神秘、強靭な肉体。彼女が新たなるステージへと昇る準備は既に整っている。
———あと必要なのは、未来へと進む覚悟だけだ。
「アコ。なぜ勝手にC&Cからの要請を許可したのかしら」
「しゃ、シャーレの名前も書いてあったので……」
「そう。それで本音は?」
「私怨です」
「反省文800枚」