プロヒーロー御用達の町工場   作:エドモンド橋本

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好きです

 

 

 パン!パン!と音を上げて、雄英高校の上空に放たれる花火。本日、雄英高校体育祭が開催される。何とか設営が間に合ったが、まだ片付けが残っている。しかしそれまでは自由時間の為、ウチの社員達はみんなどっかいった。

 

 「あんまり人が多いとこ好きじゃないんだけどな〜」

 

 ガヤガヤと騒がしい出店通りをすり抜けて待機所に向かう。正直あまり体育祭には興味が無いので、終わるまで寝て待つ事にする。

 

 「……きさん!磁牧さん!!」

 

 「ん?」

 

 うるさい人混みの中から、はっきりと俺を呼ぶ声に振り返ると、笑顔で手を振る中年男性がいた。

 

 「お久しぶりです!!中嶋です!」

 

 「中嶋さん!ご無沙汰してます!」

 

 走ってきたのか、若干息を切らしている中嶋さん。彼は大手サポート企業の技術部長で、以前エンデヴァーのコスチュームを共同開発した事がある。正直最初はウチを見下す様な態度だったが、紆余曲折あって、今では定期的に連絡をくれる程に打ち解けた。

 

 「毎年体育祭には来ていますが、磁牧さんがいるとは思いませんでしたよ」

 

 「まあ、色々ありまして」

 

 「そうですか。それより、色々聞いてますよ。多くのトップヒーロー達が磁牧さんの技術に惚れ込んでいると」

 

 「やめて下さいよ。と言うか、ウチに来るヒーローの何人かは中嶋さんから紹介されたって聞きましたよ。大丈夫ですか?そんな事して」

 

 中嶋さんから紹介されたと言って仕事を依頼してくるヒーローは少なくない。ギャングオルカや、デスデコロ、エッジショットなど、有名なヒーローがウチに依頼する様になったのはこの人がきっかけだ。有難いが、売り上げに影響したりしないのだろうか。

 

 「はは!良いんですよ!我々にとって1番大切なのは、ヒーローがより多くの人を救える様サポートする事。より良い技術のある企業を紹介するのは、悪い事ですかね?」

 

 「まあ、そうですね」

 

 本当に、立派な技術者だ。最初は少し苦手な人だった。技術力を会社の大小で判断して、俺の意見なんか聞く気が無かった。でも、最終的には土下座で謝罪されてめちゃくちゃ焦った。今思えば、本当は仕事に真面目な人なんだなと、そう思う。

 

 「しかし雄英体育祭は良いですよね!未来あるヒーローの卵だけでなく、現役プロヒーローに売り込める!しかも磁牧さんの様なサポート科生徒の技術をこの目で見られる!磁牧さん!良ければこれから一緒に回りませんか?」

 

 「え?あ、いや、俺は」

 

 嫌です。なんて言えない。どうしたものかなあ。中嶋さんの事は嫌いじゃないけど今は1人になりたい。

 

 「ん?あ!!あれはシンリンカムイにMt.レディ!!ルーキーヒーローには今から売り込まないと!!磁牧さん!急で申し訳ありませんがこれにて!!」

 

 「え、あ、はい」

 

 やんわり断る方法を探していたら中嶋さんは勝手にどっか行った。まあ、正直ありがたいか。

 

 「お?おお!鋼星やないか!!」

 

 今度は誰だよ。良い加減めんどくさくなって来たが、俺を呼んでるなら無視は出来ない。ゆっくり振り返ると、まん丸とした愛らしいボディの巨漢が大量のたこ焼き片手に立っていた。

 

 「ファットガム!!」

 

 「おう!ファットさんやで!元気にしとったか鋼星?」

 

 BMIヒーロー《ファットガム》。関西方面に出張に行った際知り合ってから、それなりに交友がある。

 

 「日本全国からヒーローを集めたとは聞いてたけど、まさかファットガムも来ていたとは」

 

 「インターン生の応援に来たんや。すまんが3年生の会場どこか教えてくれへんか?入口で貰ったマップ無くしてしまってな」

 

 「ああ、3年なら」

 

 「ファットガム、これ」

 

 俺が3年生の会場を教えようとすると、ファットガムの前にスッとマップが差し出された。

 

 「ん?おお!俺の無くしたマップや!しっかりファットガムって書いてある!間違いないな!」

 

 「さっき貴方がたこ焼き大量買いした店の前に落ちてたわよ。不用心ね」

 

 「おおきになあ!リューキュウ!」

 

 リューキュウ。リューキュウ。ファットガムの言葉が俺の脳内で何度も響く。金髪のショートヘアに、竜の爪の様な大きな髪飾り。際どいスリットの入ったチャイナドレス。何のとは言わないが俺の原点。ドラグーンヒーロー《リューキュウ》。

 

 「鋼星もすまんなあ!」

 

 「貴方が磁牧君ね。評判は聞いてるわ。類稀な才能と高い技術力でトップヒーローからも信頼される、未来ある若社長ってね」

 

 「いや、そんな、あの、ホント全然」

 

 やばい。推しが俺に話しかけて来てる。俺ってこんなコミュ障だったか?全然上手く話せない。

 

 「ふふ、私もお世話になるかもしれないから、その時はよろしく」

 

 妖艶な笑み。それが俺に向けられているものだとわかった瞬間、外れちゃいけないリミッターが外れた。

 

 「好きです」

 

 「「え?」」

 

 驚いて口を押さえるリューキュウ。可愛い。そんなリューキュウの驚きの声に重なったのは。

 

 「……」

 

 「……13号」

 

 俺達が新調したばかりのコスチュームに身を包んだ黒瀬さん。表情はよく分からんが、謎に嫌な予感がする。と言うより黒瀬さんの隣でニヤニヤしているミッナイ先生が恐ろしい。出来れば絡まれたくない。この場で俺を助けてくれそうなのはもはや1人。helpの意味を込めてファットガムに視線を向ける。

 

 「たこ焼き美味っ!」

 

 あ、ダメだ。

 





 磁牧製作所社長の秘密
 社員によるタレコミ①

 源さん
 個性を使わないとあいつ方向音痴になるぞ

 竜也
 在学中に寝ているミッドナイトの身体をまさぐったらしい(語弊があるが概ね本当)

 大輔さん
 昼寝を邪魔すると暴れるから気をつけろよ

 シゲさん
 先代から貰ったスカジャンを今でも大事そうに着ているよ
 
 山さん
 鋼材を盗みに入った泥棒を半殺しにした事があったな

 解斗
 元カノに刺されかけたって言ってましたね。あ、後ゲームクソ弱いっすよ。



 
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