Q「この作品の主人公はコーラル食べますか?」
A「まだ食べません」
1日目
『独立傭兵各位、これは当社系列企業シュナイダーからの依頼です』
『作戦内容はベリウス南部グリッド135で駐屯しているベイラム系列企業大豊のMT部隊の殲滅です』
「当社は汚染市街でのコーラル採掘調査においてグリッド135を前哨基地として活用する準備を進めています」
『コーラル調査における優勢を確保するには独立傭兵各位の協力が必要不可欠です』
『各機の奮闘に期待します、ブリーフィングは以上です』
pm.2:00
...こんなもんかな。
3回くらい噛んで録り直したけどやっと上手くできた。
録音したデータの確認よろしくといった感じの文章と共に添付送付する、宛先はV.VIII ペイター。
ヴェスパー部隊の第8隊長である彼は雇用担当も兼任しておりどちらかと言うと事務作業の方が多いイメージがある。
この前も第5隊長のホーキンスさんと書類と睨めっこしていた、彼も隊長であると共に輜重部門責任者を兼任している。
他にも会計責任者のスウィンバーンさん、そして実質的なトップとして動いているスネイル閣下、おそらくこの4人は過労で死ぬ。
自分もなんだかんだでACに乗務する身ではあるが基本的に事務仕事がメイン、たまに戦闘にも参加するが後方支援か物資運搬程度の雑用しかしないがこれはこれで楽しい。
ヴェスパー部隊を目指さないのか...?と、たまに聞く輩がいるがあんなとこ配属にされてたまるか、1人例外がいるが強化人間の集まりだぞ?ブースター使ってビュンビュン飛び回るわ4脚MTとかを一方的にボコボコにしたりとにかく化け物しかいない。
そんなとこに一般通過ACが入ったらどうなる?
給料泥棒だとかそこそこの成果で安全に出世したやつだとか言われるに違いない、私は平和に生きていたいのです。
あと普通に激務だからヤダ。
ペイターからの返信待ちの間のんびりACの手入れでもしておくとするか。
格納庫までは近い、と言うよりほぼ格納庫に住んでいる状態。
ヴェスパー部隊の面々と違い専任の整備士がいるわけが無いのである程度のことは自分でやらなければならない、もちろん腕部パーツ丸々交換とかになれば申請しておけば来てくれるが結構えげつない金額が給料から引かれるのでできるだけ頼みたくない。
独立傭兵に比べれば設備は整っているだろうし独立傭兵の人達も基本1人でやっていることを考えれば出来なくはない。
まぁ要するに慣れだよね。
最近挑戦しているのはFCSの調整、比較的安く手に入る《FCS-G2/P05》や他のAC乗りが捨てていく《FCS-G1/P01》をせっせこ拾い集めて練習している。
先程も説明したが自分の役割的に後方からの攻撃機会が多い、なのにファーロン製のFCSは遠距離アシストは抑え気味だし良くも悪くもバランスが良いのだ。
うちの先進開発局?ってとこが作った遠距離特化の《VE-21A》ってFCSがあるらしいんだけど金額がなぁ...給料3ヶ月分ってマジすか?
ちなみに調節方法は企業秘密...と言うより自分でもよくわかってない。
FCSのEN負荷とか重量によってアシスト値の上限が変化していてそれをいい感じに割り振ったのが既存のFCSな訳でこの割り振られた値を弄れば理論上は距離適性を変化させることが出来る...がそう簡単な話でもなくそれぞれのFCSが得意な距離に合わせて設計がなされているため無理矢理適性を変えればFCSがその負荷に耐えられずただの金属板と化してしまう。
その他にも色々あるっぽいけどもぅマヂ無理状態。
ほぼ趣味みたいなものだからいいけどもう少し調整に幅を持たせたい、もういっそ開発部門にでも聞きに行こうかなぁ...でもこの前軽く聞いてみたけど「知らん...何それ...怖...」って言われたから多分あんま広めちゃダメなんだろうね、自分で調節出来たら商品売れなくなっちゃうし。
pm.3:00
そんなこんなで捨てられてた《FCS-G1/P01》をいじいじしてた訳ですけどそろそろ返信来てそうだし戻りますか。
少し前に時間忘れてFCSで遊んでたらスネイル閣下の呼び出しのことすっかり忘れてて危うく再教育させられそうになってからは定期的にちゃんと確認するようにしている。
おっ、やっぱりペイターから...ん?もう1件届いてる。
...オールマインドちゃんからか、なんかイベントでもあるのかな?
さてさて、まずペイターは...あぁ、やっぱダメ出し入ってるよ、言葉遣いとかこう言い替えなさい的なことが並べられている。
同期で入ったはずなのにいつの間にこんなに差が開いてしまったんやら...トホホ。
あとは夕飯のお誘いか、ヴェスパーのやつと一緒に食堂行くと専用のレーンを使えるので並ばなくて済む、もちろんゴチになります。
録音はまた後でやるとして先にオールマインドからの連絡を確認しちゃいますか。
えっと...おっ、ベイラムの新商品!
大人の事情でベイラムの装備は中々買えないんだけどやっぱクソデカショットガンとかガトリングガン使ってみたいなぁ...
EN兵器ばっか使ってると実弾武器が恋しくなるというか使ってみたくなっちゃうんだよね、隣の芝は青く見える的なやつかな。
...ってうわ!135000COAMもすんのかよ!月のお小遣い吹き飛ぶやんけ!
おっ、大豊からも新兵器出てるじゃん!
...ってなにこれ、炸裂弾投射器...?
おもろw
あっ、アーキバスからも...
pm.7:00
「って訳」
「遅い」
30分ごとに連絡が入ってないか確認すると言ったけど大体はこんな感じで忘れる、今回もペイターからの鬼電が無かったら夜までカタログを読み漁ってたと思う。
もちろん仕事は終わってないです。
「まぁいいです、さっさと食事にしましょう」
「ゴチになりま〜す」
「今度は何買ったんですか...」
「いやいや修理やら買い替えとかで普通に金欠になるんすよ」
「会社請求にすればいくらか出るでしょうに」
「天下のヴェスパー部隊と違ってその辺待遇良くないからねぇ」
「そういえばそうでしたね」
「うわっ、ヴェスパーに染ってやがる」
実際ヴェスパー部隊や隊長格のAC、MTは基本会社で払ってもらえるが俺みたいな下っ端は6割負担とかそんな感じ。
払ってもらえるじゃんとか思われるかもしれないけど損傷の大きさによって金額も変わるし一般AC乗りには結構痛い出費なんすよね。
リペアキットなんて使えばその月は赤字になる、自分のACにも何個か乗せてはあるが基本的に基地まで我慢する。
これもヴェスパー部隊なら使い放題の特典付きだ、許せねぇ!
「ならあなたもヴェスパーになればいいのでは?推薦しておきましょうか?」
「絶対嫌だ、てめぇ俺の事部下にして仕事投げつけてくる気だろ」
「.......そんなわけないじゃないですか?」
「何悩んでんねん」
とにかくヴェスパーはダメだ、戦場ならまだしも過労で死にたくねぇ。
「それにもうヴェスパーの枠埋まってるだろ、誰だっけ...この前入ったばっかなのにもう第6隊長になった奴...」
「あぁ、V.VIの メーテルリンクさんか、この前共同で任務に当たったばかりでは?」
「そうそう!俺その時後方からの支援砲撃だけだったはずなのになんか前来て戦えとか言ってきやがってよぉ、強化人間じゃないので厳しいっすって言ったのに『命令です、来なさい』とか言いやがったんだぜ?鬼畜すぎるだろあの野郎」
「ははは...それは災難だ...ね...」
「マジで最悪だったわ、挙句の果てには狙撃とミサイルの支援が遅いだとかグチグチ言ってきてよぉ、距離が距離ですから...って言っても関係ないって言ってきやがって!もう二度と僚機として出たくねぇ」
「ま...まぁその辺に...」
「そうですか、なら今度の作戦はあなたを僚機に付けるようスネイル閣下に申請しておきますね」
あれ、ペイターってこんな女の子っぽい声だっけなぁ...
そうか声変わりか、もうそんな歳かぁ...
心無しか掴まれている右肩の握力もすごい気がする。
「ペイター、最近筋トレでも始めたか?右肩が変な音出してるんだが...まるでゴリ...」
「氏ね」ゴキッ
「アガギガガガガガギギギ」
なんということでしょう、あまりの痛さに振り向けばそこにはなんと鬼の形相をしたメーテルリンクがいるではありませんか...まぁ、バイザー付けててよくわからんけども。
「ユルジデグダザィ...」ギギギ
「...」
「メ...メーテルリンクさん、先程の作戦というのはもしかして例の?」
「...えぇ、例の壁越えの下調べですね、ほんとはヴェスパーからもう1人連れて行くよう言われてたんですけど丁度良かったです」
ナイスペイター...
おかけで...右肩は解放されたよ...
多分数本ヒビ入ったけどね、恐るべし強化人間。
「ついに【壁越え】に向けて本格的にヴェスパー部隊も投入されることになったんですね、頑張ってください」
「嫌だけど?行かないよ?」
「拒否権はありませんよ、詳細はそのうち閣下から直接送られると思うので確認しておいて下さい」
壁越えってあれだろ...?
解放戦線連中が放題やらMTやら配置しまくって要塞化させた交易に使われてた施設を攻略するとか何とか言ってたやつやろ?
無理無理、遠距離から撃つにしても壁上にいる《ジャガーノート》ってやつに粉砕されるし近づこうものならMTにボコボコにされる。
4脚MTも何機か配備されているらしいし正直ワシみたいな下っ端が出る幕じゃない。
「いや...そもそもヴェスパーちゃうし...」
「私が問題ないと判断しました、異論は認めません」
「暴論だァ!」
さっきも言ったが俺みたいな一般AC乗りとヴェスパーとかの面々では天と地ほどの差がある、強化手術による恩恵がその最たるものだが元々の才能やセンスが無ければそれも意味をなさない。
そのどちらもも持ち合わせていない俺を激戦区に送ればどうなるかこのバイザー野郎は知っててこんなことを言っているのだ、許せん。
「まぁ要件はそれだけです、詳細の確認忘れないでくださいね」
「うへぇ...」
「もう行かれるのですか?」
「えぇ、補給はもう済んでますので...あなたこそ食事なんて必要ないでしょうに」
「まぁそうですね...ただの趣味みたいなものです」
「そう...では失礼します」
強化人間っぽいやり取りをしてメーテルリンクは去っていった。
そういやペイターって最新の強化手術受けてて食事とか必要ないんだっけ、その辺詳しくないからわからんけど便利だよなぁ...お腹とか空かないのか?
「さて、何にしましょうか」
「やっと飯だ...疲れた...」
「例の作戦、僚機には彼を連れて行こうと思うのですがよろしいでしょうか」
「...構いません、結果さえ残していただければ人選は任せます」
綺麗に整理整頓された黒を基調とした社長室のような部屋。
その部屋に置かれた高そうな椅子に腰掛ける男、V.II スネイル。
ヴェスパー部隊の次席ではあるが首席のV.I フロイトが戦闘以外ではほぼお飾りと化しているため代わりに作戦立案や現場での指揮を行う。
今回の【壁越え】も彼が担当している。
「ですが結果を残せれば...です、本作戦は【壁越え】に向けた威力偵察、素体の彼では力不足だと思いますが?」
素体か...
強化人間の制作の元となる人間とでも言いたいのか、強化手術を繰り返す彼らしい表現だ。
「彼は下手な独立傭兵や強化人間よりは役に立つと思いますよ、一応は【ストライプ】なので例の《ジャガーノート》の気を引いて戦闘データを集めることくらいなら出来るかと」
「...まぁいいでしょう、せいぜい役に立ててください、彼らはまだ利用価値があります、犬死させないように」
「わかりました、ご配慮頂きありがとうございます」
「日程は追って連絡します、準備が出来次第あなたたちは壁へと向かってもらうのでそのつもりで」
「はっ」
【ストライプ】についてはそのうち説明があるのでお楽しみに...
あくまで一般AC乗りなのであまり暴れさせないようにはします。
あと悲報なんですけどこの作品では主人公はパイル使いません、ご了承ください。