迷宮都市に〈憤怒の罪〉が迷い込むのは間違っているだろうか   作:俺っちは勝者の味方ー!

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めちゃくちゃグダついてる感しかしない…。言葉足らずで中身もすかすかな駄文ですがどうかお許しを。



神々の眷属

 

 

 

「怪我は、ありませんか?」

 

 

 ──嗚呼、この少年に助けてもらったのか。

 

 徐々に頭の理解が追い付いてきたメリオダスは、己の窮地を救ってくれた少年の問いに胸を張って返事をする。

 

「おう。このとーりピンピンしてるぜ。サンキュな、兄ちゃん」

 

「良かった────ッッ!」

 

 サムズアップ付きの返答に少年が安心したのも束の間、臙脂色の小山が轟音を立てて起き上がる。今し方直撃した炎雷を物ともせずに、興奮状態の『マンモス・フール』が文字通り二人に牙を向いた。

 

 

『ブオオオ!!』

 

「ほっ!」

 

「くっ…!」

 

 メリオダスは軽やかに、少年は辛くもといった様子でその一撃を回避し、モンスターと距離を取る。その間、間髪を入れず両手に漆黒と輝白のナイフを構える少年の隙のなさに、メリオダスは舌を巻いた。

 紅い視線は一切のブレもなく標的を見据え、既に次なる一手を思考(シミュレーション)しているのが見て取れる。

 

 ──正直どのような戦いを見せてくれるかすごく気になりはするが、このままやられっぱなしというのは性に合わない(カッコ悪い)

 

 

「兄ちゃん、名前はなんて言うんだ?」

 

「? ──ベル。ベル・クラネルです」

 

「そんじゃベル。あのデカブツは俺が倒してくっから、ここで少し休んでてくれ。ちゃんとお前に恩返し(お礼)がしたいからな」

 

「なっ!? いくらなんでもマンモス・フールを一人でなんて…!」

 

「任せとけって」

 

 メリオダスの素性…というより実力を知らないベルの静止は尤もだった。何せ相手は、ソロでの討伐推奨Lv(レベル)が3から4以上とされているモンスター。第一級冒険者でも無ければ、損害を出さずに倒すのは困難を極める強敵である。

 

 

 …が、この男に静止なんてものは効かなかった。

 

 こちらを振り返りにっ、と笑ったメリオダスは、地を蹴りモンスターのすぐそばまで跳躍する。その巨大な図体を下からまじまじと観察しているようだが、彼は敵に接近しても尚()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 “あのままでは()られてしまう。”

 

 

 ベルの顔からサァー、と血の気が引いた刹那、マンモス・フールの前脚がメリオダス目掛けて無慈悲に振り下ろされ──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふーむ。こいつはなかなか」

 

 

 ──た、はずだった。

 

 

 パァン、と弾けるような音が鳴ったかと思うと、次いでベルの耳に響くはメリオダスの暢気な声。大樹のような脚を()()()()()()()()その姿からはまだどこか余裕が感じられ、半ば絶望しかけていたベルの顔が驚愕に染まる。

 

 

「今度はこっちの番だな」

 

 

 メリオダスは静かに息を吐いた。

 前脚をいなして敵の体勢が崩れたところに握り拳を叩き込み、天上に向けてそれを突き上げる。すると、マンモス・フールの巨体は木の葉のように宙を舞い、数瞬後には重力に従って地面に勢いよく落ちた。

 地に伏したモンスターの全身にじんわりとド黒い血が滲む。それは、先の一撃で身体の骨がバラバラに砕かれたことを意味し、メリオダスの底知れぬ強さを雄弁に物語っていた。

 

 未だ鞘に収めた状態の剣の柄を掴み、マンモス・フールとの間合いを詰めるメリオダス。

 両者の距離が再びゼロになると、刃の一部がちらりと顔を覗かせて──

 

 

『───────ブルアァァ!!??』

 

 

 ()()

 

 

 神速の斬撃が、背後の大樹や地面諸共モンスターを両断する。断末魔を上げながら灰と化したマンモス・フールの魔石も、綺麗に真っ二つになっていた。

 その一分にも満たない戦い─ほとんど一方的な蹂躙だったが─を目の当たりにしたベルは、言葉を失った。何度も何度も目を擦って、これが現実であることを再確認した。

 オラリオ(此処)には剣を扱う冒険者が星の数ほど存在するものの、アイズ・ヴァレンシュタイン(自身の情景)以外の剣技にこれ程まで魅了されたのは初めてのことだった。

 

 Lv(レベル)4の自分でもギリギリ捉えることができた太刀筋は『剣姫(けんき)』と同等、あるいはそれ以上に練磨されたものかもしれない。…ひょっとすると、あの『猛者(おうじゃ)』や()()()()さえも───

 

 

 

 

 

 

「ベル様ー!」

 

「ベル!」

 

 後方から近づいて来るファミリアのメンバー(リリルカたち)の声が聞こえ、ベルはふと我に返る。メリオダスの剣技に夢中の余り、リリたちに無理を言って先行したことをすっかり失念し(忘れ)ていた。

 …後ほどしつこく小言を言われるのが目に見える。こればかりは自分の落ち度であるから、甘んじて受け入れる他ない。

 

 一方で、剣を収めたメリオダスもベルの名を呼ぶ複数の声に気が付いたのか、「お?」と疑問の表情を浮かべている。

 

「あいつら、ベルの仲間なのか?」

 

「はい。みんなヘスティア・ファミリアに所属する冒険者で───僕の、大切な家族(仲間)です」

 

 と、気を張っていた様子のベルの頬が僅かに緩む。

 たっぷりと間を置き、一言一句を噛み締めるようにして話す少年の眼差しはとても優しいもので、互いを心から信頼し合っているのがよく分かった。

 

 

 ──しかし、だからこそ、と言うべきか……

 

 

 

 

 “はて? ヘスティア・ファミリア…?”

 

 

 メリオダスの頭につかえる疑問符は一層浮き彫りになり、彼を難解の海へと誘った。

 『冒険者』はともかく、『ヘスティア』や『ファミリア』なんて単語は今日日聞いたことがない。本の虫であるゴウセルならば何か知っていそうな気はするが……、ブリタニアの新しいトレンドだとでも言うのだろうか?

 

「もうベル様! 軽率な行動はお止め下さいと口を酸っぱくして言ったばかりではありませんか! 迷宮(ダンジョン)の攻略中なのですよ! ようやく左腕の固定包帯(ギプス)も外れたというのにどうしてこんな無茶ばっかり…むぐっ!?」

 

「それくらいにしといてやれよリリ助。ベルだってきっと反省してるはず────って、誰だ?」

 

 ベルの僅か後方に佇むメリオダスの姿に気が付くと、燃えるような赤髪の青年はこちらを見遣り首を傾げた。そういえば…、とベルも彼の名を聞いていなかったことを思い出す。

 刀を携えた異国の装いの少女に、ローブを纏い頭の上からぴょこりと狐耳を生やす金髪の少女も、皆一様にはてなマークを浮かべている。

 開口一番にベルに説教をかました栗色の髪の幼女(?)だけは唯一、「また何か厄介ごとを引っ提げて…」とすこぶる面倒くさそうな顔をした。

 

 一部ツッコミを入れたいところはあったが、さして気にすることもなくメリオダスは口上を述べる。

 

「俺の名前はメリオダス。ついさっき、化け(もん)に襲われそうになったところをベルに助けてもらったんだ」

 

「は、はあ…。それはまた運が良かったですね。それで、ベル様は一体どんなモンスターを討伐したんです?」

 

「え? ああいや、倒したのは僕じゃないよ。

 僕はただ魔法(不意打ち)でマンモス・フールを怯ませただけで、実際に倒したのはメリオダスさんなんだ」

 

「なっ──!? あのマンモス・フールを…しかも単独(ソロ)で!?」

 

「まあな。ちょいとタフな相手ではあったけど。…っと、それよか、俺もお前らに聞きたいことがあってだな」

 

「? 何でしょうか」

 

 

 あの怪物がいかに強力な存在であったかは、正直全く興味がない。

 今一番彼が聞きたかったことはというと──

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

「…………え?」

 

「ん?」

 

 すぐに返って来るだろうと思われた返答は無く、そこに生まれるのは困惑の感情のみ。耳が痛くなるような沈黙が辺りを支配し、空気を凍らせた。

 

 

 ──この瞬間(とき)、二人はようやく初めて、お互いの有する常識に差異が生じていると気付いたのであった。

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それからしばらくして──。

 

 

「リオネス王国に、ブリタニア……どれも聞いたことのない名前ですね」

 

「俺だって同じさ。冒険者の街(オラリオ)に、迷宮(ダンジョン)なんて初めて聞くぜ」

 

 

 別名『大樹の迷宮』と呼ばれるダンジョンの22階層にて邂逅を果たしたメリオダスとベル一行。彼らはとりあえず落ち着いて話せる場所を確保しようということで、最奥に位置する領域…ルームへと移動した。

 

 そうしてそこで交わされたのは、異文化交流ならぬ…()()()()()。自分にとっての常識を説けば、相手はひたすら疑問符を浮かべてしまう──何とも珍妙な光景が繰り広げられていた。

 

 

「しっかし、どうも信じがたいんだよな。

 

 ───()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、って話は」

 

 ブリタニアと、ベルたちが住まうこの世界。それぞれの(ことわり)をある程度共有出来たところで、メリオダスは大きな溜息を吐いた。

 そんな彼の言葉を疑問に思ったのか、和装の少女…ヤマト・(ミコト)が不思議そうに首を傾げる。

 

「“神”という存在に、何か思うところがあるのでしょうか? メリオダス殿」

 

「(……胸糞が悪くなるほどたくさんある)」

 

 と、ありのままの事実を話すのは憚られた。

 オラリオを成り立たせている要の一つであるが故に、この世界の神々についても説明をしてもらったが、話を聞く限りだと自分の知る神々(クズども)とは程遠い存在なのがよく分かる。

 

 特に、ベルたちの背に恩恵(ファルナ)を授けた主神…ヘスティアは、いい加減な神や自由奔放な神が挙って集うオラリオに於いては非常に稀有な善神であるらしい。と、ヘスティアに恩のある栗色髪の小人族(パルゥム)ことリリルカ・アーデがそのように力説していたのを思い出す。

 

 ───だからこそ、自分が“神”に抱く心象は、彼らには黙っておいた方がいいと考えた。

 

 

「いんにゃ、特に何とも。ただ神が大勢存在してるって事実に驚かされただけさ」

 

「なるほど。──確かによくよく考えてみれば、“神と共にある日常”って本来すごいことですしね…。その点を考慮していませんでした」

 

 「すみません」と、律儀に頭まで下げる命をメリオダスは優しく許した。すると、ふと自分に─正確にはその背に掛かる短剣に─誰かの視線が注がれているのに気が付く。

 

「どうしたヴェルフ。この剣(こいつ)が気になるのか?」

 

「えっ。…いや、よく鍛えられた剣だと思ってはいたが、どうしてそれを──」

 

「あんな露骨に見つめられて気付かないわけないだろ? そんなに近くで見たいんだったら、ほれ」

 

 「貸してやる」と、惜しげも無く自分の得物を差し出すメリオダスに青年…ヴェルフ・クロッゾは一瞬だけ面食らうものの、鍛治職人としての性には抗えず剣の収められた鞘を恐る恐る手に取った。

 まだその刃を拝んでいないのにも関わらず、まるで自分の中に秘められた魔力が湧き上がるような感覚がした。

 

「抜いてみてもいいか?」

 

「もっちろん」

 

 ヴェルフは再度確認を取り、抜剣する。

 そうして露わになったのは、中心に五つの穴が空いた反りのある片刃(かたば)の剣。龍の紋様と金の装飾が施された(あしらわれた)それは、元ヘファイストス・ファミリア(鍛治師系ファミリア)のヴェルフをして握るのは初めての業物だった。

 

「おお…! これが異世界で鍛錬された剣か。今にも力が溢れてきそうだ」

 

「にしし、驚いたろ? そいつは巨人の名工が造った『神器 魔剣ロストヴェイン』。ヴェルフの言う通り、使用者の魔力を普通の武器以上に引き出してくれる優れモンさ」

 

「マジかよ」

 

「“巨人の名工”、ですか。メリオダス様の住むブリタニアも大概非常識というか、ぶっ飛んでいるというか……」

 

「スケールが段違いですね」

 

 此処オラリオも未知に溢れてはいるが、ブリタニアはそれよりも摩訶不思議(ファンタジー)かつ絵本や童話の舞台をそっくりそのまま映し出したような世界に思える。

 今度はメリオダスに代わって、リリルカと命が驚愕していた。

 

 そんな中。

 

 

()()()()これほど見事な武器を扱えるなんて、メリオダス様は本当にお強いのですね。(わたくし)ももっと精進して参りませんと…」

 

 狐人(ルナール)の少女…サンジョウノ・春姫(ハルヒメ)が、メリオダスの話を聞いて感じたことを率直に言葉で表した。それは先の初『遠征』を経て、より一層『強くなりたい』と想うようになった春姫の純粋な羨望とも言えよう。

 ──例え、どんな想いを抱こうともメリオダスがそれを否定することはない。だが、これだけはどうにか訂正してやらないと気が済まなかった。

 

 

「……こんな見た目(ナリ)だが、ガキじゃねえぞ。俺は」

 

「こ、こんっ!?」

 

 真顔でそう言い放たれた春姫は、「申し訳ありません〜っ!」と目をぐるぐる回して焦り散らかしながら謝罪する。周りの面々もまさかメリオダスが成人だとは思ってもみなかったらしく、驚きを露わに改めて彼の容姿を見遣っている。

 

「──でもやっぱり…、とても大人には見えませんね」

 

「ったく、辛辣だなリリルカは。これでも聖騎士時代は悪党どもをばったとばったと薙ぎ倒して、王国の平和のために尽力してたんだぜ?」

 

「“聖騎士”…というと、確か王国に仕える有力な騎士たちの総称でしたよね」

 

「そうそう。今は頭に“元”が付くけどな」

 

「へえ〜……それじゃあ、今は一体どんな職に就いておられるのですか?」

 

 

 

 

()()だ」

 

「────はい?」

 

 あっけらかんと答えるメリオダスに、それを聞いて思わず呆然とするリリルカ。

 

「だから、今は聖騎士を引退してリオネス国王の座に就いてるってこった。あっ、あと〈豚の帽子〉亭って酒場の店主(マスター)も兼任してるぞ」ニシシ

 

「すみません。リリにはこの方の言っていることがよく分からないです」

 

「安心しろリリ助。俺も理解不能だ(わからん)

 

「もしかするとメリオダス殿本人が一番常識外れなのでは?」

 

「あはは…」

 

 仲間(ヴェルフ)たちの反応に苦笑いをこぼすベルも、メリオダスの支離滅裂な肩書きには困惑を禁じ得なかった。…が、同時に深く納得もした。

 誰からも好かれそうな彼の人となりは、確かに王様らしい素質を備えていると──そんな風に思えたのだ。

 

 

 

   *   *   *

 

 

 

「──さてさてさーて。ベルたちのおかげでこの世界(此処)がどういうところなのか大体把握できたし、そろそろ動きますか」

 

「どこへ行くんだ?」

 

()()()。ついでにブリタニアへ帰還する方法も見つけにな。やることは山積みだ」

 

 

 これからの方針についてある程度目処が立ったメリオダスは、会話を切り上げルームを出発しようと腰を上げる。…僅かながらも、ベルたちと出会い言葉を交わし合った賑やかな時間を惜しみつつ──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───それなら僕も手伝います」

 

 

 そこに待ったの声を掛ける人物が現れた。……ベルだ。

 

 

「僕たちはもう無関係(赤の他人)じゃない。あなたの名前や素性を教えてもらい、すごく大変な状況に置かれていることも知りました。

 ──そんな人を、みすみす放っておくことなんてできません」

 

「……」

 

 ベルは叫んだ。

 しかし、彼の本心を聞いても尚メリオダスは無言を貫く。異世界(オラリオ)に飛ばされた原因が自分たちの世界(ブリタニア大陸)にあるとわかっているからこその沈黙だった。

 

 ───何より、こちらで解決すべき厄介な問題にベルたちを巻き込みたくはない。

 

 そう考えるメリオダスがいつまでも黙りこくっていると、周りから待ちくたびれたと言わんばかりに声が上がった。

 

「はあ…。まあ、何となくこうなりそうな気はしていましたが…」

 

「今回も例に漏れず、だな。もちろん俺は手を貸すが、リリ助はどうするんだ?」

 

「──リリはベル様のサポーターですよ。あの方の隣に立つに決まっているでしょう」

 

「自分もベル殿と同じ気持ちです。困っている人を放っては、ヘスティア様やタケミカヅチ様に顔向けできません」

 

「私も微力ながらお力添え致します。ベル様、メリオダス様」

 

「みんな…」

 

 これも偏にベルの人柄と人脈が齎した結果と言えよう。ベル個人の意思は、いつしかヘスティア・ファミリアの総意へと変わっていた。

 ……最早逃げ道無し。完全に退路を断たれたメリオダスは、降参の意を示すように頭を掻いて破顔する。

 

 

「────ったく、とんだお人好し集団だぜ。これじゃ断るに断れねぇじゃねぇか」

 

「! それじゃあ…!」

 

 

 

「ああ。これからしばらくお前らのことを存分に頼らせてもらう。よろしくな! ヘスティア・ファミリア」

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 メリオダスとベルが出会う少し前──。

 

 

 

 雲一つない快晴。

 燦々と煌めく太陽の下、今日もオラリオは活気に満ち満ちていた。

 仕入れたばかりの農作物を運ぶ馬車が往来を行き交い、道端では商人らが露店を開くべくせっせと品出しをしている。また、そこには弓矢を背負うエルフに、鎚矛(メイス)を携える小人族(パルゥム)、ジャガ丸くんを大量に買い占める金髪金眼の女剣士(ヒューマン)など…迷宮都市が誇る冒険者たちの姿もあった。

 今日の天気のように、街の様子は平和そのもの。穏やかな喧騒だけが街の中に溶け込んでゆくのだった。

 

 

 

 ──しかし、そんな晴れやかな雰囲気とは真逆の、曇った表情を浮かべる迷い人が一人…オラリオの一角を彷徨い歩いていた。

 

「此処は、一体どこなのかしら?」

 

 途方に暮れるその女性…エリザベス・リオネスは、思わず不安な気持ちを漏らしてしまう。

 メリオダスと共に“神隠し”に巻き込まれたと思ったら、いつの間にか知らない街の路地裏に立っていて……目が覚めた時は酷く動揺したものだ。また、天を穿つようにそびえる白亜の巨塔──奇しくも“恩寵の光”とよく似たそれの存在が、『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()』という事実を確かなものにし、彼女の頭をさらに混乱させていた。

 

 

 だがそれでも…、エリザベスは気丈にメリオダスを探し続ける。きっと彼もこの街のどこかにいると、(自分)を探してくれていると、心から信じて──。

 

 

 

 

 

 

「! (これは……)」

 

 エリザベスは不意に、自身に注がれている視線に感づく。

 まるで品定めをされているかのようなそれは、あまり気分の良いものではない。早々に路地裏(ここ)から立ち去るべく歩むスピードを速めれば、背後で何かが蠢く気配がした。

 

 ───“誰かに狙われている”…そう気付くのは早かった。けれど、今の自分の格好はどうだろう。あの時城から急いで飛び出してきてしまったために、ドレス姿のままである。

 これでは走って逃げることは難しい。ならばいっそ空を飛んで逃げてしまおうかと思った、その時。

 

 

 

「今だてめぇら! やっちまえ!」

 

「「「ヒャッハー!」」」

 

「っ!」

 

 何とも下衆で品の無い叫び声が耳をつんざく。

 エリザベスの高貴な装いと彼女本人が持つ美貌に目を付けた人攫い(ハエ)どもが、絶好のタイミングで奇襲を仕掛けてきたのだ。

 彼らの汚い手には揃ってナイフが握られており、これを脅迫の材料にする腹積りなのが一目で分かる。あるいは…エリザベスに抵抗の隙を与えないための、万が一の保険か。

 

「オッラー!」

 

 ──どちらにせよ、小悪党(暴漢)に凶器を振るわれている事実は揺るがない。エリザベスの華奢な腕が、あわや男の一人に掴まれそうになった刹那……

 

 

 

 

 

 

 

 

 『正義』の剣戟(けんげき)が、陽の光の届かぬ路地裏(暗闇)を切り裂いた。

 

 

 

「たあっ!」

 

 赤き戦闘衣(バトル・クロス)を身に纏う女性が、常人の域を超えたその脚力(あし)で石畳の上を駆ける。彼女の通った後には剣閃が光り、悪漢たちにとって唯一の得物であった小刀(ナイフ)が一瞬にして切り砕かれる。

 

 そして。

 

 

「──行きます」

 

 

 

「「「「ぎゃあああ!?」」」」

 

 一陣の緑風が吹き荒れた。覆面を被った金髪の女性の魔力を秘める木刀は、例え峰打ちであろうとも強靭な威力を発揮し、『悪』を粛清する。一応、手心の加えられた一撃ではあったが──これがトドメとなって男どもは瞬殺された。

 

 こんな状況なのに、思わず()()()とさえ感じてしまう。そんな二人の女性の華麗な戦いと端正な顔立ちにエリザベスが見惚れていると……

 

 

「そこのお姉さん!」

 

「は、はいっ!」

 

 突然恩人から声を掛けられて、彼女の声は裏返そうになった。

 

「怪我はない? 怪しい冒険者たちが路地裏に入っていくのを見てこっそり後を追いかけてたんだけど、まさか人攫いの現場に遭遇するなんて……。助けに入るのが遅れてごめんなさい」

 

「いえ、そんな。私の方こそ、助けて頂いたのにずっと呆然としていましたし───お二人とも、ありがとうございました」

 

 エリザベスは姿勢を正し、誠心誠意感謝を述べた。言葉の一つひとつが淀みなくはっきりと伝えられて赤髪の女性は柄にもなく小っ恥ずかしさを覚えたが、それを表に出さないよう元気に答えを返すのだった。

 

「フフンッ、どういたしまして! 困ったことがあったら、またいつでも頼ってちょうだい。私たち…正義の女神の眷属(乙女)たちを!」

 

「正義の…()()?」

 

 

 エリザベスは人知れず息を呑み、次に紡がれる言葉を待った。

 

 

「いかにも! 正義を司る女神…アストレア様のもとに集いし()()()()()()()()()()()は、『正義』を秘める乙女たちの花園!

 

 そして!【紅の正花(スカーレット・ハーネル)】の二つの名を持つこの私、()()()()()()()()()()が団長を務めるファミリアでもあるんだから!」

 

 

「こほん。名乗り遅れてしまいましたが…初めまして。アリーゼと同じく、アストレア・ファミリア所属の()()()()()()()と申します。以後お見知りおきを」

 

 

 

 ───メリオダスとベルが邂逅を果たした一方で、エリザベスにも転機が訪れていた。

 

 

 






アストレア様とエリザベスを引き合わせたくてうっかり原作改変しちゃった。
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