異世界開闢の冒険譚。吸血姫となった元男、女神と共に世界を別つ冒険へ出る 作:氷水メルク
カズキ?
いや、カズキなんて名前は日本中を探せばいくらでもいるか。
というか、アメリアがシュンって。
女神がアンデッドに間違われてやんの!
アンデッド臭いんじゃねーの?
アメリアはおれの肩を掴み男性の前へと押しやる。
「俊ちゃんはこっちですよ。お風呂に入らず服も着れないお姫様です」
「これは失礼。女性を間違えるなど」
男性はおれの手を掴み……、なんとなく何をするのか察したので嫌悪感剥き出しでアメリアの背後に隠れる。
アメリアはおれの肩に手を触れると、無理やりにでも押し出してくる。
「すいません、この子伊達男憎悪症でして」
「そうですか。断られたのは初めてですよ」
そう言って笑う男性。
けど相も変わらず目は笑っていない。
こいつ……一発ぶん殴ってやりてぇ。
どうせ女性は笑顔を向けていればくらっと来るんだ的なこと思ってそうだ。
あぁムカつく!
イケメンなんて死ねばいい。
間に入るのが当たり前のように思う奴は死ねばいい。
この世のイケメン全て、この世すべての呪いを受ければいい。
これには心を読めるアメリアも同意見だったのだろう。
「あまり私たちを舐めない方が良いですよ?」
と、言って牽制する。
こちとらひとり神でもうひとりが吸血姫だからな。
物理的にも余裕だぞこの野郎!
外面だけ完璧男はひとつ「これは失礼いたしました」お辞儀をする。
「口だけでは何とでも言えますよね。それで今回は……あぁ。やってしまいましたね、俊さん」
「何を?」
異世界転移者よろしく能力を見せびらかすことは一切していないし、吸血鬼の時は誰にも見られていなかったはずだけど。
何? 何かやらかしたことあった?
「錬金板」
「錬金版……、あぁあれか」
錬金版とは錬金術を使うためだけに使用する道具。
道具を登録し、錬金するために必要素材分のポイントを支払うことで、登録した道具を生み出すことができる。
まぁ、それだけの道具なのであるが名前の通り錬金である。
土とか埃とか何なら水素や酸素、空気といった物からでも金を生み出せる。
そんな一見、チート級の能力を持った錬金版なのであるが、しかしおれのプレイしていたゲームでは大して使えない道具なのである。
それというのも、金を生み出せるからなんだって話だ。
あのゲームで価値があるものといったら、エンチャント等の魔力が込められた宝石や貴金属、それに連なる道具たちだ。
錬金版は流石にその込められた魔力までは再現できない。
あくまで生み出した後、苦労して手に入れる必要のあるスキルやらを用いて、ようやく取引できる代物になる。
ある程度戦えるプレイヤーならば、わざわざそこまでする必要はなく。
ダンジョンやら依頼やら、何やら強奪といった手で手に入れる方が実に速いのである。
とはいえ、この世界はゲームじゃない。
ずるいとは自分でも思うが、適当にその辺の土を錬金して、できた金を売りまくっていたら、こうして目を付けられたってわけか。
しょうがない。
懸賞金が掛けられる前に吸血鬼を倒してしまったので報酬とか無かった。
命懸けなのに金が一切支払われないとか、本当に働き損である。
唯一手に入れた名声も今までが今までで地に落ちたしね! アッハハ!
「十割俊さんが悪いですね、あれは」
「はぁ? また妄想癖ですか? あぁやだやだパーソナルに異常ある奴は」
「異常も何も俊さんの言葉はカビですからね。立てば水仙座ればクローバー歩く姿は
「花のことなんか言われても分かんねぇつの。つか誰がカビだよ泥ヘビ野郎が!」
おれは上を向く形でアメリアとメンチを切り合う。
外面だけ完璧女を十人以上泣かせていそうな男が困った顔で手を叩く。
「そ、それでこちらの話を聞いてはくれませんか?」
「そういえばそうだわ。アメリア、要約」
アメリアは片目を閉じて外面完璧男を見る。
心を読まれていることなど露知らず、困り果てた顔である。
アメリアが口を開く。
「不思議な錬金術を使う突如として現れた日本人っぽい名前の少女。吸血鬼を倒せる実力から転移人の可能性があるから連れてこい、だそうです」
「はっ、死ね」
「もう少し心の中に留めたらどうです?」
少しでも戦力が欲しいと……、囲い込む気満々だな。
うーむ、行く価値なくね?
最終的に召喚をさせないようにするわけだし。
一個人に呼び掛ける必要とか無いよな。
しいて言うなら、騙してダンジョン自体を把握するとか?
予言めいた言葉を掛ける……いや、それも無理だな。
異端とか言われて一アウトだ。
……まぁいいや!
潰そう! この王国!
王様が死ねば異世界召喚できないだろ。
「イェーイ! さっすが俊さん! 人でなしのろくでなし魔女!」
今回はあえて無視をしてやろう。
傍から見ればいきなり人をディするやばい奴にしか見えないはずだ。
おれは頭おかしくない。
おかしいのはアメリアだけでーす。
外面だけ完璧女性の十人以上は泣かせていそうなクソプレイ野郎がぼやく。
「心の中で何を思ったのでしょうか、この人」
「喜んで謁見するって考えたのに、心を読める奴は事実改悪できるからずるいよなぁ」
「外面だけ完璧女性の十人以上は泣かせていそうなクソプレイ野郎に媚びる俊さんが言います? それ」
「いきなり悪口とかお里がしれますねぇ、夜の女神」
「いやはや俊さんには敵いませんよ」
アッハッハ!! っと、おれとアメリアは笑う。
外面だけ完璧女性の十人以上は泣かせていそうな妄想癖クソプレイ野郎が、見るからに帰りたそうな顔をする。
アメリアが片目を閉じる。
「せめて男の前では隠せよクソ阿婆擦れ共ですか? へぇ~? 外面だけ完璧女性を曜日で呼んでいそうな誇大妄想クソプレイ野郎さん?」
「おいおい、更年期だからって偏執病を患うなよ。あっ、おれたちは行くことにしたんで。答えはイエスだ!」
「ど、どうぞお入りください」
外面だけ完璧女性の十人以上は泣かせていそうな妄想癖クソプレイ野郎……、長いから妄想男は馬車の扉に手を掛けて、おれとアメリアを招き入れる。
座席が固いなぁ。
せめてクッション辺り付けておくべきだろ、転移人いんならよ。
妄想男が馬車の扉を閉じる。
御者に一声かけて馬を走らせこの場を後にする。
女性の黄色い声は聞こえてこない。
だいぶ前からおれとアメリアにドン引きして離れていたのが見えたからね。
すごい妄想男に同情的な視線を送っていたよなぁ。
アメリアは女神の翼を広げると、羽ばたくことなく馬車の中で浮遊する。
ここに来て初めて妄想男が鉄仮面を外して驚いた顔を晒す。
「まずは自己紹介から、私はアメリア。この世界の女神です!」
「おいおい、夜のが抜けているぞ? ちゃんと自己紹介したらどうだ?」
「はいでは次、夜の女神のオトモをしている蝶の俊さん! 自己紹介をどうぞ!」
「はい、おれは夜の女神をしている蝶の俊ですけどね。って誰が夜の蝶だ! 吸血姫だ!」
「っと、こんなこと言っていますけど、夜になると途端に衝動に駆られて生を狙うだけの姫なので! まぁよろしくです!」
妄想男は「はっ、はぁ……」と絞り出すように声を出し、その顔はもう既に顔面蒼白で嫌そうである。
というか完全に引いてる。
あぁ、自分たちだけは楽しくてやっているつもりなんだろうなぁ的な憐れみさえ感じる。
おいおい、お前が連れてこいって言われたんだから嫌そうな顔をするなや!
お客様は女神様だぞ?
多分、心の中でクッソ汚いとか思っているんだろうなぁ。
おれは男なので察せられるわ。
おれは男なので!
アメリアは無言で親指を立ててくる。
はい当たり~!
妄想男がおれに目を合わせて聞いてくる。
「どこ生まれですか?」
「病院、しいて言うなら母体からかな」
「もっと広く! 何かあるでしょう? モョモフとかサンタナとか!」
「じゃあ河西市咖喱町」
「もう一声できませんか?」
「東京都」
「……やはりそうでしたか。何か目的とかはあるのですか?」
「CSBを、ぶっ壊す!」
妄想男からすごい嫌煙したい感じの空気が伝わってくる。
真面目に話すわけないじゃん。
この世界をぶっ壊すなんてさ。
「どこかの国に所属していますか?」
「ヘブンアゲハ」
「……場所を教えてください」
「そんな夜の国あるわけないじゃん、馬鹿なの? 勉強不足なの?」
「……じゃあどこ所属……ですか?」
「"無"に所属!」
「無所属ですね」
妄想男めっちゃ手や顔が震えているけど、カルシウム足りているのだろうか?
もっと心に余裕を持たないと後がきついぜ?
妄想男が窓の外へと目をやる。
「そろそろ付きますよ。マリンネアへ」
……なんか言おうとしたけど何も思いつかないので止めた。
マリンって付いている辺り、水の国か何かなのだろうかなんて考えると、ふと何か脳に電流が走る。
おれも同じように目を向けて見ると、何か不思議な雰囲気を放つ一帯があった。
言葉には言い表せない胸がざわつく気配。
心の底から何かがあると訴えかけられるかのような。
アメリアがおれの頭を上から押さえつけて言ってくる。
「あ! 俊さん。あれ。あれダンジョンですよ!」
「見えているし、窓近いのはお前なんだが?」
「ここ以外だと後四か所ですね!」
「聞けや」
こんな近くにあったのか。
もう少し早く動き出せばよかったかもしれない。
国との距離もだいぶ近かったようで、馬車はすぐに山を思わす門の前で立ち止まる。
妄想男が外に下り、見張りをしている兵士と何か数度やり取りをする。
数分するころには、やり取りが終わったようだ。
再び妄想男を入れた馬車が出発する。
* * *
マリンネアはまさに賑やかという言葉を体現したかのような、石作の街並みだ。
道には水路が設置されており、穏やかな水流の音が耳を打つ。
以上。
「活気があふれていて、すごいですね俊さん!」
「これから、この国は消滅する!」
「ノリと勢いだけで喋ると後々後悔するかもしれませんよ?」
城の前に居た兵士たちが馬車を敬礼で出迎える。
いつの間に翼を消していたアメリアがおれを抱えたまま馬車から降りる。
妄想男に案内されるがまま城の中を歩いていく。
血に濡れた赤いカーペットに、冷気を発する石レンガ材料。
あと花瓶とか、趣味の悪い誰だよ、な絵画。
全身フル装備の兵士とか夜な夜な動きそうだ。
趣味の悪い成金みたいな城の内装を見せつけられること数十分、
「そろそろつきますよ」
妄想男がこちらに振り向きそう言う。
よっしゃ下剋上だ!
おれはこの腕を振り上げて、今こそ王をこの手に掛けるのだ!
逆襲の狼煙を上げろ!
今こそ粛清の時だ!
妄想男が重低音を鳴らして扉を開けた。
すぐ正面、階段を数段上がった先の玉座に座る青年がいた。
……あれ、あの顔は。
あの頃から変わっていない。
マントや王冠、王様然とした装備と似つかわしくない服装をしているけど間違いない。
……嘘だろと思いながら、ついおれは言葉を漏らしてしまう。
「……和樹?」
二年前神隠しに会って行方不明になり、ついぞ見つからなかったおれの友人。
和樹が二年前にいなくなった姿と変わらず、国王の椅子に腰掛けていた。
誤字脱字報告ありがとうございました。
この主人公、これはあまりにも酷いですもんね。
誰に対してもこれなのではなく、作中である通りジュリアンがイケメンな為に酷いキャラと化しています。
アメリアは言わずもがな。
立てば水仙座ればクローバー歩く姿は
水仙:自惚れ
クローバー:復讐
ロベリア:悪意