流星群に願いを   作:キチガイの人

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今日もいい天気ですね。
高評価、感想ありがとうございます。

※2023/12/17 前書き修正


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 アイドル様が名実ともにアイドル様になった数日後。つまりアイドルオタク界隈の一部が、斬新なアイドルの登場に物議を醸している中と言うべきか。

 彼氏持ちアイドルとか珍しいと言えば珍しいが、ただそれだけの存在だからなぁ。よくある斬新なパターンとは、『新しい』か『前に誰かがやったけど失敗した(無意味だった)』のどちらかだもんなぁ。今回の場合だと後者。売れるかどうかの観点において、彼氏持ちなんざデバフ以外の何物でもない。

 

 そんな界隈の一部とかいう狭いカテゴリーをドッカンドッカン言わせた元凶は、数日後に我が家へと帰宅した。忙しかったから事務所に寝泊まりしていたと彼女は仰るが、俺の目を見て弁明することはなかった。

 別に俺はアイドル様の言い分を信じてないわけではないんだけどね? イギリスの三枚舌外交や、女子高生の「可愛い」発言くらいには信じてるで?

 

 

「──で、他に弁明は?」

 

「……ほら、個性を出そうかなって。彼氏持ち厳禁なアイドル世界にパンチをかましてみたって言うか?」

 

「斎藤社長の土手っ腹にチェストしてんじゃねぇよ。白目向いて倒れた社長を介抱していた夫人と、その間なぜか知らんけど社長業務を兼任してた俺に謝れ」

 

 

 そんで彼女が帰宅してきたので、リビングで正座させて尋問している。ちゃんと座布団も敷いているので、足のしびれを気にすることなく情報をキリキリ吐けるね。

 当の彼女は目前で胡坐をかきながら腕を組む俺に対し、悪いことをした子供のように目を逸らしているが、表情から「私何も悪いことしてないもん」と言いたげに不服そうではあった。既に実害として、被害者が俺含めて2名いるんだよ。

 

 彼女の問題発言で前のめりに倒れたのは俺だけではなかったようで、社長も同じように舞台袖で失神してたらしい。そのせいでミヤコ様は社長の面倒を見なきゃいけなくなったし、社長が倒れても時は止まってくれないので、その間の業務は俺が引き継ぐことになった。アルバイトな俺が。

 幸い?にも今後の流れ的なものは社長のメモから発掘されたので、その通りに『B小町』の面々に指示を飛ばしたり、先方との打ち合わせをするだけだったのが救いだった気がする。世間ではカースト上位に分類される『B小町』のアイドル様以外の面々が、顔面作画崩壊系アルバイターの俺の指示を聞いてくれるのか不安になったけど、なんか知らんけど素直に従ってくれた。

 なんならアイドル様との関係性に関して根掘り葉掘り聞かれた。

 

 というか『B小町』の方々と少し仲良くなった気がしたが、そうやって勘違いすると足元をすくわれるのが芸能界。芸能界云々関係なく、女性は怖い生き物だと俺は知っている。

 例で挙げるとすれば前世の腐れ縁その1の彼女さんとか。付き合って1か月後に、実は罰ゲームで付き合ってただけでしたー的なカミングアウトと共に、財布通帳持ち逃げされてたもんなアイツ。最終的には何とかなったけど、何とも笑えない話だった。

 あと腐れ縁その2の母親もヤバかったなぁ。旦那のことをATMとしか見てなかった女で、旦那を知人でハニトラさせて旦那方を有罪にさせて慰謝料ブン取って、旦那に子供押し付けて不倫相手と結婚したとか聞いた。そのせいでアイツの親父さん自殺したもんなぁ。こっちは最終的には何ともならなかった。

 

 ホント女性って怖い生き物だなぁ。

 大将曰く「ただ単純に君の知る女性が特段ヤバいだけ」と一蹴されたが。よくよく考えればそうだった。あんなのがスタンダードなら世も末である。

 

 閑話休題。

 

 

「つか『B小町』の面々にも迷惑かけてんじゃねぇか。俺がどんだけ頭下げたか……」

 

「え? ちゃんとみんなには言ってたよ?」

 

「は?」

 

 

 なんか戯言をほざき始めたアイドル様の話を詳しく聞いてみると、なんと『B小町』の他メンバー全員が、アイドル様の奇行に賛同していたと口にする。理と利を説けば人間と言うものは動くと言う、俺が小学生のガキンチョ共相手に昔やった手法を真似たようで、反対する者はだれ一人していなかったと口にした。

 同世代の女の子相手とは言え、アイドル様だけでは説得方法が思い浮かばなかったのか、知人の助けを借りて内容を作り上げたとの事。

 

 

「私がシオンと絶対離れたくないっていう情的観点と、私がそれを口にしたところで私個人のファンが減るだけって話をして、この『B小町』ってグループが大きくなっても、そのファンは彼氏持ちの私じゃなくて、他のみんなに流れるんじゃない?って」

 

「彼氏持ちが在籍しているってだけで、グループ的には痛手だと思うけどな。他もそうじゃねぇかって目で見られる可能性は考えなかったのか?」

 

「でも逆に私たちへ処女性を求める人たちは、そもそも私たちのグループを推さないと思うけどね。あ、もし私のせいでグループの人気が低迷するようなら、私を切り捨てちゃって大丈夫ってみんなには言ってるよっ」

 

「……と、言うように指示されたと。どう考えても星野から出る言葉じゃねぇよなぁ。で、共犯者は誰だ? 大将か?」

 

「シオンも知ってる人。田村君? 田上君? なんかそんな感じの名前の人」

 

 

 彼女が言っているのは小学4年時から同じクラスだった『田中 太郎』だろう。俺が扇動者とか不名誉なあだ名を付けられたクラス対抗リレー事件で、他クラスのタイムを集計して見せたアイツ。

 中学も一緒な田中は、今ではアイドル様の協力者をしているらしい。

 余談だがコイツが腐れ縁の転生者である。原作知識を持つが故に、アイドル様を支援しているのだろう。

 

 

「田中は他に何かするように言ったか?」

 

「ううん、私はそれだけでいいって。他の裏工作は自分の方でやっとくからって」

 

「裏工作とは大言壮語を吐いたもんだ」

 

「あのライブ会場にサクラを用意したり、ネット掲示板の炎上を沈下させたり、広報活動の諸々とか?」

 

 

 やってることが学生のできる裏工作の範疇を超えている件について。

 サクラに関してもアイドル様がちまちま増やしてた友達の関係者だったらしく、もはや身内で応援していたと言っても過言じゃない状況だったとアイドル様は語る。中学校の元××小学校のクラスメイト(みんな)もアイドル様のスタンスに同調しているようで、俺がやってきたアイドル様の友達量産化計画は無駄じゃなかったのと、そのせいで俺が危機的状況に陥っているのだと知ることになる。

 ネット掲示板の炎上沈下に関しては……アイツは元々そういった情報操作が上手かった奴なので気にしない。前世の俺の時も頑張ってくれてたし。最終的には国単位(隣国)が出張ってきたので、一個人ではどうしようもなかったらしいけど。

 最後の広報活動とか、アイツは苺プロの××中学校支部でも作るつもりか?

 

 つまり話をまとめると、俺と斉藤夫婦以外にアイドル様は根回しをしており、随分と前から今回の惨事を引き起こすつもりであったわけだ。

 

 

「つか、やるんならせめて社長に話を通しておけよ。曲がりなりにも直属の上司だろうが」

 

「だ、だって……」

 

「『絶対に反対されると思ったから』か? 当たり前だろ。今の弱小芸能事務所たる苺プロにそんな奇天烈アイドルを誕生させる利点が売名行為以外にねぇし、星野のポテンシャルなら前述の奇行に走る意味もない。正直に言って、今回のお前の行動は迷惑以外の何物でもないって自覚してるか?」

 

 

 ちゃんと契約している以上、その行動には責任が伴う。弱小事務所な苺プロは、社長の足で仕事を捥ぎ取っているわけなので、件のメモに記載のあった今後の予定も社長が直々に相手先に訪問する内容も多かった。原作では彼女のプロデュース面と、彼女が亡くなった後の失踪を引き合いに出され、無能オジサンのムーヴが目立つ社長ではあるが、無名をドームライブまで導いた手腕は評価せざるを得ない事実だ。

 営業あるあるの足で稼ぐスタンスな社長なので、今後も『B小町』……というか、アイドル様のために東奔西走するつもりだったのだろう。今回のやらかしで、彼の努力の何割が無駄になったのか、いくつの仕事が白紙に戻るのか、そこから派生的に生まれる各関係者への謝罪がどれほどのものになるのか。考えるだけで頭が痛くなりそうだ。

 俺としては反対されようとも、社長に話は通しておくべきだったのではないか?と俺は考える。

 

 つか彼氏って誰だよ。

 俺だって言うのなら、完全な虚言だぞコレ。

 

 

「はぁ……ホントどーすんだよ。あーあ、勿体ねぇ。今回の戯言で、どんだけのファン逃すことになったのやら」

 

「戯言じゃないもん。あと田村君が、これで減るのがアイドルガチ恋勢(ユニコーン)だけだから、その人たちの犯罪レベルのやらかし(デストロイモード)を気にする必要がないし、むしろプラスって言ってたよ?」

 

「田中な? なーにがプラスじゃ。ユニコーンだろうが立派なファンで客だぞ」

 

 

 少しでも匂わせがあれば手の平ドリルするユニコーン共を客と呼称したくない気持ちは分からんでもない。しかしながら、残念なことにガチ恋勢もアイドル界隈を支えている存在であることも忘れてはいけないのだ。支えていると言うか、金づるとも言うが。

 そして、彼氏持ちを公言したとして、確かにガチ恋勢の何割かは去ることになるだろうが、残るのは彼氏持ち言ってんのに、彼氏の存在含め人格批判し凶行に走る真のモンスターなのだ。馬鹿に分かるように説明しても、馬鹿はそもそも話を聞いてないソレである。

 そう考えてみると、今回のやらかしって一部のガチ恋勢を排斥しただけで、それ以外のメリットってなくないか? 何なら話も聞かん馬鹿に、叩く大義名分与えただけだろコレ。

 

 しかも、だ。これ普通に俺が彼女と離れるだけで全て解決する案件なんだよね。どうしてそこまで彼女がいばらの道に進もうとするのか、俺にはそれが全くもって理解できない。

 彼女はいつになったら現実を理解してくれるのだろう?

 

 

「……えーっと、何だっけ? 確認なんだけど、お前の言う彼氏って誰?」

 

「君だよ」

 

「その彼氏役、他で適当に見繕ってほしいんだけど」

 

「無理」(即答)

 

「と、なると……とりあえずビジネスパートナー的なノリで話合わせるしかないのか。……マジかぁ」

 

 

 笑顔で切り捨てられたので、俺は『やらかしたモンはしょうがない』の精神で、次の思考を拙い脳みそで算出していく。これで彼氏関連も嘘とかバレた日には、彼女の信頼そのものが地に落ちる可能性も十分にありうる。

 まことに遺憾ではあるが、こうなると俺が彼女の茶番に付き合うしかないのだろう。

 どうせ強制イベントでアイドル様は推定黒幕のイケメンとイチャコラするはずなので、それまでは紛い物の俺が彼氏役を務めるしかない。もうちょっと顔面に自信ある男性を用意してほしかったのだが、その件に関してアイドル様が納得しない。どうして?(半泣き)

 

 俺が天を仰ぎながら溜息をついていると、話は終わったと言いたげにアイドル様は立膝状態で俺に近づき、真正面から俺の胸に抱き着いて来た。口酸っぱく、年頃の女の子がするもんじゃないと再三注意して治らない、彼女の癖のようなものである。

 彼女曰く、シオン成分を充電しているとの事。

 原作よりも意思疎通し辛いキャラになっていると思うのは気のせいだろうか。

 

 

「すぅー……ここ数日会えてなかったから、落ち着くなぁ。うにゅー……」

 

「たった数日やんけ。こんなんじゃ、地方遠征が思いやられるわ」

 

「その時は君も一緒に行くから大丈夫だもーん」

 

 

 その後も約1時間ほど彼女は俺の胸に顔を埋め、離れることはなかった。

 暇な俺は事務所のパソコンで検索した内容を思い出す。ネット掲示板での炎上をエゴサしてたわけだが、比較的簡単に見つけることが出来た。無論、賛否両論……いや、否が多かったことは言うまでもない。

 

 

 

 

 

『中古品のアイドルとかマジ無理』

 

『男がアイドルに近づいてんじゃねぇよks』

 

『彼氏の特定はよ』

 

 

 

 

 

 そして書き込みの内容も。

 

 

「……せめて、今回は納得のいく殺され方がいいなぁ」

 

 

 俺の呟きに、心なしかアイドル様の拘束する手が強まるのだった。

 

 

 

 




【主人公】
 原作知識持ちの転生者。他『B小町』の面々から「彼女持ちのイケメンな同世代」と認識されているのを知らない。

【星野 アイ】
 駆け出しアイドル様。主人公のことは自分が守るから大丈夫。

【カミキヒカル】
 原作知識持ちの転生者。出番なし。ヤバい母親持ちだった腐れ縁その2。

【リョースケ】
 原作知識持ちの転生者。出番なし。ヤバい彼女持ちだった腐れ縁その1。

【田中 太郎】
 原作知識持ちの転生者。コイツです。

【???】
 原作を履修してない転生者。出番なし。前世の主人公の妹。現段階で西日本を中心に兄貴の生まれ変わりを探している。



 次回:ネットアイドル『シオンちゃん』爆誕(アイ視点)
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