流星群に願いを 作:キチガイの人
004話くらいで既にあった構想です。ドシリアスなのでご注意を。これ以上のシリアスは今作ではないと思うので、あとは這い上がるだけです。誰がとは言わんが。
僕らの世界が産んでしまった悲しい
アイちゃんだって言いたいことはいっぱいあるだろうよ。今世に限れば、アレと付き合いが長いのは■■──えっと、ここでは『大将』って呼ばれてるんだっけ? 大将の次に長いのはアイちゃんなんだし。一見するとぽっと出の僕たちから「はよ別れろ」なんて言われても……ねぇ?
「……あなた達こそ、シオンの何を知ってるの? 人間
それ以外に聞こえたのなら謝らせてもらおう。
……アイちゃんは大将からアレの過去は聞いたんだよね?
「知ってるよ。シオンが嘘情報で殺されたって。でもそれは前世の話でしょ? 今の彼には関係ない。私は、今の彼が好きだから。これは嘘じゃない、本当の気持ち」
……ははっ、嘘じゃない、かぁ。
いやー、凄いなぁ。人間って周囲の環境がちょっと変わるだけで、こんなにも違うのか。
うん、君の考えは分かった。
「………」
とは言ったものの、これ説明が複雑怪奇過ぎて、ややこしくて面倒なんだよねぇ。明らかに状況は最悪一歩手前ってのに、それを君に説明するとなると言葉を選ばなくちゃいけなくなる。
これが
……あー、なんでアレの為に色々悩まないといけないのか。イライラしてきた。
アイちゃんにも分かりやすく大雑把に説明すると、僕から見て『今和泉 シオン』という男はね、健常者を演じているだけの狂人なんだよ。『人間のふりをしたロボット』って説明でも可。
大将から君にアイツの過去を伝えたって聞いたよ。君はシオンのことを分かったつもりでいるんだろうけど、重要なピースが抜けているせいで、一番大事なことが君に伝わってないなーって僕は思ったかな。
もちろん、誰が悪いって話じゃない。大将視点からすると、その認識で仕方のないことだろうし、聞かされたアイちゃんも当然悪いとは僕は思わない。しいて言えば、自分のこともロクに把握してないのに、安易に他者に関わったあの
「……あなたこそ」
ん?
「前世のシオンしか見てないんじゃないの? 前世がどんな人だったとしても、私は今のシオンを見てる。昔なんて関係ない」
……あー、あー。そっか、そっか。アイちゃんの言うことにも一理ある。
普通に考えればそうだよね。僕とリョースケが昔に囚われているように見えても不思議じゃないか。盲点だったなー、アイちゃん視点だとそうなるのか。
でも、アイツの言動って昔のままなんだよね。
「前世の記憶があるのなら、昔と似たようなことをするのも不思議じゃないと思うけど」
って思うじゃん?
僕もそれには同感。
口調、歩幅、瞬きの回数、口角、手足の動き、姿勢、食事の速度、視線の這わせ方、呼吸のリズム、喜怒哀楽の見せ方──立ち振る舞い、身振り手振り、一挙一動、一挙手一投足、何から何まで、アイツの存在全てが、
まさか前世で「他人の言動真似て一日生活してみようぜ!」って阿保丸出しの遊びをしたけど、こんなところで生きてくるなんて思わなかったけどさ。アイツの行動を逐一観測して演じ切ったことはあるけど、まさに今のアイツは精神的にも安定していた……多分高校時代後期から大学時代初期辺りかな? その頃の言動のまんまなんだよ。
それを見たとして、僕が前世のアイツと重ねちゃうのは無理ないと思うけどなぁ。
大将は昔のアイツのことを知っていたとしても、あくまでも聞いただけの話だから気づかない。でも、僕やリョースケは付き合いが無駄に長いからさ。あの狂人の狂人具合が嫌にでも目についちゃうんだよねぇ。
「どうしてそんなことを……」
そんなの決まってんじゃん。
もうアイツは昔の自分の模倣でもしとかないと、自分という存在をマトモに保っていられないレベルでブッ壊れてるってだけの話。そして、それを他人に悟られないように、まるで自分は平気ですよって外面だけを何とか取り繕ってるだけなんじゃないかな。
生まれ変わって外見が変わってるんだから、いくら前世の記憶を持っていたとしても、その言動には大小問わず少しは変化するものだと僕は思う。けど、あそこまで完璧に昔の自分を……そうだね、『昔の自分を寸分狂わず演じている』のは、もはや称賛通り越して異常だと思うけどね。
でも、もう限界なんだろうねぇ。
アイちゃんも薄々は違和感に気づいてるんじゃない?
例えば──距離感とか。
「え? うーん……そういえば、彼が私に『他の
外面をどんなに取り繕おうとも、内面がスッカスカでボロボロであれば、いつかは限界が来ちゃうのは当然の事。アイちゃんにはそんなこと言えないから、自分よりも良い相手を見つけてねって無理矢理距離を置こうとしてるんじゃないのかな? でもアイちゃんが傷つかないように、あくまでも諭すように……ってところか。アイツの元の性格上。
他人の気持ちを考慮してる場合かよって言いたいけど。
「で、でも……そんな風には全然見えないよ」
僕やリョースケとは違い、アイツは外傷で死んだ。ましてや、その前に世間から誹謗中傷を絶え間なく受けた身なのは……アイちゃんも大将から聞いたはず。
そんな人間が、たかだか生まれ変わった程度で、そのメンタルが完全復活すると思う? スポーツのように「切り替えて行こー」なんて言って、本当に切り替えられると思う?
んなわけない。そんな生半可な誹謗中傷じゃなかった。
じゃあ、アイちゃんに一つ質問。
「……ぇ?」
さっきも言ったようにアイツの末期はメンタルボロボロ。大丈夫って言いながら目は虚ろだったからなぁ。毎朝毎朝トイレで吐いてたなんて、アイツの妹ちゃんの監視カメラ……あれ普通に犯罪だよね? ……うん、まぁ、アイツの身内のプライバシー侵害から判明したことなんだけど。
そんくらい、最後の方ってヤバかったんだよ、アイツのメンタル。
これが転生程度で治るかって言われたら……むしろ悪化する未来しか見えない。というか病んでる上に刺殺された人間の転生なんて、した側からすれば第二の地獄の始まりだよねコレ。
それでもアイツはアイちゃんの為に……最近は取り繕えないレベルに限界迎えてるから、おかしな方向に向かっているけど、それでも君のことを第一に考えている。本人もやってることと言ってることが矛盾してるのは自覚しているはずなんだけど、それでももう止まれないんだろうねー。
アイツは昔から他人に優しい。
これはアイツのお袋さん──前世のアイツのお母さんの方ね? あの人の「他者に優しくなれる子に育ってね」っていう、優しくも残酷な
「そ……んな……」
以上のことをまとめると。
今和泉 シオンという男はメンタル的には限界を迎えており、自分の言動に矛盾が生じながらも止まれないレベルには末期であるにも関わらず、前世の母親からの最初で最後の言葉だった「他人に優しい人間に」という言葉だけは覚えていて、それを遂行するために前世で一番マシだった時期の自分を模倣して、あたかも自分は正常な人間ですよって
本当なら精神科行くか隔離病棟にシュゥゥゥーッ!!しないといけないレベルで限界だと思われるんだけど、理由が理由なだけに病院に相談することもできない。……転生者発言して医者に「コイツ頭おかしいな」ってメンタルケアしてもらった方がいい気がするけど。あー、でも適切な対応はされないから意味ないのかな? 知らんけど。
打つ手なし、改善策もなしな異常者なのよ、アイツ。
そんな僕らの世界がサンドバッグにしたせいで生まれちゃった化け物を、アイちゃんに押し付けたくないってのが僕の正直な気持ち。
愛する愛さない以前の問題だよアレ。前世で自己肯定感を完膚なきまでに破壊されて、自身の妹を家族として愛したがゆえに、家族どころか身内にまで散々迷惑をかけた経験がある男が、君からの愛情を素直に受け入れられるはずがない。
あと──
「──は?」
間違ったことを言ったかな?
普通に考えて、世間一般から見て、客観視して、どう頑張って解釈しようとも、アイツのやってることって自分が限界なのに他者の世話を焼こうとする精神異常者だよ? 気持ち悪いじゃん、そんな奴。私の為に行動してくれるんなら、半径50キロに侵入しないで頂けます?って言いたくない?
「ふざけないでっ! 私はそんなこと思ってないっ! 私のっ、私の想いを、知ったような口で言わないでっ!」
君がどう想おうとも、世間がどう判断するかなぁ?
さっきも言ったように、既にアイツのメンタルが限界に近いのは自明の理。いつかはバレちゃうと思われる。社長さんも事務所の稼ぎ頭が精神異常者とそういう関係になっているなんて、一保護者としても止めに入るだろう。最初から釘を刺していても、やっぱりアイドルに男がいるって状況はファンも思うことがあるだろうから、それが人間擬きって知ろうものなら……はてさて、どうやることやら。
……という感じで、アイツもそれが分かってるからアイちゃんと別れたいんだろうよ。アイちゃんもアイツが壊れて壊れて壊れて、ふと「死ぬかー」って軽い感じで自殺したアイツを見たくないでしょ? 自殺しないって思うかもしれないけど、アイツ普通に死ぬよ?
ぶっちゃけ、前世の死因だってたまたま他殺ってだけの話で、じゃあ何で
僕やリョースケ、太郎とかは前世で関わってしまった責任があるから仕方ないにせよ、君はただ巻き込まれてしまっただけの普通の女の子だ。そんな娘に、アイツの世話を最後まで押し付けるつもりは微塵もないからさ。
ほら、アイちゃんはアイドルとして大成して、自分のことを大切にしてくれる男性と一緒になってハッピー。アイツはアイちゃんのファンとして、大成するであろう君を遠くから応援して余生を過ごしてハッピー。
僕は互いが互いと距離取って、相手を忘れた方が幸せだと思うなぁ。
「……だ」
どしたん?
「……いや、だ」
………。
「シオンは、私と一緒に居たくないの……かな?」
ど、どうなんだろ?
アイツの離れたいって感情はアイちゃんの為を思ってだから、アイツ個人の感情だと……えぇ……嫌ってないのは確かなんだろうけど。
「じゃあ、嫌。私は彼とずっと、一緒に居たい。他の人から止められたとしても、私はシオンのことは諦めない。シオンが限界だって言うのなら、私が支えるだけだから」
僕はオススメしないよ。
途中で投げ出すくらいなら、最初からアイツには関わらない方がいい。これが僕からの忠告だ。アイツの言う通り、シオンより良い男──というか比較的マトモな人間なんて腐るほどいる。君はアイツから愛情を一生理解されないという可能性に耐えられる?
君は、アイツに人生賭けられる?
「うん。だって──好きって気持ちは止められないから」
………。
ちょっと電話失礼するね。
『──……どうしたンだ』
無理っス。
『………』
説得、無理っス。
一緒に■■をバチクソ叩いて直した方が早いっス。
『………』
完璧で究極なアイドル様、既にアイツに脳焼かれてましたっス。
もうリボンでラッピングしてアイちゃんに渡しましょうぜ、アイツ。
【主人公】
原作知識持ちの転生者。メンタルぶっ壊れ系主人公。余談だが、コイツ視点の地文でアイドル様のことを名前で呼んだことは数える程すらない。自身がぶっ壊れている自覚はあるので、根底に「自身と一緒に居たところで彼女は幸せにはなれない」という想いがある。なお。
【星野 アイ】
中堅アイドル様。主人公と幸せな家庭を築く、その憧れは止められない。
【カミキヒカル】
原作知識持ちの転生者。ふぇぇ、このアイドル強いお……。
【リョースケ】
原作知識持ちの転生者。自身が今世で主人公と再会したときに、主人公がアイドル様の名前を呼びながら庇うシーン。あれが一番素だったと思っている。
【田中 太郎】
原作知識持ちの転生者。出番なし。主人公のメンタル状況を鑑みて、普通の手段じゃ絶対にアイの願い通りにはならないと理解しているので、加速装置の投入を進めています。そろそろ狩るか♠
【???】
原作を履修してない転生者。出番なし。加速装置。
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