※注意※
咲希ちゃんが亡くなります。
苦手な方はブラウザバックでお願いします!!
追記
前回のるいくんの反省文、ちょこっとだけ加筆しました。
あ、全然読まなくても大丈夫です。
「は…………? 咲希が……?」
中学の卒業式、式中にも関わらず飛び込んできた両親に告げられたのは、絶対に聞きたくなかった、起こらないと信じていた報せだった。
「嘘、う、嘘だろ……? なぁ! 嘘って…………ッッ!」
否が応でも、分からされた。
どんな時でも優しい笑顔を浮かべる両親の、初めて見る顔で。
一向に自分が映らない、現実から目を背けている様なその瞳で。
「咲希……咲希ッッ!」
突然飛び込んできた両親に驚き硬直しているクラスメイト達を押しのけて出口へ向い、車に乗り込む。
「嫌だ……頼む、嘘だ、嘘であってくれ……」
しかし、辿り着いた病院で見えたのは、病弱ながらも気丈に振る舞う笑顔でも、辛い時に手を握ってやると見せる嬉しそうな微笑みでもなく、白い布と、そこからはみ出た金色の髪だった。
「あ、ぁ……なぁ咲希、もうすぐ高校生だろ? 一歌に、穂波に、志歩に……4人でまたバンドを組むんだろ……? なぁ、咲希……嫌だ、いかないでくれ……咲希ッッ!」
倒れ込むようにしてベッドへ駆け寄り、目の前の光景が信じられなくて、信じたくなくて、つい……顔にかけられた布を取ってしまった。
「はっ、はっ……は、あ……あぁ…………」
中学校の卒業式……未来への希望と、少しの寂寥感、晴れやかな日となるはずだったその日に、俺の中の星は……消えてしまった。
「ああああああああああああああああ!!!!」
俺はこの日以来、声が出ない。
□■□■□■□
『お前のせいだ』
……あぁ、その通りだ。
『お前のせいだ』
何がスターだ、何がみんなを笑顔にするだ。
『お前のせいだ』
大切な……世界で一番大切な妹すら守れず……何が……!
『お前のせいだ』
病院ではお静かに、学校で習わなかったのか? バカが。
『お前のせいだ』
大声ではしゃぎまくって、ガキみたいに騒いで……咲希を笑顔にするため……?
『お前のせいだ』
その結果がこのザマだ。大きな音は病弱な身体にさぞ響いただろう。あぁ咲希、可哀想に……。
『お前のせいだ』
俺のせいだ……。
『お前のせいだ』
俺が、咲希を殺した……。
『お前のせいだ』
…………。
『お前のせいだ』
『お前のせいだ』
……。
『お前のせいだ』
『お前のせいだ』
『お前のせいだ』
□■□■□■□
カタカタ、カタカタ、カタカタ。
キーボードを叩く音だけが聞こえる真っ暗な部屋の中で、私は独り曲を作り続ける。
「救わなくちゃ……お父さんの分も、みんなを……音楽で救わなくちゃ……」
うわ言のように呟きながら、メロディを刻む、コードを打ち込む、音を奏でる。
「……よし、これでこの曲は完成、次の曲を……ん?」
今しがたできた曲を動画投稿サイトに投稿し、新しい曲の作成に入ろうとした時、ひとつの動画が目に入った。
「へぇ、私の曲をピアノで弾いてくれたんだ」
まだ動画投稿を初めて日の浅い私の曲を気に入って、こうしてピアノで弾いてくれたというのが嬉しくて、動画の再生ボタンを押す。
軽い気持ちで押した再生ボタン。
この時の衝撃を、私は一勝忘れないだろう。
「…………この音」
最初の1フレーズを聞いただけで、伝わってきた。
この人……私と"同じ"だ。
後悔、絶望、不信……そしてほんの少しの希望。
きっとこの人は、自分が嫌いで仕方がないんだろう。
自分に誰かを想う資格なんて、あるはずが無い……でも、それでも……そんな気持ちが、伝わってくる。
「投稿者は、シュバル……あ、これが初めての投稿なんだ」
気が付いた時には、もう行動していた。
DMで動画を見せてもらったことを告げ、すごく似ていると感じたこと、私の作った曲の伴奏をお願いしたい旨を送る。
この人をこのままにしてはいけない、何故か強くそう思った。
「受けてくれるといいな……」
テロン
久しく聞いていなかったメッセージ受信の電子音。
思っていたよりも早く聞こえてきたそれに心臓が跳ねる。
送られてきたメッセージを恐る恐る開くと。
『メッセージありがとうございます。私もあの曲を聞いた時、「あ、同じだ」と強く感じました。こんな曲を作る人の作曲活動に携われるなんて光栄です。是非よろしくお願い致します。』
と、書いてあった。
「よかった……それじゃあ時間の合う時がどこか聞かないと」
何回かメッセージをやり取りし、擦り合わせを行う。
幸い向こうも何時でもいいらしく、今から4時間後の深夜1時に改めて話をする事になった。
「よし、それじゃあ……25時、ナイトコードで」
□■□■□■□
咲希が亡くなったあの日から声が出なくなってしまった俺は、まず決まっていた神山高校への入学を辞退した。
どうしても高校なんてものに行く気になれず、ただ家でピアノを弾き続ける毎日。
ピアノを引いている時だけは、心が落ち着いていられた。
まるで隣に咲希がいるかのような、そんな気持ちになれるのだ。
そんなある日、クラシックを弾くのにも少し飽きてきた俺は、たまには違う曲も弾いてみようかと動画投稿サイトで適当な楽曲を聞き漁っていた。
そこでふと、ひとつの動画が目に止まる。
真っ黒のサムネイルに『憧憬』という簡素なタイトル、再生回数も1000回にいかない程度と、普段なら当たり前のようにスルーしていた動画だった。
しかしその動画が、どうしても目に留まる。
安い言葉で言えば、運命というのを強く感じたのだ。
衝動のままに動画を再生し、聞こえてくるメロディ。
「…………あ」
とうに機能を無くした筈の喉から、声が漏れた。
そして頭の中をぐるぐると巡る、幼い日の想い出。
"同じ"だ。
この曲を作った人は、きっと俺と同じなんだ。
何故かはわからないが、その確信があった。
「い……ひからくえは」
ずっと使っていなかった喉からはマトモな言葉を紡げない。
それでも数ヶ月ぶりに発する音に喉が悲鳴をあげるが、一切気にせずピアノへと向かう。
弾かなくては……この曲を、この音を……。
夢中になって鍵盤を叩く。
文字どおり叩くように、時には優しく撫でるかのように。
「う……ぐす……くっ……ぁあ…………」
気が付けば、頬を雫が伝っていた。
止まる気配の無い嗚咽を、溢れ続ける涙を感じながら、それでも奏で続ける。
「はぁ……はぁ…………」
1曲弾き終わる頃には、顔も、鍵盤も、ぐちゃぐちゃになっていた。
早く拭かないと、調律が狂ってしまうかもしれない。
妙に冷静になった頭でそう思い、雑巾を探す。
そうして後始末をしていると、ふと思った。
今の曲、投稿してみよう。
この曲を作った人に、こんなにも心を動かされたんだと、素晴らしい曲をありがとうと、そう伝えたくて……。
なんの宣伝もなく、初投稿でそんな事をしても、本人に届くかは分からない。というか届かない可能性の方が高いだろう。
それでも、そうしたかった。
曲の弾いてみた動画を出して1週間が経った頃、なんと作曲者のKからDMが届いた。
『私の憧憬を弾いていただいた動画、拝見しました。スポンジに水を垂らしたように、スーッと感情が伝わってくる、いい演奏でした。また、少し変な話ではあるのですが、あの演奏を聞いた時に私と似ていると感じ、こんな演奏をする人と、一緒に曲を作ってみたいと思いました。もしよろしければ、私の曲の伴奏を弾いていただけないでしょうか』
嬉しかった。
……あぁ、嬉しかったんだ。
あの気持ちが、想いが、この人にも伝わった。
そして同時に、やはりとも思った。
この人も、似ていると感じたのか。
すぐに是非お願いしたいという返事を返し、何度かメッセージのやり取りをする。
そして深夜1時、改めて作曲の話に移るということになった。
……俺は、きっとこの出会いを死ぬまで忘れないだろう。
咲希が亡くなった時、何度も死のうと思った。
でも……怖くて出来なかった。
妹のためなら何でもするなんて口では行っておきながら、遠くへ行ってしまった妹を追いかけてやることすら、俺には出来なかったんだ。
あの曲を聞いた時に、何よりも強く伝わってきた『誰かを救いたい』という想い。
きっとKという人物は、俺にもその想いがあると思って声をかけてくれたんだろう。
だけど……だけど…………。
俺は、『救いたい』のではなく……『救われたい』と、そう想ってしまっている。
本当に……俺は、俺が嫌いだ。
『では……25時、ナイトコードで』
想いを隠し、メッセージを送る。
テロン
無機質な音が、昔よりもに広く感じる部屋に響いた。
《セカイの紹介》
咲希を救うことが出来なかった司くんが、自分のせいで咲希が死んでしまったと思い悩み、声が出せなくなったセカイです。
時間的にはまふゆと奏が出会う前、なので司くんがニーゴ最初のメンバーになります。
ちょっとこの話気に入りすぎてるので、もしかしたら続くかもしれません。
感想や好評、感想にここすきや感想とか感想なんかお待ちしてます!!!