レグロスの勇者道~少年は真の勇者を目指して進む~   作:太洋 心

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第12話 任務を終えて

 その後の話をしよう。

 壊人という脅威との遭遇というイレギュラーもいつの間にか付いてきていた勇者サフェロ・ユリーヴァにより跳ね除けたレグロス一行。

 彼らはその後連絡を受けてやってきた学園の職員達により保護、そして治療を受けた。

 誰一人、命に関わる負傷をしていなかったのは不幸中の幸いと言えるだろう。

 

「窮地を救った偉大な師匠を崇めてくれていいよ?」

 

「感謝はしてますけどシンプルにウザいです」

 

「酷くない?」

 

 実際この男がいなければ全滅していただろうというのはレグロスも理解している。

 ただ態度がなんか腹立つので心底から感謝と言うのは正直出来ないでいた。

 昔からこういう態度で接していたから染みついてる、というのもあるが。

 

「というか最初から付いてきてた以上もう少し早く出てきても問題なかったのでは?」

 

「いやぁいくら勇者だからってなんでもかんでもやってあげたら若者が成長しないでしょ」

 

 ご尤もではある。

 たださすがに今回は死ぬかと思ったためレグロスもため息を零さずにはいられない。

 

「それに今年のルーキーや今のレグロスがどれぐらいやれるのか知りたかったからさ〜」

 

「そっちが本音ですね」

 

「ま、結果的に誰も死んでなかったわけだしOKってことで」

 

 なんかどことなく釈然としないものはあったが、実際皆助かったのだから今はそれでいいかとレグロスも納得する。

 結果的にレグロス一行、依頼してきた町の人々はもちろんの事、盗賊兄弟のトウとヌースも一命を取り留めたのだから。

 と言っても盗賊兄弟に関してはレグロス達が戦っている裏でティアハが治療に全力を注いでくれていたからなのだが。

 そうでなければ弟のヌースはともかく兄のトウは救えなかっただろう。

 

(ティアハさんに感謝しないと)

 

 盗賊兄弟のトウとヌース、彼らがやった事は明確な罪である。

 多くの人が苦しめられたという事実は重い。

 だが同時に壊人によって彼らも大変な思いをしていた側面があるのもまた事実。

 許される事はなく、どんな罰が下るのかもレグロスには分からない。

 が、下手に死なせるよりは生きて償ってもらった方が後味はいい。

 

「ところでさ、どうだった? 久々にスピリットを解放してみて」

 

「……思ったよりは耐えられた、とは思いますよ」

 

 それは本音だ。

 正直言って解放後数秒で限界を迎える可能性もあったし、その覚悟もしていた。

 それでもある程度の戦闘に耐えられたのは、かつてよりも自身が成長しているという証拠と言えるだろう。

 しかし同時に――。

 

「まだ足りませんね、やっぱり」

 

 ゆっくりと、だが力強く拳を握る。

 現状に納得はとてもじゃないが出来ていない。

 足りない。

 そう、なにもかも足りていないのだ。

 今回の一件は成功で終わりはしたが個人としては多くの課題が残るとレグロスは考える。

 

「……ま、確かに思ったより耐えられてたとはいえこれじゃあ駄目だね」

 

 今までとは違う、やや真面目なトーン。

 度々聞く師の切り替わりを感じ取りつつレグロスは耳を傾ける。

 

「君には()()()()になってもらわなきゃいけない、だからこれからはより念入りに鍛えてあげるよ」

 

「基本的に家もなく当てもなく流離(さすら)うほぼ駄目人間の師匠がどうやって学園に通う僕を鍛えるんですか?」

 

「我が弟子ながら、どこまでもド辛辣ぅ……」

 

 だがそんな辛辣な態度はいつもの事。

 レグロスにとっては珍しいその態度が師であるサフェロへの親しみと信頼の証とも言える。

 それを理解しているからサフェロは特に引き摺らず話を続けた。

 

「まぁそこについては問題無しさ、学園と少し話してね……臨時講師として暫く学園を拠点にして働く事になったし?」

 

「うげぇ」

 

「わお、心底嫌そうなリアクション」

 

 師の強さはレグロスもよく知っている。

 だが同時にそのだらしなさと適当さもよく知っている。

 幼いころより振り回されてきた弊害。

 この反応も無理はないというものである。

 

「でも悪い話じゃないだろ? お互いにとってさ」

 

「……」

 

「とりあえず今はゆっくり休みな、まずはそこからってね」

 

 そう告げるとサフェロはケラケラ笑いながら部屋を去っていった。

 同時にレグロスをどっと疲れが襲う。

 

(本当に変わんないな、師匠は)

 

 別に嫌いではないが一緒にいて疲れる。

 我ながら厄介な師匠を持ってしまった、なんて思いつつレグロスはそっと目を閉じる。

 

(強くならなきゃ……僕はこんなところで足を止めれない)

 

(それが……僕の……)

 

 やがてその意識はゆっくりと眠りに落ちていった。

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