くだらない話だけど後半ちょいシリアス?
「源さん」
「ん?何じゃ?」
隣で壁の修理をする源さんに声をかける。黙々と作業をしてる時は、たまに意味の無い質問をしたりする。今日は、鋼星の母校の施設にいるし、学生時代の頃の話でもするか。
「源さん高校普通科でした?」
「いや、農業高校」
「え!農業!?」
想定外の答えが返って来た。思わず手を止めて顔をむけてしまう。いや待て。源さんの時代なら別に、不思議じゃねえか。米とか畑とか。
「おん、動物科学科」
「動物科学科!?」
「牛とか豚の世話してた」
「牛!?豚!?」
「因みに獣医の資格持っとるぞ」
「ふぁ!?」
口を開けば意外な言葉が飛んで来る。何でこの人今壁直してんだろ。獣医やってれば良いのに。
「何でウチに」
「八さんに、拾って貰ったからな」
八さん、その名前は確か。
「鋼星の、お爺さんですか?」
「ああ、昔世話になってな。恩返しがしたくてウチに入ったわけだ。まあ、まさか3代に渡って世話になるとは思わなんだがな」
「はは、それは確かに」
最古参の源さんは、ウチの工場の変化を1番よく見て来たんだろうな。トップが変われば会社は変わる。現状維持なんて不可能だ。時代の流れもある、需要の変化もある。きっと、多くの苦労をして来たはずだ。
「源さん、いつも本当に、お世話になってます」
「あ?どうした急に?」
「いえ、日頃の感謝をね」
「ふっ、思ってもねえ事を」
「んな事ないですよ」
ここ2年でウチの会社の平均年齢はぐっと下がった。俺と鋼星の1つ下に、川田、解斗、溶。2個下に元気。そして新卒の平島とペネトレイション。みんな非常に優秀ではあるが、やはりまだまだ源さん達には遠く及ばない。源さん、大輔さん、シゲさん、山さん。高齢化社会だ何だ言われても、培って来た技術が老いることはない。社会を守って来たのはヒーローだが、社会を動かして来たのは、彼らだ。最大限の敬意を払うべきだよな。
「なあ、竜也」
「お、何すか?」
「お前、鋼星が何で雄英に入ったか、知ってるか?」
「え?ん〜、そう言えばちゃんと聞いてなかったな」
ヒーローを目指さないという今どき珍しい中学時代を送っていた俺と鋼星。でも中2の冬に突然雄英に行くと言い出した時はマジで驚いた。なんか変なものでも食ったのかと思ったわ。
「やっぱり一流企業に入るためとか?」
「いや、ワシはモテる為って聞いたぞ」
真剣に考えた自分がバカみたいだ。でもそうだ。あの時期アイツモテたい願望強かったわ。何かサイドキックとしてデビューしたリューキュウに一目惚れして、雄英に行ったらワンチャン会えるかな?とか言ってたわ。
「納得です」
「まあ、それだけじゃねえだろうけどな」
「え?」
「お前の言う通り、一流企業に入って、先代を楽させたかったんじゃねえかな?」
先代。鋼星の親父さんか。確かに、何だかんだ親父さんには感謝してるだろうしな。モテたいとか、そんな不純な動機なだけって事はねえか。アイツ真面目に雄英通ってたもんな。
『おい竜也、雄英の女子マジでレベル高えぞ』
『18禁ヒーローが教師やっちゃダメだよな。エロ過ぎる。授業集中出来ねえもん』
『なあ、俺サポート科なのにエンデヴァーの事務所に職場体験行くことになったんだけど。何で?リューキュウのとこが良いんだけど。てかさ、リューキュウの何が良いって、あのチャイナドレスのスリットだよな。あそこマジ100点』
『何かエンデヴァーの事務所に年の近い可愛いサイドキックいたからとりあえずヨシとする。脚がエロかった』
……俺の記憶に映る鋼星は真面目に通ってる様には見えない。アイツよく社長になれたな。
「そう、ですかね?」
「お前の気持ちも分かるがな」
「でもまあ」
親父さんの為かどうかは別として、今の鋼星はしっかりしてる。客は厄介なのが多いが、収入で言えばかなりの右肩上がり。
「今のウチの会社を見たら、親父さんも喜ぶんじゃないですかね」
「だろうなあ」
「アイツは凄えっすよね。職人としての技術は一流だし、個性も最初は金属引き付けるだけだったのに、いつのまにか超強え個性になってる。てか、アイツ何でヒーロー目指さなかったんすかね?」
「……さあな」
曖昧な返しをする源さん。何か知ってんのかな?鋼星がヒーローにならなかった理由。
「おい、こっちは終わったぞ」
「あ、はい。そんじゃあ、次、天井のガラスいきますか」
「ああ」
さっきよりも少し声のトーンが落ちた源さん。触れちゃいけない話題だったか。俺も大人だ、そのくらい分かる。今は、仕事に集中しよう。
校長室
「え、雄英体育祭の準備?」
「うん、手伝ってくれるね?」
「あ、はい」
磁牧鋼星の好きなヒーローランキング
1位 リューキュウ
2位 13号
3位 ミッドナイト
4位 エッジショット
5位 ファットガム
6位 バーニン