プロヒーロー御用達の町工場   作:エドモンド橋本

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ヒーローとの差

 

 

 

 『START!!』

 

 合図と同時に強く地面を蹴って走り出した。タイミングはエンデヴァーと一緒。出遅れはない、最高のスタート。しかし、エンデヴァーとの差は広がっていくばかり。何もエンデヴァーに限った事ではない。その他のヒーロー達も俺を抜き去り、先へ行く。50mを過ぎた時点での俺の順位は8位。やはりどうしても覆すことの出来ない俺とプロヒーロー達の違い。身体能力の差。常に人命救助や敵退治のために鍛え上げている身体と、工場勤務の肉体ではどう足掻いても結末は変わらない。

 

 『さあさあ現在先頭はみなさん予想通りのエンデヴァー!!!炎を噴射して後方を一気に引き離す!!2位のブルーウイングは食い下がれるか!!!』

 

 俺の事はもう頭に無いのか、振り返る様子はない。まあ、1位が8位を気にする必要はないわな。と言うか俺がほぼ最下位だし。俺より後方にいる連中は全員企業の人間の為、サポートアイテムの性能を披露する事が目的。ハナから勝利なんて欲してはいない。まあもしかしたらと言うのはあったのだろうが、エンデヴァーが参加すると分かった時点でシフトチェンジしたのだろう。

 

 『さあさあ先頭のエンデヴァーは最後の直前に入った!!!分かってはいたがもはや独走!!あとは2着争いってとこか!!……なあイレイザー、俺磁牧の事ダークホース的な雰囲気の口上にしたんだけど、ヤバくね?あんまパッとしなくね?』

 

 酷いな、マイク先生。確かに現時点の結果を見たらそう言う反応になるのはわかるけど、もう少し元生徒の事信用してくれても良くねえか?

 

 『お前は何を見てたんだ。あいつは今の所、己の身体能力だけで戦ってる。それじゃあこの結果も不思議じゃない。本当に恐ろしいのは、あいつの技術と個性だ』

 

 流石は相澤先生、良く分かってる。俺は、ここからだ。

 

 「じゃあそろそろ、道開けてくれますか?ヒーロー」

 

 妨害ありってルールは俺の為にあるようなものだな。俺は左手を前に突き出し、磁力操作を始める。目には見えない、普段誰も気にしない、しかし、それはばら撒かれた凶器と同じ。集まれば大きな脅威になる。

 

 「どわっ!?な、何だ!!?」

 

 「足が、動かねえ!!?」

 

 『あーーっと!!2位争いをしているヒーロー達が突然動きを止めたぞ!?どうなってんだ!!?』

 

 前を走るヒーロー達の足に纏わりつく黒い塊。それは砂鉄の集合体。ガッチリと固定された以上、そう簡単には抜け出せない。しかしまあ。

 

 「そんな簡単に焼き払っちゃうかね?No.2」

 

 一応エンデヴァーにも砂鉄の拘束攻撃を仕掛けてみたが、いとも容易く焼き払われた。分かってはいたが、簡単じゃないな。でも、あいつは俺に触れてしまった。

 

 「今日は運が良い」

 

 「ッ!?」

 

 一瞬、身体がブレたエンデヴァー。後ろに強く引っ張られる感覚に襲われたのだろう。今日、あいつは俺を呼び止める為に、腕を掴んだ。つまり、エンデヴァーには磁力付与が出来る。俺とエンデヴァーの距離が一気に縮まる。おっさんに引き寄せられる気分はあまり良くないが、それでもリューキュウのブロマイドの為だ。我慢しよう。

 

 『一気にエンデヴァーまで距離を詰める磁牧!!あいつこれを待ってたのか!!』

 

 「愚かだ。俺がお前を警戒しないわけないだろ」

 

 俺に向かって放たれる炎。おいおっさん。ヒーローが何一般人に向けて攻撃してんのよ。とはいえこの炎、そこまで熱いものじゃない。恐らく俺を引き剥がす為のもの。普通なら炎が出た瞬間、怯んで離れると思ったんだろうな。

 

 「ッなめんなよライタージジイ!!!」

 

 「貴様!?」

 

 『磁牧!!炎に正面から突っ込んでエンデヴァーを掴みやがった!!』

 

 『それでも火傷はするだろうに、あいつ、バカにも限度がある』

 

 酷い言われようだが構わない。掴んだらもう俺のもんだ。体を捻り、空中でエンデヴァーの前に出る。終わりにしようや、エンデヴァー。

 

 「反発」

 

 今まで引き寄せあったのは異なる極のため、磁力付与の書き換えによって俺とエンデヴァーの極を同じにする。するとどうなるか、分かるわな。

 

 「ッ!!!」

 

 勢いよくゴールまですっ飛ばされる俺。だいぶ痛いし、多分これ止まんねえから壁に突っ込むよな。緩衝材ねえし、仕方ない、諦めよう。これでリューキュウブロマイドが手に入るなら安いもんだ。

 

 「ん?」

 

 気が緩んだ瞬間、隣を勢い良く何かが通り過ぎた。まさかとは思うが。

 

 「うっ!」

 

 ゴールに突っ込んだ瞬間、誰かに受け止められた。何でだよ。1位なら、ゴールには誰もいないはずだろ。カッチカチの筋肉、やけに熱い身体。あのスピードに追い付くかね〜、普通。

 

 「お前の個性の練度はトップヒーローにも肩を並べられる程。しかし、気を緩めると効果が切れる。故に磁力付与が解除された。油断したな」

 

 「届かないもんですね、No.2」

 

 『逆転!!!1位はエンデヴァー!!!!!!』

 

 この男の、ヒーローとしての実績と実力は本物だ。救って来た数多くの命がある。親として、旦那として、たとえクズでも、培って来た努力に嘘はない。

 

 「先の約束、忘れるなよ。1ヶ月、お前は俺の事務所の専属サポート技師だ」

 

 俺の話を聞いていたからかな。工場を畳めと言わない辺り、多少変化があるのかも。

 

 『2位は磁牧!!惜しかったがエンデヴァー相手に大健闘だな!!』

 

 大健闘ね。俺より先にゴールして俺を受け止める余裕がある。このおっさん別に本気じゃないだろ。何なら、4分の1も実力を出してない。

 

 『さあさあ続々とゴールしてくるヒーロー達!!3着はブルーウイング!!おーっと!!足止めを食らっている隙をついたか!?4着にデトネラット社広報部長、報状汰一!!』

 

 磁力操作を解かれ、あたふたとゴールに走り込んでくるヒーロー達。中にはチャンスとばかりに企業の人間も高順位に滑り込んでいる。ちゃっかりしてるよ。

 

 「侮っていたわけではないが、まさか炎に怯まないとは思わなかった」

 

 俺の隣に立つエンデヴァーは、観客席を見つめながら呟いた。あの視線の先は、弟君かな?

 

 「敵には命捨てて突っ込んでくる相手もいるでしょうに」

 

 「お前は敵じゃない。こんな遊びに何故あそこまでするか理解出来ん」

 

 「俺のリューキュウ愛なめんなよマジで」

 

 「……それよりその腰道具、準備していた割に使ってるように見えなかったが」

 

 俺のリューキュウ愛に対してそれよりって。俺の腰道具を指差すエンデヴァーに殴り掛かろうかと思ったが、まあ無駄だろうな。

 

 「これね、もしプロヒーロー達がエンデヴァーのように砂鉄拘束を振り払ったり、破壊した場合、ウチの川田が曲げた板で床に押さえ込んだり、源さんが叩いたこの鉄棒を反発で勢い良く飛ばして気絶させようと思ってました。まあみんなあっさり砂鉄拘束で止まったから使わずに済みましたけどね」

 

 「……雄英OBの発想とは思えんな」

 

 「保険ですよ。いくつものプランを用意して戦いに臨む事は雄英で学んだんで」

 

 『OK!!全員ゴールしたみたいだな!!それでは1位のエンデヴァーへの景品贈呈と行こうかあ!!』

 

 ヒーロー達が息を整える時間もなく、マイク先生の進行は続く。まあ、俺らはあくまでレクリエーション。この後の最終種目もあるからとっとと次に行きたいんだろう。

 

 「良かったですね景品。羨ましい限りです」

 

 「くだらん。そんなもの欲しさに参加したわけではない」

 

 『1位に贈られる景品は!!何と!!No.1ヒーロー、オールマイトとのツーショットだ!!』

 

 「私がカメラを持って来た!!」

 

 カメラを優しく持って現れた平和の象徴オールマイト。すげえな。流石に俺でもちょっと緊張する。て言うかリューキュウブロマイドじゃねえんだ。ん?何かエンデヴァーがワナワナと震えて、あ、そっか。

 

 「っぶふ!よ、良かったですね。オールマイトとツーショットですって!ほら、行ったらどうです?」

 

 「おめでとうエンデヴァー!!さ!ほら!こっちこっち!!」

 

 「ぬぐううう!!!帰る!!!」

 

 額に青筋浮かべるエンデヴァー。負けた悔しさもあり、少しいじりたくなった俺は腕を掴む。

 

 「んなこと言わずに!No.1と、No.2の並びみんな見たいですって!ほらほら!」

 

 「そうそう!照れなくても良いじゃないかエンデヴァー」

 

 「離せ貴様ら!!!」

 

 結局この後嫌々ツーショットを撮ることになり、その姿に俺は腹を抱えて大爆笑する。しかし、エンデヴァーの炎に突っ込んだ事に、黒瀬さんを始め、教師陣にしこたま説教された後、リカバリーガールに治癒してもらうが、客席に戻ると今度は源さんと竜也に絞られるはめになる。

 

 

 

 

 

 

 

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