異世界開闢の冒険譚。吸血姫となった元男、女神と共に世界を別つ冒険へ出る   作:氷水メルク

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吸血鬼討伐後

 

 隕石の直撃を思わず衝撃が地面へと振るわれた。

 おれの存在に気づいていたのだろう。吸血鬼の奴は攻撃を受けることなく、その場から蝙蝠へと変化しておれから離れた場所で元に戻った。

 解放されて地面へと崩れ落ちるアメリア。

 喉を抑えて疼きながら、涙と涎を垂らしておれを見上げる。

 

「ゴホッゴホッ、チキンちゃんなのに良く来てくれましたね」

 

「……」

 

 何を言えばいいのか分からない。

 大層な大見え切っといてあの様だったからなぁ……。

 バツが悪くなって、おれはそっとアメリアから目線を外す。

 そんなおれに対してかアメリアは立ち上がって横に並び立つ。

 からかう様に頬を突いてきて呟く。

 

「あれっ? 俊さん。今更恥ずかしがってます?」

 

「……うっせぇ! そんな元気ならやられんじゃねぇよ! 大体お前、重症だろうが!」

 

 さっきまで喧嘩してたろうに。こいつの切り替えの早さは何なんだ。

 あと指で突きすぎだ。

 いい加減痛いし、表情がウザいし、もう存在がウザい。

 なんでこうアメリアは楽しそうなんだ……。年の功か。

 おれは頬を摺り寄せようとしてくるアメリアを押しのける。

 

「あぁ、滅すべき死にぞこないが二匹に増えただけでしたか」

 

「真祖の部下である我を斬り、さらに無視するとはいい度胸だな」

 

 さっそく喧嘩を始めたおれとアメリア目掛けて、闇の塊が飛んでくる。

 おれはアメリアを押しのけ、宵闇小悪魔で闇の塊を一閃する。

 何か言ってる吸血鬼が、服に着いた土を払いながら立ち上がった。

 おれはすかさず軽口を叩く。

 

「真祖の部下ー? じゃあただの吸血鬼じゃねぇかよ。お前の主人がすごいだけで、お前自身何もすごくねぇじゃねぇかよ。……あぁ悪い。カマドウマに何言っても無駄だったわ」

 

「殺す」

 

 吸血鬼ことカマドウマは短い言葉をつぶやくと、顔が狂気で歪んだ。

 おれに向かって飛びだし拳を振り上げる。

 やられる前に何とやらだ。

 おれは真正面から立ち向かい、先にカマドウマの顔面を思いっきりぶん殴る。

 

「ぐぅ!」

 

「あっ悪い。カマドウマって見た目気持ち悪いからさ」

 

「おのれ、食料の分際で!!」

 

 コケにされたからだろう。カマドウマはなおもがむしゃらな攻撃を仕掛けてくる。

 うん、遅い。

 動きが止まって見えるは言いすぎだけど。

 だけどすんごいスローに見える。

 おれは大剣を薙ぎ払う。

 カマドウマは大剣が当たる直前に全身をコウモリにして飛び去り、距離を取って一匹を中心に元に戻る。

 

「……吸血殺しか」

 

「俊さんの種族でなんでそんなものをメイン武器に? ドMなんですか?」

 

 カマドウマだけじゃなくアメリアまでもが疑問に思ったようだ。

 宵闇小悪魔は吸血鬼特攻の、言わば黒魔銀と呼ばれる黒いだけの銀を用いて作られた特殊武器だ。

 なんでメイン武器にしているかと問われれば、そんなのロマンだからだ。

 あえて自分に対して特攻が働く武器を使用する。

 自分の種族に勝てない圧倒的弱者とも取れるし、弱点などものともしない圧倒的強者とも取れる最高のロマンだ。

 吸血鬼特攻の威力は自分で試したから折り紙付きだぞ。

 などとあえて懇切丁寧に説明してやるほど優しくない。

 どのみち、アメリアには説明できているから問題なしだ。

 ついでに邪魔だから離れて置いてほしいと念を送っておく。

 

「図に乗るなよ! たかが食料の分際で! 我はあの方に忠誠心を! ……あの方、誰だ? あの方って誰だ? そもそも我はなんでここに居る」

 

 カマドウマは背中から翼を出し、表面上キレているが目はしっかりとした理性を宿しおれに立ち向かってくる。

 こいつおれの動きにもう適応しやがった。

 おれの振りかざした刃をコウモリになることで躱し、懐に潜り込んできた。

 ちっ! ほんとめんどくせぇ能力だな! 単純で強いとか。

 

「我を散々コケにしたお前に、冥土の土産に見せてやろう」

 

 その言葉とともにカマドウマは体を大の字に広げ、俺の視界を埋め尽くすほどの、黒いコウモリに変え飛び上がる。

 その赤い双方携えた絶望の闇から、一切の慈悲なく赤い業火、緑の風で出来た鎌などの色とりどりで、確実に俺を殺すための魔法が放たれる。

 

 その光景はさながら弾幕シューティングのようだ。

 すごい目がチカチカする。

 でもわざわざ、こうして目を潰すような技を使うってことは。

 

「やっぱりお前、ただのクソ虫ってことだろうが!!」

 

 おれはコウモリ共のちょうど下から出ている影をテープ状に伸ばす。

 お前のおかげで目がチカチカしているんだ。

 影を作り出す光源は十分に保たれている。

 

「何ぃ!」

 

 吸血鬼の驚いた顔を見る限りあまりに予想外の光景だったようだ。

 おかげで全部縛り上げる事が出来た

 

「グォォォォオオオオ!!」

 

 コウモリたちは逃げようと身体をよじる。

 しかしその程度で、おれの影からは逃げられない。

 ひとつにひとつにコウモリたちを纏めていく。

 そして遂に全てのコウモリを覆い隠した。

 これで吸血鬼は完全に逃げられなくなった。

 完全に影で囲まれ黒い塊に、おれは何度も宵闇小悪魔を振るっていく。

 

「グアアアァァァ」

 

 影を解除すると、おびただしい量の血液が吹き出した。

 カマドウマはコウモリから元の姿に戻っている。

 今までのえらそうな態度を取っていたのにもかかわらず、今ではみじめに地面を転がる。

 何度も何度も血を吐き出し、苦悶の声を上げる。

 

「なぜだ。そもそもなんで我はここに……。あぁ、あの転移人……。あの転移人……。すべてはあの転移人がァァァァァ!!」

 

「なんだっておい!」

 

 何か遺言を呟いたカマドウマは二度三度小さく動いた後、完全に動かなくなり体を灰にして消滅した。

 戦闘後の静けさだろうか。

 それとも最後に不穏な置き土産をしてくれやがったせいだろうか。

 突き抜け風はおれの白く長い髪を巻き上げる。

 同時にカマドウマの灰を奪い、夜空を幻想的に光らせるのだった。

 

 

 おれはカマドウマを倒した後、余韻に浸ることもなく宿に帰った。 

 カマドウマが討伐された件については誰もが知らなかった。

 あの時、あの場に居たのはおれとアメリアだけだったから。

 町ではいつの間に居なくなっていた。いつかまた襲撃してくるんじゃないかってちょっとした騒ぎになっている。

 この状況で討伐したって言っても、子どもの戯言で処理される可能性の方が遥かに高いだろう。

 あまり公にする必要も無し。ほとぼりが冷めるのを待っていよう、って宿屋で療養をしていた日々だった。

 民衆の前で馬車が止まる。

 きざったらしいレッドカーペットが道を横断し、その上に使者らしき男が降り立つ。

 

「私はジュリアンと申します。あなたを城に招待しに来ました」

 

 まさか国からおれ当てに使いが出されることになるとは。

 非常にありきたりで詰まらず、カマドウマ……じゃなくて吸血鬼討伐に関して公になっていないのにも関わらず、こんな事態になっているのには理由がある。

 これはそう、だいぶ前のことである。




元の戦闘描写が無駄に長ったらしい……。
削除削除して削れたのは2000文字。
元が5000文字近く。
過去の私えぇ……。
なろう方はそのまま置いてありますが、文字数に反して内容ペラッペラすぎるんよ。
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