「強度問題なし。セントラル広場もこれで修復完了。って事でこれで晴れてUSJの修復は終了です」
「迅速な対応、本当に感謝するよ」
最早数日前まで大量の敵が襲来したとは思えない程に元通りの状態になったUSJを見渡し、根津校長は頭を下げた。
「ありがとう、磁牧君」
悄らしい雰囲気で感謝の言葉を述べてはいるが、腹の中で何考えてんのかはわからない。ただどうせろくでも無い事だ。
「じゃあ来週から雄英体育祭の準備宜しくね!」
クソねずみが。
「俺達はこれで」
俺は精一杯の営業スマイルを浮かべて根津校長に背を向ける。
「13号、意識回復したよ」
根津校長の言葉に、思わず足を止めてしまった。
「そう、っすか」
「うん、軽い会話なら可能でね。体育祭までには何とか復活出来そうだって言ってるよ」
無茶な事を言うのは相変わらずだ。昨日まで意識が無かったのに、早々復帰なんて出来るわけがねえ。
「USJは磁牧君が復旧してくれているって伝えたら、嬉しそうにしていたよ」
「……はああぁぁぁ」
口から漏れた大きなため息は、今まで張り詰めていた俺の身体を軽くした。強がるのはやめよう。
「あーあー、安心した」
「伝えておこうか?」
「結構です。それより、あの人のヒーロースーツ。まだ他所の企業で修復して無ければ、ウチでやらせて貰えませんか?」
「良いのかい?」
「ええ、もう怪我させたく無いんで」
俺に出来るのは、持つ技術を駆使して、最大限丈夫なヒーロースーツを作る事。敵と戦えない俺には、こんな事しか出来ない。でも、こんな事で救える人がいるのなら、雄英卒として、やるだけだ。
「分かったよ。明日には届けよう」
「ありがとうございます。あ、伝言頼めるなら、一個いいですか?」
「勿論だよ!何て伝えようか」
今回は少々心配した。少しだけ意地悪しても文句は無いだろう。
「じゃあ、——————————-って、磁牧が言ってたと、伝えておいてください」
その夜、伝言を聞いた13号は、顔を真っ赤にして寝込んだ事を、磁牧は知らない。
「雄英体育祭とかワクワクする〜〜!!!」
「元気!早く溶接機運べ!!」
明日から始まる体育祭の設営工事に向けて、俺達は準備をしていた。そんな中、既に興奮している夕島に、竜也が怒鳴り上げている。
「あ、平島君。溶接棒はステンレス用のも積んどいてくれる?」
「了解です!」
夕島よりも真面目に仕事している平島君に声をかけた後、俺は明日の現場のレイアウトを見る。例年通り有観客での体育祭。予定では当日は多くの出店が並び、プロヒーロー達が巡回警備を行うらしい。あの事件の後、よく許可が降りたものだ。生徒達のメンタルケアもあるだろうに。まあ、そんなの俺が考えても無駄だ。とにかく、何も無い事を祈ろう。
「社長!お客様です!」
事務の双葉さんからの言葉に振り返ると、綺麗な七三分けに眼鏡をかけたスーツ姿の男。
「久しぶりだね、磁牧」
「予定より、少し早いな。貴方らしくないですよ。サー・ナイトアイ」
「ああ、少し、急ぎたくてね」
あのサー・ナイトアイが急ぎたくなるとは。一体、彼の目には何が映ったのだろうか。