聖剣の勇者様……の、幼馴染み   作:青い灰

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帰還

 

 

 

 

 

 

飛竜の休息を取りながら2日かけ荒野を越え、俺たちは本隊より早く魔王国へと帰り着く。

隣の寝袋で寝息を立てるルイーズの頭を軽くつつく。

 

 

「ルイーズ」

 

「んゅ……? ……っ、ぁあ゛あ゛ぁ~……」

 

「……っはは、相変わらずの寝起きだな」

 

 

彼女のしゃがれた声に、思わず笑みが溢れる。

もぞもぞと寝袋の中で身体をよじらせる様子はまるで芋虫のよう……などと言えば怒られるので黙っておく。

だが、すぐに彼女は身体を起こして頭を掻いた。

 

 

「………ぁあ、あぁー……笑うなよぉ……

 女と寝てる時はこんな声出したりしねぇえぇ……」

 

「俺の前ならいいって?」

 

「んあー……まぁとにかくオマエの前だけだな……

 って何言ってんだオレは……」

 

「寝惚け過ぎだな。もう城に着くぞ、起きろ」

 

「わぁってるよ……あと1時間な……」

 

「おい待て寝るな」

 

「冗談だよ……ふあぁ……」

 

 

ルイーズはそう欠伸をして寝袋から抜け出す。

そして暫くすると、城の大テラスが近付いてくる。

そこに、あの黒い鎧を纏った女が立っていた。

 

 

「なんだ、わざわざ待ってたのか」

 

「いい飼い主じゃねぇか。

 そろそろ寒期に入るだろうに」

 

「……」

 

 

飛竜は翼を広げてテラスに降り立ち、そして俺たちはその背中から飛び降りる。

 

 

「■■■■■……」

 

「頑張ったな、ゆっくり休んでくれ」

 

「♪︎」

 

 

首を下ろした飛竜の頭を撫でると、飛竜は目を細めて喉を鳴らす。見た目こそ恐ろしいが、こうして何度も任務を共にしていれば愛着も湧くものだ。

 

 

「よく戻った。ルイン・カーネリアン。

 それに、ルイーズ・パライバトル」

 

 

声をかけられ、そちらへ視線を向ける。

黒鎧の女……俺の飼い主、魔王軍『余燼』が第一位。

総軍長、ブランシュ・カーネリアン。

彼女は俺たちを出迎え改めて目を細め、腕を組んだ。

 

 

「任務の報告を」

 

「【将軍】、都市長は死んだ。

 将軍は俺が、都市長は伯爵様が始末した」

 

「都市も落ちたぜ。

 後始末は伯爵様がやってくれるそうだ」

 

「……ルイーズ、君は何をしていた?」

 

「あぁ、ドラゴン殺してやった」

 

「何? ドラゴン……どういうことだ」

 

 

怪訝そうに眉を寄せるブランシュ。

ルイーズは自慢気に胸を張っている。

俺はそれを横目に、懐から竜の喚び石を取り、手渡す。

それは未だ、輝きは弱いままだ。

ブランシュにそれを見定め、再度目を細めた。

 

 

「竜の喚び石だ。俺が将軍を相手してる間、

 ルイーズは将軍が召喚したドラゴンの相手を」

 

「…………想定外だな。

 ルイーズ、よくやってくれた」

 

「特別手当て」

 

「分かっている。それについては後だ」

 

 

悪い笑みを浮かべるルイーズ。

そして、ブランシュは俺に目を向けた。

……何かしただろうか?

 

 

「……将軍と正面から戦ったのか?」

 

「寧ろ相手から襲撃されたからな」

 

「………今後は会敵したら一度退け。

 最小限、最低限の戦闘に留めろ。いいな」

 

「了解」

 

 

まぁ殺し回ったのだから暗殺とは言えない。

見た奴を一人残らず始末すれば暗殺なのでは?という頭の悪い考えが過るが、これ以上は言うまい。

 

 

「何はともあれ、よくやった。

 今回の実績は我々の予想を越えたものだ」

 

「まぁ、竜の喚び石もあったしな。

 実績も十分なんつう言葉じゃ足りねぇだろ」

 

「……陛下から直々に御言葉を頂きたいところだが、

 あの方は今現在、少しばかり忙しい。

 これは本来は次の任務からの帰還時に

 言い渡すつもりだったが………」

 

「何かあるのか」

 

「勿体ぶってないでさっさと教えてくれよ、

 こちとらさっさと報酬貰って帰りてぇんだけど」

 

「……………」

 

 

そう言って拗ね始めたルイーズに、ブランシュは渋い顔で大きな溜め息をつく。何か、渋っているようだ。

それにルイーズも気付いたのか、彼女も首を傾げる。

 

 

「あ? んだよ今の溜め息」

 

「………お前たちにこの階級を与えていいものかとな」

 

「この階級、というと……」

 

 

まさか。

 

 

 

 

「お前たち二人に『余燼』の第六位の席を与える。

 これは陛下、そして我々『余燼』の総意だ」

 

 

 

 

 

────────

 

──────

 

 

 

 

【余燼】という階級について、だが。

魔王軍最高幹部という階級でありながら、その役職はその者の功績によって様々である。

また、第何位という順はあるが、それは強さではなく『余燼』として着任した、ただの順番だ。

 

例えば、ブランシュ・カーネリアン。

彼女は軍の総司令、そして『余燼』の代表者である。その実力は魔王軍でも不明瞭だが、【伯爵】に負けず劣らず、という噂がある。俺も詳しくは知らない。

 

 

 

現在の『余燼』は5人。

 

 

第一位、【白焔】ブランシュ・カーネリアン。

前述した通り、俺の飼い主にして軍の総指揮者。

忌み人で、軍ではいつも黒い鎧を纏っている。彼女の異名【白焔】は、白炎の魔法によるものだろうか。

 

 

第二位、【壊魔】シャイタン・バロック。

青肌青髪の魔人で、役職は副軍長、ではあるのだが、どちらかと言えば切り込み隊長と言った方がいい。

凄まじい怪力を誇る、荒々しく、また残虐な男。

 

 

第三位、【伯爵】アルベール・ブラッドストーン。

先日、要塞都市襲撃で会った吸血鬼。役職は魔王国の治安維持部隊、また特殊遊撃部隊隊長。異名の通り、魔王国貴族であり、その纏め役も担っている。

 

 

第四位、【賢老】サピエンテス・ダイオプサイト。

魔王軍の軍師、また魔法技士である忌み森人(ダークエルフ)

役職通り、軍略や魔法具作成に長けた爺さんだとか。

普段は工房に籠っているらしく、会ったことはない。

 

 

第五位、【赫耀】スカーレット。

恐ろしさを感じるほどの美貌に、赤髪に赤目、更には真紅の衣を纏った女。作戦にも殆ど参加せず、そしてあのブランシュですら一切の情報を把握していない。役職は無く、魔王曰く『賓客』らしいが……

 

 

 

俺の知る情報はこんなものだ。

【賢老】だけには会ったことがない。【赫耀】には、一度だけ会ったことはあるが……一瞥され微笑まれた、というだけで、特に話した訳でもない。

 

 

 

 

 

 

現在、俺たちは城の廊下を進んでいた。

余燼への招待、また昇格は彼ら全員が召集された時に行うらしく、今回はこのまま帰路につくことになる。テラスから飛竜で、というのが楽なのだが、魔王国で飛竜への騎乗は、軍用時でなければ法に反する。

面倒だが、城の無駄に長い廊下を進むことになる。

 

そして現在の話題は、件の余燼について。

 

 

 

「今現在この城に駐在している余燼は三人、

 私と【賢老】、そして【赫耀】だが……

 特に赫耀と出会したら気をつけろ。

 あの女は誰彼構わず魔性の香を振り撒く」

 

「へぇ、いい女は好きだぜ」

 

「やめとけ」

 

「あん? なんでだよ」

 

 

あの女は、どうも不気味だ。

余燼以外の魔王軍の雑兵はあの女に首ったけだが……

どうも彼女が心配になる。本当に大丈夫だろうか。

そんな俺の心配も知らずに、ルイーズはニヤァと悪い笑みを浮かべて肘で俺の脇腹を突いてくる。

 

 

「ははぁん? オマエ……惚れたな?」

 

「違う。………あんな気味の悪い女は初めてだ。

 本当にあの女だけはやめておけ、ルイーズ」

 

 

俺の言葉に、ルイーズは目を見開いて瞬きする。

そして、その特徴的な猫目を少しばかり泳がせると、彼女はバツが悪そうに頭を掻いた。

 

 

「………、………………はぁ、まぁ、そうだな。

 そこまで言うならそうするけどよ。

 オマエがそんなに言うのは珍しいな」

 

「………ルイン。君、赫耀と会ったのか?」

 

 

すると、その横でこちらも珍しく、驚いた表情をしたブランシュが尋ねてくる。3年間は共にいたが、中々に珍しい表情だ。

 

 

「あぁ、まぁ。一度だけ。

 それこそ軍に就いてからすぐだったハズだけど」

 

「…………そう、か。まさか無事とは……」

 

「無事って……そんなにヤベェ奴なのかよ」

 

「……………あぁ、あの女は──────

 

 

 

 

そうして、城の廊下の角を曲がった時だった。

 

 

 

 

 

 

「あの女は─────何かしら?」

 

 

 

 

 

「「!!」」 「────ッ!!」

 

 

 

 

 

 

その声に、俺たちは身を強ばらせる。

燃え盛る炎をそのまま人の形にしたような、影────

瞬間。

 

 

「ッッッ!!!」

 

「ふふふ─────」

 

 

本気だ。黄金ではない、最大出力の赤黒い雷を纏ったルイーズが真紅の影の頭上に超高速で移動し、そして同じく黒雷を迸らせる剣を振りかぶっている。

それだけではない。

 

真紅の影もまた、巨大な紅蓮の大鎌を手に─────

 

 

「ルイーズ!!!」

 

 

叫ぶ。届くか届かないかは関係ない。

それと同時に、俺も床を蹴る。

間に合わない、いや、間に合わせる─────!!

 

 

「させん!!!」

 

 

ブランシュも大剣を手に、影へと飛び出している。

跳躍し、俺は剣を振り抜こうとするルイーズへ。

 

そして────────彼女の腹を、抱き止める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ、ぐ……ッあ…ああぁあ……っっ…!!?」

 

 

全身を、今まで感じたことがない程の凄まじい激痛が駆け巡る。流石に雷の魔法、【将軍】とはそもそもの魔力の威力が違い、そして元より魔力量の多い彼女の容赦無しに放っている最大出力。

背後からは甲高い金属音が響いてくる。ブランシュが大鎌を受け止めたのだろう。痛みの裏で、灼熱が背を炙るように当てられる。

 

 

「っぐぅッ……! 止ま、れ、ルイーズ……っ!!」

 

「っ……!? っあ、ルイン!!?

 テメエ、この……!! クソ、なんで……!!」

 

「あら。

 軍長様は力持ちね、まさか止められるなんて」

 

「刃を振るう先を間違えるな……!」

 

 

それぞれが言葉を交わす。

身体を捻り、ルイーズに代わり床に叩きつけられる。おも……くはないが、全身がまだ痺れるようだ。

いつの間にか、彼女が纏う黒雷は消えていた。

 

 

「…あ……っ、クソ……悪い………」

 

「ふふ、まぁいいわ。それにしても、

 声をかけた瞬間に襲われたのは初めてね」

 

 

すぐにルイーズは俺の上から退き、【赫耀】もまた、手にしていた大鎌をくるくると回すと、消滅させる。どういう原理なのか……いや、それはいい。とにかく、ルイーズが無事なようなら良かった。

にしても、まさかいきなり全力とは──────

 

ルイーズに視線を戻せば、彼女は悔しげに【赫耀】を強く睨み付けている。歯軋りすらする姿は、憎悪にも似たような感情が見て取れる。俺はすぐ起き上がり、彼女を制し、また守るように立ち塞がる。

 

その女は、その様子を意にも介していない。

紅のドレスを美貌に纏うだけでなく、その髪も瞳も、鮮血よりも鮮やかな赤で彩られている。だというのにその美貌を損なうものではなく、寧ろそれらが彼女を構成している、人体の一部のようにすら思える。

 

故にこそ感じる、底知れない恐ろしさ。

 

 

「この城に居候として住まわせて貰っているわ。

 私はスカーレット。よろしくお願いね、

 軍長様の猟犬さんに、雷魔法の使い手さん」

 

「………ルインだ。

 こっちがルイーズ・パライバトル。

 先の無礼、悪かった」

 

「…………」

 

「ふふ、構わないわ。

 私も猫目の貴女には少し苦手意識があるもの。

 今度は私が先に手が出てしまうかも───なんて」

 

 

スカーレットがそこまで言った時、後ろのルイーズが不機嫌そうに鼻を鳴らす。視線を向ければ、今までも見たことがないほど警戒心を丸出しに、その目を鋭く尖らせる。

 

 

「テメエ、なんだ」

 

「なんだ、なんて聞かれても困るわね。

 居候、なんて答えても納得しないんでしょう?」

 

「当たり前だろうが。

 この感じ、テメエは────」

 

 

と、そこで2人の間にブランシュが割って入る。

手には黒い大剣が握られ、強い視線が2人を刺す。

 

 

「そこまでだ。ルイーズ、詮索はよせ」

 

「……チッ」

 

「ふふ。そう、そうね。

 知らないことが幸せなことだってあるわ」

 

 

舌打ちし、だが尚も【赫耀】から目を離さない彼女に、

【赫耀】はそう笑って、俺たちの方へ歩き始める。

俺の真横を抜けようとして、【赫耀】は立ち止まる。

 

 

「貴方も、そう思うでしょ?」

 

「…………」

 

 

背筋が凍るような囁き。

俺は言葉を返さず、視線だけを向ける。

それに、女は三日月のような笑みを浮かべた。

 

 

「うふふ、釣れないのね。

 さっきも言ったけれど、今から少し用事があるの。

 機会があれば、また会いましょう」

 

 

そして、瞬きをした時には。

 

 

 

 

「────去ったか」

 

 

ブランシュが息を吐き、大剣を鞘に納める。

真紅の影は、姿を消していた。

ルイーズも剣を納め、額を指で押さえる。

 

 

「…………はぁ、本当に悪かった。

 オマエの言ってたことがやっと分かった。

 確かにありゃあ、関わっちゃいけねぇヤツだ」

 

「まさか俺もそこまでとは思わなかったが……」

 

「とにかく、全員無事で何よりだ。

 ルイーズの言う通り奴とは極力関わるな。

 ……時間を無駄にしたな、先を急ぐぞ」

 

 

ブランシュが息をつき、再び廊下を歩き出す。

ルイーズもそれに着いていく。

俺はふと、背後に視線を感じて────────

 

 

振り向かずに、早足に歩き出す。

 

 

その粘り着くような視線は、次の角で消え失せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────

 

──────

 

 

 

 

暫く歩くと、やっと城の入口ホールに辿り着く。

侵入者対策とはいえ本当に無駄に長い廊下だと思う。それに加えて先ほどのこともあり、ルイーズは未だに不機嫌そうに喉を鳴らしている。猫か?

 

 

「さて、お前たちには二週間の休暇がある訳だが……

 何かやり残したことはあるか」

 

「いや、特には」

 

「オレも特にねぇ」

 

「ならいい。

 ルイン、私は帰るが何か用事はあるか」

 

「あー……」

 

 

ちら、とルイーズに視線を向ける。

彼女は少し悩む様子を見せると、頷く。

 

 

「悪ぃ、ルインはオレが借りてくぜ」

 

「………構わん。が、酒も程々にしておけ」

 

「「ぎくっ」」

 

 

まさかバレていたとは。

ふん、と鼻を鳴らすブランシュに、二人で縮こまる。許されたのだから良しとするが……

 

規律、という訳でもないが、軍人故にあまり酒などは忌避される傾向にある。更に近年、葉巻は身体に悪い影響があるという話を薬師が解明したらしい。

特に魔族は丈夫で病に耐性もあるが、内からの影響に弱いという話も聞く。最近はそういった風潮もあり、あまり良い印象は持たれないのだ。

 

 

「とにかく、二人とも夜更けまでには戻れ。

 軍としての品位を落とすようなことは避けろ。

 あまり羽目を外し過ぎるなよ。特にルイーズ」

 

「わ、分かったっつーの……

 それに酔い潰れるまで飲まねぇよ」

 

「気をつける」

 

 

じとりとした目で見下ろしてくるブランシュはふうと一つ息をつくと、俺とルイーズの間を抜けていった。俺たちもそれに続く。

そしてホールの大扉を開き、階段を降りると城下町、その大通りが正面に続いていた。

 

大通りには噴水があり、その周りには魔族と、そして数少なくはあるが、忌み人たちの往来があった。

アルビオンの王都に近い建築様式も、見慣れてきた。

空は夕焼けが照らし始めており、飲み始めるにしても丁度良いくらいの時間だろう。

 

戦場から戻ると、この光景も懐かしく思える。たった数日の作戦でも、やはりこうした平穏は安らぐ。

 

 

「さて、仕事は終わりだ。

 私も好きに休むとしよう」

 

「あぁ、そうさせて貰おうかあ。

 無茶な仕事やらされてオレぁクタクタだ」

 

「今から飲むんだがな」

 

「ハハッ、そりゃそうか」

 

 

俺の言葉にルイーズはからからと笑う。

先程までの不機嫌さも少しは落ち着いたらしい。

そして大通りの噴水広場で、俺たちは別れることに。

 

 

「じゃあな、軍長サン」

 

「また後で」

 

「あぁ、気をつけて行って来い」

 

 

ブランシュに一時の別れを告げ、その背を見送る。

 

 

 

 

そしてやっと、肩から少し力が抜けた。

肺から、腹から、空気を押し出すように息を吐く。

 

 

「ふ、ぅ……」

 

「初の大仕事もこれで終わり、だな」

 

「そう、だな」

 

 

頷く。そして再度、大きく息を吐く。

 

 

「随分と疲れてんな、やめとくか?」

 

「いや、行こう。今は、飲みたい気分なんだ」

 

「………はッ、じゃあ行くか」

 

 

夕焼けの城下を、歩き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(何人、殺したかな……)」

 

 

魂に焼き付いた、骸と怨嗟。

歩きながら、己の右手を見下ろす。

 

血に濡れて赤く染まる手。

そして、多くの黒い手が絡みつく腕。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

分かっているとも。

 

 

殺した者たちは、ずっと怨嗟を叫んでいる。

 

 

お前たちを、忘れない。

 

 

肩に、足に、腕に……身体に、黒い手が絡みつく。

 

 

お前たちの死を、忘れない。

 

 

絡む黒い手が、身体の肉を抉り、引き千切る。

 

 

 

 

「(………必ず、目的を果たすから)」

 

 

 

黒い手は、いつか消え失せて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして俺は、また息を吐く。

 

 

 

 

 

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