異世界開闢の冒険譚。吸血姫となった元男、女神と共に世界を別つ冒険へ出る   作:氷水メルク

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身分証作成

 

 声を出せば変声期が訪れていない高い声。

 口の中に手を入れて触ってみると、鋭く尖った吸血鬼キャラ特有の歯。

 おれは改めて自分がゲームキャラの吸血鬼になっていることが分かるとうなだれる。

 

「能力は使ってみるまで、本来分からないんですが俊さんのは分かりやすいですね」

 

 アメリアはまるで子どもをあやすような瞳でおれの頭を撫でてくる。

 その手をおれは払いのけて睨みつける。

 

「止めろ! そんな目でおれを見るな! おれは男だ」

 

 おれまだ、あれを捨ててすらいなかったのに。

 いや捨てる予定がなかったから、多分賢者確定だと思うけど。

 いやこの姿だという事は魔法使いにはなっているのか、ってそうじゃねぇよ! 

 

「その見た目だと、憎まれ口といいますか、かわいく見えるので睨んだって意味ないですよー。可愛いなぁ」

 

 くっそ。こいつ完全に舐め腐っとる。

 アメリアはおれを後ろから抱きしめると、這うような手つきでおれの顎辺りを擦ってくる。

 まぁその分……、魔物と戦うときはやりやすいからむしろいいが。

 俺は手鏡でアメリアの手をぶん殴る。

 衝撃でパリンと鏡が割れる。鏡に映らないから持っておく必要もない。

 

「ステータス」

 

 おれは一般ラノベの当たり前とも呼べる言葉を口に出すが、それらしいものは一向に出てこない。

 こういう時出て来そうなもんなんだが……。

 

「俊ちゃん、この世界にステータスはありませんよ?」

 

「俊ちゃん言うな!」

 

 アメリアの言う通り、ステータスが無いのは当たり前っちゃ当たり前か。

 ゲームじゃないんだから。

 とりあえず、おれの能力は分かりやすい。

 やっていたゲームのキャラになっているからな。戦い方も同じで平気だな。

 

 とりあえずダンジョンがとか、怪しい場所がどこにあるか情報収集したいし町に繰り出す必要があるな。

 おれとアメリアは森を出る為にどこかに続く一本道を歩き始めた。

 

  *  *  *

 

 ゲームキャラになったおれは、どんなことができるのか道中試していた。

 まずログアウトが出なかった。

 むしろログアウトが出てこられたら困るけどな。

 インベントリは唱えると、空中に四角形の枠の中に入っているアイテムアイコンが出てきた。

 どうやらゲーム画面のままのようだ。何と分かりやすい……。

 

 倉庫がないせいで、やっている時に手に入れたアイテムや武具がぐちゃぐちゃだ。

 見なかったことにして、試しに卵を取り出そうと手を入れてみる。

 すると、卵のアイテムアイコンの右下についてる数字が一つ減り、俺の手には実物大の卵が握られていた。

 握り割ってみると中からオレンジ色の黄身と白身が出てきた。

 食べてみると殻が入って不味い。

 こんなの好き好んで食うのは、たんぱく質を使って戦うやつくらいだろう。

 

「そもそも普通の人は卵を握り潰せませんし、表面に付いた雑菌とか気にしますけどね。そもそもなんの卵なのか分かっていないですし」

 

「雑菌?」

 

「サルモネラ菌をご存じじゃないですか?」

 

 なんだそれ?

 余った卵の殻をインベントリに入れてみると、卵の殻のアイコンが新しく追加された。

 インベントリの中には大量の回復アイテムと食料アイテムがぶち込まれている。

 当分この女神と二人でも生きていけそうだ。

 

「いやですよ? どこから取れたものか分からない食べ物を食べるとか」

 

「贅沢を言うなよ。大抵の物は火を通せば食えるはず」

 

「火を使ってきた魔物相手にもそれ言えますかね?」

 

 そんなのは知らない。

 そこらへんはフィーリングだ。

 

「行き当たりばったりはフィーリングとは言いませんよ?」

 

「うるさいなぁ。人の心を読むなよ」

 

 なおこの身体は、日光が効かない。

 月光を吸収して結界のようなものを張っているのだ。

 代わりに夜の超強化特性を捨て去っているので、強さ自体は昼夜問わず変わらなくなっている。

 

 他にも吸血鬼特有の妖術、影操作。

 こちらは近くに居た褐色肌で筋肉質の魔物であるオーガに犠牲となってもらう。

 イメージとしては自分自身の影が伸びて、相手を拘束する感じである。

 黒い半透明の布に拘束されたオーガ。

 解除されるまで決して動くことができず、簀巻きに状態で地面の上を跳ねまわっていた。

 おれはオーガに腕をまっすぐ伸ばし手を向ける。

 

「メテオレイン」

 

 ……

 …………

 ………………何も起こらない? 

 おかしいな、この身体なら撃てるはずだけど。

 

「そもそもそんな物を撃った後の周りの被害を考えてくださいよ! 冷静に考えて隕石の雨って大惨事ですからね!」

 

 異世界の女神のくせに、細かいところにツッコミを入れる面倒くさい奴だな。

 しっかし、空は未だ白く曇ったままだ。

 いつまでたっても魔法らしきものが発動しない。

 魔法についてはアメリアから後で教えてもらうとしよう。

 今はとりあえず、おれは背中から大剣、宵闇(ノワール)小悪魔(リトル・デビル)を抜き放ち、吸血鬼の神速で踏み出す。

 大地は砕かれ、空気が弾ける。

 一瞬にして最高速度に到達したおれは、そのままオーガの胴体に突き刺す。

 筋肉質な身体は大剣を拒むことなく飲み込んだ。

 ……これ、やっぱ現実なんだな。

 手を伝う肉を引き裂く感触。オーガの絶命した目。そして今まさに命を絶ったんだという実感。

 死体は消えるわけでなく残ったまま。

 異世界である時点で闘争は避けられない。

 早く慣れる必要があるな。

 

「刺した後にその考えに行きつきます?」

 

「……それはそうとアメリア、おれは吸血姫なんだけど、……吸血衝動ってあるのか?」

 

「分からないです。でももしあるんでしたら俊さん……私の敵になるかもしれないですね」

 

 さらりと怖いことを言うな。あっても無くても敵対する気はない。

 戦う力はなくても、アンデッド相手なら戦えるってことか。

 流石、人間に手助けすることはある。

 

「俊ちゃん自分から吸血(きゅうけつ)(ひめ)って言っちゃうんですね」

 

「そういう種族だからしょうがない。あんまり気にしてくれない方が助かる」

 

 吸血鬼よりうえの存在だからね、一応。

 ちなみに吸血姫はアンデッドの中でも上から五番目くらいの強さだったりする。

 おれのキャラってアンデッド全体で見たらそんなに強くないって言うね。

 

「やーい、自称男の吸血姫、俊ちゃん!」

 

「うるさいっての!」

 

 すごく触りたくないが、このオーガ達は全てインベントリに入るようだし、死体に慣れると言う意味合いを含めて入れておこう。

 

「死体に慣れるも何も早々に殺したのは俊さんですけどね」

 

「お前さ、無遠慮に心に踏み込むの止めてくんない?」

 

「だって行動と心が一致しないんですもん、俊さんってば。衝動で逆張りして実は良い人なんです的なアピール止めません?」

 

 ……こいつ。

 ぶっ飛ばしてぇ。

 おれ達が森を抜けた先に広がっていたのは、天へと向けてそびえ立つ頑強なる灰の大壁。

 周りは堀になっており、魔物の侵入を防ぐ二段構えになっているようだ。

 隣にいるアメリアは「うわぁ!」と感嘆の息を両手で押さえている。

 門の両脇には槍持ちの兵士。

 通行チェックをしているのだろう。

 商人らしき人、兵士の鎧とは違う軽装をしている冒険者らしき人が並んでいた。

 アメリアがおれの肩を小突いてくる。

 

「そういえば身分証はどうしましょうか?」

 

「持ってないのか?」

 

「天上暮らしの女神ですよ?」

 

 つまりは持っていないと。

 ……どうするんだよ、もう並んでしまったじゃないかよ。

 かといって、ここで何もしないのは問題の先送りにしかならないか。

 男らしく腹を括るしかない。

 

「その恰好で男とか……」

 

「お前、マジで後で覚えていろよ」

 

 あれをロストしても心までは男で居たいんじゃい! 

 おれとアメリアは町の中に入っていく人達の列に並ぶ。

 そうして30分ほど、やがておれ達の番がくる。

 

「身分証を提示してください」

 

 槍持ち兵士は手を差し伸べてそう告げる。

 ここは正直に言うほかないな。

 アメリアはおれたち二人とも、身分証を持っていないと正直に言う。

 すると槍もち兵士は少しばかりおれとアメリアを交互に見やった後、こう答えてくれる。

 

「ひとり銀貨2枚でも大丈夫でしょう。冒険者証は身分証の代わりになるので、町に入ったら取得しておくと良いですよ」

 

「銀貨か」

 

 これまた、よくある異世界設定だ。

 だがどうしたものか、やはり金なんて物は持っていない。どの道は入れないのか。

 俺は一筋の希望にかけてアメリアに目を向けると、考えを読み取ったのか首を振る。

 ですよねー。

 

 おれは先ほど狩ったオーガをインベントリから出した後、この場に横たわらせる。

 無からいきなりオーガの死体が登場したからだろう。

 槍もち兵士たちは一斉に槍を構え、オーガの死体へと向けた。

 

「……死んでいるのか?」

 

「そうですよ。気になるなら槍で突いてもらっても。……それでなのですが」

 

 と、おれたちが現在金に該当するものを持っておらず、これが代わりにならないかと提案する。

 代わりになるはずがないけどな。

 けど中で換金することができれば、多少は懐事情が潤うだろうし。

 その金でここを通してもらうことができないだろうかと、おれは両手を合わせて頼み込む。

 槍持ち兵士は困惑する。

 

「それは構わんが……、お前たちは何者だ? 空間魔法だろう? これは」

 

 何それ? 

 空間魔法というと、収納魔法的な何か? 

 おれはアメリアへと目をやると、大方この認識であるのか首を縦に振った。

 まずったな……。

 ここで見せるものではなかったかと、おれは後ろ頭を描く。

 

「そもそも虚空から何かが出てきた時点で普通の人は驚きますけどね」

 

「一言多いんだよ、お前」

 

「隠したいなら隠れてからやるものですよ。堂々と目の前でやっておいて、やっちまったはそれこそ行動と言葉が一致してないじゃないですか」

 

「おれがオーガの死体を運んだらそれはそれで不自然だろうが!」

 

「だったら頭部だけ切断すれば良いでしょう? 頭良さそうなキャラなのに何ですか? 脳筋ですか?」

 

「首だけ持ってくとかそれこそ頭おかしいだろ!」

 

「秒で人型の生物を殺した人がそれ言います? そもそも日本人というのは、その多くが元首狩りだった話がですね?」

 

「それは戦国とかの話だろうが! 現代人に何期待してんだよ!」

 

「じゃあ少しくらい人型大の生物を殺すのに躊躇してくださいよ現代人!」

 

 ぎゃいぎゃい言い合いをするおれとアメリアを見かねてか、兵士は槍の尻で地面を叩いた。

 

「何か深い事情があるのでしょう。分かりましたが、身分証などが無い状態で、問題ごとを起こしたら追い出すからな」

 

 そう言って、槍持ちの兵士はこの場でオーガの死体を換金してくれた。

 手に入った分を引き算して、おれたちの手元に残ったのは銀貨が2枚である。

 

「分かりました。気をつけます。行きますよ、俊ちゃん!」

 

「ナチュナルにまたちゃん付けしたな! おい、まだ話は——」

 

 警告に対してアメリアが頭を下げてお礼を言うと、慌ただしくおれの手を引っ張ってくる。

 その様子に門番の男性は軽く手を振ってくれた。

 通り際に「可愛かったけど仲悪いなぁ……。あの姉妹」という、兵士の呟きが聞こえてきた気がした。

 誰がこんな奴と姉妹だ!

 それこそ終いだわ。

 おれとアメリアは改めて町に足を踏み入れる。

 そこに広がっていた景色は正しく、ファンタジーというほかない。

 木造の家や店、噴水広場に舗装された道。

 陽気な音楽が流れていそうな活気溢れる人々を情景を見ていると、自然と気分が高揚しそうである。

 しかして、これが異世界召喚にて得た有益だと思うと少しとはいえ怒りが込みあがる。

 そして隣のアメリアはといえば、

 

「俊さん俊さん、いい匂いしませんか!」

 

 っと、暢気にもアメリアは焼き鳥のにおいが漂う屋台を指さしている。

 

「その前に冒険者登録だろ。金ないんだから」

 

「あれ? まともなことを言うとか、さてはあなた俊さんじゃないですね! 本物の俊さんをどこへやったんですか! ……あっ、でも心読んだ感じやっぱり俊さんですね。こんなにコロコロと心が移り変わりするのは俊さんと子どもと妖精くらいしかいません!」

 

「てめぇ、置いてくぞ!」

 

 今にも駆け出そうとするアメリアの手首を握り潰す勢いで握り、おれはそのまま冒険者ギルドとやらまで連行する。

 あぁもう、こいつほんとにもう。

 天界に帰ってくんないかなぁ?

 もう天界に帰ってくんないかなぁ!?

 

  *  *  *

 

 青い3本の旗が目印の大型木造建築物。

 道行く人に冒険者ギルドの目印を聞きながら進み続けて25分ほど、おれたちは辿り着いた。

 中に入る前からでも、冒険者の喧噪が伝わってくる。

 ……気分が全く上がらない。

 元々身分証を創るのと財布にするためだけだから、当然と言えば当然なのだけど。

 

「もっと笑いましょうよ! こんな風に」

 

 アメリアはおれの口角を指で引き上げる。

 ……邪魔なんだけど。

 通れないし。

 

「性格やさぐれました? あっ、元からでしたね! ごめんなさい!!」

 

「どけよ」

 

「はいはい。反抗期というのは大変ですねぇ」

 

 親じゃなくておれはお前に反抗しているだけだけどな!

 じゃなくて、自由に見えて自由でない。

 冒険者らしくないんだよ、今のおれたちは。

 普通なら帰る手段を探すためにやるんだろうけど、おれたちの場合は全くの逆。

 むしろ二つの繋がりを断つためだけにいるんだから。

 やらなきゃならない。期限なんて最初から切っているようなもので、引き摺れば引き摺るほど勝手に利息が増える。

 ……クソゲーだよ。本当にさ。

 

「そもそも私たち、別に冒険者になるために来たわけじゃないですよね? お金のために来ただけですよね? 何ナチュナルに自分の鬱憤を冒険者に向けて発散しようとしているんですか? なんでもかんでも苛立ちを関係ない矛先に向けることは良くないですよ?」

 

「……あぁ! もううっせぇ! うっせぇんだよ! バーカバーカ! マジでお前、もう人の心を読む程度に性格悪い奴なのは分かったから黙ってくれないかなぁ? てめぇなんて女神ってだけでその辺の蜘蛛程度にどうでも良い存在だろうが! それとも何か? お前の言葉聞いたら金貰えんのかよ! それだったらいくらでも聞いてやるよ! ほら口開けよ!」

 

「じゃあ言わせてもらいますけど! やった後に心の中で反対のことを思い浮かべるの止めてくれませんかねぇ? はっきり言って、その辺の木々に止まっているセミよりも聞くに耐えないんですよ! 喋るならせめて犬くらい愛嬌出せませんかね?」

 

「上等だ、ならおれの声が聞こえないようにお前の耳を捥ぐから表出ろや」

 

「人の首を捥げないとか言った人の言葉とは到底思えませんねぇ?」 

 

 冒険者ギルドに入ってすぐに言い合いを繰り広げるおれとアメリア。

 そこへやってくる影がひとり。

 

「おう、嬢ちゃん達。ここは嬢ちゃん達のようなか弱い子が来るような場所じゃないぜ」

 

 酒が入ったグラスを豪快に煽るは、全身筋肉の鎧に身を包んでいるのではないかと思うほどの男性。

 思わずうるせぇと殴りそうになるも、兵士の言葉を思い出しておれは一歩止まる。 

 アメリアはというと、男性をじっと見つめてそっと頭を下げた。

 

「忠告ありがとうございます!」

 

「いいってことよ、依頼でも出しに来たのかい」

 

 ポージングを決めてかっこつける男性に、アメリアがここまでの経緯をかいつまんで説明する。

 もちろん、身分証が必要になるだとか、身元が不明になりそうなことは話さない。

 アメリアが心を読めるからこそ、この男性の内面を完璧に読み取ったからだろう。

 それは分かったから、人を盾にすんなよアバズレが。

 男性と別れ、アメリアはおれの足を見えない程度に軽く蹴り上げてきた。

 

「あれ見てください、俊さん」

 

 アメリアが指さす方を見ると、今のおれとそう変わらない体系の子どもたちがいた。

 カウンターらしき所で白髪のじいさんに、薬草を買い取ってもらっている。

 なんだ、子どもの冒険者いるじゃん。

 特におかしなことではないんだな。

 ところでなぜに子どもが冒険者をやっているのだろうか? 

 

「お小遣い稼ぎのようですね。……へぇ~、良いですね~。青春ですね~」

 

「うっわ、流石年増。野暮が分からない上に土足で心に踏み込む。嫌だなぁ~」

 

「……ふふん、まぁ今回は何も言わないであげます。私は大人なので。ところで、俊さんって学校で女の子の友達いました?」

 

「それを言ったら戦争だろうが」

 

 しかし何も言い返せない。

 おれの手を引っ張るアメリアは得意げな顔でおれの手を握り、冒険者カウンターまで引っ張っていく。

 冒険者の受付をしているのは、ハーフエルフの少女のようだ。

 容姿は萌えと美人の中間に位置していて、ふんわりとした笑顔は非常に可愛らしい。

 金色の髪を少女らしく腰のラインまで伸ばしており、服の上からでも分かるほど細くスリムな体形をしている。

 

「……フッ」

 

 そんな少女から、冒険者の説明にいくらかされたけどどうでもよかった。

 隣で鼻で笑ってきたアメリアを一発で良いからぶん殴りたい。

 魔力検査して異能力持っているかの診断をして名前書いて注意聞いて終了。

 それだけで簡単に冒険者の証は発行され、これで国や町を通れるようになった。

 ザルとしか言いようがない。

 ハーフエルフの少女はおずおずとした態度でおれを覗き込んでくる。

 

「何かご不満な点はありましたでしょうか?」

 

「気にしないでください。この子は普段からこんな感じなので」

 

 アメリアはおれの頭を軽く何度も叩いてくる。

 別に何も不満な点は無い。

 単純に虫の居所が悪いだけ。

 主に隣に居るこいつのせいで!

 おれは頭を下げ「悪い」とだけ謝った。

 ちらっとアメリアに睨みを入れて。

 ハーフエルフの少女はただ一言、「いえいえ」と手を振り冒険者の証を手渡してくる。

 手渡された冒険者の証は光り輝き、おれの身体の中へと吸い込まれていく。

 見ればアメリアも同様だった。

 

「冒険者は激しい動きをするので、無くさないよう体内に入れようって魔法が開発されたんですよ」

 

 ICチップかよ。

 これ、管理されているとかないよな?

 隠しこととかちょっとの悪いことが赤裸々になるとか嫌すぎるよ?

 

 もう既にプライバシーガン無視女が隣にいるからね?

 その後、出そうと思ったら念じれば勝手に出てくると説明され、やることも無くなったおれとアメリアは冒険者ギルドを後にする。

 依頼を受けることもなく外に出てきたおれに、アメリアは訪ねてくる。

 

「どこに行くんですか?」

 

「その質問自体既に意味ないだろ?」

 

「……俊さん。人に心読むなとか言ったくせに対話拒否とかおもしろーい!」

 

「あぁもううっせぇんだよ、お前は!」

 

 なんで初のヒロインがこんなウザい奴なんだよ!

 あぁもう、チェンジしてくんないかなぁ?




なろうの方を読んだ人なら分かりますが、ここの二人相当仲悪くなっています……。
そうなろうの方は……あぁ、読まない。
そりゃそうですよね!
実際、なろうの方はエチケット袋推奨です。
この先挿絵を入れる予定がほぼほぼ無い上に13話くらいしかありません。
それでも良ければ、ゆっくりしていってね!
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