プロヒーロー御用達の町工場   作:エドモンド橋本

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屑鉄の支配者

 

 

 

 「これより1月、頼むぞ」

 

 「はい!お金貰う為に頑張ります!お金の為に!」

 

 「……まあ良い」

 

 今日から始まるエンデヴァー事務所での仕事。数日振りだが、エンデヴァーに会うとどうしても変なテンションになる。まあそんな事このおっさんも知ってるだろうから気にしない。

 

 「サイドキック達のサポートアイテムの整備を頼む」

 

 「それは事前連絡で聞いているが、貴方のは?籠手とかブーツも耐火仕様でしょ?」

 

 「俺は自分で行なっている。それに、傷を付けられる程弱くない」

 

 そう言う事じゃないのよメンテナンスってのはさあ。って言っても、この人は聞かないのだろう。

 

 「俺は、自分の力だけで」

 

 「過去に一度言った筈です。貴方が全力を出す為のものだと」

 

 サポートアイテム。それは、広範囲に放ってしまう個性を圧縮させて一点に放つ様にするもの、リロードに時間のかかる個性を連射可能にするもの、短時間で効果の消える個性を持続させるもの。それは幅広く存在する。多くのヒーローがサポートアイテムを使用している。しかし、オールマイトやホークス、ミルコなど、トップヒーローはサポートアイテムに頼らず戦うものが多い。ベストジーニストやエッジショットの様に、努力により個性の限界を引き上げた者達もまた同義。サポートアイテムを使うヒーローは二流。それは公言されていないが多くのヒーローファンが感じているものだろう。サポートアイテムを頼り過ぎて、失った時何も出来ないでは話にならない。それは正論だ。でも、それはあくまで頼りすぎるなという意味であり、使うなという事ではない。

 

 「その籠手で、無意識下での炎の温度調整が更に綿密に行えます。そのブーツで、足での炎の操作が更に容易くなります。サポートアイテムとは、ヒーローの手が1秒でも速く、助けを求める人へ届く為のもの。貴方はその1秒の重さをよく理解してる筈です」

 

 「……」

 

 「俺もまた、その1秒の重さを雄英で学びました」

 

 「奇人が真っ当な事を言うのだな」

 

 「クズ親のあんたが、ヒーローとしては本物なのと同じ事ですよ」

 

 友人の親としてのエンデヴァーは救いようのないクズ。それでも、ヒーローとしてのエンデヴァーは超一流だ。オールマイトに固執し過ぎているが、仕事では手を抜かず、優先すべきものをちゃんと見ている。

 

 「……スペアの籠手とブーツのメンテナンスを頼む」

 

 「喜んで」

 

 俺に背を向けて言う辺り、まだ認めきれていないのだろう。それでも最近、少しずつだが、他人の言葉を受け入れ始めてる様な気がする。変化があったのかな?

 

 「エンデヴァー!エリア24でひったくり発生!」

 

 「直ぐに向かうぞ。バーニンとキドウは俺について来い」

 

 エンデヴァーエンデヴァーの前に走って来たバーニン。目がキリッとしていて完全にお仕事モード。普段のおちゃらけた雰囲気はない。そして絶対口にはしないけど、相変わらずスタイルが良い。

 

 「磁牧、先程指示した通りだ」

 

 「あ、はい。バーニン頑張ってな」

 

 「おう!任せときな!」

 

 「……」

 

 はよいけガスコンロマン。こっち見んな。現場へ向かう2人の背中を見送り、俺は与えられた仕事部屋へ歩く。途中、俺が学生時代からいたサイドキック達と軽く話したりしたが、やはりここのサイドキックは皆底抜けに明るい。パワハラガスコンロの元でよくあんな明るく振る舞えるものだ。

 

 「しかしまあ、ヒーロー飽和社会で、まだひったくりなんてコスパの悪い犯罪やってる奴いるんだな」

 

 「あ、社長お帰りなさい!渡されたサイドキックの皆さんのサポートアイテム、外傷のあるものとそうでないもので分けました!」

 

 「Capo、次の指示を」

 

 部屋の扉を開けると、こちらもまた明るい声で報告してくれる平島君と、反対にクールなアリアさん。今回のエンデヴァー事務所での仕事は俺1人でも良かったのだが、サポートアイテムについての知識を得られる良い経験だと判断して、新人2人を連れて来た。ウチでサポートアイテムやコスチューム開発のライセンスを持っているのは俺と竜也と源さんの3人。いずれは2人にもライセンスを取らせたいと思っているからこその今回だ。勿論ただでさえ仕事が多い現状で2人を連れていくと言った時は竜也にめっちゃ怒られた。まあ、今朝早出してトップヒーロー達のサポートアイテムのメンテナンスは済ませて来たから、多少は楽になったと思うけど、もう後は頼んだって感じだ。

 

 「2人ともご苦労さん。取り敢えず、平島君は外傷部の状態確認。そこまで酷くなければ表面をコーティングして。アリアさんは、俺と一緒に外傷のないものを分解していこうか」

 

 「了解しました!」

 

 「D`accordo」

 

 本当に優秀な新人で助かる。指示をしっかり理解して、作業を始める。気になった事は随時聞いてくれるし、自分で判断する時も相談してからやってくれる。報告連絡相談、使い古された言葉だが、未だに大事な事だと思う。

 

 「よし、休憩しよっか」

 

 「はい!」

 

 流石はエンデヴァー事務所。最低限のメンテナンスはしているものが多く、今の所部品交換が必要なものは3台程度。優秀だが見た目からは伝わらないサイドキック。それがエンデヴァー事務所のサイドキック達。

 

 「はあ、雄英体育祭に続いてあのNo.2ヒーロー、エンデヴァーの事務所で仕事なんて、家族に言っても信じてもらえないだろうなあ」

 

 田舎から出て来た平島君は、8人兄弟の長男で、妹や弟達の学費を稼ぐ為に働くという、あり得ないほど良い子。礼儀正しいし、元気だし、自分で言うのもアレだけど俺とは全然違う。ほんに立派。

 

 「Capoの凄さが身に染みてわかります」

 

 「流石雄英出身!あ、でもなんでヒーロー目指さなかったんですか?」

 

 なんかこの前も解斗から聞かれたな。ものづくりが好きだから。それから、ガキの頃の小さなトラウマ。そして。

 

 「親父に憧れたんだ。俺は昔、やんちゃで色んなものを壊してた。チャリとかラジコンとかさ。それを親父は普通の顔して直してた。当時はそれが親父の個性だと思ってた」

 

 でも違った。親父は無個性だった。

 

 「近所の人達から頼まれた事も嫌な顔せずこなして、源さんやシゲさんからも信頼されて、なんでも作れて、なんでも直せた親父は、俺のヒーローだった」

 

 

 

 『鋼星、ヒーローは好きか?』

 

 『そうか、父さんも大好きなヒーローがいてな、そのヒーローの助けになりたくて、今こうして仕事してんだ』

 

 『お前は、好きにやれ』

 

 

 

 「ま、喧嘩してしょっちゅうプロレス技掛けられてたけどな」

 

 「あ、結構お父さん強かったんですよね?コブラツイストとか、逆エビ固めと食らったんですか?」

 

 「いや、パワーボムとかパイルドライバーとか」

 

 「想像の10倍は殺意高めだった!!」

 

 「Capoの父上、流石です」

 

 今思えば、あのクソ親父無個性でなんであんだけ強かったのか不思議だよ。こっちは個性フルでぶん殴ってんのに。お陰で頑丈さとプロレス技が身についちまった。

 

 「1つ言うと、ヒーローを目指さなかったが、ヒーロー科を受けなかった訳じゃない」

 

 「え!?ヒーロー科受けたんですか?」

 

 「ああ、滑り止めで」

 

 「この世に雄英ヒーロー科を滑り止めで受ける人っているんだ」

 

 「Capoにとって、ヒーロー科は踏み台でしかない」

 

 「アリアさん!?怒られる様な言い方はやめましょう!!」

 

 ヒーロー科の入試。今思えば色々大変だったな。

 

 「実技試験は4位、筆記は11位。流石はヒーロー科。上には上がいるって思ったね」

 

 俺には超えられなかった壁。遠過ぎる3つの背中を見た。

 

 「筆記はともかく、実技が4位って凄いですね。あれ?でも、実技って確か、体育祭の時のあのロボットを倒すやつですよね?社長の個性なら無双出来るんじゃないですか?」

 

 確かに平島君の言葉は最も。しかしそんな簡単な話じゃない。

 

 「当時の俺は今みたいに、磁力付与とか、レールガンぶっ放したりとか、鉄屑集めて作った無数のゴーレムを暴れさせたりとか出来なかったからな。せいぜいその辺の鉄寄せ付けて殴ったり、寄ってきた仮想敵を反発させたりとかしか出来なかった」

 

 「レールガン、ゴーレム、ま、まあ、一旦置いといて。その状態でも充分過ぎると思いますけど、それでも4位なんて、やっぱり雄英は凄いですね」

 

 「ああ、凄えよ」

 

 俺が勝てなかった3人。

 

 1人は気象制御による雷や雪、気温、湿度の操作が出来る。

 気象ヒーロー《ウェザーカーニバル》

 

 1人は影を自在に操り、拘束や攻撃も可能。

 暗影ヒーロー《影狼》

 

 1人は銃火器を無限に生み出し、10個までなら、触れずとも発砲出来る。

 乱射ヒーロー《トリックバレット》

 

 俺にサポートアイテムの開発をよく依頼してきたうるさい奴ら。開発室に引きこもってた俺を引っ張り出して飯食わせて来たおせっかいな奴ら。きっと最高のヒーローになる筈だった奴ら。死んではいけない筈だった。

 

 

 『人気ヒーローチーム《浮世》の3名が先日……』

 

 『敵の正体は不明』

 

 『死体は見つかっていません』

 

 

 

 

 「本当に、すげえよな」

 

 「……でも、1番凄いのはCapoです」

 

 「はは、ありがとねアリアさん」

 

 俺がヒーロー科の3人に勝てなかったのは、個性や実力以上に、明確な目標が無かったから。そいつは、降り注ぐ冷たい雨を止ませる様なヒーローになりたいと言った。そんな目標俺には無かった。

 

 「ヒーロー科。僕もヒーローになりたいって昔思いました。ヒーロー名とか考えたりもしましたね。ケンマライダーとか!」

 

 「ライダー、何に乗っているのですか?」

 

 「え、あ、それはその」

 

 アリアさんの純粋な疑問に顔を赤くして四苦八苦する平島君。それにしてもヒーロー名か。

 

 『この前ヒーロー名決めたんだ!俺はウェザーカーニバル!明るくて良いっしょ!』

 

 『私は影狼。カッコイイでしょ?』

 

 『俺様はトリックバレット!変幻自在の弾丸!』

 

 『鋼星も考えてみないか?ヒーロー名』

 

 何でサポート科の俺が、ヒーロー名何て考えなきゃいけないんだよ。邪魔しに来るアホ共を追い返すべく試作品のアイテムを構えた時、何となく溢れた。

 

 『スクラップロード』

 

 『『『良いじゃん!!!』』』

 

 『ッ出ていけ!!!』

 

 屑鉄の支配者。何となく、俺に相応しい気がした。

 

 

 

 

 






 作者の推しキャラについて語るだけの後書き。

 1.障子目蔵
 見た目、言動全部好き。あの体格で諜報や索敵メインのサポートタイプなの好き。でも接近戦もちゃんと強い。ライジングで姉弟守ってたのほんと好き。あとA組で1番誕生日遅いのめっちゃ好き。取り敢えずマジで幸せになってほしい。

 2.瀬呂範太
 なんか好き。個性もそうだし、地味に優秀なのも好き。機動力の高さとか、余裕ある口調が好き。軽口叩きながらの戦闘シーンとかむっちゃ良い。峰田とのコンビが面白い。活躍を正座待機中。

 3.柳レイ子
 ビジュアル好き。雰囲気好き。可愛いから好き。

 4.取蔭切奈
 ビジュアル好き。雰囲気好き。可愛いから好き。

 5.レディナガン
 腋!脚!!

 6.リューキュウ
 全部!!!!

 
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