「俺絶対将来ヒーローになる!」
「私もなる! ヒーロー!」
幼稚園の桜が散る季節。二人の子どもは皆んなの憧れのヒーロー、オールマイトごっこをしていた。二人の母親たちもちょっとした世間話で時間を潰す。
「じゃあ次リコはヴィラン役! 俺はオールマイト!」
「えーやだ! 私もっとヒーローしたい!」
「俺だってオールマイトやりたいもん!」
「もうヒカル、リコちゃんに譲ってあげなさい」
「だって母さん! リコさっきもオールマイトやったんだもん! 次は俺の番だよ!」
今思えば、この母さんの言葉が俺をこれからずっと苦しめるのかもしない。
「ヒカルは男の子なんだから、女の子に優しくするの。きっとオールマイトも女の子に優しいはずよ」
「ほんと! じゃあ俺リコに優しくする!」
俺の名前は転田 ヒカル。まだ5歳。
父親は普通の電化製品を扱うメーカーの社員。個性は『電気』で電気を手から出す事ができる。母親の個性は『俊足』足が普通の人より2倍早い。
俺はどっちの個性が受け継がれるのか、それとも組み合わさった個性になるのか。その時は楽しみでしょうがなかった。
その時までは。
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「ねぇお母さん。俺の個性いつ出るの? 皆もう出てるんだよ!」
「個性が発言する時期は人それぞれよ。焦らなくてもヒカルはお父さんとお母さんの子だから、きっとすごい個性が発現するよ」
「リコはもう個性で空を飛んでるんだよー。俺も早く空飛びたい!」
結局俺は小学生になっても個性が現れず、個性を持たない人間『無個性』なのではないかと思うようになってた。でもある日俺にも個性が発現した。
個性『性転換』
自分の性別が変わるぞ。一度変わると二度と戻せない。
親からの個性ではない、突然変異の個性。これが地獄の始まりだった。
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「え、気持ち悪い」
それが個性が発現して初めて登校した日、リコに言われた言葉だ。
「ヒカルってキモくね、おかまって事じゃん」
「ヒカルだけ個室で着替えるしね」
小学校ではキツイ言葉が幼い俺をずっと襲った。皆もまだ子どもだから、容赦のない事ばかり言われ続けた。この個性のせいで俺の人生は茨の道になってしまったんだ。
ー個性なんて欲しくない
そう思うようになった。いつしかヒーローなんて夢みるどころか今の人生に嫌気がさしていた。
「母さん、俺学校行きたくない」
そこからはもう引きこもり生活が続いた。学校には行かず、家でゲームとかして現実逃避するばかり。
辛かった。苦しかった。でも俺のことはヒーローでも救えない。オールマイトでも救えない。
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そして、気づいたら中学3年生。義務教育が終わろうしていた。個性が強かったら皆ヒーロー科のある高校に行くだろうし、個性がダメでもヒーローを目指す人はいると思う。
テレビを見ている時だった。オールマイトがまたヴィランを捕まえたらしい。中学生二人を救ったオールマイトはまたヒーローとして輝いている。
「俺も、オールマイトに会いたいな。オールマイトなら、おーるまいどなら! おれのごども救ってくれるがなぁ」
一人暗い部屋で泣いた。今まで溜まったものが一気に溢れ出した気分だった。清々しい、久しぶりにいい気持ちになれた。
そして流れた次のニュース、それに俺の心は動かされた。
自殺事件を扱ったニュースだ。その人は個性で幼い時に人を殺してしまったらしい。それ以来差別されてきた彼はちょうど今日首をつって死んだらしい。
「俺も、死ねば楽になるかな。来世はちゃんとした個性でヒーローになれるかな」
俺はその日自殺を決行することにした。
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うちの部屋はマンションの25階。ここから飛び降りれば、、、。
最後に母さんに手紙を書く。今まで育ててくれて本当に嬉しい、だけど俺はもう生きていたくないんだ。
手紙が涙で滲む。なんで泣いてるんだよ。ようやく楽になれるんだぞ。喜べよ!
母さんへの手紙を書き終えて、俺はベランダに出る。風で肌寒くもう夜で暗い。きっとヒーローも落ちる俺を見つけられないだろう。
これでよかったんだ。こんな個性で生まれた俺が悪いんだ。母さんも父さんも悪くない。小学校の時もみんなが悪いわけじゃない。全部俺が気持ち悪いのがいけないんだ。
その日俺は飛び降りた。本当は死にたくなかったかもしれない。でも生きてても楽しくはない。ならなんで生きてるんだ。
俺は今日死ぬ、、、。
「私が! 来たぁ!」
落ちる俺を誰かが掴んでくれた。大きな体、金髪の髪と独特な髪型。そしてずっとテレビの中でしか聞こえなかった「あの声」
「オールマイト、、、」
今俺の前にオールマイトがいる。
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