バッタオーグになりまして   作:呼び水の主

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資格ある者

 

「だからオレにもわかるように説明してくれよ!やっぱりショッカー裏切るの嫌だからデタラメ言ってるんだろ!」

「キィ〜ッ!!何度説明したらわかるんだこの馬鹿者が!出鱈目ではなく実証に基づいた理論だぞ!貴様に打ち込んだシン・バットヴィルースはヴィルースとナノマシンの生体機械複合型細菌兵器!あの緑川すら辿り着けなかった境地!他者の肉体へと潜り込みプラーナすら支配できる!死から蘇りついに辿り着いた儂の夢の果て!人類を新たなステージへと押し上げる新時代の福音なのだぁ!(ここまで早口)」

「……」

「……おい小僧?」

「ナノ、マシ……?セー、タイ……?」

「ぬぁーーーーッッ!!!なぜ儂の尋問にこんな馬鹿者を寄越したのだ!!もっと話のわかるやつを呼ばんかぁ!」

「いや待ってくれ!なんかすごいことはわかった!」

「やかましい!貴様の貧相な想像の2万倍すごいわ!」

「でもおっさんそのウイルス使ってもオレに負けたじゃん?」

「儂はおっさんではな……、真顔でなんてこと言うのだ貴様!?」

 

 「おっさん」こと多田野が驚愕に目を見開く。

 この小僧!ナチュラルに儂を煽りおる!?

 屈辱!

 自身の最高傑作を一度ならず2度までも破った緑川のプラーナ技術に歯噛みする。

 いや、違う。緑川ではない。シン・バットヴィルースは確かに緑川のプラーナ技術を凌駕し掌握していた。儂の最高傑作を打ち破ったのはこやつだ。この小僧なのだ。

 なぜだ?なぜ負けたのだ?理論上覆せなかったはずのバットヴィルースの支配をなぜこやつは打ち破れた?

 もしかすると、天文学的な確率でバットヴィルースに抗体を持っていた?だとしてもナノマシンによる肉体への干渉は避けられないはず。

 少し考えて、どれだけ仮説をたてても出ない答えに焦れた彼は直接聞いてみることにした。

 

「オレが勝てた理由?うーん……?気合い?根性とか……。あとは、愛と勇気、かな?」

 

 コウモリオーグはガックリと肩を落とした。

 そんなくだらんモノに儂は負けたのか……!

 

 

 

 

「本当に彼でよかったのでしょうか?」

 

 ミラーガラスの向こう側で激しく罵り合っている2人を見ながら、政府の男・滝が立花に問いかける。

 

「問題ない。どれもこれも、我々では引き出せなかった情報ばかりだ。彼が適任だよ」

 

 仮面ライダー第3号。風見志郎。

 人を惹きつける不思議な魅力を持つ少年。

 家族を奪われ自身も異形と化しながら、それでも希望を見つめ続ける真っ直ぐな心。

 自分に素直で、だからこそ他者に優しくあれる正義の人。

 そんな彼だからこそ、あの偏屈の極みであるコウモリオーグと「対話」できる。

 人を理解しようとする。寄り添おうとする。その甘さにも似た優しさは、政府の役人である我々が失って久しいものだ。ましてやSHOCKER幹部相手になど。

 

 ガラスの向こうでまた二人の会話が始まる。

 コウモリオーグの対面の椅子に腰掛けた志郎が遠くを見るようにして語りかけた。

 

『でも、オレは感謝してるんだよな』

 

 立花は、室内に備え付けられた録音装置のスイッチをそっと落とした。

 

 

 

「感謝……?」

「うん。確かにおっさん「おっさんではない!」は悪いことにウイルス使おうとしてたけどさ」

 

 それでもオレは、バットウイルスに、もう1人のオレに救われたんだ。

 ずっと蓋をして見ないふりをしていた負の感情を歪に抑え込んだいたオレに、気づかせて、前を向かせたのはアイツだ。

 自分自身を救えないヤツに誰かを救う資格はないって、そう思わせてくれたんだ。

 

「おっさんの造ったモノは確かにオレを救ってくれたんだ。だから、ありがとうって伝えなきゃって思ったんだ。寝たきりの人とか心が壊れちゃった人とかにも、使い方次第でもっとずっと沢山の人を救えるって思うし!発想は最ッ高に趣味悪いけどな!」

 

 アハハ!とおっさんに笑いかける。

 ヒロミさんをあんな目に合わせたのは最低だけど、その分もう一人のオレがボコボコにしたからなぁ。幸い人質も無傷だったらしいし、どーしても甘くなっちゃうなぁ、オレ。

 

 おっさんはすげーんだ。オレが出来ないことがたくさんできる。戦うこと以外で人を笑顔にできる人だったんだ。だから今の「コウモリおっさん」なんか辞めて、「ただのおっさん」として誰かを笑顔にして欲しい。

 またオレのワガママかな?でもワガママで人が幸せになれるんなら、オレはいくらでもワガママになってやるぜ!

 

「──フン」

「あ!今照れた!?」

「照れるゥ!?馬鹿を言うなこの馬鹿者が!儂は疲れた!今日は終わりだ!さっさと出て行かんか!!」

『風見志郎。そろそろ時間だぞ』

「エ〜〜〜???」

「その憎たらしい顔をやめんか!そらいけスカポンタン!」

「おっさん酷い!あんなに褒めてあげたのに!」

「おっさんではない!!」

 

 こんな日々がこれから3ヶ月ほど続くことになるとは、コウモリオーグは知る由もないのであった……。

 

 

 

 

 コウモリオーグとの最初の会話から少し未来。

 ──東京都多摩市某所

 

「先日のコンドルオーグメントとの戦闘時に回収したアンプルにも、やはりバットヴィルースに酷似した細菌兵器が確認された」

 

 立花さんが滝さんの用意したアタッシュケースから液体のような物が入った容器を取り出す。

 コウモリオーグ事件からこの3ヶ月間、13件のオーグメントによる襲撃の全てで確認されたSHOCKERの新たな兵器。

 ソレは人間に投与されればたちまちその肉体を内側から改造し、プラーナを支配してSHOCKERに従順な改造人間に仕立て上げてしまう恐ろしい兵器だった。

 コウモリオーグの自供によれば、機械であるナノマシンと生物である細菌をかけ合わせた最高傑作であり、既に改造手術を受けた改造人間であってもその支配から逃れることはできない。

 

「風見志郎が聞き出したコウモリオーグの証言と事件の背後関係を洗った結果、ここがSHOCKERの本拠地であると我々は確信している」

 

 滝さんの言葉を立花さんが引き継ぐ。

 

「本作戦では動かせる全ての戦力を投入するが、電撃作戦という特性を鑑み、突入の第一陣は君たち仮面ライダーに行ってもらうことになる」

「これでSHOCKERとの戦いにケリがつくんだろ?お安い御用だぜ」

 

 一文字さんが肩をぐるぐる回しながら不敵に笑う。

 

「緑川ルリ子は我々の用意した電脳へ移動済みだ。彼女は電脳から直接我々全員の動きを把握・管理するバックアップとして動いてもらう。専用指揮車は現場から7キロの地点で待機。ヒロミ君には緑川ルリ子の警護に当たってもらう」

『志郎のマスクから出るのも久しぶりね……。ココは静かで落ち着くわ』

「それどういうことぉ!?」

「シロウさん、ルリルリのことは私に任せて頑張ってね!」

「はい!頑張ります!ヒロミさんも頑張ってくださいね!」

「……!私、頑張るわ!!」

「どんどん単純になっていくわね貴女……」

 

 ヒロミさんがフンスとガッツポーズしながら意気込んでいる。

 ヒロミさんは強いしウイルスにも抗体ができてる貴重な戦闘要員だけど、だからこそ前線に投入せずルリ子さんの警護兼予備戦力といった感じなのだろう。

 ヤバくなったらヒロミさんがバイクでカッ飛んでくるのはこれまでも何回かあったし、いつも助けられてばかりだ。誰かに守られてるって、なんだかすごくポカポカする。

 オレが1人勝手にポカポカしていると、遂にオレにも立花さんの指示が飛んでくる。

 

「風見志郎、キミも一文字隼人と共に突入してもらう。これまで何度も頼った手前、まだ子どもの君にこんなことを頼むのは心苦しいが」

「大人も子どもも関係ないですよ。オレには戦う力があって、オレ自身も誰かを守る為にそれを使いたいと思ってる。だったらやることはひとつでしょ?」

「……すまない」

 

 立花さん、滝さん、一文字さん、ルリ子さん、ヒロミさん、そしてこれまでも背中を預けてきた警察の人や自衛隊の人たち。あとコウモリのおっさん。

 みんなの頑張りが今、ひとつになろうとしている。

 遂に、SHOCKERの悪事を終わらせることができるんだ。

 そして妹のユキも、きっと助けだす。

 

「すまないが、みんなの命をくれ」

 

 立花さんの号令で、全員が動き出す。

 一文字さんの運転するサイクロン号の後ろに跨る。

 ヘルメットのバイザーをおろすカシャンという音と共に、サイクロン号が力強く唸りをあげて走り出した。

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