プロヒーロー御用達の町工場   作:エドモンド橋本

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いじめダメ!絶対!

 

 

 「頂きます」

 

 大皿に盛られた青椒肉絲を小皿に移してから口に運ぶ。感想は一言だけ。

 

 「美味い」

 

 「良かった。久しぶりに鋼星君が来るから張り切っちゃって、たくさんあるから遠慮なく食べてね」

 

 冬美ちゃんの飯が美味いのは昔から知ってたけど、久しぶりに食べるともはや感動するな。いつもこんな飯が食える焦凍君が羨ましいよ。

 

 「そう言えば、夏君は?挨拶だけでもしときたかったんだけど」

 

 「最近帰って来ないんだよね。何かゼミに気になる女の子がいるみたい」

 

 「はは!良いねえ、大学生ぽいことやってるね」

 

 「まあ連絡入れてくれるから良いけど。たまには帰って来て欲しいよね」

 

 こんだけ広い家に冬美ちゃんと弟君だけじゃ、確かに寂しいわな。

 

 「……夏兄とも知り合いだったんだ」

 

 「そっか、焦凍は会った事なかったもんね」

 

 「ああ、親父に関わるなって言われてたし」

 

 「「「……」」」

 

 いや気まず。誰のせい?あのガスコンロのせいだよ。どうしてくれんだよマジで。いや俺はいいわ。子供達に傷を負わせんなよあの野郎。

 

 「ここに来たのは数回程度だけど、夏君とは仲良くさせてもらってたんだ」

 

 「そうだったんですね」

 

 夏君は人当たりの良い男の子って感じだったな。ただ、エンデヴァーの話を聞くと極端に雰囲気が変わる。当然と言えば当然。だから別に彼に対して悪い印象はない。

 

 「あの、姉さんと仲が良いみたいですけど、2人とも、その、何か」

 

 上手く言えない様子の弟君。しかし言いたい事は分かる。俺と冬美ちゃんとでは性格も考え方も何もかもが違う。そんな俺達が何故仲が良いのか。気になるのも仕方ない。ただこればっかりは、冬美ちゃんの傷に触れる話だからそう簡単に話せない。どう伏せようかと悩んでいると、冬美ちゃんが口を開いた。

 

 「私ね、小学生の頃嫌われ者だったの」

 

 「え」

 

 弟君の顔が明らかに変わった。揺らぐ瞳、隠しきれない動揺。俺もまさかここで打ち明けるとは思わなかった。

 冬美ちゃんは幼い頃から努力家で、勉強も運動も出来る優等生。そして極め付けはトップヒーローの娘。最初はみんなの人気者だった。しかし、彼女の存在が特別なものだと感じたクラスメイトは、劣等感や嫉妬、不満を抱き始めた。

 

 「クラスで除け者にされたり、無視されたりしてね」

 

 「姉さん、いいよ」

 

 「違うの焦凍。私ひとりぼっちじゃなかったよ。鋼星君だけは私に話しかけてくれたから」

 

 あの時俺は周りの人間関係とかどうでも良かった。ただ純粋に、冬美ちゃんに勉強教えてもらってただけ。

 

 「子供ってね、自分の中で異質だと感じてしまったら、それを中々捨てられないの。だからいじめたり、除け者にしたりする。勿論許されることじゃないよ。私だって我慢してたけど辛かったもん。でも、鋼星君の言葉に救われたの。鋼星君があまりにも私に声をかけて来るから、周りの子達がからかってね、轟の事好きなんだろ〜、とか言言い出して。そんな時に鋼星君は」

 

 

 

 『クラスで1番成績の良い奴に勉強教えてもらう事の何がおかしいの?』

 

 

 

 「今考えれば確かに当たり前の事なんだけど、その時は衝撃的だったよ。しかもその後にさ」

 

 

 

 『勉強も運動も、エンデヴァーの娘とか関係なく、冬美ちゃんが頑張ってるから出来るんだよ。特別な家に生まれたかも知れないけど、特別な存在なわけじゃない。努力して手に入れた、冬美ちゃんの力だよ』

 

 

 

 「って言ってくれたの。ね?鋼星君」

 

 辛い過去のはずなのに、優しい顔で話す冬美ちゃん。俺は彼女を救ったつもりはない。ただ彼女が強かっただけだと思うが。

 

 「……さあね、ガキの頃の事はあんまり覚えてないね」

 

 「ふふ、そっか」

 

 思い出に浸る様な、優しさ満点の笑顔。どうにも気恥ずかしい。

 

 「あ〜、ご馳走様!めっちゃ美味かった!流石は冬美ちゃん!食器流しに運んどくね!」

 

 何かさっきとは違う意味で気まずくなって来た為、自分の使った食器を台所まで運ぶ。過去に何度か食事に呼ばれた際に、洗い物までやっているので大体場所は把握している。

 

 「あの、磁牧さん」

 

 茶碗を洗っていると、ふと弟君が後ろに立って声をかけて来た。

 

 「ん?どうしたの?」

 

 「姉さんは、良い人です」

 

 「え?ん?あ、はい。知ってます」

 

 なんか妙に敬語になってしまった。表情からして若干天然入ってる子なんだろうなとは思っていたが、まさかここまで謎の発言されるとは。

 

 「だから、宜しくお願いします」

 

 「……はあ、こちらこそ」

 

 俺もよくわからないまま返事をすると、弟君の表情が少しだけ明るくなった。マジで謎だが、解答としては正解だったようだ。

 

 

 

 

 「鋼星兄さん。おはようございます」

 

 「え?は?あ、おは、よう?」

 

 「……」

 

 翌日、弟君による更なる謎発言により、俺は混乱し、エンデヴァーは固まった。

 

 

 

 

 

 

 






読者の方は大体察しが付いてると思いますが、主人公のヒロイン候補は以下の通りです。

13号
リューキュウ
冬美
ミルコ

恩師、推し、幼馴染、トラウマ、となる訳ですね。


次回頃からシリアス入りそうなんで、ちょこちょこアホみたいな閑話挟んでいきたいです。

 

閑話アンケート2

  • 13号の特別授業
  • ミルコとチームアップ
  • リューキュウの1日ボディガード
  • 冬美と買い物
  • ファットガムと食べ歩き
  • エッジショットと忍者屋敷
  • ベストジーニストによるヘアメイク
  • ホークスと空中デート
  • エンデヴァーとサウナ
  • オールマイトとお昼ご飯
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