「今年は外部業者には依頼しないって聞いた時にはどうなる事かと思ったが、間に合うもんだな」
立ち並ぶ出店、死角なく取り付けられた防犯カメラ、バリケード、待機所、本来幾つもの業者に依頼して、いつもギリギリに終わるのだが、限られた人数で間に合わせたのは流石と言うべきか。
「まあ、彼は在学中から優秀でしたからね」
「セメントス、優秀な生徒は問題を起こさない。アイツはただの不良生徒だ」
セメントスの言葉を瞬時に否定する先輩。彼が何かを起こす前に縛り上げる事が多く。教員の中では、未然防止ランキングトップだ。
「辛辣ッ!!だがまあ、確かに不良って言やぁ不良か」
「今モ昔モ、職員室マデトンネルヲ掘ッタ阿呆ハ奴ノミデス」
「ヒーロー科の生徒が必殺技訓練の過程でクレーター作った事はあるが、面白半分でグラウンドに大穴開けたのはアイツくらいだしな」
「数多くのサポートアイテムを作り出す技術は見事だが、そのテストに我々や他クラスの生徒を巻き込む事が多すぎるゔゔるるるるる!!!!」
思い出したかの様に憤るハウンドドッグ先生。エクトプラズム先生やブラドキング先生も過去の記憶から頭を抱えている。今もこうして彼の話題が教師間で飛び交う事が稀にある。僕達は彼に幾度となく振り回された。
「私は会った事がないから分からないが、彼はそんなにもクレイジーなのかい?」
話に入れず少ししゅんとしていたオールマイトが、小さく挙手をしながら問いかける。
「朝来たら昨日は無かった施設が建ってたなんて事もあった。イカれてるの一言だね、くけけ」
「私なんて、初めて奪われちゃった♡」
「「「「「「……」」」」」」
「え!?そうなの!?」
「あれは、どっちが被害者だ?」
「知らん」
ああ〜、教師陣に緊張が走った例の事件。1番面白がってるのはパワーローダー先生だけど、結局色々喋ってるのはミッドナイト先生本人なんだよな。正直、勘弁して欲しい。ミッドナイト先生が彼の事をどう意識してるのかも見えないし、彼がミッドナイト先生をどう意識してるのかもいまいち分からない。
「まあ、あいつがどう言う人間かよく知ってるのは結局13号じゃない?」
「確かに、当時新人組のセメントスと13号には比較的懐いていたな」
「いや、俺よりも13号と共にいることの方が多かったですよ」
正直話が飛んでくるとは思って無かった。僕よりセメントスやパワーローダー先生とよく話してるイメージがある。それに、先輩にイタズラして締め上げられたり、マイク先生やブラドキング先生にちょっかいかけては校内引き摺り回されてた。みんなが言うほど、僕は彼に好かれていたのかな?
『13号先生さ、彼女いんの?』
『え?』
『ん?彼女、いないの?何かほんわか系男子って今モテるでしょ?』
『彼女?男子?え、君もしかして、僕の事、男だと思ってる?』
『……え?女なの?』
『今更!?れっきとした女性だけど!!』
『は?180㎝の僕っ子て、いやもう、卑猥だよ』
『何で!?』
『磁牧君、今度は職員室に侵入して中間テストの問題用紙盗み取ろうとしたみたいだね。もう犯罪だよ』
『違いますー。透明化出来るベルト開発したから実験してみただけですー』
『いや、それわざわざ職員室でやらなくても』
『プロヒーロー相手に直ぐバレるようならハナから失敗作ってことじゃん。俺は全員騙し切れると思って挑んだわけ。そしてその試験として、問題用紙を取って職員室から出ようとしたの』
『まあ、失敗したなら特に言うことないけど』
『失敗じゃない!!何ならみんな気付いてなかった!!設定した時間が短かったから運悪く相澤先生の目の前で効果が切れてしまっただけだから!!つまり!殆ど!!俺の勝利!!!』
『あ、うん、そう、良かったね。取り敢えず、リカバリーガールのとこ行こうか』
『13号先生〜、USJの倒壊ゾーン完成したよ〜』
『おお!!ありがとう!!流石の手際の良さ!!』
『まあね。こんなの余裕よ』
『やっぱ技術は優等生なんだけどね』
『技術はって、どうみたって俺は優等生そのものでしょ』
『いや、昨日もブラドキング先生怒らせてたでしょ。何かグラウンドに大穴開けたって。この前も無意味に職員室までトンネル掘ってたし、優等生はこんなことしないよ』
『13号先生、その考え方は危ないね。優等生はこんなことはしない。そう考えているのは何故?それが普通だから?だとしたら普通とは何だ?大多数の意見の事?なら例えば白い羊の群れに黒い羊がいたら、その黒い羊は異常になるの?少数派は異常ってこと?しかし、時代を切り開くのは少数派の人間だ!!彼らは常に否定されて来た!!』
『脱線しすぎ。変な方向に走ってるよ』
『つまり俺が優等生でなければ、あ』
『ん?どうしたの?』
『……30秒後に職員室にロケット花火が50発撃ち込まれる』
『はあ!?』
『面白いかなと思って組んだプログラム、消すの忘れてた』
『やっぱ君問題児だよ!!』
『13号先生、誕生日おめでとう』
『え!?磁牧君僕の誕生日知ってたの!?』
『ん?何かヒーロー科の女子が言ってたから』
『あ、あ〜、そっか、うん、ありがとう』
『そんでね、これ、プレゼント』
『プレ、ゼント?誰が、誰に?』
『俺が、あんたに。何?ボケ?まあ良いけどさ、じゃじゃーん!ドードーストラップ!!これね、東京の化石博物館のお土産コーナー限定品!まあ、いつも世話になってるし、プレゼント』
『……』
『俺からのプレゼントは、いらない感じ?まあ良く考えりゃキモイか』
『違う!!ごめん、そんなつもりじゃなくて!!その、僕教師になって初めて生徒からプレゼントとか貰うから、なんて言うか、感動して、その』
『ま、嫌じゃないなら良いや!俺の誕生日5ヶ月後だから、宜しくね』
『はは、ちゃっかりしてるな。うん、ありがとう。大事にするよ』
『あ、先生出会いがなかったら縁結びのお守りとかもプレゼントしようか?』
『……それは余計なお世話だね』
今思うと、僕が好かれてるかどうかなんてどうでもいいと思える位、彼といる時間は楽しかった。磁牧君も僕といる時は笑顔だったし、ちょっとだけ、胸を張っても良いかな。少しだけ、他の先生にマウント取っても良いかな。
「はい、磁牧君については、雄英では誰より知ってるつもりです」
自分の技術に自信を持っていて、好奇心旺盛で、ちょっと女性との付き合い方に難があって、意外とお茶目で、イタズラ好き、そんな問題児について、僕は誰より詳しい。