あれから二年経ちました。どうも小学三年生です。
あれから進展したことは一つ。小学二年生の時に帳を習得しました。パチパチパチー。
独学で呪術を学び始めて帳を習得するまで二年
相変わらず比較対象はいないので実際のところどうなのか知る由もない。
あと、帳って呪詞唱えるだけで発動できるものだった的なことを思い出しました。もしかして今の俺って天元の加護ない?術式の影響かな。でも結界術って術式なん?分からん。
さて、この二年で俺ができるようになったことはいくつかある。
まずは呪力出力上限の成長。
二年前の五倍くらいの出力であれば制御可能になった。それに伴い、俺の攻撃力が一気に増えたと言える。
具体的には、貫通力と威力が増し、木を貫通し尚威力が衰えないレベルまで到達した。
次に小手先の小技其ノ一。呪力による斬撃のリーチが伸び、威力も増した。射程距離は一メートルといった所だ。
実戦でのテクニックとして、常に呪力を手に纏わせず、攻撃の瞬間だけ斬撃呪力を纏わせることで相手の意表を突く技も開発できた。
相手からすると攻撃範囲が一気に伸びたように感じるため、まあまあ使える技だろう。
この技でこの前俺の秘密の特訓場に沸いた言語を操る呪霊相手に勝てたので、今の俺は準一級術師レベルはあると見ていいだろう。
この成長感がたまらん。だけど今頃東堂は素で高校生をボコれるフィジカルあったんよな。あれ素だよね?呪術をまだ知らなかった時だよね?ふぁーーー。
フィジカルだけで言えば三年呪術漬けだった俺といい勝負してんだけどーやだー。
あと小手先の技術其ノ三が開発されましたー。パチパチパチー。……はぁ。呪力操作だけいっちょまえになっていきやがる。
さて、披露しましょう。
まず、右手の人差し指を立てます。
次に、人差し指の先から呪力を太めの糸のようにして伸ばします。
最後に、大きく振りかぶってー
ブウォンという風切り音が鳴り、
バチン!と破裂音が響き渡る。
これが俺の小手先の技術其ノ三。鞭の呪力です。ゆくゆくはこれに斬撃を付与してしなる斬撃とかやってみたい。……じゃなくて!俺の!目的は!領域展開なんだよ!
しかし、帳を習得したことによって結界術に一歩足を踏み入れてしまった。そこで理解した。領域展開の難易度というやつを。
いやー分かってたことだけどあと11年で何とかできるかなぁ。順当に特訓したら20年くらい必要になりそうだけど、呪力の核心とやらを掴めばその限りではなさそう。……かな?
やっぱり黒閃と反転術式を習得することは必須であると考えるべきか。
……いいぜ。やってやるよ。文字通り血反吐を吐いて命かけるレベルで特訓してやる。成功しなけりゃどの道死ぬしかないし。
まずは黒閃の訓練から始めるか。打撃との誤差小数点以下ゼロ一杯秒で呪力が衝突したときに発生する空間の歪みだっけ。やってやらぁ!
俺は決意を新たに適当な木に向かって打撃を放とうとしたその時。
「……は?」
なにが起こったのか分からず、しかし本能的に後ろを振り返ると、そこには砂でできた大型のゴーレムのようなものが立っていた。
「……砂の呪霊か?」
俺がそう言うと、俺の周りに砂嵐が巻き起こり俺の体を覆い始める。
しかし、その全てが悉く俺の体をすり抜ける。
砂を操る術式なのだろう。だが、俺は術式が効かない術式を持っている。まさか体をすり抜けるなんて思わなかったが、効かないのだから何でもいい。
呪霊は攻撃が効いていないことに気づいていない。砂嵐で俺の状態がどうなっているのか把握できていないからだろう。その隙を突く。
俺は指先に呪力を集中させ、劣化版純愛砲を放つ。
呪力のビームは一秒と経たずに砂の呪霊へと到達するが、間一髪腕で防がれた。
ダメージは、なさそうだ。
呪霊は俺がピンピンしていることを知ると、その巨体に見合わぬスピードで距離を詰める。
そして、その巨大な腕を振るった。
俺は砂嵐で視界が遮られていたため反応が遅れたが、間一髪で後ろへ跳んで躱す。
「あぶねぇ」
お返しとばかりに鞭の呪力を数発お見舞いするが、攻撃力不足だ。
完全に格上との戦闘。死の気配が俺の肌をビリビリと刺激するのを感じる。しかし俺の心は凪いでいた。
今までになく落ち着いている。
ここで死んだらこのクソッタレな使命から解放されるから?戦闘状態と言う実感が湧いていない?……違うな。俺は呪術師。恐怖を力に変えるのが本懐だ。
この戦闘が〈窓〉なんかにバレれば、高専が俺に接触してくる。
こんなに強い呪霊がいると知ったら夏油が来る。
夏油を狙う羂索が来る。
もしかしたら九十九が来るかもしれない。
色々な可能性が頭をよぎる。だがそのどれもが今はどうでもいい。そんな邪念を抱えたままでは絶対に死ぬ。
「もうなるようになれだ」
相手は格上、こちらは攻撃力が圧倒的に不足している。奴を祓う方法は三つ。
一つ、一か八か、呪力出力を限界まで高め、気合で制御する。
二つ、土壇場での黒閃に期待する。
三つ、土壇場で領域展開を習得する。
この中で一番可能性があるのは一つ目、次点で二つ目。
こんなことを考えている間にも呪霊は俺を攻撃してくる。
唯一の救いは、こいつのアジリティが低いことだろう。俺でもなんとか躱せる。が、躱すことに専念するしかない。
「千日手だな。さて、どうする」
やはり出力限界に挑むしかないのか。
「……は?」
そんなことを考えていると、目の前の呪霊が
「嘘だろ!?できるのか!?」
そのレベルの呪霊だったのか!?
領域展開
瞬間、現実は浸食された。
燦燦と輝く太陽。辺り一面に広がる砂漠。この空間そのものが『渇き』に飢えている。
どうやら砂漠の呪霊だったらしい。
「クソが!!」
俺は領域に対する回答札など持っていない。詰みだ。
ここで死ぬ?冗談じゃない。この三年の努力はどうなる。全て無意味だったと?ふざけるな。なんとしてでも領域から脱出を……。
…………いや、なにかがおかしい。
「必中効果が発動していない……?」
ここが領域であることを考えると、既に何かしらの攻撃があって然るべきだ。
目の前の呪霊の様子を見ると、どこか困惑気味だ。
「必中効果は発動している?俺の術式の影響か?」
いや、それはおかしい。領域内ではあの五条悟ですら攻撃は当たる。
原作での漏湖の台詞『貴様の無限とやらもより濃い領域で中和してしまえば、儂の術も当たるのだろう?』
これに五条は肯定していた。
つまり、俺の術式もより濃い領域で中和されるはず。
「いや、待てよ」
『あと、帳って呪詞唱えるだけで発動できるものだった的なことを思い出しました。もしかして今の俺って天元の加護ない?術式の影響かな。でも結界術って術式なん?分からん』
この仮定が正しかったとすると、俺は領域に認識されていない?
「つまり、俺の術式は『術式による干渉を無効化する』効果ではなく『“呪術”による干渉を受けない』術式である?」
「誰であれ例外なく必中なのは、濃い領域で術式を中和できるから。しかし、俺は領域に
これは、いいことを知れた。口元が歪むのを感じる。
今までにないくらい気分は高揚している。
だが、依然として不利なのは変わらない。
領域の効果はなにも必中必殺というだけではない。術者のホームグラウンドを構築しているため、バフがかかるわけだ。
現に目の前の呪霊は今までよりも数段動きにキレがある。
ここからの反撃方法、黒閃?出力限界?いや、違うね。
実際に領域に入ったことで少し分かった。
さて、一か八かの大勝負。負ければお終い。だが、いつになくワクワクしている。遥か遠くにあったものが、ようやくギリギリで目視可能な範囲に迫ったのだ。
「『無常』『反転』『砂上の楼閣』『六道の辻』――術式順転『白』」
呪詞によって術式の効果を上げる。意味があるのかは知らん。
「外殻借りるぞ」
領域展開
展開される、一面真っ白な世界。
これが俺の生得領域か。
領域展開が成功した?ハッ!
「成功なんざしていねぇ。必中のみの縛り、出入り自由の縛りを結び、その上であの呪霊が構築した結界の外殻をそのまま転用しただけ。言ってみれば俺がやったことは術式を付与した生得領域を展開した。たったそれだけ」
文字も知らない幼子が、ペンを持ち目の前の紙に好奇心が赴くままに落書きをした。
たまたまそれが文字に見えただけ。たったそれだけ。
「だが!例え他力本願だとしても!この領域では俺以外あらゆる
俺でもこの状態を維持するのは三秒が限界だ。だが、三秒もあれば充分。
呪力で強化した肉体を駆使し、呪霊へと肉薄する。手に纏わせた斬撃を一閃。
ガバガバになった呪力操作ではまともに防御できずに、呪霊は横に真っ二つとなった。
そして領域は解除される。
「はぁ、はぁ、俺の、勝ちだ……」
俺はそこで意識を失った。
渋谷事変まで残り――9年
主人公の領域内では一応呪力操作くらいはできます。
まあそれ以外の一切ができませんが。
主人公に師匠はいる?いらない?
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いるわボケ
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いなくていいかなぁ