「1位の子に1000万とか、大胆っすね」
「確実に勝てる1000万を取りに行くか、他の騎馬から少しずつポイントを奪うか」
「まあそれも騎馬の組み合わせ次第だな」
俺が一年の時はもっと分かりやすい競技が多かったが、随分とレベルが上がったもんだな。
「さっきの話聞く限りじゃ、爆弾イガグリ君が有利かな?3位という動きやすい位置、相手への牽制になる個性。ただまあ、彼を支える良い騎馬がいればの話だけどね」
「個性で決めるなら、エンデヴァーの息子じゃ無いっすか?氷、あれは強すぎる。盾にも矛にもなる。その上で相手の足を奪うデバフ効果付き、最強っすね」
確かに解斗の言うことは理解出来る。氷を扱う個性ならそれで良い。ただし、もし他にも個性があるのなら、炎を扱う事が出来るのなら、それを使わずに勝てる程、甘くは無い。
『さあ上げてけ鬨の声!!血で血を洗う雄英の合戦が今!!狼煙を上げる!!!!』
「お!始まるみたいっすよ!」
大小サイズは様々だが、12の騎馬に分かれる生徒達。何かほぼ1人みたいなのも居るが気にしないでおこう。
『よォーし組み終わったな!!?準備はいいかなんて聞かねえぞ!!いくぜ!!残虐バトルロワイヤルカウントダウン!!3!!!2!!1…!』
睨み合い、狙いを定める生徒。自分に来る事を予測して構える生徒。自信に満ち溢れた笑みを浮かべる生徒。冷静に、ただ作戦通りに進める為に合図を待つ生徒。マイク先生の声が響いた瞬間、彼らは動き出した。
『START!』
予想通り、ほとんどの騎馬が、1000万目掛けて飛び出した。しかし、きっと彼に取ってそれは予想通り、数多くの妨害を、騎馬の生徒の個性によって退ける。
「すごいですね。あの黒い影の様な個性。生き物の様に意思疎通をとれてる様に見えますが、何なんでしょう?」
「女の子の方も、浮遊?いや、重力か」
「いやいや、社長のファンの女の子もいるじゃ無いっすか!ほら!」
「ファンじゃねえよ」
とは言ったものの、発目さん予選を通過するとは、かなりの実力者かな?予選通過出来るのは42名。その内40人は毎年ヒーロー科生徒で埋まるのが当然の現実。残り2名は基本的にヒーロー科の試験に受からなかった普通科の生徒が入ってくる。それを退けて来るとは、大した子だ。それにしてもあの1000万のマリモ君。しっかりと逃げ切る為に必要なメンバーを集めている。一度手放して、他の騎馬からポイントを奪う事も出来るはずなのに。
「む?あれは1人?」
「いや違うね、背中に2人ほど隠れている」
「すげえな!って、は!?あの悪人ヅラ飛びやがった!!!あんなのアリ!?」
アリみたいだな。ミッナイ先生がOKならそれがルールだろ。地面に落ちた訳でもないし。
「因みに社長は、磁力付与で全部根こそぎ取れるんすか?」
「根こそぎ、は無理だな。基本的に磁力付与は対象に触れる事が発動条件だ。ただし、1日1回だけなら、対象に触れなくても発動出来る。まあ使っちまったら触れたとしても磁力付与はその日1日使えなくなるけどな」
そんなの出来たらチートじゃねえか。俺の個性は使えば使う程効果が薄まる。磁力付与で相手を地面に縛り付けても、大体5分で相手に破られる。それを何度も使えば、2秒ほどしか効果を持たなくなる。まあ別に人様に個性向ける事なんかないから気にする必要もないだろう。いつだったかの勝気なバニーの事など知らん。
「ん?あれ?何かA組ポイント少なくね?」
「ヘドロ事件の子も、ポイント0?」
「あ〜、これは」
敢えて順位を落としてスタートして、先頭を走る者達の個性を観察、徐々に自分を優位に立たせる。せこいやり方だとか、ヒーローらしくないとか罵倒する奴もいるだろうな。まあ、俺は別に何とも思わない。何なら堅実的だとも思う。あくまでも成功すればの話だが。そう甘くないのが雄英体育祭だが、どうかな?
「さて、動くぞ。弟君が」
「エンデヴァーの息子か」
「電気系の個性の子に、何か色々生み出せる個性?の女の子。それと、足が速い、いや、脚にエンジンが付いている個性の子」
「電気は多分周りへの牽制。エンジン君は相手との距離を詰める為だと推測出来るが、あの女の子は」
どんな個性かと考えていると、いきなり弟君の騎馬を中心に激しい電撃が放たれた。そして周りにいた騎馬達の動きが止まった瞬間、足回りを氷漬けにした。
「恐ろしい子だな」
それにしても、あの女の子、想像以上にヤバい個性だ。さっきの電撃を防いだシート、そして今、黒い影の攻撃を弾いた盾。自分の知識の中にあるものなら何でも作り出せる、そんな個性か?もしそうだとしたら。
「あの子ウチに欲しいな」
「良いっすね。美人だし、きっと将来有望っすよ!」
そうだけどそうじゃねえ。俺がもしそんな基準で採用してたら大問題だぞ。ヘラヘラしてる解斗は分かってんのかな?
『なーーーー!!?何が起きた!!?』
目を離した一瞬だった。弟君が、1000万を奪い取った。
「うお!速すぎて見えなかった!」
「あのエンジンの子ですね」
「あれ程のパワー、デメリットは無いのか?」
ある。もしあの脚がエンジンの様な役割を果たしているのなら、今のは先程までのスピードとは比べ物にならない。無理矢理アクセル踏み込んでギアをトップに入れた様なもんだ。エンストしてもおかしく無い。
「残り1分、他を取りに行くか?」
「点数がバラけている。把握出来ているようには見えないが」
「あの意識のある黒い影。さっきの電撃に怯んだ様に見えた。もし明るい場所で弱くなるなら、1000万を取り返すのも厳しいな」
「さあ、どうする?」
残された時間が少ない中、マリモ君の判断は早かった。迷いは一瞬、直ぐに弟君に向かって突っ込んだ。未だ個性を使っている様には見えない彼の右腕が妙に光った様に見える。そして、彼の手を防ごうとした弟君の左腕が僅かに、炎を纏った。直ぐに消えたが、その一瞬の焦り、動揺、隙を見せた弟君の首元から、マリモ君は鉢巻を奪い取った。
「取った!!!」
「しかしポイントは?」
モニターに映し出されたポイントは70。これでは次はない。しかし、残された時間は10秒。
「これは、流石に」
「厳しいか」
「クッソ!!いけねえか!?」
「……」
最後まで弟君に手を伸ばすマリモ君。諦めない。ヒーローらしいその姿勢。
「うん、良いんじゃないかな?俺は好きだ」
そんな彼だからこそ、弟君から隙を作ることが出来たのだろうな。
『TIME UP!』
1位 轟チーム
2位 爆豪チーム
3位 心操チーム
「何か3位の子、あんま目立って無かったくないっすか?」
「確かに、激しく奪い取る様子は無かった。他が注意を引いてる間に奪い取ったのか」
「4位は、む?」
4位 緑谷チーム
「は!?嘘マジで!?」
「そうか、あの競ってる瞬間に」
「見事だ」
たった一瞬、それでもあれだけ用意周到な弟君の隙を作った。勿論あの影の子がMVPだろうけど、彼に信用させたマリモ君もまた素晴らしい。
「案外面白いな。雄英体育祭」
「今更っすか?」
「それより飯にしませんか?早く行かないとどこも混んでしまいますよ」
「急ぎましょう」
「社長!ゴチになります!!」
「はいはい、ほら行くぞ」
若い子達の熱気を浴びて、らしくないがちょっと興奮していた。昼からの競技にも期待しようかな。
「HEY!!コウセー!抽選で観客参加型レクリエーションの出場が決まったぜ!!」
「は?」
昼飯を食おうとすると、急にやってきたマイク先生が爆弾を落としてきた。