宇宙世紀に転生憑依したのですが、失敗したうえにとんでもないことになってます~超?・機動戦士ガンダム 作:ひいちゃ
その戦いで、全人類の半数が犠牲となり、人々は己の行いに恐怖した……。
* * * * *
決戦を終えたペガサスクルーはしばしの休息を得た。
だがその一方、ジャブローでは、バスクがジャミトフを暗殺し、暴走をはじめようとしていた……。
オーストラリア。複数のジムが地獄の門番のように並んで佇んでいるその先で、大きなキノコ雲が上がっていた。
そのジムの一機、それに乗る部隊の隊長が通信を入れる。
「こちらジャッジメント101。ターゲットへの戦略攻撃、完了しました」
通信スクリーンに映ったバスク・オムは凶暴で醜悪な笑みを浮かべて応答した。
「よくやった。これで、我がティターンズに逆らう奴らも黙り込むだろう。貴様は我が地球連邦を救う英雄として名を連ねたのだ」
「はっ……」
「不服そうだな。いいか、変なことは考えるなよ。変なことを起こされたくなければな」
「……わかっております」
隊長が苦渋の表情でそう言うと、バスクは満足そうにうなずいて言った。臆面もなく。
「それならいい。ただちに帰還せよ」
「はっ」
そして通信は切れた。
「母なる地球に戦略攻撃を行うとは……。我が地球連邦はどうなってしまうのか……。しかし、反対すれば家族や知人にも害が及ぶ。今は従うしかないのか……」
そう憂いを秘めた声でつぶやく隊長。少しの懊悩の後、首を振って部下たちに撤収を指示するのだった。
* * * * *
南米、旧地球連邦軍司令部、現ティターンズ総司令部ジャブロー。
その管制室で、バスクは醜悪な笑みを浮かべたままつぶやいた。
「そう、貴様は英雄だ。何かあったら、スケープゴートとして罪人にされてしまうかもしれんがな。ふふふふ……」
その卑劣な独り言を聞いた者は誰もいなかった。あるいは聞かないふりをしていたのか。
* * * * *
その少し前、ラサ中心部にある地球連邦正統政府。
その一室で、シャア・アズナブルは、宇宙のキシリア・ザビから意外な通信を受けていた。
「私が……ですか?」
シャアの問いに、スクリーンの向こうのキシリア・ザビは表情を変えずにうなずいた。どうやら、彼女の中では決定事項らしい。
「そうだ。ギレン・ザビのジオン公国に対して、我らもジオン共和国を立ち上げることにしたのだ。いつまでもキシリア派のままだとかっこうがつかんし、地球連邦正統政府と和平を結ぶさいにも差し障りがあるかもしれんからな」
「なるほど……それはわかりました。しかし、いきなり私にその首班につけというのは……」
シャアのその戸惑いも、キシリアの予測内だったらしい。彼女は表情若干緩め、すぐさま答えた。
「まぁ、貴様の戸惑いもわからんではない。だが、私もドズル兄も、新しいジオンを率いるには、あまりにザビ家でありすぎた。私たちのどちらかが首班になっても、人々はいい顔をしないだろう」
「それは確かに……」
「だが貴様は違う。貴様はジオンの赤い彗星ではあるが、何よりあのジオン・ダイクンの忘れ形見だ。そのネームバリューはかなりのものがある」
「……」
「それに何より、貴様には宇宙の民を引き寄せ、アースノイドとスペースノイドを結びつける才能があると思うのだ。貴様がトップになれば、必ず正統政府と協力し、この地球圏に平和をもたらすことができるだろう。すぐに答えを出せとは言わないので、考えてみてほしい」
「わかりました。しばし考える時間をください」
そのシャアの答えも、キシリアの予想の範疇らしい。キシリアの表情が陰ることはなかった。さすがキシリア・ザビだ、と思いつつ、シャアはキシリアの答えを待った。それはすぐに来た。
「うむ。いい答えを期待しているぞ、シャア・アズナブル……いや、キャスバル・ダイクン」
「は……」
そして通信が切れた。それと同時にアラームが鳴り響く。
* * * * *
ジムの一機をビームライフルで撃ち抜く。その直後。
―――ソフィー、後ろだ!
―――はい!!
俺の警告に応え、ソフィーがジム・フリーダムをジャンプさせ、後ろから接近してきたジムの射撃を回避する。そしてそちらに振り向いた刹那。
―――落ちろぉ!!
腰のソリッドシューターを発射!! そのジムの上半身を撃ち抜き撃破した。
俺……もとい、ソフィーたちは今、再び侵攻してきたティターンズの奴らと戦っているところだ。
あれから、何度も散発的な攻撃がラサに行われている。ペガサスJr.隊含め、正統政府軍はその対応に大わらわだ。
今のところ、無事に撃退できているが、それにしても回数が少しばかり多すぎる。俺たちを消耗させるのが目的なのか、それとも何かから注意をそらさせるのが目的なのか……。
そして俺たちはなんとか、最後のジムを撃破し、今回の戦いを終えた。しかし、直後、衝撃が俺たちを待っていた!!
ある通信が入ってきたのだ。
* * * * *
「艦長、トリントン基地から緊急通信が入っています!!」
「なに!? ただちにつなげ」
ペガサスJr.のブリッジ。フラゥのただならぬ様子の報告に、ブライトは汗をにじませて指示を出した。ただ、通信はなかなかつながらなかった。それが、ブライトの焦りと不安を加速させる。
そしてようやくつながった。しかし、スクリーンに映し出されたのはノイズだけ。
「ようやくつながったか。もしつながらなければ、どうしようかと思っていたところだ」
「ホーキンス大佐!? 一体どうなされたのですか!?」
そしてトリントン基地のホーキンス大佐から告げられたのは、戦慄すべき事態だった!!
「どうやら我々はここまでのようだ。我がトリントン基地は、ティターンズによる戦略攻撃を受けたのだ」
「なんですって!?」
よく聞くと、ホーキンス大佐の声やノイズ音に紛れて、爆発音も聞こえる。誘爆が起こっているのだろうか。
「核ではないようだが……それでもそれに匹敵するほどの威力のもので、基地は壊滅状態。我々司令部スタッフが緊急に移動した、地下指揮所が無事だったのが不思議なくらいだ」
「なんてことだ……」
「ティターンズの奴らが、戦略攻撃を我がトリントンで済ませるとは思えない。くれぐれも、ティターンズの戦略攻撃には、注意……」
そして激しい爆発音。通信は切れた。
「ホーキンス大佐!!」
* * * * *
地球の衛星軌道上で待機している、旧連邦軍特殊部隊『ラスティ・ハウンズ』母艦『ドッグズ・ケンネル』。そのブリッジで。
「なんですと? 我々に、ラサへの戦略攻撃の支援をせよと?」
「そうだ。貴様ら狗にはふさわしい任務だろう」
スクリーンに映し出されたバスクは、相手を見下げる表情と、醜悪さが見事にブレンドした笑みを浮かべていた。
「できればそんな任務は拒否したいのですがね」
「ほう? 狗の癖に仕事を選ぶか」
バスクの表情が少しゆがんだ。その表情から感じる圧力に屈せず、彼に相対しているラスティ・ハウンズ隊長、ホーフマン大尉は続ける。
「確かに我々が旧連邦に飼われていた時はそうでした。ですが今は違う。あなた方は旧連邦とは違う。狗にも飼い主を選ぶ権利はあると思いますがね」
「狗風情が……まぁいい。思う通りにすればよかろう。お前の身内に害が及んでもいいならな」
「なんですと……?」
表情を険しくしたホーフマンに、バスクは醜悪な笑みを深めて告げた。
「コマンドワードを知っているのがお前だけだと思ったか? お前が娘のように思ってきたあのミハルとかいう娘……あの娘の人格を破壊して、お前への刺客にすることもできるのだぞ」
「貴様……!」
憎しみの視線を突きつけるホーフマンに対し、バスクは笑みを返した。それは勝利を確信した余裕の笑みであった。
「ふん、飼い犬のすべき態度ではないな」
「……了解しました。これより、狗はラサへの戦略攻撃の支援を行うため、地上に降下します」
「よろしい。幸運を祈る」
そして通信は切れた。ホーフマンは怒りを収めるようにため息をつくと、しばし沈黙した。
「大尉……」
副隊長の声にも返事を返さない。しかし、彼はただ黙しているわけではなかった。
バスクのことだ。例え任務を成功させても、自分たちをこのままで済ますはずがあるまい。彼らの立場が悪くなれば、容赦なく全ての罪を狗たちに押し付けて、切り捨てる腹積もりだろう。
ジャミトフ暗殺のさいにも、公式には「実はジオンのスパイであったバスクの副官が暗殺を実行し、バスクがその副官を処分した」とアナウンスがされていたが、ホーフマンはそれを最初から信じていなかった。狗の嗅覚で、真実は違う……ジャミトフはバスクに暗殺された……ことを見抜いていたのだ。
だから、このままバスクに従ったとしても、自分たちに未来はないのはわかりきっていた。
自分だけ奈落に落ちるならそれもいいだろう。しかし、部下たち……特に自分を慕っていたあの少女兵……ミハルまでその道連れにするのは避けたかった。
ならばどうするか……。部下たちやミハルを助ける術を黙考していたのである。
そして、彼はその術を見出した。『狗』を率いていたのは伊達ではない。
「副隊長、メンバーを会議室に集めてくれ」
「は……はっ、了解しました」
そして、副隊長がアナウンスを入れる中、ホーフマンは会議室へと歩いていった。これまで使ってきたあの会議室。そこでミーティングをするのもこれが最後だな、と思いながら。
* * * * *
そして会議室。そこに集まった隊員たちに、副隊長からミッションについての説明がなされていた。
隊員たちからは戸惑いの声が出ていた。さすがの『狗』たちでも、守るべき地球を攻撃する任務には抵抗があるのだろう。
説明が終わり、隊員たちからの戸惑いの声が収まったところで、ホーフマンが一歩進み出て口を開いた。
「貴様らの気持ちはわかる。俺もそうだったからな。だがこれが我ら『狗』の最後の舞台だ。『狗』の覚悟を、最後まで敵や、飼い主に見せつけてきてほしい」
『最後の舞台』……その言葉に、再び会議室がざわめく。
「我らラスティ・ハウンズは旧連邦軍の暗部を担う特殊部隊として暗躍してきた。だが、旧連邦が消滅し、ティターンズになり変わられた今、我らが『飼われる狗』である理由はなくなったと言えるだろう」
そこで、ホーフマンは一度言葉を切る。そして、力強く先を続けた。彼の決意を示すかのように。
「ゆえに、この作戦をもって、貴様らの任務を全て解除する。この任務が完了、あるいは俺が戦死した時点をもって、隊は解散とし、その後は貴様ら個人に任せる。ティターンズに入るもよし、正統政府に合流するもよし、もちろんどちらもよしとせずに野に下るのもいいだろう」
そこで再び会場がざわめく。
「ただそれらも、俺たちが生き延びてからのことだ。生き延び、諸君らのその後につなげるためにも、この戦いで果てるわけにはいかない。それを覚えていてほしい。解散!!」
その号令を受け、隊員たちが会議室を出ていった。戸惑いや動揺を抱えたまま。
その中の一人……ミハル・トラキエをホーフマンが呼び止めた。
「なんでしょうか、大尉?」
「大した理由ではないのだが……このディスクを預かっていてほしい」
そう言ってホーフマンが差し出したのは一枚のディスク。ミハルは戸惑いながらもそれを受け取る。
「誰に渡しても構わないが……少なくとも、ティターンズの連中には渡さないでほしい」
「はぁ……了解しました」
ミハルはやはり戸惑ったまま、ディスクをポケットに入れた。それを確認したホーフマンは、その時初めて優しげな微笑みを浮かべた。まるで、家族……妹か娘……に向けるような微笑みを。
「今のうちに言っておく。俺はお前を、娘のように思っていた……ありがとう」
「大尉!!」
そのミハルの声を背に受け、狗は再びブリッジに戻っていった。
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* 次回予告 *
狗は戦いを挑む。ペガサスJr.と、そしてバスクに。
そしてそれは無駄ではなかった。
次回、『狗の最期』
君たちは生き延びることができるか?
※次の更新は、9/14の予定です。お楽しみに!!
テテテUCのフロンタル、原作UCフロンタルの記憶を受け継いでてほしいですか?
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