プロヒーロー御用達の町工場   作:エドモンド橋本

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信用と信頼

 

 

 体育祭翌日、俺はまた雄英高校に居た。

 

 「確かに受け取りました。大変だったと思うけど本当に助かったよ、お陰で最高に盛り上がったし、先生も生徒も喜んでた」

 

 今回の請求書を渡しに来たら、何故か別室で黒瀬さんと向かい合わせで座らされた。ここ生徒指導室だよね。何度もハウンドドッグと2人きりで監禁された場所じゃん。

 

 「それなら良かったです」

 

 「ただ!!」

 

 勢い良く椅子から立ち上がり、顔を近付けてくる黒瀬さん。普段のほほんとしてる顔には、怒ってますって書いてある。次に吐かれる言葉はもう予測出来ている。

 

 「2度と!あんな!!無茶は!!!しないでよ!!!!」

 

 「はいはい分かってますよ。昨日散々聞いたし。大体、どこに行けばエンデヴァーの火に突っ込める場所あるんすか?」

 

 「そういう意味じゃなくてわざわざ自分から怪我するような事をするなって言ってるの!まあ、手加減していたとは言え、一般人に炎を向けるエンデヴァーにも非はあるんだろうけど、本当に焦ったんだから、君が炎に突っ込んだ時は」

 

 「……俺の気持ち、多少は分かりましたか?」

 

 「え?あ、ああ、いや、うん」

 

 さっきまでの勢いを失い、しゅんとして顔を俯かせる黒瀬さん。人に心配させといて、説教されてる時はそんな感情があった。でももうお互い辛い思いをしたのだから、これで終わりにしよう。

 

 「まあ、確かに俺が悪かったです。あの時は冷静じゃなかったんです。もうやりませんから、そんな情けない顔しないでくださいよ」

 

 「情けないって、酷いな」

 

 「だって本当だし、まあ、それより明後日からエンデヴァー事務所での仕事があるから、あれこれ決めとかなきゃいけないんで帰りますね」

 

 「あ、うん、色々ありがとね!」

 

 いつもの様な笑顔に戻った黒瀬さんに、俺は軽く頭を下げてから生徒指導室を後にする。

 

 「あ、貴方は」

 

 「ん?」

 

 生徒指導室を出て、直ぐに駐車場に向かおうとすると、1人の少年と鉢合わせた。

 

 「あ、すみません!急に!」

 

 思わず声をかけてしまった事にあたふたするボサボサ頭の男の子。

 

 『君の!力じゃないか!!』

 

 緑谷出久。彼もこう見ると、普通の高校生だな。

 

 「いや、良いよ。緑谷君だね。体育祭凄かったよ」

 

 「あ、ありがとうございます!あの、じ、磁牧さんですよね。帰ってからレクリエーション見ました。凄かったです!砂鉄による拘束、磁力操作の反発と引き寄せによる自由自在な動き……」

 

 なんか興奮した様子で褒め始めた緑谷君。彼こんな子だったのね。まあ、分析力があると言うか何と言うか。

 

 「は!!すみません!初対面の人にこんな!!」

 

 「ああ大丈夫大丈夫。雄英基本変な人しかいないから。慣れてる」

 

 「え、変な?」

 

 「1番変だった奴が何言ってんだ」

 

 低い声が俺達の会話を遮る。完全不審者な見た目の男性が割って入って来た。

 

 「相澤先生!」

 

 「緑谷、授業開始前まで後5分だが、お前何やってんだ?」

 

 「あ!すみません!失礼します!!」

 

 勢い良く頭を下げて去って行く緑谷君。手を振って見送るが多分気付いていない。

 

 「相澤先生」

 

 「何だ」

 

 「眩しいね、ヒーローの卵は」

 

 「……お前もまだ」

 

 「先生、これ」

 

 「……」

 

 「俺が3年間使ってた開発室の鍵、卒業する時返し忘れてた」

 

 「……」

 

 「それじゃあまた何かあれごぶばっ!!?」

 

 急に全身を襲った息苦しさ、捕縛布により縛り上げられた俺を赤く鋭い目で睨む相澤先生。出来ればこんな懐かしさは感じたくなかった。

 

 

 

 

 

 「何これ?」

 

 あの後何とか会社に帰る事が出来たが、俺のデスクの上に山積みにされたコスチュームケースを見て、疑問と同時に嫌な予感が走った。

 

 「マンダレイ、ピクシーボブ、マニュアル、フォースカインド、セルキー、シシド、ヨロイムシャ、エッジショット。取り敢えず急ぎのヒーロー分だ。破損部の修理とメンテナンス依頼。明日中との事だ」

 

 竜也の目が怖い。怪我の件と、エンデヴァーと勝手な賭けをしたことによる1ヶ月の不在で完全にブチギレてしまってる。俺が悪い。確かに俺が悪い。だから文句は言えない。

 

 「体育祭効果があったのか、結構な依頼が来てる。お前が早めに中途採用進めてくれてたから、貴重な人材が増えたが、それでもまだ余裕があるわけじゃないしな」

 

 そう、実は磁牧製作所には体育祭前に新たに人が増えていた。最近若い社員が増えては来たが、それでも主軸となっているのは、源さん達古株組。シゲさんや大輔さんは、身体にガタがきている。流石にもう休ませてあげたい。

 

 「なあ鋼星、あの2人、本当に大丈夫なんだよな?」

 

 竜也の言うあの2人とは、入ったばかりの社員、大上さんと姫崎さんの事だ。2人とも若いし素晴らしい個性を持っている。

 

 「大上はまだ良い、ただ姫崎の個性は電流。触れた対象に電気を流せる。電気系の個性は仕事なんて選びたい放題の人生勝ち組だ。そんな奴が何でウチに来た?2人とも未だにコミュニケーション取り辛いし、俺は正直何かたく」

 

 「竜也、俺はあの2人と仕事したいから採用した。何かあったらそん時は俺がどうにかする。だから、係長として、2人をちゃんと見ててあげて」

 

 心配する様な事はない。俺が信頼した人間だ。

 

 「鋼星」

 

 「大丈夫、安心し」

 

 「社長!!!大上と姫崎がウチの顧客データと製品データ持って消えやがった!!!」

 

 「「……」」

 

 土下座で済むかな?

 

 

 






 大上銀牙(おおかみ ぎんが)
 年齢 25
 性別 男
 個性 狼
 
 姫崎紫電(ひめさき しでん)
 年齢 23
 性別 男
 個性 電流
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