流星群に願いを   作:キチガイの人

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【注意】この作品には以下の成分が含まれます。
・痛々しい中二病表現
・場合によっては胸糞展開あり
・他作品ネタ
・安易な設定
・転生者複数
 他、原作『推しの子』へのイメージを崩したくない方はブラウザバックを激しく推奨します。作風が合わない場合も即ブラウザバック推奨です。忠告はしました。
 それでもよろしい方は、お楽しみくださいませ。
 なお、どっかの薩摩兵子がチェストする作品とは別世界線の別人ですのでご了承くださいませ。


001

 人生とは後悔の連続である。

 悟ったような口ぶりではあるけれど、俺はその言葉を今以上に痛感したことはないだろう。行動にはそれ相応の責任を伴うと知っていたはずなのに。敷かれたレールに石を投げ込めば、大惨事になることなど目に見えていたはずなのに。

 

 これは……その罰なのだろうか。

 驕ったつもりはなかったはずなのだ。

 俺の言動程度で、定められた時の流れが覆ることはないと思っていたが、その考えは誤りだったのだろうと、手遅れながらに認識する。逆だった。俺程度の存在の介入でも、この運命と呼ばれるシロモノはいとも簡単に変わってしまうものだったのだ。

 

 軽い気持ちで接触したこと自体が、そもそもの間違いだったのだろう。俺に他人の人生を背負えるだけの覚悟はなく、それでも──それでも、少なくとも『今』だけは、彼女の短い人生の中で楽しい思い出として記憶に残ってもらえれば、それで良かった。

 遥か未来で、「あぁ、こんな人もいたなぁ」程度の記憶と共に、そう悪くない人生だったと思ってくれれば、それで良かったのだ。

 引き立て役どころか、その辺のモブである俺にできることは、それだけだと思っていた。

 

 

 

 彼女──星野 アイは、享年20歳でこの世を去る。

 推定黒幕と称される『カミキヒカル』と子を成し、ドームライブ前日に刺され、子に「愛してる」の言葉を残し死去。それが、定められた、変えることの出来ないシナリオ。

 

 

 

 その……はずだったのだ。

 

 

 

 

 

「──待って待って待って待って! ひとまず落ち着け! まずは落ち着け! とにかく何でもいいから落ち着いてくれ! 待って! 本当に待って! ガチで洒落にならないから待って!」

 

「待った」

 

「コンマレベルの『待った』は『待った』って言わねぇんだよ!」

 

 

 

 

 

 現在進行形で、俺は仰向けになりながら──俺の腹部に馬乗りになっている襲撃者『星野 アイ』を睨みつけていた。今まさに襲わんとする彼女の両手を、俺もそれぞれの手を握りながらなんとか拮抗状態を作り、その白い星の瞳を輝かせた一番星の猛攻を防ぐ。この現役アイドル、ニッコニッコしてんなオイ。

 千日手に近い状態に見えそうだが、劣勢に立たされているのは言わずもがな、俺である。

 第三者視点から見れば『人気アイドルのアイが、いかにもモブっぽい男を襲っている』構図である。どういうことだってばよ。

 

 なので俺の口から出る言葉は命乞いである。

 彼女も笑ってはいるが、目が全然笑ってない。

 

 

「話せばわかる! 話せばわかるからっ!」(犬養(いぬかい) (つよし)風命乞い)

 

「ここまで来たら、もう話し合うことはないと思うんだけどなぁ。あ、心配しないで。今日は安全じゃない日のはずだから」

 

「そこのどこに心配しない要素があんだよ!?」

 

 

 原作の流れを壊すわけにはいかない。細かなところは違うけれども、それでも大筋は辿っていたはずなのだ。しかし、そう思っていたのは、どうやら俺だけらしい。

 このままだと原作1巻部分から根底が覆る話になる。

 あの双子が生まれない未来だけは回避しなければ、原作2巻以降が破綻してしまう。

 

 

「ホントマジで洒落になってないんだよ! お前、自分の職業言って見ろや!」

 

「『B小町』のアイでーす。15歳、アイドルやってまーす」

 

「今のこの状況はアイドルがやっていいことじゃないのは、いくらお前でも分かるだろ!? いや、職業云々の話は、この際どうでもいい! 一時的な衝動で、未成年同士が子供作るのはマズいだろ!? 切羽詰まってる今の状況じゃ語り切れねぇレベルの問題が多いんだよ!」

 

「私たちなら大丈夫だって!」

 

 

 それでも現役アイドルは止まらないし、大丈夫の定義がどこをどう探しても見つからないんだが?

 オルガもニッコリの止まらなさだった。

 

 

「ん? あー、もしかして君って処女厨? そこは安心して、現役アイドルの裏側のイロイロを想像してるかもしれないけど、私は処女だから」

 

「その初めては運命の人に使うべきだと意見具申します!」

 

「使いどころが来たってことだね!」

 

「おかしい。同じ日本語を介しているはずなのに、意味がまるで通じない」

 

 

 この『推しの子』に存在する日本国の事実上の(公式じゃないが)公用語って日本語だよな? 俺の聴覚もアイの使用する言語は日本語には聞こえるので、間違っていないとは思う。

 ただ会話のキャッチボールが上手くできない。

 こんなのおかしいよ。

 

 

「俺の童貞はエッチで巨乳なおねーさんで卒業するって決めてるんだ」(クズ発言)

 

「え、私が奪うけど?」

 

「俺に意思決定権ねぇの……?」

 

 

 警察が無能極まる世界線では、司法も仕事してないらしい。本来俺にあるはずの『自由権』が現役アイドルによって束縛されている。

 こんなところ彼女のファンに見られたら、俺が殺されちまうよ。アイより先に俺が刺殺されちまうよぉ……!

 

 

「うん、わかった! 正直に言おう! 俺にお前と子供を支えて生きていける財力も覚悟も一切ないんだよ! というか、俺とお前って別に付き合ってるわけじゃないよな!? なんで俺!? ぶっちゃけ俺じゃなくても良くない!? お前アイドルだろ!? お金たくさん持ってるイケメンなんざ、芸能界には腐るほど居んだろ!? そっちにしようぜ! お前が望むモン作るための下地は、そっちの方が整ってるって!」

 

「──ダメだよ」

 

 

 そこで初めて、アイが笑みを捨てる。

 星野アイの瞳はまっすぐ、俺が思わず視線を外すぐらいに目前の相手を見据えていた。その白く輝く星の瞳に吸い込まれそうになるのを、俺はなんとか必死に堪えている。

 

 

「誰でもない、君じゃなきゃダメなんだよ。私はあなたと、あなたとの子供を愛したいし、愛してほしい。これは嘘じゃない、本当の気持ちだから」

 

「OK、アイの気持ちは十分に理解した。でも様々な行程すっ飛ばして子供作るのは別問題だと俺は思うんだよね、うん。万歩譲って、まずは恋人からじゃね? ガキが子供こさえるなんざ十年早いと思うんすよ」

 

「嫌。そんなに時間をかけたら──君は『裏切る』んでしょ?」

 

 

 アイの最後の発言を聞いて、俺の言動全てが裏目に出ていることを悟る。

 今の俺はどんな顔をしているんだろうか。少なくとも「やっちまったぜ☆」みたいな愉快なツラをしていることだけは間違いない。

 

 

「そんなの許さない。我慢できない。君は──君の全ては、私のだから。私は欲張りだから。誰にも、絶対に誰にも渡さない」

 

「熱烈な告白をありがとう。やっべ、涙が止まんねぇや」

 

 

 とりあえず目前の少女との対話は不可能ということを理解した俺は、アイドルの腕力に抗いながら器用に携帯を取り出す。ガラケーなんぞ前世の俺にとってはオーパーツ的シロモノであり、そろそろスマホ出てくんねぇかなぁと思っているのは内緒。

 必死の抵抗と並行して器用にボタンを押し、ショートカット機能から目的の人物へ連絡する。

 

 数コール後、目的の人物が出る。

 もはや1on1で解決できる気がしない。

 

 

『はーい、こちらカミキなヒカル君でーす。どしたん?』

 

「ヒカル! 助けてくれ! 現在進行形でアイに襲われてんだよ! このままだとアレがアレしてアレになっちまうからヘルプはよ!」

 

 

 

 

 

『あー、ごめん。ちょっと今手が離せ……っと、出産マス止まった。子供一人追加。やっばい、車に入りきらなくなったんだけど。これ原作再現?』

 

「呑気に人生ゲームしてんじゃねぇよおおおおおおお!!」

 

 

 

 

 

 推定黒幕が黒幕の仕事をせず、電話の奥で人生ゲームを嗜んでいた。アイが至近距離(物理)にいるので、言葉を濁して助けを求める形になった。しかし、このサイコキラーは俺の大事な童貞を殺す道を選んだようだ。ふざけんなボケナスが。

 最終的に「出産祝いは弾むね」という捨て台詞を残し、電話は切られることになった。アイも「ほら、カミキ君も応援してるしヤっちゃおう」とニッコニコである。

 

 しかし、俺は諦めない。

 次のヘルプに専念することになる。

 

 

『……今、取り込み中なンだけど』

 

「リョースケ、ヘルプ! 今アイに襲われてるから助けてくれ! ホントマジで冗談じゃなくて助けてくれ! お前の推しが子供こさえようと暴走してるから、ガチで助けて!」

 

 

 

 

 

『おめ』

 

「おめ、じゃねぇんだよおおおおおおお!!??」

 

 

 

 

 

 まるで「推しが幸せなら、それでOKです」と言いたげな文面に見えるが、声のトーン的には「うっせぇさっさと食われろ」と、完全に俺を見捨てたような口調だった。

 オタクとしては推しの幸せ第一の見本のようなドルオタムーヴだが、今の俺にはそれが仇となっている。原作無視どころの話ではなく、これはヒカルにも当てはまることなんだけど、キャラ崩壊が著しいとしか思えない。

 

 そりゃそうか。

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『つか今、賭け人生ゲームしてるから邪魔すンな』

 

「ヒカルの遊び相手お前かよ!? 推しの貞操と人生ゲーム、どっちが大切なんだよ! あぁ!?」

 

『人生』

 

「ちゃんと『ゲーム』つけろやゴルァ! その単語だけだと『……確かに人生の方が大切だよなぁ』って少し思っちゃうじゃんか!」

 

 

 俺の救難信号はガン無視され、ヒカル同様に「末永く爆発四散しろ」と電話を強制的に切られた。爆発しているのはアイの理性なんですけど、という反論すら許されなかった。こんのボケカスが。

 

 携帯に登録している連絡先を探し、他に助けてくれる人間を必死に探しているが、それより先に俺の腕力に限界が来たらしい。ライブに向けて激しい有酸素運動を繰り返し、一般女性より体力が多い現役アイドルと、高校受験に向けて勉強三昧でロクな運動もしてこなかった俺。しかも、馬乗りになっているのはアイなので、体勢的アドバンテージはあちらにある。

 どんだけ頑張っても、先に俺がギブアップしそうだ。

 つまり被捕食者の運命が確定し、原作が始まる間もなく崩壊してしまう。

 

 

「俺の腕ぇっ! 動けっ、動けってんだよ! あ、ちょ、待。あ、あと数年! 時間を! 俺に時間を!」

 

「使える手は何でも使わないと、相手に失礼。君が教えてくれたんだよ? 大丈夫、私も初めてだからさ。──ねぇ、一緒に気持ちよく、なろ?」

 

「アイのASMRすっげー……じゃねぇ! 俺、この歳で孕ませとうない! この言葉男側の俺が言う日が来ると思わんかったわっ! イヤッ、イヤ、イヤッ」

 

「──愛してる」

 

「わァ……ァ……」(ちいかわ泣き)

 

 

 もはや芸術品とも呼べそうなくらいに整った顔が、俺に覆いかぶさるのを下から眺めながら。

 俺は、事の始まり──破滅の序曲を思い出すのだった。

 

 

 

 




【主人公】
 原作知識持ちの転生者。被捕食者。

【星野 アイ】
 現役アイドル。捕食者。

【カミキヒカル】
 原作知識持ちの転生者。

【リョースケ】
 原作知識持ちの転生者。
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