私気づいた。銃より拳のほうが強いんじゃないかって。   作:まっしろたまご

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『貴女は私、私はだぁれ?』

 面会の相談も無事通り、外が明るくなり始めた頃にようやくホノカは床に着くことができた。

 意識はそのままに段々と体の自由が効かなくなり、次に目を開けたのはシャーレの自室だった。

 

 

「やあやあホノカちゃん。こうしてちゃんとお話しするのは初めまして、かな?」

 

「ええ。初めまして、です」

 

 

 ニコニコとした笑顔を浮かべホノカに語りかけるのは、まるで彼女を鏡に映したように瓜二つの少女だ。普段寝泊まりしているベッドに腰掛け、早く座れと言わんばかりにバシバシと隣を叩いている。

 

 

「……どこですか。ここは」

 

「べーっつにそんなに警戒しなくていいじゃん!夢だよ?セイアちゃんと会ってる時と同じ感じの」

 

「この世界の住人は密会の会場に夢を選びがちですよね……」

 

「確かに選びがち……だけど、()()()()と対話するにはバッチリな場所だと思わない?」

 

「ええ……確かに、それは」

 

 

 キヴォトスの人間として生き、一度死んだ少女とキヴォトス外からそれに憑依した『大人』

 本来言葉を交わすことはないはずだった彼女らが、今は互いを認識し、今後の展望について語り合っている。実に奇妙な状況だ。

 

 

「……で、貴女は敵なんですか、味方なんですか」

 

「利害の一致、ってやつだよ。わたしは今までの恨みからベアトリーチェを殺したい。ホノカちゃんの目的にもそれは必要なことみたいだし、『今のところは味方』ってのが正しいかな」

 

「……なるほど。私が貴女の記憶を見たように、貴女も私の記憶を見た感じですか。だったら、話が早いですね」

 

「うん。気づいてないわけじゃないと思うんだけど、最近だいぶ体の調子いいよね。素のスペックが大きく上がったりしてるし、今の状態なら銃も多少使えると思う」

 

 

 もちろん、私がその体を使った方が何倍も強いけどね、と付け加えるカザネ。

 彼女の目的のためにはホノカの存在は不可欠。故に、これから起こる事件で死なれるわけにはいかないのだ。

 

 

「前提として、私は大人が大嫌い。それはホノカちゃんも例外じゃないのはわかるよね。だから、わたし個人としてはさっさとベアトリーチェを殺しちゃって欲しいんだ」

 

 

 そう、元々ホノカは次ベアトリーチェと面会する際彼女を誅殺するつもりであった。だが、決意を固めたつもりでも意志の揺らぎというものはどうしても生まれてしまう。ちょうど今がそうだ。一人で使っていると思っていた体に想定外の同居人がいたのだから。

 それが子供となれば話は別、汚れるのは自分だけの手ではないということになる。

 

 

「ええ、貴女がベアトリーチェを恨む気持ちは理解できます。ですが、この体が私だけのものでない以上、手を汚すわけにもいかなくなりました」

 

「別に、殺すのがバケモノになったあとか前かってだけの話じゃん。それに、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()気にすることじゃなくない?」

 

 

 そう言われて、ホノカは完全に言葉に詰まってしまう。原作(ブルアカ)本編とは違う、完全独自に組み上げたハッピーエンドにためのチャート。それらが全て音を立てて崩れ去っていくような錯覚にすら陥った。ここでカザネを巻き込んでしまえば、本質的にベアトリーチェとやっていることが変わらないのではないか。そんな思考ばかりがぐるぐると周り、何もわからなくなる。

 

 

「どうしてそんなに悩むの?よくわかんないんだけど」

 

「どうして、って……殺す殺されるの物騒な世界に貴女を巻き込みたくないからですよ」

 

「変な大人」

 

「変なのは貴女が今まで出会ってきた大人の方ですよ。私はただ、()()()()()の役割を果たしたいだけです」

 

「……本当に、変な人だね」

 

「ええ。この体を貸してもらっている以上、私の望むハッピーエンドに貴女は必要不可欠ですから」

 

 

 ひとまず、考えを改めねばならないだろう。かなり心強い協力者兼理解者ができた以上、成功の確率自体は高まったはず。

 『大人』としてどうするべきか。考えを巡らせるうちに、彼女の意識は現実へと回帰していくのだった。




カザネ(ホノカはちゃんと話してると調子狂うなぁ……)
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