流星群に願いを 作:キチガイの人
サラッと重要情報とか出してるので。
SNSでR18のエッチなイラストを拡散して『イイネ』していた前世が恋しい今日この頃、いかがお過ごしでしょうか? チー牛系転生者の今和泉 シオンです。前世の神絵師のイラストを一生拝めない喪失感と、まだ見ぬ神絵師の降臨にワクワクドキドキしております。
ところで、開幕から『チー牛系転生者』を名乗ってはみたが、最近はどうも俺の顔面に怪奇現象が起こっている。順調だった原作ルートが大将のせいで木っ端微塵に吹き飛んだ影響か、俺がアイドル様を同棲を始めた次の日に『それ』は現れた。
いつものようにアイドル様を抱きしめながら寝ていた俺は、朝食を作るために早起きをする。施設では職員さんが作ってくれていたが、そこを離れて二人暮らしを始めたからには、誰かが料理を作るしかない。消去法で俺である。
顔を洗ってサッパリしようと洗面台に行き、顔を見て──
「──誰や、このイケメン」
なんか鏡によく知らん美形男子が映っていた。いつもなら福笑いで見事失敗したような顔面がそこに映っていたはずなのだが、顔面整形した?と言われても不思議ではないほどの顔立ちが、なぜか俺の顔面位置に張り付いていたのだ。ゲルニカしてねぇし、ニキビ一つねぇし、なんならアニメの主人公張れそうな整った顔立ちだ。ちょっとしたホラーである。
顔を触っても違和感なく、頬を引っ張ればイケメンフェイスが若干歪む。そこで、寝起きで覚醒していなかった俺の脳がようやく、この灰色の髪をしたイケメンが自分であることに気づいたのだ。ちょっとしなくてもホラーである。
しかしながら、解決した以上に謎は増えるばかりである。幻覚にしては肌触りも違和感がないし、何ならチー牛時代の顔の方が違和感があったくらいである。そして、あろうことか──同じように顔写真もイケメンフェイスに変更されているのだ。完全にホラーである。どういうことだってばよ。
洗面台で発生した不気味な現象に首を傾げていると、完璧で究極になる予定のアイドル様が、可愛らしいあくびをしながら洗面所に入ってきた。
俺はすかさず彼女に問う。
「……なぁ、星野。俺の顔ってどうなってる?」
「うん? いつも通りカッコイイよっ」
ふむ、彼女の反応を見る限りだと、この状況をおかしいと思っているのは俺だけらしい。いつもお世辞のように……というか嫌味の領域で、毎回の如く「カッコイイ」とか「イケメン」とかほざくアイドル様だったが、今回の反応は今までのチー牛時代と全く同じ反応だった。
つまり俺の顔面整形現象に彼女は気づいていない可能性がある。まぁ、彼女が嘘をついている可能性があるので、他数人にも確認した。しかし、彼女と同じような反応をすることから、どうやら変化を認知できるのは俺一人だけらしい。眼科にも行ってみたが異常なし。つか写真まで変わって見えるとか、これもはや精神科案件では? けど精神科って前世で行ったことあったけど、ロクな診察してくれなかったからなぁ。はははっ、俺はどうやら本格的に頭がおかしくなってきたらしい。誰か助けて。
ますます俺は混乱した。悪影響がないのがホントに怖い。もしかして俺の潜在意識が『アイドル様と同棲するなら、それ相応の顔面にならなければ』と覚醒したのだろうか?
んな馬鹿な。
アホらし。
害はないけれど謎ではあるので、ひとまずは自惚れぬように過ごすしかない。イケメンは目の保養にいいので、前のあの顔が視界に映らなくなっただけでも良しとしよう。原因も分らんし、認識しているのが俺だけなので解決策も思い浮かばない。
後で大将に相談しようと心に決めつつ、俺は朝食を作るためにキッチンに歩みを進めるのだった。
♦♦♦
苺プロダクション。
原作においては
そして俺がいる時間軸は『B小町』が結成されていない……いや、結成はされているんだが、それが大々的に発表されていない時期。要するに苺プロは弱小も弱小、無名と言っても過言ではない、こじんまりとした家族経営に近い事務所なのである。
原作ファンとしては弱小事務所だろうが建設予定地だろうが、まさか生モンの苺プロに足を運べるとは思わんかったがな。アイドル様の付属品として取り繕っているものの、内心はテンション高めである。某バトルドームに出てくる子供ぐらいには。
超エキサイティング。
「本日からお世話になります、今和泉 シオンです。事務雑用に配属されると伺っておりますが、今後芸能界のアイドル部門の分野で躍進していくであろう御社に入社できたことがとても嬉しく思っています。初めての出社で緊張していますが、これからは芸能界への理解を深め、会社の発展に貢献できるよう精一杯頑張ります。 慣れないことばかりで至らない点があるかもしれませんが、早く一人前になれるように努力しますので、ご指導のほどよろしくお願いいたします」
「お、おぅ……」
初めての出社ということもあり、事務所に入って社長の姿を視認した瞬間、俺は頭を下げながら新卒の定型文を述べる。隣で俺の発言に思考停止したアイドル様のオマケ的存在にせよ、中学生のガキを雇うのがいかに面倒か俺でも薄々理解できる。
土日、時々平日勤務のアルバイト的存在だが、相手方は労働の対価を支払ってくれる存在だ。原作キャラ補正もあり、俺は自身のできる最大級の敬意を払う。
しいて問題を挙げるとすれば、中学生のアルバイトが吐く台詞ではないので、社長が非常に困惑している点だろう。
確かに中学生のガキがこんな口調で挨拶して来たら怖いわなぁ。
「し、シオン? 急にどうしたの?」
「いや、これからは上司にあたる人だからさ。改めて挨拶するのは常識だろう?」
「私の記憶では、契約書出しに行ったとき掴み合いになってた気がするんだけど」
「あれは、事務所のドル箱予定のアイドル様から、世間の荒波すら経験したことのない
「聞こえてるぞオイ」
アイドル様の言葉に、俺は困ったように返す。
大将がアドバイザーとなりアイドル様が作らせた契約書を受理した社長と、天下無双のアイドル様を支えていくであろうと期待していた俺とによる醜い争いのことを言っているのであろう。
人間と言うものを根本的に信じていない俺だが、今回の件は社長に頼らないと何ともならない状況だった。アイドル様は金輪際現れない一等星なので、社長としても彼女に虫がつくのはNGだろうし、なんとか上手い具合に彼女のワガママを窘められると思っていたのだ。
しかしながら、期待は大いに外れ、あろうことか彼女との契約書を受諾してしまう始末。
本当にアイドルをプロデュースする気はあるのかと問いただしてしまったのだ。
まぁ、社長も社長の言い分ってものがある。
最初は俺の期待通り、なんとか金を積んででも俺と彼女を別れさせるつもりだったそうな。だが、彼女のバックには
それを知ってか知らずか、ラーメン屋店主の最大限のサポートをもとに話は進められ、最終的には社長が相手方の条件を全て飲む無条件降伏で話し合いは終了したとの事だった。
むしろ「いったいどういう教育したら、こんな非常識な娘に育つんだ!?」と俺が逆ギレされる始末。俺に責任を押し付けないで欲しい。
「で、だ。アイの彼氏」
「彼氏じゃないです。友人です」
「彼氏ですっ」
「彼氏じゃないです。知人です」
「ランク下がってるんだけど!?」
俺とアイドル様のコントに社長は溜息をつく。
「それはこの際どうでもいい。
「えぇ、もちろんです」
社長の真剣な眼差しに、俺は微笑みながら懐に手を入れる。
アイドル様は首を傾げている。
俺がどれだけ否定しようとも、ぶっちゃけもう同棲している時点で言い訳のしようがない。そういう関係ではないと声高々にしたところで、大切なのは『相手がどう受け取るか』である。自身がそう思ってなくても相手がそう見えればそれが全てだし、前世の俺はDV男であるのが世の真実なのである。
これで彼女が離れればそれで済む話だったのだが、よう分らんがアイドル様は俺を手放したくないらしい。路傍の石に執着したところで意味などないと再三説明したが、彼女は頑なに首を横に振るのだった。
……ま、まぁ、芸能界で活動してれば、俺よりも重要視するべきこと、するべき人物には会えるだろうから、それまでの辛抱だろう。
なので俺も準備している、という意味も込めて社長の問いに返すのだった。
「──辞表は常に持ち歩いてます」
「違う違う違う違う、違うからそれ仕舞え」
社長は慌てるようにアイドル様の様子を気にしながら俺を止め、彼女は「もう終わりかー。アイドル楽しかったなー」と誰もを魅了させる笑みを浮かべたのだった。
楽しかったも何も、まだアイドル結成すらしてねぇじゃん。
「はぁ……俺が言いたいのはな、お前とアイとの関係を他に口外しないでくれって話だ。別にイチャコラするのは諦めたが、時と場所は流石に選べ。くれぐれもスキャンダルになるようなことだけは避けてほしい」
「最大限努力します」
「……あと、辞表を容易に出すな。
そうなんよなぁ。そこが問題なんだよなぁ。
この完璧で究極になるかもしれないアイドル様なんだが、肝心なアイドル活動への意欲がそこまでっていうか……彼女のアイドルになった目的って『他者への愛を本物とするため』だよな? 漫画ではそれへの執着があった気がするんだけど、今の彼女には見る影もないというか。
なんならもう、心の底から愛する人ができたと言いたげな──いや、気のせいだろう、そうだろう。そうだと言って。お願い。
なんて現実逃避していると、一人の女性がコチラに歩いて来た。
その姿に俺は目を見張り、内心は狂喜乱舞する。
「あぁ、紹介してなかったな。俺の妻のミヤコだ」
「──初めまして、この度、苺プロダクションで働かせていただくことになりました、今和泉 シオンと申します。若輩の身ではありますが、今後ともよろしくお願いいたします」
「えっ、は、はぁ……ご丁寧にどうも……」
彼女の名前は知っている。つか俺個人の中では原作でトップを争うレベルの好きなキャラでもある。この社長の奥さんの名前は斉藤 ミヤコさん。イケメン俳優の玉の輿狙いで社長と結婚した、モデルやキャバ嬢などの多種多様な経験を持つ超絶美女だ。
原作だとアイドル様が死去した後、双子の育ての親となる人物だ。1巻開始時は打算的な印象を受けるが、2巻目以降は苦労人の描写が多いことでも知られ、後の苺プロの社長になる女性でもある。アイドル様が亡くなった関係で、現社長が失踪するからな。
まぁ、んなことはどうでもいい。俺の『推し』が目の前にいるのだ。
内心では五体投地している。
いつもより1オクターブ上げた声色で自己紹介する。
くっそ、例のイケメン化が現実になっていれば、もうちょっと良い反応が得られたかもしれんのに。あれは俺の幻覚(不確定)だから、チー牛が言っても「そうっすか」的な反応をされても納得しかない。
ブサイクに優しくない世界である。悲しい。
「……むぅ。シオンは私のだからっ」
「おまっ、TPO考えろってさっき言われたばかりだろ!? 抱き着くなって、こらっ──あ、社長夫人、これは違うんです。はい。じゃれあってるだけであり、そういうのじゃないですから。えぇ、本当です」
「むぅううううう!」
「こぉんの馬鹿力がっ、首っ、息ができね──」
なんか知らんけどクッッッッッソ不機嫌な一番星に物理的拘束を受けるのだった。
最近のコイツ、なんか情緒不安定すぎないか?
♦♦♦
「なぁ、アイ」
「佐藤社長、どうしたの?」
「斉藤だ。……お前に協力してた赤い髪の男、あれは誰なんだ?」
「なになに、私のことストーカーしてた? あの人はラーメン屋の店主さん。私とシオンは彼のことを『大将』って呼んでる。私のお父さん的存在……かな?
「……は? 有馬 鑑連だと?
【主人公】
原作知識持ちの転生者。例のチートって、ベッタベタな解呪方法として『心の底から対象者を愛する者のキスで解ける』がある。つまり?
【大将】
原作を履修してない転生者。小銭稼ぎで子役をしていたことが判明。
【星野 アイ】
未来の人気アイドル様。ごっつぁんです。
【カミキヒカル】
原作知識持ちの転生者。出番なし。余談だが、001のアイの暴走は、コイツが焚きつけた結果なので、一応黒幕と言えなくもない。
【リョースケ】
原作知識持ちの転生者。出番なし。↑のセッティングを行ったのはコイツなので、一応実行犯と言えなくもない。
【???】
原作知識持ちの転生者。出番なし。唯一、全転生者と面識があり、所在を把握している人物。
【???】
原作を履修してない転生者。出番なし。前世の主人公の妹。根本的に人間嫌い。
次回:大☆炎★上