流星群に願いを 作:キチガイの人
『後にリョースケが「MEMちょも守備範囲内」とかいう冗談により、MEMちょ早寿説が浮上し、実年齢公開しても疑われる世界線』な今作ですが、今回は主人公視点です。高評価、感想ありがとうございます。
余談ですが4.5月は投稿ペース落ちます。新年度とかもそうですが、新人指導やら強制執行やら、仕事が大変なのです。
同居人がシャワーを浴びているであろう音をBGMに、俺はシングルベッドの上に腰を下ろし、手を組んで額に当て、懺悔するように頭を下げて半生を振り返っていた。それでこの後の運命が変わるとは到底思えなかったが、そうでもしないと気が狂いそうだった。
今から『そういった行為』をすると文章化すれば、俺がただ緊張しているだけの童貞君♪という笑い話で終わるのだろう。俺の内心は死刑執行を獄中で待つ死刑囚の気分だったが。
俺だって性関連には人並みの興味はあるのは認めよう。でなければエロ本など所持して同居人に社内暴露されなかったし。ましてや今からの相手は今を時めく現役アイドル様なのだ。ファンが卒倒するであろうシチュエーションなのは明白であり、何を躊躇する必要がある?と叱責されても文句は言えないだろう。本来ならば。
既に『アイドル様が俺に気があるのは自意識過剰なのでは?』という現実逃避は捨てた。ここまで詰将棋のようにお膳立てされて、これで逆にその気がないのであれば、俺は今から腹切って死ぬわ。んな世界を生きていける気がしない。
じゃあ、なんでテメェは不服なんだ?って話。
前世の俺には考えられない倫理観ではあるのだが、アイドル様ほどの年齢でも『既にそういった経験がある』ってのが横行する
しかしながら、アイドル様は言った。
『私、君と愛し合いたい。君の赤ちゃんが欲しい。だから──シよ?』
明らかに男女関係の最終形態『夫婦関係』を望んでいる。俺とアイドル様には先があるらしい。俺が絶望的な表情でベッドに座っているのも、最終防衛として買っていたコンドームの箱がどこにも見当たらないことに対してでもある。財布に入れていた数枚は綺麗に抜き取られ、押入れの奥に隠していた箱も神隠しに遭ってしまったらしい。
物凄く買いに行きたいけど、なぜか相手側から止められている。どういうことだってばよ。なんで女性側から避妊拒否られてんだろ。おかしいんだろ。
余談だが、アイドル様に死刑執行の延期を求めた。
のだが。
『……今日の夜と、明日の夜。どっちがいい?』
『執行猶予1日でありますか……いや、うん。もう1日でもいいや。気持ちの整理したいから明日に延期してくださいお願いします星野様』
『ここだけの話なんだけど』
『なんじゃらほい』
『私って明日仕事なんだよね。そして、明後日から3日間休みなんだぁ。──もう一度聞くけど、今日と明日、どっちがいい?』
『今日でお願いします』
このアイドル様、時間の許す限りヤるつもりだ……!って判明したので、刑執行が今日の夜になったのである。……後に、その3日間の休み中も有酸素運動(意味深)を強制されたので、俺はヤりながら「謀ったなァァァァァァァ! シャアァァァァァァ!」とかガルマってた。
話が逸れてしまったが、俺が言いたいのは『彼女との今後の関係』と『子供が生まれた後』を考え、考えまくって、どう足搔いてもロクな未来が見えない点に絶望しているのだ。何度でも飽きるくらいに言ってやろう。生涯を一緒に過ごすパートナーとして考えるならば、俺という人間はアイドル様に相応しくない。社会的地位、財力、親族の繋がり、結婚生活を円滑に送るための要素を何一つ持ってないからね。
社会的地位は言わずもがな、俺という元孤児の弱小プロダクションのバイトは世間一般から見て下に分類される。財力も無論皆無。金があって不幸になるのかは分からないが、金がないと確実に不幸になる──というのは古事記に乗っている有名な言だが(大嘘)、子育てには洒落にならんほど金がかかる。人気アイドルの稼ぎも地方企業の手取り並みで、俺の雀の涙的稼ぎと合わせても、育てるのはかなり厳しい。
そんで、最後に親族の繋がり。アイドル様も孤児なのだから、子が欲しいのであれば実家と密接な関係のある人と結ばれた方が絶対に言いに決まってる。実家に頼れるという安心感は尋常じゃないと、前世の母親も言ってたのだ。子育てで頼れるのがミヤコ様だけとか、どないせいっちゅうねん。そのミヤコ様も原作で発狂してたし。
他にも言及したいことは山ほどあるが、アイドル様は選択を間違えまくっている。
アイツの人を見る目はどうなってやがんだ。
「………」
原作も大概だったか。
お相手がカミキなヒカルだったわ。
なんて考えていると風呂場の水の音が止まっていることに気づき、心臓をバクバクと弾ませる。いやー、今から可愛い女の子とエッチできるなんて緊張するなぁ……なんて思えたら、どんなに気が楽だったか。
ここから入れる保険ってあるだろうか? 第二次世界大戦でベルリン陥落した第三帝国の方が、まだ入れる保険が多そうだよね。
「──お待たせー! じゃーん! これどう?」
現れたのは超絶美少女。同居人にして現役アイドル様だ。
いつもなら俺の私服を勝手に着ているのだが、今回は違った。
俺も女性の服装というものには詳しくないのだが、確か……ネグリジェ?とか呼ばれる服装だったはず。しかも、そのネグリジェの中でも洒落にならないくらいに扇情的な、いわゆる『スケスケ』なタイプのブツを身にまとっていた。
色は黒。彼女の天の川のようにきらめく黒髪にマッチしている。加えて、ほぼ下着どころか、その隠しているはずの下着部分も布面積が非常に少ないので、抜群のプロポーションが嫌でも露出している。まさに『美の女神』と紹介されても納得してしまう姿であった。
これ写真に撮ってファンに売ろうものなら、買われる前にサンプル部分で死者が出そうだ。色んな意味で。
彼女はその艶めかしい姿を惜しげもなく見せつけるように近づ──待って待って待って。ちょっと待って! 見えてる! よく見たら隠していると思ってた部分もスケスケじゃねぇか! 防御力皆無じゃねぇか! 見えちゃいけない部分も見えてるじゃねぇか! 教えはどうなってんだ教えは!
「……うん。似合ってる。怖いくらいに似合ってる。俺個人としては……あー、ちょっと露出を控えた方がいいんじゃないかな?って思うでごわす。はい」
「そうかな? これ穴が空いているから着たままでもヤれるんだー。凄いよね」
「そうだね」(現実逃避)
とあるドラマで『神は乗り越えられる試練しか与えない』というセリフがあったらしいが、これを乗り越えられる試練認定している神様というのは、とんでもねぇロクデナシだなってことだけは理解できた。ちゃんと精査してる?
天下のアイドル様は軽やかな足取りで、俺と向かい合うように、俺の膝に腰を下ろす。おかげさまで俺は物理的に逃げることは出来なくなったし、アイドル様の妖艶で煽情的な笑みに唾をのむ。
吸い込まれるように輝く星の瞳が、ただひたすらに俺の目を捉える。心の中まで見透かされているような、そんなアホなことを考えてしまうくらい、彼女は今和泉 シオンという男を見ていた。そんな彼女も気恥ずかしさはあるのか、耳まで真っ赤にしているけど。
あぁ、これは逃げられないな。
そう思った俺は、
「星野」
「うん」
「お前は子供を産むってことを本当に理解しているのか? 俺を繋ぎとめるための手段程度に捉えてないか? 子供を産むってことは、子供を育てなきゃならん。こんな言葉は使いたくなかったが、孤児だったお前が、親としての愛を子供に注げるのか? 俺とお前が子を成すには未熟過ぎる」
超絶特大ブーメランかつ、アイドル様のトラウマを刺激するような過激発言をブチ込んだ自覚はある。史実通りにヒカルにブン投げた後であれば、本来俺もここまで厳しい言葉を使わなかっただろう。
しかし、俺が父親になると言うのであれば話は変わる。俺が今世で結婚だのを考えてなかった一番の理由として、俺自身が父親として向いてない自覚があったからだ。自他ともに認める人格破綻者が、子供が出来たところで子供が不幸になるのは目に見えている。加えると、母親の愛情を知らずに育ってきたアイドル様も、母親として向いてない節がある。役満である。
ヒカルがお相手なら「お前がしっかりしろ」と全責任を押し付けられたのに。
え? 俺が無責任って? 何を今さら。つか腐れ縁同士が互いにそう思ってるから、既に「夫としてちゃんとしろ」云々を腐れ縁のカス共から祝辞として頂いている。はー、死んでくれ。
俺の最後の反抗に、アイドル様は静かに口を開く。
「──それがどうしたの?」
俺の切り札を宇宙最強の言葉で切り捨てるの止めてもらっていいですか?
「私が君と一緒に居たいって気持ちも、君との子供を作りたいって気持ちも、全部本物だよ? 確かに私が母親らしいことってのは、あんまり想像もつかないけど……。でも、母親に向いてる向いてないって、子供を作る前から考えることなのかな?」
「……いや、どうなんだろう? 俺も前世じゃ独り身だったから知らん。でも考えた方が良いんじゃないか? 後の子供の為にも」
「ふーん。なら子供の為にも二人で一緒に頑張ろうね♪」
向いてないのなら、せめて人並みになれるよう頑張ればいい。アイドル様の言っていることは何一つ間違っておらず、俺は言葉を詰まらせるのだった。まさかアイドル様から正論ブチ込まれるとは思わず、反論材料が咄嗟に思いつかなかった。
……年齢的に性交渉そのものがアウトやろ?って言えればどんなに楽だったか。アイドル様然り、前世の実妹然り、どうにも法治国家たる日本国で法をガン無視する行動をするのはどうしてかなぁ。(半泣き)
内心頭を抱えていると、アイドル様の共同宣言に言葉を返さなかった俺に、彼女は何を思ったのか。アイドル様は両手で俺の頭を左右からがっしり捕まえて、強制的に俺と向き合う形を取らせ『顔を逸らすことは許さない』という強い意志を感じる。
「シオン、正直に答えて」
「……正直に答えなかったら?」
「社長が泣くかも」
俺の嘘で苺プロが大変なことになるらしい。
「──君は、私のことを異性として好き?」
反射的に顔を逸らしたかったが、彼女の手がそれを阻止する。眩い星の瞳が俺の機微を逃さないと豪語し、アイドル様は顔が笑っているが唇が僅かに震えていた。
彼女の状況から察するに、圧倒的な自信と、微かな「もしかしたら……」と恐れているように見える。
「ここにきて、俺の気持ち確認とか遅すぎない?」
「ごめんね? だから君の口から聞きたいんだ。私のこと、好き? 愛せそう?」
「……いつもの自信満々なアイドルはどうした? 詰将棋形式で俺を追い詰めた星野らしくねぇ質問だなオイ。嫌いなら今の今まで一緒にいるかよ」
「田中君は言ってた。シオンは前世でも自身の感情を優先することは絶対にないし、その感情を表に出すことは絶対にしないって。自分の感情をないがしろにする馬鹿だって。だから、私は君の本心が知りたい。ずっと一緒にいたいから、せめて、私のことが好きかどうか、君の本心を聞かせて?」
あんのロリコン野郎(♀)が……余計なこと言いやがってよぉ。
俺は目を逸らしながら答える。
「分かった、分かったから。す──待て、マジ待って。視線固定するために眼球に指入れるんじゃねぇ。前向くから! ほら、俺の目はお前しか見てないから!」
実力行使って良くないと思う。うん。
「俺は──星野には幸せになってほしいと思う。そして、君を幸せにできる奴は俺じゃないと思う。それが本心だよ」
「そっかそっか。でも、私は君が好き。君が一緒にいなきゃダメ。君以外なんて考えられない。星野 アイを幸せにできるのはシオンだけ。君が本当に私のことを幸せにって思うなら、私と結婚を前提に付き合って欲しいなぁ」
よくもまぁ、んな恥ずかしいことを躊躇なく言えるな……なんて思ったが、アイドル様は頬どころか耳元まで真っ赤に染めており、つまりはそういうことなんだなって考えを改める。舞台では好きだの愛してるだと口にしているのは腐るほど耳にしたが、今の彼女の言葉は普段とは一線を画す想いが込められているのだろう。
ここで白黒はっきりしない回答をするのは、彼女に失礼にあたるだろう。
俺は自身の本心を口にし『犯罪者が一丁前に被害者面すんなks』『妹がかわいそう』『死ねよマジで』『保身キッモ』『生きてる価値ないよ』『さっさと消えろgm』
「……好き、だ、と、思う」
「……今はそれでいっかな。絶対に君の口からすらっと『好き』って、『愛してる』って言わせてあげるから」
何かを察させてしまったのか、俺のぎこちない回答にアイドル様は満足された様子。
そのまま彼女は自分の唇を、俺の唇に重ねる。同時に彼女は自身の腰の位置も調整し、
「今は小難しいことは考えずに、一緒に気持ちよくなることだけ考えよ? お互い初めて同士、シたいことは全部やってみようよ。私の『アイ』、たっぷり君に教えてあげるね」
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『今日のアイちゃんめっちゃツヤツヤやったな』
『シオン君ちゃんの配信休みだってよ』
『これヤったな?』
『ヤったな(確信)』
【主人公】
原作知識持ちの転生者。前世の炎上時代に本心言って大炎上した経験から、本心を表に出せないヘタレと化した男。アイドル様の日常生活を介護し、メンタル面はアイドル様に介護される共依存関係となる。
【星野 アイ】
現役アイドル様。幸せの絶頂期。今後も隙を見てはヤります。
次回:腐れ縁3人衆の打ち上げパーティー(in西国無双)