「はーるばーる来たぜ。函館ーい!!!」
※宮城です。
さて、なぜ俺が函館(宮城)にいるのかというと、一人旅です。
というのは半分本当で、半分嘘。
中学最初の夏休みとなり、両親も共働きで暇を持て余した俺を見かねて、親戚の家に俺を数日預けることになったのだ。今は親戚の家がある岩手県へと向かう途中だ。
電車を使って一人でここまで来たけど、本来なら中学一年生には危険ではないかと思うだろう。実際、両親にも岩手の叔父叔母に迎えに来てもらえと言われたのだが、それでは時間がかかりすぎるし、説得の甲斐もあって俺一人でもオッケーと許可が出た。
俺が中学一年生にしては大人びていることと、なんだかんだ呪術師になってから体を鍛えていたのが功を奏したのだろう。
宮城に立ち寄った理由は簡単だ。
作中で宿儺の指の場所が明確になっているのが、仙台にある杉沢第三高校であったこと、乙骨が里香に呪われた(呪った)のも宮城だったからだ。
まあ偶然だろうけど、何かあると考えてもいいだろうし、強力な呪いがいる可能性もある。
叔父叔母夫婦の家に訪れるといういい機会もあって、少し立ち寄ることにした。
折角仙台に来たし、喜久福でも買うか。
「……?」
なんだ、この気配。でっかい呪いの気配がするなあ。あの時の砂の呪霊よりも遥かに強大な濃い呪いの気配。俺では勝てそうにないし、逃げるか。
まあ、目視できる範囲にはいないし、とりあえずお土産屋さんに入るとしよう。
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「あ、あの……藤原さん?どうしたんですか?」
「あーいや、うん。どうしようかと思って」
俺は今、絶賛死んだ目をして目の前に座っている男の子を見ていた。
あー。ほんとにどうしよ。いや、まあ俺のかくれんぼ対象ではないことは確かだよ。まだね。
うーん。でも目の前で美味しそうにハンバーガーを頬張るショタを見て、じゃあ俺はこれでと帰るようなゴミみたいな人間性は俺にはないし。だからこれは不可抗力だよ不可抗力。
「それで、
「お父さんとお母さん?家にいますよ」
じゃあなんで土産屋にお前がおったねん。おかしいやろボケ。
おっと、お口が悪うございますよ。私は上品なお嬢様ですこと。これではお嬢様の片隅にも置けません。お気をつけあそばせ。
はぁーーーー(クソデカため息)
ぬかった。乙骨はもう東京にいるものだと思ってたけど、作中じゃ高校時代に東京にいたことしか描かれてないもんな。しかも、まだ小学生だ。地元仙台にいてもおかしくない。どデカい呪いの気配から察するべきだった。
一体何があったのかと言うと、お土産屋に入った俺と乙骨くんが入り口でぶつかり、リカちゃんがちょっと出てきたけど乙骨くんが宥めて、俺がリカちゃんのことが見えると知り、近くのショッピングモールにあるフードコートでお話をしている。ということだ。ハンバーガーは俺の奢りです。
呪術の修行のために旅行しようと、今まで貯めに貯めておいたお小遣いがあって良かったよ。
「里香ちゃんが見える人に初めて会いました」
「そうなの?」
いやまあ、考えてみれば当然か。
もし、他の誰かにリカの存在がバレていたら、それこそ既に高専が出っ張ってきているはずだもんな。作中で乙骨の秘匿死刑が決定したのは、乙骨が高校一年の時に乙骨をいじめて興奮していた変態を、リカがロッカーに詰めたのが原因だ。
「はい。あの……里香ちゃんは僕が危ない目にあっていると出てきちゃうんです。どうしたらいいんですか?何か知ってますか?」
「……残念ながら、そのリカちゃんを制御する術は俺には分からん。ただ、君はあまりうじうじしない方が良いかな」
うーむ。リカの制御方法は俺も知らんし、この先の未来で乙骨がいじめられてリカが出てきてしまうのは確定事項だろう。リカの呪いを解くのも、百鬼夜行のあのやり取りがないと無理だろうし。
こう考えると結構厄介な性質してるよね。リカって。メンヘラ?ヤンデレ?……どっちかっていうと乙骨にその気質がありそうだなぁ。乙骨って湿度高いし。
狗巻の術式をコピーしたら俺スゲーって思いそうなところを、狗巻君は凄いんだって感じちゃう子だし。
いじめは、いじめるほうが悪いのは当たり前だが、うじうじしてる乙骨の煮え切らない態度が癪に障ったんだろうな。
「ちなみに、そのリカちゃんってなんなの?」
既に知っていることだが、乙骨からしたら俺はリカの事なんて何も知らない人だ。
話を聞くためにも、まずはここから質問する必要がある。
「里香ちゃんは……」
そこから聞かされたのは既に知っている事だった。まあ当たり前だ。
「なるほどねぇ……」
ここで俺が呪いについて説明するべきだろうか。いや、変にバタフライエフェクトが発生しても面倒だ。呪いについては俺も知らない設定で行くか。
「あの、何か知ってたり……」
「いや、申し訳ないけど何も知らないかな。乙骨くんは、リカちゃん以外に何か幽霊みたいなものが見えたことある?」
そう言うと、乙骨は首を傾げた。
「い、いや……ないですかね」
「ふーん」
「あ、あの……幽霊っているんですか?」
「いや?」
「えっ」
「リカちゃんみたいなのが他にもいるのかなーって」
そうはぐらかす。
それにしても、見えたことないのか。少々意外だ。菅原道真公の子孫なら、呪術に関する資質は十分だし呪霊程度見えていてもおかしくなさそうなものだが。あれか?リカの影響か?リカという呪いの女王に憑かれているから、他の呪いが寄ってこないのか。
……よくもまあ、リカなんて化け物を連れた状態で日常生活を送れたもんだ。その点に関しては素直に称賛するべきだな。
「ゆ、憂太ぁ、私の話ぃ?」
あーリカ出てきたよ。ほんとに制御不能なんだな。でもまあ、完全顕現じゃないし、少々顔が出ているくらいだ。
「う、うん。里香ちゃんのお話。この藤原さんが里香ちゃんのこと見えるみたいだし」
「どうもー。折本里香ちゃん。俺の名前は藤原辰久。よろしくー」
俺はフードコートを見回し、俺たちの会話を気にしている人物がいないことを確認して話しかけた。
それにしても、完全顕現に至らないとしても凄まじい存在感だな。この空間に呪術師がいないことが救いか。
「…………」
あ、無視された。
どうやら興味をなくしたようで帰って行った。もし俺が女子だったら殺されてたのかなぁ。いやー乙骨と同性で良かったよ。
「あ、里香ちゃん。ダメじゃないか、初めて会う人にはちゃんと挨拶をしないと」
リカがいなくなった後で、そんなことをぶつぶつと呟いている。
常識はしっかりあるしいい子なんだよなぁ。まあ、俺との年齢差は一歳しか変わらないけどね。
乙骨がハンバーガーを食べ終わり、話すこともなくなったので俺はそろそろ呪霊探しの旅に出ますかね。いや、呪霊探すだけなら目の前にいるけどね。特級過呪怨霊がさ。
「じゃあ、俺はそろそろ行くけど、乙骨くんは一人で平気?」
「あ、はい。ここからなら一人で帰れます」
「そう」
ここで別れるのもいいけど、ちょっと一言元気づけると同時に釘も刺しておこうかな。
「じゃあ、俺は行くけど。ちょっとお願いがあってね。リカちゃんが見えたことは他の人には内緒にしてほしいんだよ。例え、俺たちの他にリカちゃんが見える人が現れてもね」
「なんでですか?」
「うーん。ちょっとね。だがまあこれは約束だ。ちゃんと約束を守ってくれるなら、君には今後良いことが起こるよ。例えば、リカちゃんについて何とかできる人が現れるかも」
「ほんと!?」
「うむ。本当だとも。だからこれは俺との約束だよ。もし見つからなかったら機会があれば俺が探してあげる。ね?約束だよ」
「うん!分かった!」
よし。
「じゃあ、俺はこれで。また会えたらいいね」
「うん。またね!」
そうして俺はショッピングモールを後にした。
「ふぅ。かなり、いや超絶緩いが縛りも結べたな。乙骨くんの性格なら俺のことを誰かに言うようなことはしないだろうし。それに、渋谷事変当日は彼は海外にいる。ここで出会ってしまったのはリスクが上がったが、リカを見れたのもいい経験になったな」
-ちょっとした補足-
主人公は呪術師に見つかってはいけないという認識こそありますが、危機感はあまり抱けていません。
理由としては、前世の知識と今世の生きてきた時間ですね。
前者は、『呪術廻戦』はあくまで創作物であるという知識から、今世で本当に五条悟や夏油傑といった人物がいるという実感が湧きません。それと、今まで出会った原作キャラ二人が善人であったことも影響していますね。
後者は、主人公は呪術を学んで八年です。逆に言えば、八年間も呪術師らしさをもった呪術師に見つかっていません。その慢心があります。
なので、まあガバは犯します。