異世界開闢の冒険譚。吸血姫となった元男、女神と共に世界を別つ冒険へ出る   作:氷水メルク

9 / 11
交渉成立と城でのご飯

 

「……はぁ、無い?」

 

「昔から思うことがある。なぜ、世界を救う勇者になぜ王様という野郎は棒と草しかくれないのか。世界を救うというお役目を貸すのに、なぜ3000ぽっきりしかくれないのか。逆じゃないか? 勇者ならばもっと強請っても良いのではないか? 世界を救えるのはお前だけだと言われているのなら、それこそもっと報酬を与えても良いのではないか。って、どこぞのロリマザコンが言っていたんだけどどう思う?」

 

「王は要求する側。勇者は要求を受ける側。今まさにお前は俺に要求をしているわけだが?」

 

「だが、おれが仕事をしなければ世界の崩壊を招くわけだが?」

 

「別にお前である理由はない。そうじゃないのか?」

 

 和樹はアメリアに目線を送る。

 それにアメリアは無言でうなずいた。

 

「あれは勇者の血を引く者だからこそできることであり、このお役目事態はお前がこなす必要ない。何なら俺が他の転移者に呼び掛けて杭を打てば、それで良い話。だろう?」

 

「それもそうだよな。なんでおれを呼んだんだ?」

 

「多分、お前だからこそ俺を説得できるとでも考えたんじゃないか? 女神さまが」

 

 隣でアメリアが口の端を広げに広げ、引き気味におれたちを交互に見る。

 似たもの同士は究極惹かれ合うんだよね。

 おれは自分の頬に指を当て、可愛らしく首を傾げてみる。

 

「で、何が欲しいの? おれのパンツ?」

 

「寝言は寝て言えロリビッチ。百歩譲ってそれが報酬になるとして、お前のだけは絶対にない」

 

「じゃあ何が欲しいん?」

 

「お前の全て」

 

「やだっ、和樹ってば既婚者なのにもう愛人を作ろうっていうの? ……不束者で良ければ」

 

 和樹の真摯な表情に、おれはわざとらしく指同士をポツポツと合わせる。

 顔を見れずにそっぽを向く演技を忘れずに。

 

「あぁ、俺はお前の道具、全てが欲しい」

 

「なんてこと、和樹ってばわたしじゃなくて道具の方が目当てだったのね! なんて酷い人、傷ついたわ! シクシクシク」

 

 おれは感情を吐露するように叫び、わざとらしく目元に手を当てて泣き真似をしてみる。

 

「ちっ、違うんだ! 俺はお前の――」

 

「もう知らない!」

 

 手を伸ばす和樹に合わせておれはそっぽを向く。

 そんな愛人メロドラマを二人でしていると、アメリアが口に手をやりながら嗚咽する。

 

「……この茶番、いつまで続けるんです? 男と元男同士で」

 

「正直そろそろ吐き気してきたから止めようかと」

 

「右に同じく」

 

 おれと和樹が二人して同意したことで、この茶番は終わりを迎えた。

 こういうやり取り自体、懐かしくてついね。

 和樹は二十年、おれは二年くらい振りだから。

 男と元男同士でやるネタじゃないので、吐き気がしたのも事実なわけだけど。

 

「本題として錬金板が欲しい」

 

 和樹の言葉にほいっと、おれは机に錬金板を放り投げる。

 元よりいらんわ、こんな物。

 和樹は錬金板を拾い上げながら問いかけてくる。

 

「良いのか?」

 

「ミスリルとか生成できないんだもん、それ」

 

「こっちの世界で試したのか? お前が死んでも消えない程度に、能力によって生み出された物は現実味を帯びているぞ?」

 

「魔力の籠った道具を生成できないんだもん」

 

「……じゃあ遠慮なく貰っとく」

 

 和樹は錬金板を隣に置き、口に人差し指を立てた。

 静かにしていろって合図?

 ……まっ、こんな取引見られたらそれこそまずいか。

 黙っていよう。

 妙にアメリアが口を手で覆い隠し、煽るような顔でおれを見てくるのが気になるけど。

 

 和樹はもうこの話終わりだと言わんばかりに両手を上げる。

 それから真面目な話を抜けて、おれたちはお互いの世界での出来事について話していく。

 二年分の学校の事や、この世界で驚いたこと、ただただ無駄な会話など積もりに積もった話を二人でする。

 アメリアは茶々を入れることなく黙って聞いているだけだったが、途中で完全に眠りこけやがった。

 

 話を聞くにこの国は前の王様が次期王を任命する形らしい。

 それで人々を引っ張る系の異能力を持つ和樹が指名されて、今は国の民の為に毎日働いているようだ。

 

「異世界召喚と言えば今なんか生物を惚れさせる能力持ちの奴が暴走しているらしいぞ。気をつけろよ? 精神的BLになるぜ?」

 

「それって女性であれば強制的に発情状態にさせる的な?」

 

「そんなじゃないか? ……まぁでも大丈夫の可能性もあるか。この世界の性別って身体じゃなくて魂に宿るらしいし」

 

 確かに、魂が男のおれなら大丈夫……吸血鬼も男だったよね?

 あれ?

 その能力多分、男女関係なく発動しない?

 なんか嫌だわ。

 相手が誰であれ発情状態になるとか、それこそ夜の女神の出番じゃないか。

 ダンジョン行かないといけないのに、もう外に出たくなくなったわ。

 

  *  *  *

 

「今日はもう夕方だし、せっかくだから泊って行けよ。城の豪華なおもてなしを見せてやる」

 

 和樹はからかい交じりな表情で言いながら腰を上げる。

 おもてなしねぇ……。洗礼、じゃなければいいんだけどな。

 唐突にバン! と音がしそうなほど勢いよく開かれるドア。

 最初に部屋へ入ってきたのは魔法少女風の衣装に身を包んだ少女。

 今更何が出てきたところで驚きやしない。ただちょっと、暴力的脅かし表現に身を怖がらせたのは内緒である。

 

「魔法少女、マヤちゃんだぞ! 気軽にマヤと呼んでいいよ、よろしくね!」

 

 そう名乗りを上げて屈んだ膝の上に右手を置く。

 左手はチョキにしたものを、目の横に当て、キラッと、効果音が鳴りそうなウインクをしている。

 きらっとポーズを決めて見せるマヤに何となく和樹の趣味が全開で感じられる。

 湖を思わす水色の髪に碧色の瞳。

 なるほど、髪から飛び出た三角形の耳は正しくエルフ族の特徴だ。

 続けて入り込んできた初老の男性が見事な所作で恭しくお辞儀をする。

 

「ガルグだ、よろしく頼む」

 

 堂に入った態度にアメリアが言葉を漏らしていた。

 騎士の鎧といい高身長といい鎧の隙間から見える極太の腕といい、戦場でなお存在感を放つ老骨兵って感じだ。

 和樹はマヤとガルグの肩に腕を回し、にやりと不遜な笑みを浮かべる。

 

「紹介するぜ、ガルグが騎士隊長、マヤが宮廷魔導士だ。転移者一強の世界だが、こいつらは二人して強いからなぁ」

 

「ふーん。あれか? 一応強い奴がいるから心配すんなって言いたいのか。それとも国に牙を向こうものならって言いたいのか」

 

「どっちもだ」

 

 そんで和樹は一国の王たる威圧感たっぷりな態度で返事をする。

 ……あんま強そうには見えないんだけどな、二人とも。

 実力を測ったわけでもないし。

 それとも和樹がいるから強くなれるのか。その辺は知ったことじゃない。

 

 心なしかマヤは嬉しそうに「和樹様ぁ……」と、和樹の裾を掴み、自らの胸を押し付けるようにして。

 ……あぁ、国王ラブ勢か。

 和樹とおれ、どこでこんなに差がついたのか。

 

「そりゃ性格終わった人がモテるわけないじゃないですか! 聞いてくださいよ! この人、所見時で阿婆擦れとかビッチとか夜の女神とか言って来たんですよ!? 酷くないです? 食事中に風俗と童貞の関係性についての話しますし、未だに私の手を借りないと服を着ないしお風呂も入らないんですよ!?」

 

「俊……お前、流石にそれは無い。なんか……うん、根は悪い奴ではないんで頼んます女神様」

 

「はぁああ? はぁああ!? おいおいおいおい、吸血鬼に発情していた奴が良い御身分ですね? おれが来なかったらもしかしてそのままおっぱじめていた可能性あるんじゃないですかねぇ? そ・れ・に、童貞の話はアメリアから先に来たんだろうが! お前が!」

 

「それ、敵の能力の影響だろ? アメリアが問題じゃねーじゃん。童貞風俗に関しては乗ったお前もお前だ。つか、二年で随分ドロドロするようになったなぁ俊」

 

「ドロドロするようになったのはここに来てから。つまりおれをこの世界に連れてきたアメリアが悪いでーす。QED証明完了」

 

「はいはい、もう分かったから行くぞ」

 

 和樹はおれの両肩を掴むと、アメリアから放すように押していく。

 なんかおれだけ陰湿な奴みたいな扱いされてんの納得いかないんだが?

 アメリアも割と……割と……。

 そういや、魔法の時とかスキル確認とか真剣に付き合ってくれたっけ。

 話をするときはなんだかんだ乗ってくれたし、今でも普通に着替え手伝ってくれるし。

 ……もしかして、一番子どもっぽいのはおれ?

 アメリアに感謝しないといけなかったり?

 いや、そんなことは無いわ。

 心に土足で踏み込んでくる辺り、やっぱり性格クソだわ。

 一瞬、ほだされそうになったわ。

 危ない危ない。

 今こうして葛藤しているの、アメリアに筒抜けだよな。

 ……あぁ! 最悪だわ!

 

  *  *  *

 

「そんで和樹さんや。何でラーメンなんだ」

 

「何でって、ラーメン好きだったろ?」

 

 部屋でさっぱりしたおれとアメリアを待っていたのは見たことのある渦巻が描かれた丼だった。

 そう、ラーメンである。

 ……なんでや。

 豪華な食事ってラーメンかよ。

 ……別にいいけどさ。

 白いテーブルクロスが敷かれた高級机の上で食べるご飯がラーメンて。

 においは完ぺきに模倣しているようで味噌の香ばしいにおいが漂う。

 生唾を飲む。

 傍から見れば多分、おれの目は輝いていると思う。

 けどな? 

 おかしくない?

 分かるよ。ラーメンだもんな。

 ラーメンと言ったらサイドメニューで頼むのは分かるよ。

 けどな?

 アメリアが皿を高く掲げる。

 

「ギャーザとか分かってますね! にんにくは遠慮したいところがありますけど、それでも偶には良いですよね! あれ? 俊さん食べないんですか? ねぇ、食べないんですか? 美味しいですよ? ほらほら! 食べましょうよぉ!」

 

 ラーメンのすぐ横に置かれているギョーザ。

 草を生やしまくるアメリアがウザいけど今は怒りたいのはそっちじゃない。

 和樹はおれの目を見ずアメリアへと顔を移動させる。

 

「お代わりはいくらでも」

 

「おい、こっち見ろや」

 

「悪いことをしたらちゃんと躾けるのが我が家の家訓でな?」

 

「おれはお前の子じゃないんだが?」

 

「大勢の部下の前で性癖をばらされたの、これでチャラにしてやるからよ!」

 

 和樹は陽気なニコニコ笑いでおれの背中を叩いてくる。

 あれか。

 あれを引き合いに出されたら、おれは何も言えないじゃないか。

 念を送ってみたらアメリアがじっとこっちを見つめてきた。

 

「好き嫌いはメッ! です」

 

「喧嘩売ってんなら買うぞ女神」

 

「別に死にはしませんよ」

 

 和樹とアメリアがおれの愚痴で盛り上がっているのがすんごいムカつく。

 どんだけ愚痴が飛び出てくんだよ、和樹。

 完全にアメリアが聞く側に回っているじゃねぇかよ。

 良いネタが増えたとばかりにいやらしい顔をするし。

 

 若干の居心地悪さを感じながらラーメンを啜る。

 これがまた美味しいのが腹立つ。

 

「負けないよ!」

 

 それと目の前のマヤだっけ? が、おれに指を突きつけてくる。

 何に対して負けないのかは理解できないので、勝負する気もないです。

 あー、ラーメン美味し。

 

「ムゥー! カズキちゃんとはいつからの付き合いなの!?」

 

「……割と小さいころから。一応、あいつ王様だよな?」

 

「具体的には!」

 

「小学生のころから……って通じるか?」

 

「幼馴染ってこと?」

 

 昔っから性格がこんななので、誰とでも分け隔てなく接する和樹くらいしか友達出来んかったのよね。

 他の男子からはよく指をさされて笑われるし、女子にはこちらから近づくこと自体無かったし。

 中学に上がれば性格が災いしてその状態のまま続いて、気づけば周りとは疎遠に。

 同じくらいの学力だったから、同中で高校になったの和樹しかいないから割と腐れ縁よね。

 

「まぁ、そうなるか。……あいつ、もう結婚しているんだろ?」

 

「この国は何人とでも結婚して良い決まりだから。これは王様も例外じゃないの」

 

「ふーん、次期国王とかどうすんだよ」

 

「この国、王家の血筋とかあんまり重要視してないの。優れた統治者、先導者がいるなら一任するって感じ。国民とか城とかからね」

 

「民主制だっけか? 日本と同じかよ。つかそれ、和樹も国王から引き摺り降ろされるじゃん」

 

「そうかもね。でも、和樹ちゃんは能力が能力だから。それに良いの。私は能力とか関係なく和樹ちゃんの人柄が好きだから!」

 

「確かに人柄は良いよな、あいつ」

 

 どうでも良いけどなーと、おれはスープをなんの躊躇なく飲んでいく。

 

 おぉ、味噌の濃厚なコクが良く出ているなぁ。

 舌触り滑らかで口に含んでもしつこくない。

 だからなのかジュースのように飲みやすい。

 ちゃんとラーメンのスープらしく、後で喉が渇きを訴えてくる。

 その渇きを鎮めるようにまたスープを飲む。

 これ、ちょっと止められないくらい美味いわ。

 和樹の言葉は正しかったんだけど、いったいどこに情熱を注いでいるのか分からんわ。

 マヤはおれにギョーザの乗った皿を突き出してくる。

 

「はいこれ、ニンニク抜きギョーザ。和樹ちゃんがシロちゃんのために用意したみたいだから食べて食べて!」

 

「シロちゃん!?」

 

「だってホワイト・ブラッドでしょ? だからシロちゃん! もしかしてシユンちゃんの方が良かった?」

 

「おれはシユンでもシロでもなく俊だ!」

 

「じゃあブランちゃんで!」

 

「……もうシロでもシユンでも好きなように呼べよ。だからブランは止めろ」

 

「じゃあシロちゃんって呼ぶね! よろしくね、シロちゃん!」

 

 そのままマヤに「食べてみて!」とギョーザを渡される。

 においを嗅いでみると、確かにニンニク独特の癖になる刺激臭を感じない。

 どうやら本当にニンニクは入っていないようだ。

 外はカリッとしていて、一口齧ると肉汁が飛び出してくる。

 おれは醤油とラー油と酢を混ぜた物をギョーザの中に直接注いでまた食べる。

 ……ここまでやっておいて何だけど、おれってばギョーザは旨味の違いを理解できていないのよね。

 ただ美味い。ニンニク抜きなのによく再現されている。

 マヤは引っ付くようにおれの肩を抱いてくる。

 

「幼馴染相手でも負けないからね」

 

「大丈夫だ、幼馴染ってのは負ける宿命だから」

 

「それと、今度服を買いに行こッ! せっかく可愛いのに白Tシャツと半ズボンは勿体ないよ!」

 

「いや、だから」

 

「アメリアちゃーん! 今度シロちゃん借りていーいー?!」

 

 花火のように弾けた笑顔でマヤはアメリアに手を大きく振る。

 ウザい。

 一言、かなりウザい。

 距離感の詰め方が異常にバグってる。

 これ本当に宮廷魔術師なの?

 その辺のアニメに登場する元気で誰とでも仲良くなれる、弾ける笑顔の女の子主人公と言われた方がまだ納得いくぞ。

 アメリアは手で口を隠す。

 

「フッ、良いですよ! フッ、いっぱい、プフッ、楽しんできて、フフフッ、くださいね! アッハッハ! お腹痛いです!」

 

「その日は有給休暇にしてやるよ、マヤ」

 

 流れるように和樹も満面の笑みで結託する。

 畜生あいつら覚えてろよ!

 

「決定! じゃあ行こうね!」

 

 マヤは拳を高く掲げて全身で感情を表現している。

 ……勘弁してくれよ。

 この有無を言わせない感じから逃れるように、おれはニンニク抜きギョーザを口に運ぶしかないのだった。





いつものようにノベルAIでマヤを描いてみました。

【挿絵表示】


弾ける笑顔が中々作画されなくて苦戦しました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。