プロセスとしては三話までと同じように自分が文章を書き切り、その後AIで描写などの加筆修正を行わせたものになります。
そのため展開と基礎の分は僕の考えたオリジナルですが、気になる方はご注意ください。
面倒なことになった。肇の奴が余計なことをしなければ、さっさと安全にとっ捕まえられてたってのに!
だが、考える間もなく状況は動き出す。思考を巡らせる暇はない。既に六体の分身が、一斉にこちらに向かって突進してくる。
「肇!」
鉱平は短く叫び、後ろを振り返らずに指示を出した。
「俺が前に出る! 討ち漏らしたやつは、お前がなんとかしろ!」
「了解です!」
二対十。いや、相手は分身を増やせる可能性もあり、人数差はそれ以上だと言える。さらに言えばこちらは異能を使えない新人と、非戦闘系の異能を持つ俺……こちらが圧倒的に不利だ。だが、よく見れば分身の数は最初の数から増えていない。おそらく十体が最大数か、それとも魔力の制約があるのか。途中で止められてしまったが、最初の奇襲で奴の魔力をかなり削ったはずだ。異能を使うには魔力が必要だから、無尽蔵に増えるわけではないと見ていい。
分身たちがこちらに迫る中、鉱平は冷静に相手の観察を続ける。走り方は素人臭いし、武術の型も皆無だ。それなら……。
「俺たちの方が勝てる!」
自らに言い聞かせるように声を上げ、鉱平は足を踏み出した。
「はあっ!」
魔力を全身に巡らせ、筋力を強化。あらかじめ生成しておいた柄と穂先のみのシンプルな形状の銀の槍で、敵を狙い定める。その一突きで、一体の分身の頭を貫いた。
頭部を貫かれた分身は泥のように崩れて消えていく。
その様子を見て、鉱平は確信を持った。分身一体一体の耐久力はさほど高くない。これなら、凌げば勝機はある!
「肇! こいつら脆いぞ! 頭を狙え!」
◇◇◇
絋平さんが最初の一体を槍で貫いたかと思うと、続けざまに二体、三体と冷静に分身を撃破していく。だが、それでも人数不利な状況に変わりはない。当然、俺にも分身たちが向かってきた。敵の一体が拳を振り上げ、俺を殴りつけようとする。
「てめえよくも__」
「騙して悪かったな。でも許してくれ!」
迫る拳を横に受け流し、魔力で強化した拳を全力で相手の顔面に叩き込む。鈍い音が響き、骨がぶつかり合う衝撃が手に伝わる。その感触に、思わず顔をしかめた。
短期間だが灰吼宮さんの指導で基礎的な武術は学んでいた。戦闘経験のない相手になら、これくらいはできる。ただ、人を殴るのは初めてだった。
数瞬の間を置き、俺はまだ戦闘中だという事実を思い出す。足元に転がった田中の分身を見下ろせば、白目を剥いて気絶しているようだった。だが、その体は消えていない。
気が引けたが、分身だと自分に言い聞かせ、何度か打撃を加える。すると、肉体が泥のように崩れて消え去った。
よし、俺でも勝てる! 異能はまだ使えないが、魔力による身体能力強化の訓練が役立った。だが、浮ついた心に油断が生まれる。
「肇、次が行ってるぞ! ぼーっとしてんな!」
絋平さんの怒声にハッとする。前を向けば、もうすぐそこに別の分身が迫っていた。その手には鈍く光る包丁が握られ、今まさに突き出されようとしている。
やばい、回避が間に合わない!
「ぐ、あああ!」
抑えようとした手が貫かれ、そのまま地面に押し倒される。背中が地面に叩きつけられ、息が詰まる。
「かはっ……」
馬乗りになった分身が両手で包丁を押し込んでくるたび、肉が抉れ、血が飛び散る。あまりの激痛に意識が遠のきかけた。
「ここで死ね!」
振り下ろされる刃が胸に突き刺さり、鋭い痛みで目が覚める。嫌でも脳裏に思い出されるのはあの殺人鬼に腹を裂かれた死の間際の記憶。そして――。
「てめえには異能がねえんだろ! あったらとっくに使ってるはずだからなあ!」
何度も突き立てられる包丁。そのたびに血が溢れ出し、死の影が濃く迫る。死を回避すべく肉体が本能で回復を始めるが、出血によるダメージの方が遥かに多い。
その瞬間、鮮明になった意識は訓練の時とは異なる新たな魔力の流れを捉える。これまでの部分的な流れではない。全身を巡る、まるでうねりのような感覚――。
ピースが噛み合うような、霧が晴れるような直感が肉体に伝わった。
「あ? い、いてえ! なんだこいつ!」
包丁を握る敵の手を掴み、そのまま捻る。骨が砕ける感触が伝わり、敵が苦痛に呻く。それでも手を捻り続け、包丁の切っ先を敵自身に向けた。そして――。
「やめ、ぐえっ!」
渾身の力で押し出した刃が敵の喉を貫く。分身は痙攣した後、泥のように崩れて消えた。
立ち上がり、絋平さんを見ると、分身たちに囲まれながらも銀を生成し固めることで敵の動きを阻害し、ナックルダスターと槍を器用に使い分けてなんとか敵を抑えていた。
しかし、その表情には疲労の色が浮かんでいる。魔力の消耗に加え、数で押される状況が絋平さんを確実に追い詰めているのだろう。
早く助けに行かないと!
一歩踏み出そうとした俺に対し、絋平さんは一瞬だけこちらを見て、短く叫んだ。
「本体を!」
「ッ、はい!」
一言でその意図を察する。そうか。俺がフリーの今が最大のチャンスだ。絋平さんが作ってくれたこの瞬間を無駄にするわけにはいかない!
俺が目線を向けた先には田中の本体がまだその場に立っていた。
俺が走り出すと、田中もこちらに気付いたのか一瞬驚いた表情を浮かべた。次の瞬間、慌てて背を向ける。だがその動きには焦りが見え隠れしていた。
「く、来るな! くそぉぉぉ!!」
田中は罵声を上げながら逃げ出すが、その足取りには明らかな乱れがある。俺を振り切ろうと必死だが、走る速度は明らかにこちらが上回っていた。
奴は逃げながらもその背中から新たな分身を生み出す。その一体が俺に襲いかかるが――。
「遅い!」
分身に素早く接近し、その腹部に魔力を込めた拳を叩き込む。激しい衝撃音と共に分身が吹き飛び、瓦礫のように崩れて消える。その様子を確認しつつも、肇は振り返ることなく田中を追い続けた。やっぱりそうだ。いつもより肉体の強化が強くなっている……!
「なんだよ!? さっきまで死にかけだったくせに……!」
焦った田中が振り返り、顔を歪めて俺を睨みつける。その目にかつての余裕は見られない。その視線を真正面から受け止め、さらに速度を上げて距離を詰めていった――。
◇◇◇
肇と田中が正面から睨み合い、その距離がどんどんと縮んでいく。肇の拳が届く距離に行くよりも早く、田中が先に動いた。
「戻れ! 『全員集合』」
その言葉と共に、絋平を囲んでいた分身たちが次々と崩れ落ちていく。何体もの人影が音もなく消え失せ、静寂が戦場を包んだ。
絋平は瞬時に状況を把握し、舌打ちをする。
おそらく周囲の分身が消えたのは奴が諦めたからでも魔力が切れたからでもない。もしそうならまだ分身がある内に逃げるはず。まだ近くに留まっていたのは分身の復活地点を戦場から近くすることで人数差を保ち続けるためだろう。このタイミングで分身を引いた理由はただ一つ――戦況を覆すための一撃を放つ準備だ。
「分身が消えた! また出てくるぞ!」
「馬鹿が! この距離なら避けられない。呑まれて潰れろ! 『体量潰し』!」
絋平の警告が響くが、時すでに遅し。彼の予想通り田中は再び自身の異能を発動していた。男の肉体が不気味に歪む。腹部から無数の顔が浮かび上がり、分身たちの質量が一つの巨塊として形成されていく。その膨れ上がる異形の塊が、迫りくる巨獣のように肇に襲いかかった。
肇は、その危機に対し逃走を選ばなかった。どのみち避けられる距離ではないと悟っているのだろう。だからといって諦めもしていなかった。ただひたすらに足を動かして前進を続ける。
包丁で傷つけられた手を強く握り締め、さらに力を込める。血が滴り落ち、傷口から痛みが全身を駆け抜ける。しかしそれこそが、今の彼にとっては魔力の流れを掴むための道しるべだった。
肉体の苦しみや暴力を振るうことへの罪悪感。そんなものはどうでもいいと思うほどに、興奮が肇の脳を支配する……
「……『会心撃』ッ!」
肇の拳が炸裂する。その一撃はまだ生まれかけの分身を粉砕し、その勢いのまま田中の胸を正確に貫いた。
「ぐあっ――!」
田中の体は倉庫の棚に叩きつけられ、動きを止めた。それに連動するように、未完成の分身たちも霧散していく。
静寂が訪れる中、肇はゆっくりと拳を下ろし、荒い息を整えながら立ち尽くした。
「……か、勝った?」
「勝ったぞ俺ら! お前やるじゃねーか!」
絋平が駆け寄り、肇の肩を力強く叩いた。その声には戦い抜いた者同士の安堵と興奮が滲んでいる。
「は、はは。絋平さんこそ、あの数相手に持ちこたえられたのがすごいですよ……。正直、俺一人じゃ絶対に勝てなかった」
肇は笑いながら答えるが、肩で息をしつつ痛む体を抱える仕草から、消耗の度合いが伝わってくる。それでも、口元には戦いを乗り越えた達成感が浮かんでいた。
「まあ、一応お前の先輩だからな!」
絋平が得意げに胸を張る。が、次の瞬間ふと真顔になり、肇をじっと見つめた。
「しかし、最後のは驚いたぜ、肇。ぶっちゃけお前、異能使えないしどうしようかと思ってたが……あの技があれば今後もなんとかなりそうだな」
その言葉に、肇は少し目を丸くしたが、やがて小さく笑みを返す。
「……ありがとうございます。でも、本当に偶然の産物ですよ。あの場面で身体強化のコツが掴めてなかったら、俺……たぶん死んでました」
自嘲気味に言う肇に、絋平は拳を軽く肇の胸に当てる。
「でも生きてんだろ? お前はあそこで力を引き出した。それが事実だ。これからどうなるかは分からねえが……少なくとも今日の戦いで、お前は変わったよ」
その言葉に、肇は黙って頷いた。そしてふと、倉庫の奥で倒れている田中の姿に目を向ける。
「それで、この後はどうします?」
「そうだな。とりあえずアルカさんに指示を仰いで、あと異能犯罪対策課の乾田さんか凍上さんに引き取りにも来てもらわねーと。っと、その前にあいつ捕縛しなきゃか。肇はちょっと休んでていいぞ」
絋平が後始末に動き出す。一方肇はといえば、絋平の言葉に甘えて床に腰を下ろし、初戦闘の後の疲労が濃い肉体を休め始める。しばし勝利の余韻に浸りながら辺りをぼんやりと見渡していたその時、ふと奇妙な物体が床を転がっていることに気付いた。
球体がころころと転がりながら一直線に絋平と田中がいる方へと向かっていく。傾斜なんてないはずなのに止まることなく少しずつ動き続けている。絋平はそれに対し背中を向けているため、未だ気付かない。
やがてその物体は絋平の近くで動きを止める。目を凝らした肇は、自らの眼を疑った。転がっていたそれは目玉だった。人の目玉と思わしきものが床に落ちていたのだ。それと目が合ったとき、肇に猛烈に嫌な予感が走った。同時に、不吉を告げるかのように周囲に
「なん__」
言葉を発するよりも早く、目玉が宙に浮き始めた。次の瞬間、目玉の周囲で空気が歪む。じわりじわりと肉塊のようなものが湧き出し、メリメリと骨が折れるような音が辺りに響き渡る。肉の塊が増殖し、筋繊維が絡み合い、やがて暗黒の塊が人の形を模していく。分身が生まれる時とは異なる、まるで生まれてはいけないものが生まれるような。死体が起き上がるかのような、目を背けたくなるほどの異質な不快感を周囲に振りまいていた。
そうして現れたのは人型の異形。体長は2mを超えているだろうか、筋骨隆々の肉体は夜闇のように暗く、不自然に滑らかな質感で、表面には奇怪な模様が浮かび上がっている。髪は見当たらず、頭部には本来あるべき口や鼻といったパーツが存在していなかった。ただ大きな単眼だけがぎょろりと目の前を見ている。人間の形を模した化け物__それが彼の者を形容するに相応しかった。
その異形が腕を振り上げる。
「絋平さん! 危ない!」
「ッ!?」
不審な音と嫌な気配に振り返ろうとした絋平は、肇の言葉に反射的に横へと転がって移動する。結果的にそれが、彼の生死を分けた。
異形の拳は直前まで絋平がいた位置を通り、気を失ったままの田中に突き刺さる。その威力で地面が砕け、凄まじい音を立てて砂埃が舞い上がった。異形はそのまま何度も拳を地面に叩きつける。何度も、何度も。異能者が死ぬまで何度でも。
「……なん、ですか、あれは」
「……肇、逃げるぞ」
その隙に絋平は肇の側まで移動していた。理解不能な化け物を前にして、絋平の判断は迅速だ。先ほどまでの気の抜けた雰囲気から一転し、戦闘時の冷徹な空気へと切り替わっている。
だが、逃げるよりも早く異形はこちらを振り返った。足元からは砂埃に混じって
固まった二人を見て、異形の頭部に裂けるようにして醜悪な口が生み出される。その口元が歪み、涎が糸を引いて地面に滴り落ちる。吐息が吐き出され、空気そのものが淀んでいくかのようだった。異形はゆっくりと顎を開き、その隙間から言葉を搾り出すように放った。
「オ、オマエ、ラ。『イノウシャ』、ダ。『イノウシャ』ハ、コロシテ、イイ」
その声は、胸がざわめくような低音と、内臓を締め付けるような振動を伴っている。その発音は片言のようにたどたどしく、しかしその声音には隠しきれない邪悪さがにじみ出ており、聞く者の精神を削るような感覚を引き起こす。言葉が続くたびに異形の口元はさらに醜悪に歪み、その表情には狂気に近い喜びが浮かんでいる。
異形の言葉が空間に重く響いた瞬間、肇と絋平の全身に冷たい汗が噴き出した。目の前の異形には確かな敵意が宿っている。
「……肇。もう一度言うぞ。逃げろ。……今の俺たちじゃ勝つ見込みはほとんど無い。ここからは生きて帰ることだけを考えて行動しろ」
絋平が先ほどの言葉を小さく繰り返す。その声には普段の軽さは微塵もなく、張り詰めた緊張が滲んでいた。その表情には焦燥と覚悟が入り混じっている。言葉の一つ一つが、二人を取り巻く状況の深刻さを物語っていた。実際、敵の能力は未知数なうえに、二人は先の戦闘で大きく消耗している。絋平だけでなくもちろん肇にも勝てるビジョンは見えなかった。
異形の体からは未だに黒い塵が立ち上っている。それはまるで周囲の空間そのものを侵蝕するかのように漂い、辺りをじわじわと不穏な闇で満たしていく。倉庫内は静まり返り、先ほどまでの戦いの余韻など一瞬でかき消されていた。
「動け!」
「はい!」
絋平の怒号を皮切りに、三者が同時に動き出した。異形がその丸太のように太い腕を振り上げた瞬間、肇は全力で後方へ駆け出し、絋平は渾身の力を込めて異能を発動する。
「ツブ、レロ! 『イノウシャ』!」
「うおおおおッ! 『
直後、激しい衝撃音が倉庫内を貫いた。絋平が作り出した銀の壁は、異形の一撃で粉々に砕かれる。破片と衝撃波が爆風のように二人を襲い、彼らの体は破片とともに容赦なく吹き飛ばされる。二人の体は硬い地面に何度も叩きつけられ、ようやくその動きを止めた。凄まじい威力。直撃だったならば肉体が粉微塵になっていただろう。
とはいえ最悪を免れただけだ。未だ状況は悪く、どころかどんどんと悪化している。肇は痛みに呻きながらなんとか視線を上げると近距離で攻撃を受けた絋平が無残に倒れている。その体には銀の破片が無数に突き刺さり、血が床に小さな水溜まりを作っていた。
「起きてください、絋平さん! ……奴が、来る!」
肇の必死な呼びかけもむなしく、絋平はかすかな息を吐くだけだった。一方で、異形はゆっくりと二人に歩み寄ってくる。その動きには迷いも焦りもなく、ただじわじわと獲物を追い詰める捕食者そのものの冷酷さがあった。
――だめだ。こんなの、無理だ。絋平さんを庇いながら戦うなんて不可能だ。たとえ一人で挑んだとしても、傷一つ負っていないあの化け物に勝てるわけがない。『会心撃』を放つ間もなく、俺は殺される。
肇の胸中に広がるのは、底知れぬ絶望だった。異形の重い足音が一歩、また一歩と近づいてくる。そのたびに肇の鼓動は、まるで破裂しそうなほどに速まり、視界が揺れる。床に落ちた破片に映る自分の顔は、恐怖に引きつっていた。
このまま、死ぬのか。
諦めかけたその時。
そんな絶望を切り裂くように、
登場人物の違いを分だけで表現するってめちゃくちゃ難しい。ちゃんと別キャラクターになってると良いな。
それはそれとしてやっと1章が半分くらい終了です。年内に1章終わらせるのが目標。
【通知】
『田中 昭栄』魔力不足状態での殴打による肉体損傷が原因で消滅。
【異能紹介】
異能:??系『????』
使用者:
ハイになって新技を取得した新人。でもさすがに彼に二連戦は無理や。
異能内容:詳細不明。
技:
『会心撃』直感に従って肇が放った一撃。シンプルな殴打の威力でいったら来巣探偵事務所のメンバーの中で現状一番強い。
【ステータス参考】
破壊力:C
スピード:C
射程:D
持続力:D
精密動作性:D
異能:具象系『銀術師』
使用者:
非戦闘系なのにめちゃくちゃ頑張ってる。
技:『
異能:眷属系『分身』
使用者:田中 昭栄
異能者の中で作中最初の犠牲者。運が悪かったです。
技:
『十人一色』自分の分身を一気に九体出現させる。燃費は悪い。
『体量潰し』十人一色の応用技。近距離で一気に分身を生成し、相手を分身体で押しつぶす。
【*****】
使用者:??
内容:
【ステータス参考】
破壊力:A
スピード:C
射程:C
持続力:B
精密動作性:C