流星群に願いを   作:キチガイの人

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 あけおめ。
 高評価、感想ありがとうございます。

 余談ですが、この作品は社長と主人公の胃以外はハッピーエンドで終わる予定なんですが、アイがドームライブやって完結するか、それとも原作2巻以降も続けるか悩んでいる今日この頃。でも、このまま進むと某天才子役と某天才女優が二人仲良く『西国無双』の店員になる……とかいう原作粉砕ルートに進むんだよなぁ。


2024/1/7 あとがき誤字修正


018

 アイドル様によるララライのワークショップは恙なく終わりを迎えた。社長の「コイツを他所様に預けていいのか……?」という不安を裏切るように、劇団の方々にも高評価を頂きながら、何の問題も起こすことなく終わることとなった。

 

 

「……どないしよ」

 

 

 それはそれとして、俺は自宅近くの公園で、ブランコに腰かけながら黄昏ていた。時間的にも『黄昏ていた』と表現するには正しい時間帯なのだが、時間関係なくとも俺は同じ行動をしただろう。

 かつて某アイドル様が母親から捨てられた時に、迎えに行った俺が彼女を『失敗して家に帰れないサラリーマン』と揶揄したことがあるが、今の俺がまさにそんな感じだった。自身の後を憂いているという点で言えば、理由は全く違えど当時の彼女の心境を俺が追体験しているような状況だった。

 

 ワークショップで彼女が得るものは多かっただろう。それは彼女の今後におけるアイドル活動にも反映されるだろうし、女優としての仕事も入ってくるだろうから、無駄になるようなことはないと断言できる。人脈という名のパイプも繋げられたはずだ。

 苺プロとしても彼女の活動の幅が広がることは大きな益になるはず。

 劇団に所属する面々からの評価が異様に高いことにも驚いた。原作では彼女の評価って『田舎上がりの小娘』みたいな評価だった気がするが、今回は何か知らんけど好意的に見られていた。原作で指摘されていた『ファッションに気を使ってない』という点は変わってないはずなんだが。だって俺の服奪って着て行くんだぜ? あの娘。

 

 話を戻そう。

 原作でもターニングポイントだったワークショップは大成功と言っても過言ではない結果に終わった。

 

 

 

 

 

 彼女と推定黒幕との関係がこれっぽっちも発展していないことを除けばの話だが。

 

 

 

 

 

 アイドル様と晩飯を食う時には話題に上がる推定黒幕の名前だが、詳しく聞く限りだと、どうにも男女の関係と思わしきワードが一切出て来ない。どうにも彼女にとって推定黒幕は「声かけるたびに面白い反応をする霊長類」としか思ってない節がある。

 とりあえず連絡先の交換をしたらしいが、あれから連絡を取っているのかと言えば、完全に放置気味である。いや、俺の知らないところで会ってんのかね……みたいなことも思ったが、本当にマジで洒落にならんくらいに、アイドル様は推定黒幕に興味がないと思われた。ソースは田中。田中曰く、「名前も曖昧なんじゃないですかね」との事。噓やろ?

 

 まぁ、要するに、だ。

 俺が何が言いたいのかというと。

 

 

「……どーすんだマジでコレ」

 

 

 時系列的に既に死去しているであろう某終末患者が転生しない可能性が出てきたことである。いや、もしかしたらアイドル様の娘が自動的に某終末患者になる可能性も否定できないが、あくまでも希望的観測ってだけの話。

 死した人間が生き返ることはないのは世の理だが、本当にさりなちゃんがゴロー先生の心の中にだけ生きているキャラになってしまう。原作ファンとしては、某終末患者の転生体が存在しないこの世界が許せないんだが?

 

 だからと言って俺ができることと言えば?と自問自答してみたところ、なんか知らんけど手がないのである。だって彼女と彼をくっつけようにも、肝心の推定黒幕さんが奇声を発しながら逃げるって話だもん。何の冗談だよ。

 ってか、どうして推定黒幕はアイドル様から逃げているのだろうか?

 アイドル様は初対面からそんな感じだったと言うし、推定黒幕はどんな手段を用いても逃げるんだとか。ある時は四足歩行で爆走し、ある時はビルの3階からプロのスタントマン顔負けの鮮やかな飛び降りを魅せ、ある時は迷彩柄の服を着て花壇に潜んで逃走を計るのだとか。彼の本気具合が窺える。

 

 

「……え? えぇ……あー……ど、どないし……あー、さっぱり分かんねぇ。え? どうしてこうなったんだよ本当に。こんな時どういう顔すりゃいいんだ?」

 

「笑えばいいと思うよ」

 

「笑えないから頭抱えてんだよ」

 

 

 俺の隣で楽しくブランコ漕いでいる中堅アイドル様の無責任な発言に、俺はぶっきらぼうに言葉を返すのだった。しかし、原作知識から来る悩みであるがゆえに、面と向かって彼女を責めることが出来ないのもまた事実。責めるどころか、そもそも彼女は何も悪くないのである。

 転生者が存在すると言うことは知っているが、この世界線が『推しの子』軸であることは知らない。一応この世界の主人公格のアイドル様なんだけどなぁ。絶対に彼女に言うつもりはないけど。

 

 知ってか知らずか、彼女は持ち歌を口ずさみながらブランコを大きく漕ぐ。自身に隠すようなことは一切ないのだと言わんばかりに、変装らしい変装は藍色のスポーツキャップと、黒いサングラスのみ。俺のタンスから強奪した白いパーカーと、紺のハーフパンツな出で立ち。靴は流石に自分のものらしいが、学校指定のスニーカーという、オフの現役アイドルという視点から見れば、あんまりなファッションセンスである。

 ファッションセンス皆無な俺が持つ服を着てるんだから当然か。

 余談だがファッションの分野において俺含む転生組の無力感は凄まじく、大将は着れれば何でもいいスタンスの人間だし、転生して性別までも変化したロリコンは「マネキンの服を買えば良くないですか?」と豪語する始末。

 

 

『つか普段着買いに行こう。いい加減買おう。な?』

 

『えぇ……』

 

『アイドルがしちゃいけない顔しながら拒否すんな。さすがにさ、さすがに……俺の服からチョイスして行くのやめよ?』

 

『君の匂いがしない服に価値なんてあるの?』

 

『んな澄んだ目で狂気的な回答すんじゃねぇ。その解釈だとアイドル衣装に価値無しって言っているようなもんだぞ。野郎の服を思春期真っ只中の女の子が着ること自体が間違いだと何度も──』

 

 

 つい最近も対話を試みたが、彼女の意見が変わることはなかった。社長も、ミヤコ様も、何なら『B小町』の面々にも協力を仰いだが結果は変わらず。

 社長も言っていたが、普段は素直に他者の忠告やアドバイスには耳を傾けるのだが、こと俺に関することだけは自身の意見を曲げることは絶対にないらしい。年々それが顕著になっているという、恐ろしい報告も受けている。

 

 俺だって男である。一緒に風呂入ることに関しては……まぁ、妹ともそんな感じだったし耐えられるが、服のシェアだけは勘弁してほしいと言うのが本音である。自分の服なのに彼女の匂いがするとか何の冗談かって話だ。

 しかも精神年齢アラサーだが、この身体は思春期真っ盛りの男子中学生ボディーなのだ。いや、もう正直に言う。もう色々と限界なんだよマジで。視覚は目を閉じれば遮断できるが、匂いに関しては永続的に断つのが非常に厳しい。

 年々スキンシップが増えていき、何なら過激になりつつあるアイドル様な上に、成長期なのか知らんけど、どんどん女性らしくなってゆく身体を最大限に生かしながら迫ってくる今日この頃。そしてトドメに匂いときたもんだ。同棲生活なので発散するのも一苦労だしね。誰か助けて。

 

 

「……シオン、元気出してよ」

 

「……星野」

 

 

 ブランコを全力で漕ぐのを止めていたアイドル様は、元気づけるように俺の顔を覗き込んでいる。

 その姿を見て、彼女を心配させるレベルのひっどい顔をしていたことに、今さらながらに気づいた。俺は大きく一つため息をつきながら、頭を振って思考を切り替える。

 

 最悪、このアイドル様を守れるのならそれでいいだろう。

 推定黒幕の件は……そうだな、どう考えても言動がおかしすぎるので、後で田中に頼んで

 

 

 

 

 

「私がシオンのエロ本勝手に読んじゃって、それを事務所に置きっぱなしにしたせいで、君の巨乳お姉さん好きが全員にバレちゃったことは謝るから。ね?」

 

「お前何してくれちゃってんの?」(素)

 

 

 

 

 

 俺の秘蔵本持ち出した挙句、性癖暴露したとかマジ?

 コイツにエロ本読まれたこと自体が切腹案件なのに、言うに事を欠いて苺プロ全員が知っているとか洒落にならないんだけど。嘘って言って。(懇願)

 

 それと同時に、今日の苺プロの面々の不可思議な対応に納得がいったと言うべきか。納得がいったからこそ、アイドル様の発言が嘘じゃないことの裏付けになってしまったのだが。

 社長は生暖かい目で俺を労ってきたし、ミヤコ様は若干赤面しながら余所余所しかったし、『B小町』の方々は微妙な顔をしてい……いや、グループの巨乳お姉さんポジの人からはグイグイ来るなって感じだったなぁ。

 

 

「ふと思ったんだけど、私という彼女がいながら……そういう本持つとかおかしくない?」

 

「ビジネスパートナーな? 『R18』って年齢制限の記載ある時点で言い訳にしか聞こえんと思うけど、思春期の男子中学生の身体ってイロイロと発散せんとアカンのよ。特に星野のような美少女と住んでいるとね? 間違いが起こらないための自己管理だと思って欲しいんですよ。はい」

 

「その美少女とヤっちゃえば全部解決するじゃん」

 

「………」(絶句)

 

 

 水を求める魚のように口をパクパクさせながら絶句する俺。

 原作でも推し云々や境遇を考慮しても、思考回路ブッ飛んでんなぁと思ったが、彼女は今世紀最大の問題発言をサラっとブチ込んでくる。

 年齢的問題、法的問題、身体的問題、立場的問題、社会的問題、環境的問題、そういった類を内包する様々な問題を、まるで些細なことと切り捨てるように、晩御飯の献立を要求するかの如く言い放つアイドル様。何も考えてないと言い換えても違和感はない。

 さすが推定黒幕の次くらいに倫理観が欠如している女と言われただけのことはある。

 

 推定黒幕とさっさとヤれと望んでいる俺の思考を棚に上げて、俺はマリアナ海溝より深く大きなため息をつきながら、横目でアイドル様を睨む。

 

 

「……あの、なぁ。そういうことを安易に言うなって習わんかったか?」

 

「お母さんは教えてくれなかったよ?」

 

「さらっと闇ぶち込んでくるじゃん」

 

「お揃いだねっ」

 

 

 今世の両親ネタを擦り過ぎた結果、その悪影響がアイドル様に及ぼしていることは素直に反省する。母親の部分だけ目の星が黒くなっていたアイドル様の自虐に、俺はそれ以上返す言葉が見つからなかった。

 

 

「──ちゃんがね、そういう経験は早めにしてた方がいいよって言ってたからさ。せっかく彼氏の君がいるんだから、お互い卒業してた方が良いんじゃないかなーって」

 

「──さん、な。同じグループの人間の名前間違えんな。俺はパス。お前ぐらいの外見なら相手なんざ選り取り見取りだろ? 他の奴にしとけ」

 

「絶対嫌。むぅ、なんでそう君は頑固なのかなぁ」

 

「頑固なのは前々からだよ」

 

 

 しかしながらアイドル様も頑固なのは一緒なので、この話題に関しては方向転換に首を縦に振ることは絶対にしなかった。

 俺は再度口を開こうとして──他人の視線に気づき言葉を止める。

 

 いつの間にか、ブランコの柵の奥側に、一人の青年が立っているのに気付いた。フード付きのパーカーにデニム生地のパンツ(ジーパン)の格好をしており、フードを被っているので顔までは見えないが、骨格から男性であると推測できる。

 その男はジッとアイドル様──ではなく、俺の方を見つめている。時折、アイドル様に目を向けることもあるが、主に視線は俺を貫いている。

 俺は男性に心当たりはなく、アイドル様も若干怯えているので知らない様子。

 

 見せモンじゃねぇぞ、散れ散れ。と言葉にしようとして──

 

 

「──っ!?」

 

 

 俺が目を見開いたのは一瞬で、即座にブランコから立ち上がってアイドル様と青年の間に割って入り、彼女を守るように陣取る。俺の様子がおかしいと気づいたのか、アイドル様もブランコから降りて俺の背後に隠れながら様子をうかがう。

 この男とは初対面だが、俺はこの男を知っている。

 知っているからこそ、体中が鳥肌がたち、額から汗の一滴が流れる。視線を男から離さないようにしているが、脳はこの状況の打破を第一に考える。

 

 まさかこうなるとは思わないじゃん。

 原作の刺殺事件実行犯(リョースケ)が目の前にいるなんてよ。

 

 

「……()()、絶対に離れるんじゃねぇぞ」

 

「う、うん……」

 

 

 原作介入したせいで、アイドル過激派の筆頭格と言っても過言ではない実行犯が前倒しで刺しに来たとでも言うのか? これがアイドルの彼氏面している俺を刺すってのならまだしも、これでアイドル様が殺られるのだけは何としてでも阻止しなければならない。

 目前の男の表情はうっすら見えるようになったが、この状況を楽しんでいるわけでも、俺やアイドル様に対して憤っているわけでもなく、ただただ無表情に、そしてつまらなさそうに俺とアイドル様を見据えている。

 

 緊張で喉が渇くが思考は止めない。止めてはいけない。

 最悪の場合、推定黒幕は大将や田中に託すとしよう。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。ここで俺が何としてでもコイツを食い止めて、アイドル様を生存させることが最優先事

 

 

 

 

 

「……公共の面前(公園)で、ヤるだのヤらねェだの話すの、芸能人としてどうなンだ?」

 

 

 

 

 

 この実行犯、ナイフじゃなくて正論で刺してきたんだけど。

 いきなりの台詞に俺が目を白黒させていると、あからさまに溜息をついた実行犯は両手を広げて無害アピールをしてくる。

 

 

「そこの坊主が現役アイドルに余計なことをしねェか警戒すンのは別にいい。オレは別にンなことするつもりはねェし。オレが知りてェのはテメェの方だ」

 

「……俺?」

 

 

 その男はようやく無表情以外の顔をする。

 心底楽しそうに、面白おかしそうに、なんならアイドル様にも聞かせるように、ハッキリと言葉を紡ぐ。

 

 

 

 

 

「そこの坊主がオレの知っている奴なのか知りてェからなァ。高校時代にヤンデレ化した女に襲われて、パンツ一丁で国道三号線を爆走した■──」

 

「その口を今すぐ閉じろや■■ああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

「は?」(嫉妬)

 

 

 

 




【主人公】
 原作知識持ちの転生者。やっぱり、リョースケはクソ。

【星野 アイ】
 現役アイドル様。一緒に寝てるときに主人公の匂いをオカズにしているせいで、主人公が悟りを開きつつある。そろそろ『ゼクシィ』とか読み始める。

【カミキヒカル】
 原作知識持ちの転生者。出番なし。((((((((((っ・ω・)っ ブーン。(逃走)((((((((((っ・ωΣ[柱]ガコッ!

【リョースケ】
 原作知識持ちの転生者。ところでWikipediaからオレの紹介文が消えたんだが? が?

【田中 太郎】
 原作知識持ちの転生者。出番なし。(剣持)と言った奴、正解。

【???】
 原作を履修してない転生者。出番なし。前世の主人公の妹。コイツのせいで001話になる。



 次回:主人公&アイ「「ゴチになりまーす」」
 2024/1/13追記:非常事態(ぎっくり腰)により更新遅れます
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