レグロスの勇者道~少年は真の勇者を目指して進む~   作:太洋 心

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第16話 調査の下準備

 そんなこんなで特に問題もなく一行は拠点設立予定地に到着。

 各々に役割が与えられて調査用拠点の組み立てが行われていた。

 レグロスもまたその中で与えられた仕事をこなす。

 こういう作業も別に嫌いではなかったのはある意味幸いか。

 黙々と作業しているとふと声がかかる。

 

「ねぇ、アンタがレグロス・カレジア?」

 

「? えぇそうですが……」

 

 声をかけてきたのは女子生徒。

 なんというか、勝気というか活発そうな印象を受ける女子だった。

 見覚えがまったくないというところを見ると恐らく上級生なのだろう。

 

「僕になにかご用でしょうか?」

 

「……割と丁寧な対応してくるね、本当にヴァルクの友達?」

 

「ヴァルク……?」

 

 そのヴァルクというのはまぁあのヴァルク・ディ・ティグレノであろう。

 というか他にいるとも思えない。

 

「もしかしてヴァルクのお友達――」

 

「あぁ違う違う、友達じゃなくて許嫁? まぁ将来結婚する相手ってところだよ」

 

「なるほど、許嫁――許嫁ぇ?」

 

 思わず間の抜けた声が出てしまった事を内心反省しつつレグロスは心底驚いていた。

 まさかヴァルクにそんな相手がいるとは――。

 しかしよく考えてみればそう珍しくもないのかもしれない。

 ヴァルクはよくよく考えれば貴族でティグレノ家も歴史は結構深いのだから。

 まぁそこら辺の全てがヴァルク本人の普段の言動や態度で忘れがちになるが。

 

「ははっ! そりゃ驚くよねぇ、あいつ身分以外は貴族っぽくないから」

 

「ハハハ……」

 

 図星であったため愛想笑いしか浮かばない。

 というかそういうポジションである彼女からしてもやはりヴァルクは貴族っぽくないらしい、当然と言えば当然だが。

 

「あいつから度々話は聞いてるから気になってね、しかもヴァルクより強いって話じゃないか」

 

「……いや、一回しか戦ってませんけどね」

 

「それでも、だよ。同い年の相手にヴァルクが負けるってこと自体が初めてだし」

 

 今までまぐれ勝ちした者すらいない。

 それがヴァルクという天才が天才と呼ばれる所以だ。

 だからこそ、それに打ち勝ったという存在に興味を引かれるのはおかしい事ではない。

 レグロスとしてはあの一戦がここまで大きくなるとも思わずやや困惑気味であったが。

 

「その実力、近いうちにアタシにも見せてよ。興味あるからさ」

 

「あ、はい」

 

 もしかして許嫁だけあって根っこの部分はヴァルクの同類なんだろうか。

 まともそうに思ったが急に不安になったレグロスだった。

 

「作業の手を止めさせて悪かったね、また後で。サボリがバレたら怒られちまう」

 

「わ、分かりました……」

 

 色々衝撃すぎて手が止まってたのは事実だが。

 かといって致命的に作業が遅れたわけでもないので特に気にはしていなかった。

 

「あぁそう言えば自己紹介もまだだった……アタシの名前はアティファ・ド・レグーン、困った事があったら気軽に相談してくれていいよ」

 

 そう言って胸を張りながらアティファと名乗った彼女は手を振り去っていく。

 まぁ持ち場に戻っただけなのだろうが。

 だがなんにしても心強い人と縁が出来たのは間違いない。

 

(流石にグストルって先輩ほどじゃないにしてもアティファさんも相当な手練れって印象を受けるな……)

 

 ――やはり世界は広く、この学園で学べる事は多い。

 そのことを再確認してレグロスは再び手を動かし始めた。

 

 

〇●

 

 

 そんなこんなでスムーズに調査用の拠点を立て終えた一行。

 現在は全員が集まりグストルの話を聞いていた。

 

「まだ日も高い、これから念のため数人一組の班に別れてこの周囲の調査を行う」

 

 この場所は事前に学園関係者や冒険者により調査が行われ安全と判断されている。

 だが数日で変化が起きている可能性も否定できるものではない。

 そのための調査をこれから行う、という事らしい。

 

「すまないが班分けは既にこちらで行っている、これに従ってくれ」

 

 それもしょうがない事なのだろう。

 レグロス達は学生だが今やっている事は決して遊びではない。

 しっかりと役割を認識した上で決めてもらえるのなら文句もなかった。

 その結果――。

 

「というわけでお前は俺達と行動してもらうぞ、レグロス・カレジア」

 

「えーと……はい、よろしくお願いします」

 

 目の前に立つ風格の塊みたいな男。

 班を分けられた結果、レグロスはリーダーであるグストルと同じ班になったのである。

 別に不満はない。

 得られる者は多そうだし、共に行動すれば学ぶ機会は多いだろう。

 そういう意味では得しかない。

 ――なのだが。

 

(……なんでだろう?)

 

 どういう意図を持ってグストルの班に入れられたのか。

 やはり若干気になる気持ちは消えない。

 そんな感じで若干の疑問や困惑を胸に抱えながらもレグロスはグストル達と共に行動を開始するのだった。

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