私気づいた。銃より拳のほうが強いんじゃないかって。 作:まっしろたまご
最近、主な活動時間が深夜になりつつある
一昨日はアリウス一同、昨日はハナコ、今日はベアお……じゃなくマダ……でもなくてベアトリーチェとの面会セッティングが通った日です。どいつもこいつも白昼堂々行動できない事ばっかりで笑っちゃいますね。ま、一番バレたらまずいのは私なんですけどね!ホノカジョーク!HAHAHA!二重スパイどころのお話じゃありませんしね。先生にはなんか危なっかしいことをしてるのは感付かれてますし。まぁ、黒服と個人的なつるみがあるとバレた時点でゲヘナに強制送還されそうですけどね。
「……面会者。マダムが一生徒に対して時間を用意されるのは異例のことだ。気を引き締めておけ」
「……え?……あ〜……はい」
アリウスモブちゃんがわざわざ注意してくるって相当ぼんやりしてましたね。気を引き締めておかねば。
(そういえばホノカちゃん、交渉ってどうするの?)
(要求も択も用意してあります。応じてくれるかどうかは分かりませんが)
(……そっか。じゃあ信じることにするよ)
(ありがとうございます)
さて、そろそろ時間です。気張っていきましょう。
開かれた正面入り口をくぐり、やけに高い天井を見上げながら最奥へ。妖しいステンドグラスを通した月光に照らされて、彼女は立っていました。
「
「……ほう。野に放した失敗作がここまで様子を変えて再び現れるとは、なかなかに興味深いですね」
アリウススクワッドやその他モブちゃん、アズサさんにカオリさん、そしてカザネさんに過酷な環境下での生活を強いて“普通の青春”の多くを奪い去らんとする巨悪。作中でも随一の吐き気を催す邪悪。そして多くのプレイヤーたちからもひどく嫌われている上最終編にてキヴォトスをしっちゃかめっちゃかにした色彩を呼び寄せた張本人。
で、あっても。こうして目の前で生きているのを見てしまうとやはりあまり進んで殺したいとは思いませんね。
……いや、これは今考えるべきじゃないことです。ひとまず目の前の問題を解決しましょう。
「いいでしょう。要求を」
「率直に申し上げます。調印式襲撃の一環で行われる、ゲヘナ生徒会の飛行艇を狙った攻撃を取りやめにしていただきたく」
「そのようなことを頼みに来たということは……何か私を納得させられる対価を用意してのことでしょう。言ってみなさい」
「古聖堂襲撃後、先生や警備を消耗させた後スクワッドと共に彼を討ちます」
はーあ。終わった終わった。あとは流れに身を任せるだけ……と言ってもここからがいちばんの踏ん張りどころですか。頭脳戦はおわり、クレバーホノカは森へ返します。
「しっかし、疲れましたね……やっぱり私はああいう空気の張り詰めた場は苦手です」
「しかし、よく演じきれていたと思いますよ。お疲れ様です」
「ありがと」
ありがと?
誰と話してるんですか私は。
「ククク……お疲れのところ失礼します」
「うわ」
「相変わらず手酷い。良い物を見せていただいたのでお礼に何かと思ったのですが……」
「いる。いります。
本当にこいつはフラッと現れては何か残していきますね。いや害意がないならもうもはやなんでも良いんですが、それでも場所とかタイミングは選んで欲しいですね。
そのうち執務作業中に『お疲れ様です』なんて言いながらコーヒーをデスクに置いてくれそうな気がします。それはそれでまたある程度解釈一致なのがまた腹立ちます。
「どうぞ、これを」
「……なんですかこれは」
いや、分かる。分かりますよ?黒服の手に乗っているピンク色の結晶。神名のカケラというやつでしょう。沢山お世話になりましたしね。
「素敵な三枚舌を見せていただいたお礼です」
「お礼っていうか固有名詞的なそれを聞いているんですが」
「発掘調査中の遺跡からの出土品で、かなりの量の神秘が含まれていることがわかったのですが……いかんせん我々の技術にどうこうできるものではなく」
「ゴミの押し付けでは?」
「貴重品の譲渡です」
「どうしてこんな物を……」
「……あなたはきっと、私の予想を優に超えていく。先生を、周囲を、挙句自分自身すらを騙し、ひたすらに走り続けるでしょう。ですからこの先、観測を続けることをお許しいただくためです」
急に真面目なことぶっ込んできましたね。
確かに、彼らよろしくキヴォトス外部から来た存在が生徒に宿ってなんか色々頑張ってます、となればそれは確かに興味が尽きないのも納得ですね。とはいえキラキラしたカケラを手渡されながら言われるのもなかなかに複雑ですが。
「で、これ。どうやって使ったら良いんですか?」
「グイッと」
「グイッと??」
「健康被害を起こすような物質は含まれていません」
「出土品ですよね??」
「私がこの手で丹念に洗った後煮沸消毒をしておきました。ですので、グイッと」
「……いきますか」
幼少期口へ運んだ石ころに近しい見た目とは裏腹に案外ショリショリとした食感……おいしくはないですね。
「オブラートの味がします」
「無味ですね」
「多少力が湧いてきた気が……しま……す?」
「では、こちらを」
「えっと…これは?」
石を食べ切った私を見て黒服がおもむろにお取り出したのはうすらピンクに淡い光を放つジップロックでした。
「先ほどと同じ物を」
「同じ物を???」
「なんとさらに3つもご用意しました」
「さらに3つもご用意しました……??」
そして彼はそのジップロックをぐいと私に押し付け、身を翻して帰ってゆきました。そんなお裾分け感覚でもらっても美味しくないんですがコレ……とりあえず、ふりかけにでもしてみましょう。
そんなこんなで、良い感じに引き締まりつつあった空気を粉砕されて私は急ぎ足で早朝の帰路を駆けるのでした。
アズサ「ホノカ……そのピンクのふりかけは……?」
ホノカ「プラスチックの味がします」
アズサ「どうしてそんなものをかけてるんだ?」
ホノカ「貰い物なので……」