バッタオーグになりまして   作:呼び水の主

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罠の始まり

 

『アタッカー1、こちらCP。攻撃を開始せよ。繰り返す。攻撃を開始せよ』

「CP、アタッカー1了解。攻撃を開始する」

「聞こえたな!総員突入!仮面ライダーに続け!」

「「「了解!」」」

 

 オリーブドラブで塗装された「KLX250」をベースに改造が施されたオートバイに跨り、陸上自衛隊の普通科連隊から選抜された精鋭たちが仮面ライダーに続いてSHOCKERの基地へと突入していく。

 

『予定通り、陸自が突入を開始したわよ』

「了解した。本作戦は連携が肝だ。SHOCKER基地内は我々の無線が妨害されている。リアルタイムで現場を把握できるのは君だけだ。引き続きよろしく頼む」

『はいはい、こちらCP了解。しっかり指揮してあげるわよ』

「警護は私に任せてちょうだい。頑張って、ルリルリ」

 

 戦闘から遠く離れた場所から立花、滝、ルリ子、ヒロミを乗せた指揮車が正確に現場を把握し全体を指揮していた。

 

 作戦開始から10分。

 当初の予想より抵抗が少ないものの、仮面ライダー2名を先鋒にした突入部隊は順調に基地内部を制圧しつつあった。

 

「志郎!上だ!」

「ハァ!」

「……ッッッ!?」

 

 軽度の改造を施されたSHOCKERの戦闘員が風見志郎こと仮面ライダーV2によって吹き飛ばされ戦闘不能になる。

 

「この裏切り者どもが……!なぜ俺たちの邪魔をする!?真なる幸福を目指す俺たちの!」

「あんたらとは一度幸福の定義について話し合いたいもんだなぁ!」

 

 S2(サイ・サメ)オーグの繰り出した突進を仮面ライダー2+1号こと一文字隼人が横合いから蹴り付け攻撃を捌く。蹴られて方向のズレたS2オーグが凄まじい勢いのまま壁を抉り取ってようやく止まる。

 

「かぁぁぁぁ!なんつパワーだよ。まともに喰らったらやばかったな」

「一文字さん!」

「先に行け、志郎!こいつは多少厄介そうだ」

「だったら俺も一緒に戦わないと!」

「嬉しいなぁ相棒。だが今回ばかしは時間勝負だ。こいつら倒して、妹見つけて、さっさと帰ろうぜ」

「……ハイ!」

 

 離脱しようとしたV2にS2オーグが突進する。

 

「いかせるわけがないだろう!」

「おっと!」

 

 一文字がS2(サイ・サメ)オーグを抑え込みながら、志郎が施設深部へと駆けていくのを見送る。

 

「行ったか。全くいい後輩だよ、あいつは」

「グググ……、貴様……!俺の突進を……!?」

「止められたのが不思議かい?確かにあんたのスペックは俺より高い。図体もデカい分パワーも大したもんだ」

 

 拘束を解こうと暴れるS2オーグ。頭部の角と鋭い牙がライダーに迫る。それをオーグメントのボディを蹴り付けライダーが距離を取る。蹴り飛ばされたS2オーグがタタラを踏みながら後退る。サイとサメのプラーナを取り込んだ改造人間であるS2オーグは一際巨体で、重厚なボディをしている。だというのに、それを容易に蹴り飛ばすライダー。その脚力の高さが伺える。それを悟ったS2オーグが警戒を強め腰を落とす。そして再びの突進。

 

「ごちゃごちゃ五月蝿い!ペシャンコに潰れろぉぉぉぉぉ!」

「だが、突進ってのは加速が必要だ」

 

 猛烈な勢いで走り出したS2オーグの目の前に、仮面ライダーもまた飛び込む。予想外の行動にオーグメントが思わず怯んだその隙を、ライダーは見逃さない。

 

「つまり出だしを潰されたらあんたは武器を失うってことだな」

「足を!?グォ!?」

 

 S2オーグの走り出しを、ライダーがその足を蹴り付けてバランスを崩す。地面に叩きつけられたオーグメントに渾身の拳を振りかぶる。

 

「マトモに戦ってやれなくて悪いなぁ!こちとら急いでるもんで!」

「……そうかい!ご高説どうも!」

「おおっ!?」

 

 オーグメントの背部からヒレを模した刃が射出される。それを紙一重で躱したライダーが言い知れぬ危機を感知して後退する。

 

「なんだなんだァ!?」

「俺を貴様ら旧型の規格で測ってもらっては困るなぁ!」

 

 立ち上がりライダーへと向き直ったS2オーグのボディがメキメキと音を立てて変身していく。サイとサメを足したようなヘルメットに生えていた角がドリルに、背中のアーマー部分にはなんらかの推進器のような部品が形成されていき、ゴウッと音を立てて推進剤が噴射される。両腕には元々装備されていたヒレ状の刃に加えて、両手の爪がサメの歯のように生え揃い、より鋭く攻撃的なフォルムになっていく。

 

「なるほど、たしかにこれまでの俺ならお前に負けてたかもしれねぇなぁ。どうだ?お前のアドバイス通りに改造してみたぜ?」

「アドバイス通りだぁ!?あんた、体を任意に変えられるのか!?」

「ははは!やっぱ古いな旧型はぁ!俺たち新型はナノマシン適応タイプ!あらゆる戦況に適応し進化する!だからぁ!お前に勝ち目はねーんだよぉ!」

 

 頭部のドリルを高速回転させ、両手を合わせ指をサメの口のように構える。背部のブースターでロケットスタートしたS2オーグが目に追えないスピードで掻き消える。

 

「おいおいマジか!?」

 

 間一髪、ほとんど勘で避けた一文字が背後を振り返ると、数本の柱と壁が文字通り抉り取られ消失していた。切断面が焼け焦げ、煙を上げていた。

 

「……やっぱ戻ってもらうかぁ!?」

 

 ※

 

 遠く聞こえる激突音を背に、オレはショッカー本拠地の最深部を目指して駆けていた。長い階段を地下へ地下へと潜っていく。その階段も階層ごとに場所が異なり、基地の中はまるでゲームのダンジョンのようになっていた。

 

 状況を整理しよう。

 今の俺の現在地は地下3階。一文字さんとバイクで突入したオレたちと自衛隊のバイク部隊が地上の施設を占拠。地下に降りる階段を見つけた所でさっきのオーグメントと遭遇した。それまでに数体オーグメントがいたがオレと一文字さんで全て無力化している。これまでのところは順調だ。

 目的はショッカーの全てを統括しているAI「アイ」の破壊。それさえぶっ壊せばショッカーは大きく衰退するらしい。よくわからないけど!

 それと拉致された人々の救出。ここにオレの妹・ユキも含まれる。心情的にはこっちがメインだけど、優先度は2番目だ。ショッカーを倒せば妹の解放にも繋がるからな!

 

 考えながら、ふと立ち止まる。階段どこにもないんだが?

 確かコウモリおっさんの話では地下6階まであるはず。んぁぁぁ!もう急いでるのに〜!

 ん?っていうか階段がないなら床を破壊すればいいじゃない。

 オレの脳内で、昔教科書で見たフランスの胸のでっかいドレスの王妃様がいいスマイルで親指を立てる。

 

「とおりぬけフープゥ⤴︎」タッタカタッタタータッター!

 

 破ァァァァァァァァッ!床にライダーパンチをシュゥゥゥゥゥッ!超!エキサイティンッッッッッ!!ド●えもん、バトルドームも出たぁ!

 

「ハァ……ハァ……。いや硬いな!?抜けねぇ!」

「だったら私がヌいてあげようかしらぁ?」

「ハッ!?誰!?」

「状況的にそれはこっちのセリフだわぁ!まあ、その見た目は流石に知ってるけどぉ」

 

 シャナリシャナリと音が聞こえるような動きで近づいてきたのは、真っ赤なドレスに身を包んだ美しい女性だった。

 なんなの?ショッカー所属の女性は美人じゃないとダメなルールでもあるのかよ!?困るよ!目のやり場に!

 

「アハッ!照れてるのね?ソゥキュート!できればおねぇさん、そのマスクの下も見たいなぁ〜?」

「ムッ無理です!今は仕事中なので!」

「きゃぁぁぁぁぁ!かわいいー!」

 

 テンションたけぇぇぇぇ!いや、マスクの下めっちゃ気持ち悪いバッタ顔だからそもそも見せらんないし!デッドプールかな?っていうかそれどころじゃない!警戒しないと!朧げだけど感じる。この人見た目は普通だけど、たぶんオーグメントだ。なんでオレに話しかけてきた?奇襲ならいつでもできたはずだ。考えろ。この人の目的はなんだ?オレの懐柔?それとも騙し討ち?

 あり得るな。自分で言うのもなんだけど、戦闘力だけなら自信あるし!オーグメントも、何人も相手してきた。正面戦闘するタイプじゃないなら、なおさら不意打ちには警戒しないと……。

 

「残念ねぇ。マスクの下の素顔、見たかったわぁ。ユキちゃんとそっくりか確認したかったのに。ねぇ、シロウくん?」

 

 瞬間、頭が沸騰する。

 気が付けばオレは、その女性の胸ぐらを掴み壁に押し付けていた。

 

「ユキはどこだ!答えろ!さもないと……!」

「アハッ!さもないと?どうされちゃうのかな、私?」

「ッッッ!なんなんです、あなたは!?」

「……私はサソリ。アナタはユキちゃんのお兄ちゃん、カザミシロウくん、よね?」

 

 この人の意図が読めない。どうしてそんな話をする?なんでオレの名前を、ユキを知ってる?どうして、このタイミングで?

 

「私はアナタを助けに来たの」

「……助けに?何を言って?」

 

 彼女の真剣な顔に、掴んでいた手を離し後退る。

 

「これは罠よ。SHOCKERはアナタたちをおびき寄せて、一網打尽にするつもりだわ」

「……何……だと……」

 

 ──ここから、アンチSHOCKER同盟の、そして日本の崩壊が始まった。

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