プロヒーロー御用達の町工場   作:エドモンド橋本

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本気

 

 

 昼休憩になり、外の出店は殆ど行列が出来てる中、最早最後尾から先頭までどれくらい距離あんだよってレベルの出店が1つ。一見何十分も待つかと思いきや、意外にも回転は早い。5分ほどで出店の店長と対面した。

 

 「ランチラッシュ、お久しぶりです」

 

 「ワオ!磁牧君!久しぶりだね!」

 

 雄英高校の食堂に勤務するクックヒーロー《ランチラッシュ》。この体育祭では、出店でランチラッシュが弁当を販売する為、それ目的でやって来る人も少なくない。現にこれだけ行列が出来ているのだ。

 

 「はいお待たせ!特製弁当4人前!OB割で半額ね!」

 

 「え!?いや、それは流石に」

 

 「良いから良いから」

 

 ランチラッシュの優しさを無碍にも出来ない為、俺は結局半額分の代金を支払い、3人の待つ野外テーブルに向かう。

 

 「うい、お待たせ」

 

 「社長すみません。解斗の我儘聞いてもらって」

 

 「社長アザーーッス!!」

 

 「んー、別に良いよ」

 

 別にパシられたとは思ってない。ランチラッシュに挨拶しときたかったし、何よりさっきの騎馬戦の余韻に浸りたかった。

 

 「んじゃ、冷めないうちに食うか」

 

 「まさかランチラッシュの飯が食えるとは!!社長頂きます!!」

 

 「社長、頂きます」

 

 「頂きます」

 

 丁寧に手を合わせて、弁当を食べ始める3人。一口食べた瞬間、目を見開き、無言で食べ進める。わかる。マジでうまいもん食うと無言になるよな。

 

 「そんじゃあ俺も、頂き」

 

 「HEY!!コウセー!抽選で観客参加型レクリエーションの出場が決まったぜ!!」

 

 「は?」

 

 突如現れた雄英で1番うるさい男。プレゼントマイク。ちなみに2番はハウンドドッグ。

 

 「え?観客参加型レクリエーション?あの?」

 

 「イエエエス!!」

 

 観客参加型レクリエーション。雄英体育祭で毎年行われる、その名の通り、観客が参加するレクリエーション。雄英には支援してくれる企業やヒーローが多くいる為、これはそんな彼らが少しでも宣伝出来る為に用意された場である。企業なら自社制作の製品を使用したり、ヒーローなら自分の個性を強く披露したりと、まあ様々。

 

 「今年は例の件もあって本当に信用出来る人間に限って抽選を行った!そんでまさかのコウセー!!お前を引き当てたぜ!!!」

 

 「お断りします。強制じゃなかったですよね、それ」

 

 「勿論、OKだぜ。でもなあ、勿体ねえなあ」

 

 「……何すか?」

 

 「いや何、お前がレクリエーション1着になったら景品をやろうと思ったんだがなあ」

 

 「景品?」

 

 「ああ、そうだ。お前が満足出来るものなんて限られてるだろうから、プレミアもんだぜ?」

 

 俺の耳元へ顔を近づけるマイク先生。叫ばれたら確実に死ぬからちょっと怖い。だが、その恐怖心は直ぐにかっ消えた。

 

 「デビュー当時のリューキュウブロマイド」

 

 「俺の出番は何時?」

 

 「レクリエーションの最後だから13時45分だ!勿論個性の使用可、サポートアイテムの装備も自由!!そんじゃあまた後でな!!」

 

 「リューキュウのブロマイド。悪い3人共、ちょっと準備して来る」

 

 これは本気でやるしかない。となると先ず、服も着替えねえと、それから個性を最大限発揮できるような。

 

 

 

 

 

 「「「……」」」

 

 「いや、えっとさ、まず抽選して直ぐ社長用の景品なんて準備出来る?」

 

 「無理だな」

 

 「プレゼントマイクの雰囲気からして、あの感じ手慣れてるな。多分、社長の動かし方わかってる感じだ」

 

 「まあ、社長も社長だけど」

 

 「雄英も雄英だな」

 

 「悪どいねえ〜」

 

 「でも、個性本気でぶっ放す社長も、見てはみたい」

 

 「「わかる」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 腰にツールバッグを巻き、必要なものを詰め込む。いつもの作業着とは違い、耐熱性に富んだもの。これを着るのそれこそ高校以来かな。最後に気合いを入れる為にバンダナを巻き、呼吸を整えながら、会場に入る。一歩踏み入れた瞬間、耳を壊すレベルの歓声が襲う。客席側でも耐え難がったが、生徒達はこれを浴びて戦っていたのか。懐かしい様に感じるが、やっぱりこんなに大きくは無かった気がする。だが、この歓声は多分、中央に立つあの男へ向けたものだろう。

 

 「来たか、お前はこのようなもの、断ると思っていたがな」

 

 「ええ、本来ならそうでしたけど、景品欲しさに参加しちゃいました」

 

 「そうか、まあ良い。俺は焦凍に手本を見せるだけだ。お前には悪いが、1位になれると思った淡い期待は捨てるんだな」

 

 「残念、今の俺は止まんないですよ。例え相手が貴方でもね、エンデヴァー」

 

 「なら、怪我をする覚悟はあるのだな」

 

 「昔俺に殴られた事忘れましたか?ああ、そっか、貴方は都合の悪いことからは目を背ける人でしたね」

 

 No.2ヒーローだろうと関係ない。家族を泣かすクズなんか怖くねえ。鋭く睨み付けるエンデヴァーに、俺は笑みを向ける。互いに無言のまま動かずにいると、歓声をかき消すバカでかい声が会場に響き渡る。

 

 『さあ!!レクリエーション最終競技に入るぜ!!最後は観客参加型レクリエーション!!抽選で選ばれた奴による、妨害!宣伝!何でもありの400m走!!フリーのヒーローならアピールチャンス!!サポート企業なら自社制作の製品の宣伝チャンス!!好きにやってくれてかまわねえ!!1着でゴールした奴には最高の景品が待ってるぜ!!』

 

 ん?リューキュウのブロマイドとは違うのか?ハッ!!まさかああ言ってたけど、マイク先生他にもブロマイド持っているのか!!これは何としても1着でゴールしないと。にしても、他の参加者が気になる。

 

 「あれは最近人気のスカイヒーロー《ブルーウイング》、あっちは《デトネラット社》の広報部の人間、他にも見覚えのある人が多いな」

 

 「怖気付いたか」

 

 「はいはいそーですねー」

 

 『それじゃあ全員位置についてくれ!!!』 

 

 マイク先生の指示に従い、スタートラインに立つミッナイ先生とセメントス先生の元へ向かう。

 

 「あんたあんまり変な事しないでよ」

 

 「いや、18禁ヒーローのミッナイ先生に言われても」

 

 「何か言ったかしら?」

 

 「まあまあ落ち着いて下さい。磁牧君、無茶しない程度に頑張ってよ。正直このレクリエーション、一般人に怪我をさせる可能性があるから、僕は反対なんだけどね」

 

 「優しいですね、セメントス先生。でももう俺、火ついたんで」

 

 俺はもう、隣に立つエンデヴァーの熱気すら、もはや気にならなくなっていた。

 

 

 

 

 

 『最近勢いを増している若手ヒーロー!!!次の時代の主役はシンリンカムイでもMt.レディでもなくこの男なのか!!??スカイヒーロー、ブルーウイング!!!』

 

 『超大手サポート企業デトネラット社の広報部長!!いつもお世話になってます!!最高品質の製品をお届け!!報状汰一!!!』

 

 『お前らの注目はこのヒーローだろおお!??圧倒的なその風貌で、敵達は戦意を削がれて頭を下げる!!!獄炎を纏うNo.2ヒーロー!!エンデヴァー!!!!』

 

 『誰も知らない、でも俺達は知ってる!!!この男のヤバさを!!!狂気を!!!雄英が生んだ、ヒーローを喰らうエンジニア!!!磁牧鋼星!!!』

 

 総勢12名。位置に着き、スタートの合図を待つ。

 

 「エンデヴァー、賭けをしませんか?」

 

 「くだらんな」

 

 「もし、俺が勝ったら、あんたちゃんと家族と向き合え」

 

 「俺が勝ったら?」

 

 「そうだなあ〜、あんたの下で働いてやるよ」

 

 「その言葉、忘れるなよ」

 

 『START!!』

 

 俺とエンデヴァーは、同時に走り出した。

 

 

 

 





 社長はリューキュウが絡むと知能指数が下がる。

 社長はリューキュウが絡むと性格悪くなる。

 社長はリューキュウが絡むと怖いもの知らずになる。

 社長はリューキュウが絡むと、暴走する。
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