Q「飲み会というものに行ってからなんだか周りに怯えられてる気がするのですが...何故でしょうか...?」
A「わ...わかんないッピ...」
※遅くなってすみません、オマちゃんが腹を切ってお詫びします
am8:00
あぁ...嫌だな...
人生で考える人のポーズをすることがあるとは思ってもいなかった。
朝起きていつも通りメッセージ確認してたんだけどそのうちの1件がスネイル閣下からだったんだよな...しかも件名が[«至急» 壁越え連絡]だったし内容も朝起きたらさっさと俺の部屋来い的な文章だったから間違いなくあれだ。
マジで俺なんですか?
他にも適任なんていくらでもいるじゃん...スウィンバーンさんのカメラマン集団でも送り込めば十分な気もする。
てか本番の壁越えはフロイトさんとかラスティさんとかを送り込むって話だからそもそも偵察いる?特にフロイトさんなんか絶対聞かないぞ?
とりあえずさっさと行くか、あの人を待たせるのだけはほんとにあかん、マジでファクトリーに出荷されかねない。
端末よし、服装よし、ポーカーフェイス...多分よし。
手汗が酷いな、歩き慣れてるこの廊下もすごく長く感じる。
昔教官のコーヒーカップを割ったのを報告しに行った時に何となく似ている気がする。
朝の勤務開始時間と重なっているため人通りも多い、知っている顔もぼちぼち見かけるが正直それどころじゃない。
何度か話しかけられたがこれからスネイル閣下の部屋に向かう旨を話すと皆ご愁傷さまといった感じの目線を送ってくる。
チェイだけは大笑いして「どんまいっすw」とだけ告げて去っていった、多分昨日落書きしたのを根に持っているな。
進むにつれ人通りも少なくなる、ここは司令区画の中でも重要施設が多くあるため入れる人は限られている。
俺もこんな感じで呼ばれない限りは近づくことすらしない、ここにいる人は閣下含めみんな怖いんだよな...雰囲気っていうか目付きがもうカタギの人間では無い。
そんなインテリアヤグザ集団の横をすり抜けながら目的の部屋に到着した。
めちゃくちゃ重いんだよなぁ...この扉...
ノックを3回。
「失礼します」
「どうぞ」
扉を開く、薄暗い部屋の中には高そうな椅子に座りこちらを見つめる...いや、睨みつけているようにしか見えないスネイル閣下。
安心してくれ、これが彼の通常運転だ、そう自分に言い聞かせる。
「あなたでしたか、こちらへ」
手で指された通り机の前へと進む。
緊張のせいか胃が痛い、空腹も相まってずっとキュルキュルしてる。
なんかの冗談で偵察無くなりました、とかならないかな。
「要件から伝えましょう、解放戦線防衛拠点、通称【壁】に対する偵察の日程が決まりました」
ですよねぇー。
唯一の望みが絶たれた、胃のキュルキュルが加速する。
「僚機にはV.VI メーテルリンクが着きます、彼女の指示に従い壁周辺の敵MT及び【ジャガーノート】の配置や性能を確認するように」
「あの...ひとつよろしいでしょうか?」
「...どうぞ」
ひっ...怖い...
質問ひとつするだけでも謎圧で押しつぶされそうになる、朝ごはん食べてこなくて正解だったかもしれない。
「今回の任務なぜ私なのでしょうか...ヴェスパーの中から選出すれば任務達成は間違いないですし...ストライプでも私より優秀なパイロットはいくらでも居ますが...」
「ヴェスパーもそう簡単に動かせるわけでもありませんので、それにあなた以外のストライプの連中に偵察が務まると?」
まぁ確かに一部ずっとシュミレーターに籠ってる人を除けば全員忙しそうだよな...特に別に担当持ってる組は休みなんて無いレベルで動いてるし。
ストライプに関してもあの戦闘狂揃いのアホどもが大人しく偵察なんてできるとも思えないし...あれ?これ詰んでる?
「私もあなたでは力不足だとは思いますが今回は担当のV.VIからの指名です、彼女なりに何か考えがあるんでしょう」
あっ、やっぱそう思われてるのね...
てかメーテルリンクからの指名って何?この前の腹いせだろ!酔ってる時のアルハラリンクをグループメッセージに送るしかないな!
「わかりました...全力を尽くさせて頂きます...」
「当たり前です、任務は4日後の早朝となります、それまでに機体の整備とV.VIとの打ち合わせを済ませておくように」
「ハイ」
「では完了報告お待ちしております、ストライプ15【ソーク】」
「かしこまりました」
ソークか...久しぶりに名前で呼ばれた気がする、名前と言ってもコードネームみたいなものだけどね。
てか俺未だに末席なの?悲しいんだが。
足早に部屋を出て先程来た道を戻る。
10分も経っていないはずだが人通りは少なくなっていた。
目指すは食堂、とにかく今は腹になにか入れないとやばい。
空腹もだがこのキュルキュルをどうにかしないとストレスで弾け飛んでしまいそう。
前の配達の報酬も振込まれてたし気分転換に贅沢して惣菜パンでも食べるか、あれ1個で1COAMするんだよな、安いじゃん!って手練の傭兵の人たちは思うかもしれないけど結構するんだよ。
普通のパンなら5個で1COAMだしこの前食べたうどんも結構入って2COAM、やっぱ人工の食肉とかも高いんだよな、天然物なんかヴェスパークラスでも滅多にお目にかかれないってペイターも言ってた。
あと単純に整備とかで大半が吹き飛ぶから手元にはほとんど残らないんだよね、切実にCOAMが欲しい...
朝のラッシュ時間も過ぎたおかげか食堂は空いていた、購買のパンコーナーも結構スカスカになっていたがいくつか残っている。
まずこの前フロイト隊長に取られたジャムパンは確定だな、購買のはりんごのジャムが使われているんだけどこれが甘さ控えめで少し酸味が効いてて美味しいんだよね、あまり人気が無いんだけどみんなもっと食べた方がいいと思う。
クロワッサンとかクリームパンあたりの人気なやつはやっぱり売り切れてるな...珍しくフォカッチャも無くなってるし...普段あまり食べてない系を攻めてみるのもありか。
なんだかんだでカルツォーネとかいうマフィアのボスみたいな名前のパンとあまり食べてこなかったベーグルを購入、ベーグルサンドにしたい欲を抑えながら自室へと戻る。
メッセージ確認して特に何も無ければ1日のんびりしよう。
ここ最近はなんだか仕事も立て込んでたし直近に壁越え偵察とかいう大きな仕事も控えている、予定のない日くらい好きなことして過ごしたい。
ジャムパンをかじりながら端末を操作してメッセージを確認する。
程よい酸味が癖になるお味、本物ではないだろうが果肉のような物も入っており食べ応えもある。
パン自体もかなり硬いがジャムの水分で少しだけ柔らかくなっていてほかのパンに比べれば食べやすいし小麦の香りもして美味しい。
オキーフ長官から貰ったフィーカを入れればよかったと少し後悔する。
ジャムパンを食べ終えたところでメッセージの確認も終わった、特段急ぎでやる必要のある事はなさそう、昨日まで届いていたペイターからのはよ録音送れ催促も来てないところを見ると多分諦めて自分で録音したな、ヨシ!
そういえばアーキバス製品の10%オフクーポン今日までってメッセージ来てたな、せっかくのクーポンだしCOAMも残ってるから何か買っちゃおっかな。
ジェネレーターも買い換えたかったし《VP-20C》でも買っちゃおうかしら、ほんとは大豊の《DF-GN-08 SAN-TAI》が買いたいけど高いんだよな...クーポン使えないしお財布が飛んで行っちゃう。
ある程度カタログに目を通したところで気になっていたカルツォーネに手をつける。
売れ残っていただけあって少し冷めてはいたが別に気にしない、そりゃ焼きたてが一番美味しいんだろうけど焼き上がる時間に起きる気力もあの行列に並ぶ気もない。
アーキバスのカタログを見ながら一口齧ったがこれはいいね、中身はトマトとチーズの味がしてバジルのような香草も効いている。
チーズも冷めても固まらない...と言うよりはチーズに似たものなので厳密にはチーズでは無いがトロリとしていて冷めていても十分に美味しい、さっきはあんなことを言ったがこれならば焼きたてを食べてみたいな。
生地もパンと言うにはかなりしっかりしておりどちらかとナンに近いのかな、焼き目の付いている部分は少しパリパリしておりこの部分が特に美味しかった。
お腹のキュルキュルも落ち着いたしお腹も結構膨れた、ベーグルはおやつか昼ごはんにでもしよう。
pm2:00
あの後予定通り《VP-20C》を発注したりFCSイジイジしたり味気ないベーグルを食べたりかなりのんびり過ごしていた。
珍しくほんとうに大したメッセージも無かったからFCSの改造が捗った、贅沢に並列に繋げて同時起動すれば性能が2倍になるんじゃ!?なんてふざけた改造もやって見たけど重くなるし場所は使うし何よりFCSに流れるEN制限をどうにかしないと意味が無かったのでボツに。
どうにかしたところであまり差はなさそうだけどロマンを感じるので再度トライしましょう。
さすがに疲れたので休憩。
普通小物とかいじる時は目が疲れると思うんだけどFCSの場合載せるものがACなのもあって普通に両手サイズあるのよね、そして意外に重い。
だから結構腕に来るんだよな、今回は物理的な改造だったから大変だった...
いつもはこの時間だと書類に埋もれてるか最悪戦場にドナドナされてる、よくペイターに暇そうですねとか言われるけどこう見えて職務時間中はちゃんと仕事もしてるもん。
なんならあちこち引っ張られてるから意外に多忙だったりする、こちらとしても戦わなくて済むしおばちゃんとかお菓子くれるし割と気に入っているんだけどね。
なんでもお菓子作りしか娯楽がないらしく行けばニッコニコで渡してくれる、事務系だからACとかMTの修理とか維持にお金がかからない分給料が少なくてもやって行けるんだとか。
そういえばもう少しで3時か、確か前にもらったビスコッティがあったはずだ、今日は食べてばかりしている気がするけどたまにはいいだろう。
今度はフィーカも淹れよう、ビスコッティとフィーカの相性は格別だからね。
オキーフ長官みたいにポットとか用意して淹れ方にこだわるタイプでは無いけどそれなりに自信はある。
カップに注ぐ前に温めておいたり注ぐお湯の温度にはかなり気を使う、まぁ使うのは電気ケトルだけどなんとかなる。
オキーフ長官に教えてもらった通りにお湯を注ぎ、ある程度粉が膨らんだところで蒸らす。
いつもだったら安いパックにドバドバお湯をかけて一気に飲み干すのだが今日は時間もあるしせっかくのいい粉だから大切に頂こう。
ゆっくりとお湯を注ぎフィーカを抽出していく、やはりいつものに比べて香りが良い、さすがはオキーフ長官、見る目が違う。
淹れたてのフィーカとお皿に乗せたビスコッティを持って作業台に戻る。
一口フィーカを啜ればすぐに違いがわかる、飲む前からわかっていたがまず香りがいい、普段飲んでいるやつは嗅ぎなれた普通のフィーカ香りなのだがこれは真っ黒な色に似合わない香ばしくマイルドな香りが強い。
そしてミルクやシロップを入れるのがもったいないほどのコク、酸味や苦味は物足りないと感じる程少ない、ただただコーヒーのいいところだけを抽出した出来栄え、素晴らしい。
ビスコッティもフィーカによく合う、いつもならフィーカに浸したりして食べているが今日は別々に行こう、なんだか罪悪感を感じる。
朝のストレスマッハ案件を忘れるほどのんびりとした一日を過ごせている。
ほんと今日みたいな日がずっと続けばいのになぁ...
「いい匂いがすると思ったらやはりいたか、試したいアセンがある、来い」
わぁ...
薄暗く不気味部屋、室温は低く吐息も白くなっている。
部屋の中心には生命維持装置に横たわり組織固定シートに覆われた1人の強化人間と杖をついた白髪の老人。
接続された機器が外されていく、再起動の準備が整いACへの接続を確認する。
「621...お前に意味を与えてやる...仕事の時間だ...」
その言葉に呼応するように背後のACに光が灯る。
炎のように紅く、そして無機質な光が。
chapter0 [完]
chapter0完!
ほんとは名前最後に出したかったんですけど621参入のタイミングなくなるなと思ってこうなっちゃいました...
という訳でシークくんにはこの辺境の惑星ルビコン3で強く生きてもらおうと思いますのでこれからもよろしくお願いします。