私気づいた。銃より拳のほうが強いんじゃないかって。 作:まっしろたまご
コハルさんのえっち本騒動。その顛末は、『正当な理由もあるし、念のためシャーレがついていけば返しに行ってもいいんじゃない?』という先生の一言により決着がつきました。というわけで現在は私を含めた三人でトリニティの押収品管理室を目指しています。
“ところで、珍しいね。上着の前を閉めてるの”
「ああ、これですか。ゲヘナの制服でこんなところ歩いていたら大騒ぎ間違いなしですからね。流石に隠しますよ」
「なんでそこまでして
「一番大きいのは『シャーレ』としての業務ってのもあるんですけど、お姉ちゃんがティーパーティーのホスト代理をしているらしくて。各方面に口をきいてくれてなんとかって感じですね」
「あとはまぁ……うん……色々やらかしちゃいまして。反省期間ですね」
「ホノカも大概やんちゃね……」
既に日も傾き、オレンジ色の光が差す校内。三人並んでコソコソと歩く中、コハルさんは手持ち無沙汰となったのか色々なことを質問してきました。
何をやらかしたのか〜とか、どうやって一年で副委員長まで上り詰めたのか〜とか。あとはどうして姉はトリニティなのに私はゲヘナに通っているのか……だとか。最後の質問はちょっと焦りましたが、『向こうのほうが性に合っている』となんとか納得してもらいました。今日だけで私の株が大暴落している気がしますね。
「ここが押収品の管理場所。すぐ元の場所に戻してくるからそこで待ってて」
話し込んでいるうちに目的地へと到着、中はありふれた雑多な物置と言った印象でした。ゲヘナの方には何度か足を運んだことがありますが、向こうに収容されていたのは没収した危険物やらが大部分を占め、混沌としていました。しかし、こちらで目につくのはトランプや雑誌などの『学生らしい』押収品や水筒や教科書など。見たところ落とし物の保管も兼ねているんでしょうか。流石はお嬢様学校……というかおかしいのはゲヘナですねこれ。
「これでよし……っと」
「お、ミッションコンプリートですか?」
「戻し終えたから、あとは静かに戻るだけ———」
「コハル?今は合宿中のはず……どうしてここに?」
もはや予定調和。私はここでバレるって知ってましたよ。
「あ〜……ハスミさん。ちょっとコハルさんが間違って押収品がコハルさんのカバンに入ったままになっていてですね。流石に持っているままではまずいと返しにきたところなんですよ。ね?コハルさん」
「そ、そうなんです!間違って!」
「はぁ……そこは疑いませんが……しかし、偶然あえたことですし、少し先生とホノカさんには席を外していただけませんか?正義実現委員会のことで伝えなければいけないことが」
「ええ、構いませんよ。では、我々は外で待っていましょう先生」
扉を閉じ、少し離れてコハルさんの帰還を待ちます。少しずつ漏れて聞こえる声はなるべく意識を向けないようにして、しばらくの時間が流れました。
◆◇◆◇◆
「ホノカ……次、ハスミ先輩が」
「え?」
対談を終え、扉から顔を覗かせたコハルさんは開口一番とんでもないことを口走りました。『ハスミさんが私を呼んでいる???』トリニティ内でもかなり露骨なゲヘナ嫌いであるハスミさんが?悪い冗談はよしていただきたいものですね。まぁ、呼ばれたからには行きますが……この間少し関わった時もかなり肝を冷やしたんですよ?これ以上は私の胃に穴が空くやもしれません。
「し、失礼します……」
「お待たせした上に急にお呼び出しして申し訳ありません」
「い、いえ。お気になさらず……」
密室の中、二人きり。何も起こらないはずもなく……ただし、悪い意味で。的な状況。はっきり言って苦手です。心とか話題とか色々準備できていないとなおさら。
「……そう青い顔をしないでください。何も取って食おうというわけじゃないんですから……」
「ちょっと緊張してしまいまして……申し訳ないです」
「では、出来るだけ手短に済ませましょうか」
ここで一息。取って食おうはあなたが言ったらあながち冗談にもならないんですよ。
「カオリさんから諸々の事情は伺っています。家庭の事情でゲヘナの方に通っていること、一年でありながら副委員長たる実力は確かなことも」
「そこまで言っていただき光栄です」
「ただ、一つだけ心配なことがありまして」
目が合った時、確かにハスミさんは何処か物憂げな表情をしていました。私は黙って話の続きを待ちます。
「補修授業部には成績不振の生徒だけでなく素行の悪い生徒もいると聞きます。そんな中で
「成程、それは確かに心配になりますね。しかし、そう言ったことは先生に聞くべきなのでは?」
「先生はとても優しい方です。だからこそ、特定の生徒を悪く言うようなことはされないでしょう」
「生徒目線の率直な意見が聞きたい、というわけですね」
「話が早くて助かります」
っと言われましても私の意見も似たり寄ったりなんですよね。事実そこに邪悪な精神を持つ子はいませんし。せいぜいゲリラ戦を仕掛けたり露出で捕まったりライブにためにテストをバックれたりする程度、可愛いものです。こんな言い方をしたらあれですが、実際補修授業部の皆さんはそれぞれの信念や正義を持っていますし、ここを伝えれば大丈夫でしょう。
「不器用な子は多いですが、みんないい子だと思いますよ」
「……と言いますと?」
「確かに成績はアレですが、各々全力で勉強に取り組んでいますし助け合いのコミュニケーションも見られます。コハルさんはその中心的な場所で補修授業部を引っ張ってくれていますよ」
「そうですか……」
「これ以外に何か聞きたいことはありますか?」
「では、私はこれで」
ドアノブに手を掛けて退出しようとした時、そういえばふとこちらから伝えておかなけばいけなかったことをひとつ思い出しました。
「あ、そういえば」
「どうかしましたか?」
「これは全然関係ない事なのですが、私は近接で戦う都合上射線に被ってしまうことがあるかもしれません。その時は容赦なく弾幕を浴びせてくださると助かります」
「分かりました……が、なぜ今それを?」
「気まぐれです。いつか肩を並べて戦う日が来るかも知れませんしね。では、失礼します」
改めて退出し、先生とコハルさんと合流。本日最後の大勝負に備えるべく、私は合宿所への帰路を辿るのでした。