才司Side
いやー、負けた負けた。
開幕速攻で一気に押し切る作戦だったけど、やはり五大宗家の当主は格が違ったなぁ。
そう思いながら観客席に行くと、とりあえずスポーツドリンクで水分を取りながら五十鈴の試合を観戦する。
関係者だけが見ている感じになっているけど、それでも結構見てる人もいるね。特に蓮蓬の人達が多いかな?
……着ぐるみ率が多いから、ちょっとシュールな光景だね。
「……あ、津波黒じゃん。お疲れ様」
「あ、カーラさん」
と、そこでカーラさんとユウキ君が試合を観戦していた。
ちょうどよかったので近くに座るけど、ユウキ君は渋い顔になってるね。
「……非現実的と言いたくなるが、これが当たり前の世界がいくつもあるのか。頭が痛いな」
「あはは……。まぁ、
だいぶ解析が進んでる技術ではあるんだよなぁ。
「安定性重視で設計してなお、使用による弊害のリスクとかもあるから試験的運用だけどね。只の人間が使う分には問題ないし、機会があれば使ってみるかい?」
「……遠慮しておこう。弊害が出そうでな」
ちょっとした冗談だったけど、意外な方向で断られたね。
短い付き合いだけど、ユウキ君は常識に縛られやすいところがある。既存の価値観からかけ離れたものに耐性があまりないところがある。
だから抵抗があるから断るかと思ったけど、案外理解がある方向の断り方だ。
「俺もカーラも、そちら側の異能ほどではないが少し特殊でな。そういった物に弊害が出るのなら避けた方がいいだろう」
へぇ。そこはあんまり聞いてなかったかな。
特殊能力の類があるのか。それで常識に縛られやすいところがあるんだというなら、結構昔から認められている系統かな?
「私もユウも、TPLテストで数値が出ててね。この数値が高いと、妙な気配を察知したりT-Linkシステムってのを併用して特殊な力場とか出したりとかできるのさ」
「……俺達は本来、特殊戦技教導隊とは別枠なんだがな。ミスリルはその技術を流用している関係上使えるものが必要で、他の奴らが軒並み別件で動けなかったことから特例で参加していたんだ」
なるほど。ちょっと毛色が違う感じだったけど、そういう事だったのか。
「全く。異星人だけでも信じがたいというのに、続けざまにどれだけ尋常じゃない事態に巻き込まれたことか。ついには多次元混在など、頭が痛い」
あはは……。まぁ、こういうのって適応できない人は多そうだよねぇ。
むしろ対応できている人がここまで集まっているのが凄いというかなんというか。
僕ら側の神話ごった煮とかも大概だろうし、属性力とかもとんでもないしなぁ。
……後で何か奢ろう。ユウキ君の胃が心配になってきた。
「それで、アンタの幼馴染がこれから戦うけどさ? どんな感じなの?」
と、カーラさんは言ってくるけど困ったな。
「う~ん。五十鈴や彩里とは六年ちょっと会ってなかったしなぁ」
正直、そんなことを言われても結構困る。
「一緒にいた頃は、二人には異形について話してなかったし。ぶっちゃけそれまではただの民間人だったのが、何時の間にやらあんなになってて困惑してるよ」
「いったい何があった……というか、一切話してなかったのか?」
ユウキ君がその辺りをちょっとつついてみたけど、……その、ね?
そこはその、
基本的にトップはいい人多いんだけどね? 和平が結ばれてからは、アレな人は捕まるなり脱走するなりしてるから、クリーンと言えばクリーンなんだけどね?
その、言葉を選ぶと―
「趣味に走りすぎている人が多くてね」
―困った人達が多いんです。
「僕は先祖返りで堕天使の因子が出てきたタイプなんだけど、どうも先祖は最高幹部の方々と酒飲んだりしてる立場だったみたいなんだよ。既に亡くなられているけど」
それもあってか、上層部からはそれなりに目をかけられている。
ただ、その為問題が多すぎるというかなんというか。
「そして上層部は能力があるトラブルメーカーも多くてね。その、改造に興味がある人とか、特撮系敵組織みたいなノリが大好きな人とか」
なのでその、とてもリスクが大きい。
とても、リスクが、大きい。
リスクが、大きいんだ……っ
「……五十鈴に教えるとストレスで胃潰瘍になりそうだし、彩里は目を離したら昭和悪の女幹部系怪人みたいになってノリッノリで高笑いしそうだし…………」
思わず顔を覆って俯いてしまったよ。
うん、あまりにそれが懸念材料過ぎて、言うに言えなかったんだ……っ
「大変だね、アンタも」
「……後で紅茶をご馳走しよう」
お心遣いありがとうございます。
あ、試合が始まった。
イッセーSide
『さぁて試合が始まりました! 始まりました……が、映像越しに大混乱! これ
実況のエルシアさんが困惑しているけど、俺もちょっと困惑してるぜ。
なんたって、映像ではたくさんの師匠とランスターさんがいて、正直密度が凄い!!
しかもどっちも、同時に攻撃を放って同時にいくつも消えてたりしてるから、もう何が何やら!
『解説に入るが、どうやらどちらも幻惑を主体とした戦術を行っているようだな』
お、アジュカ様はすぐに分かってるみたいだ。
あの人本当に凄いよなぁ。流石超越者で元魔王様!!
『どうやらランスター君だが、幻影の類を得意としているようだ。それも熱反応も偽造しており、更に魔力弾を操って幻影越しに放つことで、攪乱と攻撃を同時に行っている。同時にいくつも動かしていることといい、相当鍛錬を積んでいるのだろう』
お、おお~。
時空管理局の人は基本的に魔法を使うけど、あの人はサポートもできるテクニックタイプってことか。
しかも幻影越しに攻撃してるってのが凄いな。できるってのがまず凄いけど、幻影越しだからどれが幻影でどれが本物なのかが分かり難くなるし。
俺からすると苦手な部類かも。乳語翻訳があるからいくらでもやりようがあるけど、それは相手が女の子だから分かるってだけだ。そういうのを抜きにして考えると、真っ向勝負でやるなら丸ごと吹き飛ばすぐらいしか対策がなさそうだ。
でも師匠も、同じ土俵で対応しているから凄いよなぁ。
『そして鈴乃屋君だが、こちらはソードREDの機能で対応しているようだ。レプリカではあるがエクスカリバー七つの機能は扱えるからな。
そう、師匠マジで凄い。
エクスカリバーの機能を同時にいくつも使って攪乱している。おかげで見てるこっちは混乱するけど、凄い戦いになってる。
「……すげえ、師匠! エクスカリバーの方をフルに使って戦ってやがる!!」
思わず拳を握るけど、隣も盛り上がってるんだよなぁ。
「ティアだって負けてないからね? いつものティアなら、そろそろ作戦も立ててるし!」
「そうなのか、ナカジマさん?」
隣にいるのは高町さんと一緒に巻き込まれていたスバル・ナカジマさん。
見てるだけで分かるけど、体術を結構鍛えてるな。一回手合わせしてみたいぜ。
「確かに、一生懸命努力してるのがよく分かるよ。できる人だよな、あの人も」
「うん! ティアは昔っから努力してきたし、なのはさん達もしっかり見ててくれたからね! 昔のJS事件じゃ私達の中で一番大活躍したし!」
なるほどな。
……ああ、よく分かる。
生半可な策で圧倒的な力を防ぐことはできない。俺達燚誠の赤龍帝チームはそれがコンセプトだし、俺の眷属で作戦参謀のレイヴェルはまさにそうやってきた。
だけど同時に、優れた策は生半可な力を絡め捕る。
俺も一度、それで負けたことがあるからよく分かる。単純な才能だけが強さじゃない。
頑張ってください、師匠。
……短い時間だけど、師匠の動きを見てるから分かる。
師匠は本当に頑張っている。きっと、血のにじむような努力を積んできたんだ。
応援してますよ、師匠!
そう思ったその時だった。
『……お? なんやら妙なことになってるぞぉ!』
と、エルシアさんが首を傾げている。
見れば、映像の端の遠いところで、妙なことになってる。
……いや、あれって……?
「そういう事か!」
思わず立ち上がるけど、あれは間違いない。
ソードRED。レプリカ・エクス・デュランダル。
レプリカというだけあって、エクス・デュランダルは本物がある。それは俺の眷属悪魔で、かつては俺の主であるリアスの眷属悪魔仲間でもあった、ゼノヴィアの武装だ。
元々ゼノヴィアはデュランダルの継承者だけど、当時はあまりに強い切れ味とオーラによって扱いきれてなかった。そこで対応策として、エクスカリバーの使い手でもあったことからエクスカリバーを鞘にすることでオーラを制御するってのが当初の目的だった。
それは歴代最強のデュランダル使いと呼ばれるヴァスコ・ストラーダ猊下からすると首を傾げる物で、彼と戦った時にゼノヴィアはデュランダルとエクスカリバーの二刀流に切り替えた。だけどその間の数か月、ゼノヴィアは確かにエクス・デュランダルで戦っていた。
あのオーラの高まりは、その時ゼノヴィアが必殺技のように使っていたエクス・デュランダルによるオーラ放出。デュランダル砲のそれに近い。
おいおいまじかよ。あの分身全部、遠距離から出してたのか!?
「師匠すげえ! でもそれ、ランスターさん消し飛ばないか!?」
「え!? ティア逃げてぇえええええっ!」
思わず言った言葉にナカジマさんが絶叫した時、そのままオーラの砲撃がまとめて吹っ飛ばしたぁあああ!?
あ、やっぱり威力低い! レプリカのソードレッドじゃその程度か!
でもヤバい威力ではある。今回の試合用に用意された都市型フィールドの数ブロックが跡形もなく吹っ飛んでる!
『吹っ飛ばしたぁあああ! 鈴乃屋選手、ランスター選手と幻影で乱戦をしていたかと思いきや、遠距離から大火力砲撃をぶちかましたぁああああ!』
エルシアさんが絶叫していると、映像が師匠の方に移り、師匠は伸びた糸のようなものを回収していた。
『なるほど。
アジュカ様が感心しているけど、あれ大丈夫!?
『安心してくれ。レーティングゲームの技術を流用している為、あの程度の火力なら死ぬことはない。戦闘不能になった瞬間に転移が間に合うさ』
既にそこまでやっておりましたか。あの人やっぱり凄いな。
「……だ、大丈夫なの? その、ティアは大丈夫なの?」
「だ、大丈夫です! 俺の∞ブラスターに巻き込まれた人も無事でしたし! レーティングゲームでの死亡事故は本当に珍しいそうなんで!」
俺がナカジマさんを励ましていると、映像越しでアジュカ様は興味深そうな笑みを浮かべていた。
『まぁ、今回はまだ必要がないわけだが』
え?
そう思った瞬間、動きがあった。
なんかバズーカ的な感じになっているソードREDを剣と、あと銃の形に切り替えた師匠が、咄嗟に顔を上げな方バックステップをして、更に銃の方を向けて引き金を引こうとした。
そしてそれより早く、真横からオレンジ色の球体が師匠の脇腹にめり込んだ!
『……まず、気づかれ……て…っ!』
『ええ、危なかったわよ!』
その瞬間、ランスターさんの姿が見える。
二丁拳銃のうち片方から魔力製っぽいワイヤーで、遠心力まで生かした状態で体勢が崩れた師匠に飛び掛かる。
脇腹のダメージで対応が一瞬遅れた師匠は、それでも剣と銃を向けようとする。
だけどそれより早く、ランスターさんの銃は変形すると短剣みたいになって首元に突きつけられた。
『……参ったわ。読み合い含めてそちらの勝ちよ』
『今度からは、熱を含めた各種要素も偽装することね』
お、おお……おぉ~!
「ランスターさんの勝ちかぁ。すっごいなあの人!」
「……で、でしょ! ティアは本当に凄いんだから!」
うん、一時は何が起きたかと思ったけど、凄いことになったなぁ。
師匠は負けちゃったかぁ。結構策も決まったと思ったんだけど、読み負けた感じだな。
っていうか、ランスターさんも凄い人だ。こりゃ本当に凄いって!
……でも、師匠、あの銃なんなんだろう?
五十鈴、奮戦するも辛勝。読みあい及び索敵能力で負けたのが入んです。
五十鈴は基本的にテクニックタイプ。ソードREDをフルに使って仕掛けるのが得意な戦闘スタイルです。エクス・デュランダル状態のゼノヴィアが相手なら、勝てなくても足止めはできるぐらいには強いです。