横須賀鎮守府の日常   作:イーグルアイ提督

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日本海軍92便

ある日の昼下がり、少しだけコ-ヒ-を飲みながら休憩していた。

尋問中のヲ級は何を聞こうと「くっ殺せ!」しか言わずしびれを切らしたいそかぜがガチで殺しそうになっていた。

最近、やり方を変えたらしいが倉庫の中からは「んほぉぉぉぉぉ!!!!」とか妙な叫び声がするらしい。

想像したくない。

 

「さて、休憩も終わりにしようかな」

 

今日は滑走路に降りてくる航空機の数も少なく、静かだ。

 

「ヲ級さん・・・大丈夫ですかね・・・」

 

電は心配そうに倉庫のほうを見る。

たぶん、大丈夫じゃない。

 

「まぁ・・・死にはしないと思う・・・」

 

なんて話しているとドアがノックされた。

 

「はい?どうぞなのです」

 

電がドアを開けると、本部の将校がいた。

 

「あら?少将殿?」

 

「いきなりですまん大佐!航空機の操縦は出来るか?!」

 

若干息を切らしていた。

そんなに走ってきたのか。

 

「出来ますけど・・・どうしたんですか?」

 

「それが、佐世保に急きょ出張の予定が出てな・・・飛行機のチケットも取れなかったんだ」

 

「ああ、そういうことですか。ちょうど複座のストライクイ-グルありますけど・・・」

 

「いやそれが・・・輸送する物資も大量にあって・・・」

 

「物資?」

 

「いろいろあるんだが・・・武器弾薬に食料と・・・」

 

「でも今輸送機空いてたかな・・・」

 

今いる航空機のリストに目を通す。

電はその間にお茶を入れてくれていた。

 

「どうも、いたただくよ」

 

「はい、お疲れのようなので」

 

「提督にずいぶん良くしてもらってるんだな」

 

「え?どうしたのです?」

 

「顔だよ、ここに来るまでにいろいろな艦娘に会ったが皆辛いって顔はしてなかったからな」

 

「えへへ・・・」

 

電は少将と雑談をしていた。

んで俺は・・・

 

「物資輸送が可能な航空機は747しかないですね・・・それでも良ければ飛ばしますが・・・」

 

「おお、ジャンボか!しかし君免許はあるのかね?」

 

「一応、昔に2か月ほど民間航空会社に勤めてましたからね。DC-10と747の免許を持ってますよ」

 

「ほおDC-10もか」

 

「・・・もう二度と操縦したくないですけどね・・・」

 

あの機体デフォルトで欠陥があるから・・・

貨物室のドアとか貨物室のドアとか貨物室のドアとか。

 

「それで、いつごろ離陸できる?」

 

「副操縦士が居ないとどうにも・・・一応、航空機関士が必要ない型ですが・・・」

 

「副操縦士の仕事・・・できる娘はいないかね・・・」

 

「ん~・・・電・・・でも免許ないからな・・・」

 

本当なら隣の席に座らせてやりたいが・・・

免許がない以上、それは出来ない。

 

「私じゃ無理ですかね・・・」

 

「無理ではないんだが・・・」

 

「・・・責任は私が取る、乗せてやれ」

 

少将は少しため息をついて言った。

まぁ・・・そういうなら・・・

一瞬頭に児童操縦という単語が過ったが気のせいだと信じる。

 

「じゃあ離陸前点検と積み込みがありますので3時間ほどお待ちください」

 

「了解したよ、機体に乗り込んでおくのはいいかね?私は昔からジャンボが好きでね・・・」

 

「そういうことでしたらコクピットも開けときましょうか?」

 

「いや、もし何かのスイッチに当たるとまずいからな、やめとくよ」

 

そういうわけで代理をアンドロメダに任せて格納庫へ急ぐ。

この747が飛ぶのは2か月ぶりだ。

 

「フレアもIRジャマ-もないが・・・」

 

一応基地防空隊のF-15が2機護衛に着くことになっている。

ただ・・・深海棲艦の艦載機の前では的が小さすぎてどうなるか・・・

 

「機材は・・・異常は無さそうだな」

 

目視と触ってみて点検する。

どこにも異常は見当たらない。

 

「よし、行こうか」

 

電には先にコックピットに乗り込んでもらっている。

そういえば、戦闘機以外に乗せるのは初めてだな・・・

喜んでくれるといいが。

 

「じゃあ、操縦頼むよ機長殿」

 

「航空会社の時はまだコパイでしたけどね」

 

「まぁ、必要な訓練は全部受けているんだろう?」

 

「そうですね・・・空軍時代にもいくらかこの747は操縦しましたからね」

 

「じゃあ大丈夫だ、快適な空の旅を楽しむよ」

 

「了解しました、少将殿。ところでほかに乗る方は居ないんですか?」

 

「ああ・・・私の秘書がもうちょっとで到着する予定だよ。今日は葛城だったかな」

 

「空母が航空機で空の旅って言うのも新鮮ですがね」

 

「ああ、もう下まで来てるらしいがプロペラがついてないのに飛ぶわけない!って必死に訴えてるそうだ」

 

少将は苦笑いだった。

まぁレシプロを見慣れた艦娘からすればタ-ボファンエンジンなんて分からないだろう。

 

「じゃあ私は操縦席に居ますので」

 

「ああ、もしかしたらお邪魔するかも知れないよ」

 

「シートベルトサインが消えてからにしてくださいね」

 

「子供じゃないんだ、分かってるよ」

 

そんな冗談を飛ばして操縦席に入る。

中では電が目を輝かせていた。

 

「司令官さん!高いのです!」

 

「だろ?」

 

俺はそんな電のほほえましい姿を見ながら席に座る。

 

「さてと、管制に連絡しようか」

 

管制に周波数を合わせて通信する。

コ-ルサインはジャパンネイビ-092だ。

日本海軍92便と言う意味だ。

 

「クリアランスデリバリ-、ジャパンネイビ-092。経路と高度の承認を要請」

 

<<ジャパンネイビ-092、佐世保鎮守府までの飛行を、「MITOH1出発経路」に続き、飛行計画どおりの経路経由で承認します。巡航高度は18,000フィート、レーダーコードは3225です。>>

 

「ジャパンネイビ-092、了解」

 

クリアランスももらった

エンジンスタ-トだ。

 

「電、チェックリストを頼む」

 

「チェックリスト・・・あ、これですか?」

 

「そうそうそれ、読み上げてもらえる?」

 

「はい、了解なのです!えっと・・・バッテリオン」

 

電の読み上げ通りにスイッチを押していく。

 

「APUスタ-ト」

 

APU・・・補助動力装置の動く音が聞こえてくる。

 

「空調オン」

 

外の太陽光で温まった機内に少し冷たい風が送り込まれる。

その後も淡々と電の読み上げ通りにエンジンスタ-トの手順を踏む

 

「エンジン・・・」

 

「あ、エンジンはプッシュバック中だよ」

 

「そうなのです?」

 

「ああ、だからプッシュバックが始まったらな」

 

後はスタ-タ-スイッチを押すだけだ。

管制にプッシュバック許可を要請する。

 

「横須賀グランド、ジャパンネイビ-092。プッシュバックを要請」

 

<<ジャパンネイビ-092、滑走路17に向けてプッシュバックを許可します>>

 

「よし、プッシュバックも始まった、エンジンスタ-トしようか」

 

「はい!」

 

スタ-タ-スイッチを押してエンジンを始動させる。

この低音から高音に変わっていく音がたまらない。

 

「エンジン4正常に始動・・・ほかも大丈夫そうだな」

 

4発のタ-ボファンエンジンはご機嫌に動いていた。

 

「よし離陸前チェックだ」

 

「はい!え~っと・・・フライトコントロ-ル」

 

「チェック」

 

「飛行計器」

 

「チェック」

 

「フラップを離陸位置にセット」

 

「チェック」

 

滞りなく離陸前チェックリストを読み上げ、確認していく。

 

「離陸前チェックリスト、コンプリ-ト」

 

「よし、管制に離陸許可をもらおうか」

 

鎮守府の飛行場は少しせまく、格納庫から滑走路まではほぼ直進だ。

離陸は陸側の17番滑走路から行い、着陸は海側の34番から行う。

滑走路をそのまま端まで走ればすぐに格納庫と駐機場に着く。

 

「横須賀タワ-、ジャパンネイビ-092。周波数を切り替えた」

 

<<ジャパンネイビ-092、風160°から5ノット、滑走路17、離陸支障ありません。>>

 

「離陸支障なし、ジャパンネイビ-092」

 

滑走路に入り、エンジン出力を徐々に上げる。

 

「80ノット」

 

電は事前に教えた通りに速度を読み上げていく。

 

「V1」

 

離陸決定速度に達した。

ここまで何も異常はない。

 

「ローテート」

 

機首上げ速度だ。

俺はゆっくりと操縦桿を引き起こす。

前輪はすぐに滑走路を離れた。

その数秒後には後輪も離れ、高度は上がり始める。

 

「V2」

 

機体は宙に浮きあがり、海の上に出た。

 

「ポジティブレ-ト、ギアアップ」

 

ランディングギアを格納する。

速度も高度も順調に上っていく。

 

「フラップス、アップ」

 

ここでフラップも格納する。

航空機はもうフラップで揚力を増やさなくても自力で高度を上げていける速度だ。

 

「離陸後チェックリスト、ランディングギア、アップ。フラップ

アップ」

 

すべて正常だ。

警報も表示されていない。

 

「離陸後チェックリスト、コンプリ-ト」

 

<<ジャパンネイビ-092、周波数120.8Mzで東京ディパ-チャ-にコンタクトしてください>>

 

「ジャパンネイビ-092、切り替える」

 

周波数を羽田空港のレ-ダ-管制室に切り替える。

 

「東京ディパ-チャ-、ジャパンネイビ-092。現在1,200フィートから18,000フィートに上昇中」

 

<<ジャパンネイビ-092、こちらはレ-ダ-で貴機を補足しました>>

 

「了解」

 

さて、ある程度飛行も安定した。

オ-トパイロットに切り替えよう。

 

<<ジャパンネイビ-092、フライトレベル180で飛行してください>>

 

「ジャパンネイビ-092、了解」

 

高度維持装置、ナビゲ-ション保持スイッチ、速度維持スイッチ

オ-トスロットル、自動操縦マスタ-スイッチ・・・よし、全部OK。

 

「電、操縦桿を握ってもいいが曲げたり引いたりするなよ」

 

「何か起こるのですか?」

 

「操縦桿にある程度の力がかかるとオ-トパイロットが切れるんだ」

 

「なるほど・・・そんな事があるのですか・・・」

 

電は操縦桿よりも計器の方がいいようだ。

すると後ろから轟音が聞こえてきた。

 

<<92便、こちら鎮守府航空隊>>

 

「こちらジャパンネイビ-092、目的地まで頼むよ」

 

<<お任せください、提督殿>>

 

「コールサインは?」

 

<<イーグル1とイ-グル2です。F-15Cが二機、武装はM61、サイドワインダ-が4、アムラ-ムが4>>

 

「対空目標絶対に殺すマンだな、頼もしい」

 

そんな冗談を飛ばしながら飛行計器に目を配る。

特に異常もなく10分程度で高度18000Ftに到達した。

 

「シートベルトサインオフっと・・・電、もう席を立ってもいいぞ」

 

「あ・・・じゃあちょっとお手洗い行ってくるのです」

 

「はいよ。あ、そうだ、返りにCAから飲み物を何か受け取って来てくれないか」

 

「はい、わかりました」

 

電が操縦室を出るのと入れ違いで少将と葛城が入ってきた。

 

「すっごーい!」

 

「この機体のコクピットがもう懐かしいなんてな・・・」

 

少将は懐かしいといった目で計器を眺めていた。

葛城は子供のようにはしゃいでいる。

 

「最初プロペラもないのにどう飛ぶのかと思ってたけど・・・プロペラなんかよりも乗り心地最高だわ!」

 

「はは、そりゃよかった」

 

「ねぇ、横須賀の提督さん、操縦桿離してて平気なの?」

 

「ああ、これは自動操縦って言って機械が飛行機を飛ばしてるんだ」

 

「ふ~ん・・・機械が機械を動かすってなんか変ね」

 

「それだけ航空機は進化したってことだよ」

 

少将はコックピットの計器を眺めながら葛城にそう言った。

 

「大佐、ちょっと副操縦士席に座っていいかな」

 

「ああ、はいどうぞ」

 

「あ!ずるい!」

 

「葛城もあとで座らせてもらえ。大佐・・・じゃない、機長に許可をもらってな」

 

「だからホントは機長までなってないですってば」

 

「経歴だけだと機長になってもおかしくないがな」

 

「んな事ないですよ」

 

なんてコクピットで話していたら電が帰ってきた。

 

「今帰ったのです!あれ、みなさんいらしたんですか」

 

電はコ-ヒ-を二つ持ってきていた。

 

「ああ、今葛城が副操縦士席にいるから少し待っててやってくれ」

 

「はい!」

 

葛城は副操縦士席で少しはしゃいでいた。

 

「空を飛ぶってこんなに気持ちいいんだ・・・」

 

「艦載機の気持ちが分かったか?」

 

「うん!私も飛行機の免許取ろうかな・・・」

 

「お?だったらそこの鬼教官に教えてもらえ」

 

少将は俺を指さして言った。

 

「え、俺!?」

 

「冗談だよ、冗談。まぁホントに免許取るって言いだしたら操縦を見てやってくれ」

 

「見てやれって言ってもインストラクターの資格は持ってないですから」

 

「そうなのか」

 

コックピットではそんな空気でなごんでいた。

すると・・・

 

<<警告、アンノウンの接近を感知!>>

 

「マジかよ・・・!電、席につけ!少将も席についてシ-トベルトを」

 

「わ、わかった」

 

平凡な空気が一気に緊張に変わる。

乗っているのは戦闘機ではない、鈍重な大型旅客機なのだ。

 

「イーグル1、2!こっちは高度を10000ft以下に下げる!雲に潜るぞ!」

 

<<了解!1をそのまま護衛に着け2が迎撃に向かいます!>>

 

「分かった!」

 

自動操縦を切り、手動に切り替え高度を一気に下げる。

飛ぶのは無視界状態の厚い雲の中・・・バ-ディゴ、空間識失調を起こすかもしれない。

頼れるのは計器のみだ。

 

「電、いいか。俺の指示通りに頼むぞ」

 

「りょ、了解なのです!」

 

「まずはそこのスイッチをいじってスコ-ク77に合わせろ!」

 

「は、はい!」

 

スコ-ク77・・・それは緊急事態を表すコ-ドだ。

管制官が一目で緊急事態だと分かる。

 

<<ジャパンネイビ-092、こちら東京コントロ-ル。何か非常事態を宣言しますか?>>

 

「ジャパンネイビ-092!未確認航空機に追跡されている!交戦の可能性あり!」

 

<<未確認・・・了解しました!付近の航空機を退避させます。陸軍航空隊に連絡は・・・>>

 

「こっちの護衛機一機が迎撃に向かった!」

 

<<了解、被弾はありますか?>>

 

「まだない!」

 

<<こちらイ-グル2!未確認機は深海棲艦の戦闘機3機!速度400ノット!>>

 

「了解!」

 

あと少しで雲の中・・・!

その時、一瞬ニアミス警報が鳴る。

 

「後ろか!!」

 

ただ敵機の方が早くオ-バ-シュ-トしたようだった。

だが次はそうもいかない。

 

<<ちくしょう・・・!ミサイルが撃てない!!>>

 

距離的に熱源ミサイルしか撃てない。

アムラ-ムを撃つには近すぎる。

 

「もうすぐ雲の中・・・!!」

 

その時、機体が少し揺れ、貨物室の気圧が下がったという警報が鳴り始める。

 

「司令官さん!!」

 

「分かってる!!」

 

すぐに管制に連絡する。

 

「メーデー!メーデー!!貨物室に被弾あり!気圧が下がっている!!」

 

<<被だ・・・りょ、了解しました!高度を下げて・・・>>

 

「無理だ!!雲に隠れて迎撃を待つしかない!!これ以上下げたらいい的だ!」

 

<<客室に被弾は!>>

 

「確認できない!」

 

<<了解、火災に注意!!>>

 

火災に注意と言われた時だった。

火災警報が鳴り始める。

貨物室で発火したのだ。

火災位置は前方デッキ・・・武器弾薬は後部だが

前方デッキには紙などの燃えやすいものがあった。

曳光弾を被弾して発火した可能性がある。

 

「前方デッキに火災!」

 

<<ほかに被害は!>>

 

「まだ確認できない!」

 

マズイ・・・飛行中の火災は大惨事を招く。

この機体にはスプリンクラ-はない。

代わりに貨物室内の気圧をさげる事ができる装置がある。

 

「貨物室内を減圧する!電!操縦桿を少し保持しててくれ!」

 

「は、え!?わ、わかりました!」

 

スイッチを押して貨物室内の気圧を下げていく。

これで空気は外に吸い出され沈下するはずだ。

だが・・・

 

「けほっ!これ、煙じゃ・・・!!」

 

「しまった・・・!」

 

操縦室内に煙が充満し始める。

この機体は煙を感知するとエアバックを開き飛行に必要な計器を見えるようにするシステムが搭載されていない。

その改修に出す前だったのだ。

 

「もっと早くやっとくんだった・・・!」

 

「司令官さん!!操縦桿が・・・引いても機首が上がらないのです!!」

 

「何・・・!?」

 

計器を見ると油圧が下がって行っている。

油圧ポンプにも被弾していたようだった。

俺は急いで自動操縦のスイッチを入れる。

この機体は油圧システムと自動操縦の電気回路は分かれているため自動操縦は可能なはずだ。

煙はまだそこまで濃くはない。

 

「よし、機体が安定した!」

 

ただ急いで着陸する必要がある。

それに客室の状況が心配だ。

 

「イーグル2!状況は!」

 

<<敵戦闘機一機を撃墜!>>

 

「分かった!イ-グル1、迎撃に向かってくれ!」

 

<<え、でもエスコ-トは・・・>>

 

「大丈夫だ!それよりも戦闘機を!」

 

<<了解!>>

 

前を飛んでいた轟音が消える。

この機体に防空レ-ダ-がないのがもどかしい・・・

 

「電、客室の状況を見てきてくれ」

 

「了解しました!」

 

「そこのガスマスクつけて行けよ!」

 

「はい!」

 

電は席を立ち、ドアを開けた。

すると、ものすごい量の煙がコクピットに流れ込む。

 

「しまった・・・」

 

「煙が・・・!様子を見てくるのです!」

 

「分かった、そこのガスマスクも二人分持って行ってやれ!」

 

「分かりました!」

 

後ろを振り向いた時に酸素マスクが降りているのは確認できた。

二人がそれをつけている事を祈る。

 

「これで操縦室に一人きりか・・・」

 

しかも煙は客室側から流れ込みコクピットを満たす。

幸い、火災自体は鎮火しているが・・・

 

「近場の空港に引き返さないと・・・」

 

地図も何もほとんど見えない。

ただ、10㎝弱のところまで近づけば計器は視認できる。

 

「ジャパンネイビ-092!近くの空港に緊急着陸を要請したい!」

 

<<ジャパンネイビ-092、そちらの東190㎞に関西国際空港がある、そちらに緊急着陸を!>>

 

「了解!」

 

周波数を関西国際空港に合わせる。

絶対に地上に下ろす!

 

<<ジャパンネイビ-092、こちら関西空港>>

 

「ジャパンネイビ-092!」

 

<<滑走路06Lを開けました!いつでも着陸してください!ILS周波数108.7MHz!>>

 

「了解!」

 

なんとか見える視界で機首方位を合わせる。

電は客室に行ったきり帰ってこない。

言いようのない不安に襲われるがそれよりも着陸させる事を優先する。

 

<<こちらイ-グル隊!すべての敵戦闘機撃墜を確認!>>

 

「了解!こちらはもう視界がゼロだ!速度と高度、方位を前を飛んで教えてくれ!」

 

<<視界ゼロ・・・コクピット内がですか!?>>

 

「そうだ!雲から抜けているのか抜けてないのか分からない!!」

 

<<了解!あと1分で前に出ます!>>

 

「頼む!」

 

この一分が長い・・・

すると後ろから足音が聞こえてきた。

 

「電か!?」

 

「戻りました!お二人ともなんとか無事です!」

 

「分かった、席に戻れるか?!」

 

「それがほとんど見えなくて・・・わっ!!」

 

躓いたんだろう。

その時、エンジンからおかしな音がした。

出力・・・いや、エンジンが停止した音だ。

 

「はわっ!!!何かスイッチ押しちゃったのです!」

 

「待ってろ確認する・・・」

 

電が押したスイッチあたりを見ると、第三エンジンの燃料がカットされていた。

この煙のなかでは再起動は難しい。

 

「電、客室に戻れるか?」

 

「はい・・・」

 

申し訳なさそうな声。

だが、この視界の中では転んでも仕方ない。

俺は責めはしない。

 

「大丈夫だ、客室に戻ってシ-トベルトを絞めてろ」

 

「はい・・・!」

 

また足音が遠ざかる。

 

<<提督!現在高度6000ft!なおも下がってます!>>

 

「何!?」

 

よく見ると高度維持装置のスイッチが入っていない。

押し忘れていた。

 

「高度はもう6000で維持しよう・・・」

 

<<方位はこのまままっすぐ行けば関空です!速度300ノット!>>

 

「了解!」

 

速度維持装置をいじり、速度を160ノットに減速させる。

手さぐりでフラップも探し、一段階下げた。

 

<<あと100㎞です!>>

 

「分かった・・・!」

 

その時、何かの警報が鳴り始める。

何の音か思い出す。

 

「まさか・・・」

 

計器に5㎝まで近寄って見る。

そこには・・・

 

「フラップが出てない・・・」

 

<<何ですか!?>>

 

「フラップが下がらない!!」

 

<<そんな・・・>>

 

俺は急いで速度維持装置を250ノットに切り替える。

フラップがない。

そうなると低速飛行時に揚力が足りず、翼から気流が剥離し失速することになる。

 

「この速度で下すか・・・それとも急減速で下すか・・・」

 

この速度で下せるか・・・

それともフラップ無しで失速しないぎりぎりを行くか・・・

または滑走路の上空ぎりぎりを飛んで、急減速で無理やり下すかだ。

どれも非常に危険だ。

 

「手動なら行けたが・・・」

 

速度が速くても、関空の滑走路は長い。

ぎりぎり停止できるだろう。

だがILSを使った着陸では・・・

いや、だがここはILSを使う。

どれも着陸前に自動操縦を切らねばならない。

ILSで着陸なら接地後に切っても問題はないはずだ。

本来は着陸前に切るのだが・・・

 

「やるぞ・・・」

 

速度180ノットまで原則する。

機体は若干の迎え角を取り始める。

 

<<空港まであと50km!>>

 

その時、機体がグライドスロ-プに乗った。

ILSの周波数もキャッチしモ-ルス信号のような音が鳴る。

 

「ふぅ・・・」

 

一安心だ。

だが以前として前は何も見えない。

高度は徐々に下がっていく。

 

『2500』

 

「ギアダウン!」

 

2500ftを示す音声が鳴る。

速度は時速にして360㎞。

通常の着陸よりかなり速い。

ランディングギアは正常に降り、ロックしてくれた。

 

「無事に地上に降りてくれ・・・!」

 

エンジンは3基しかないが、この機体はエンジン一基でも飛べるように設計されている。

なんとかなる!

 

『1000』

 

高度1000ft

地上から300mの所にいる。

高度が100ft以下になれば機体は滑走路端に差し掛かるはずだ。

その時にオ-トパイロットを切り、エアブレ-キを展開する。

急減速で地面に叩き付けられるかもしれない。

 

『500』

 

500ft

俺は準備を始める。

もうちょっとだ。

 

『400』

 

もう地表まで120mだ。

幸い失速警報はなっていない。

 

<<ジャパンネイビ-092!フラップが出ていません!>>

 

「ジャパンネイビ-092、フラップは故障により下げられない!!」

 

管制とそんなやり取りの中、200ftを切る。

すると・・・

 

『TooLow,Flaps.』

 

フラップが出ていないというGPWSが作動する。

 

「んなこた分かってんだよ・・・!!」

 

機械に当たっても仕方ないが・・・。

 

『100』

 

100ft・・・!

 

「オートパイロットカット!エアブレ-キ展開!」

 

その時、いきなり降下率が下がり

 

『WhoopWhoopPullup』

 

機首を引き起こせという警報がなったと同時に激しく揺さぶられた。

車輪が接地したのだろう。

 

「止まれぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」

 

一人、コクピットで叫んで逆噴射、フットブレ-キをかける。

 

<<滑走路から外れるぞ!!>>

 

「・・・!」

 

護衛戦闘機の警告のあと機体が激しく揺れ始める。

滑走路を外れ、芝生に突っ込んだ。

 

<<提督!逆噴射を切ってください!!>>

 

言われたように逆噴射を切る。

すると、その数秒後機体は停止した。

 

「・・・止まった・・・」

 

一瞬放心状態になる。

だがすぐに我に返り、緊急脱出の手順を踏む。

 

「エンジン・・・カット!」

 

その他の手順も踏み、客室に移動する。

視界は30㎝先も見えない。

 

「全員降りるぞ!!」

 

「げほっ!そうだな!」

 

ドアをこじ開けると脱出スロ-プが出てきた。

俺は全員の脱出を確認してからスロ-プを下りて、機体から離れた。

まだ機体からは白煙が立ち上っている。

 

「ここまで逃げたら・・・」

 

全員の姿も確認し再び機体のほうを見ると、炎が貨物室のドアを吹き飛ばし噴出していた。

どうやら、低空に降りてきた時に火災が再発していてそれが弾薬に引火したようだった。

 

「はぁ・・・運がいいのか悪いのか・・・」

 

地上に降りて、全員放心状態だった。

だが、少し煙を吸っただけで負傷者無し。

強いて言えばこけた時に電が手に怪我をしたくらいだった。

 

「司令官さん・・・」

 

「ん?なんだ?」

 

「生きて・・・ますよね」

 

「ああ、俺が全員連れて帰った」

 

電はそのまま俺に抱き付いてきた。

少将も後ろで葛城に抱き付かれため息をついていた。

 

「とんだフライトでしたね」

 

「ああ、気分は最高だがな」

 

「もう飛行機いやだぁぁぁ!!うわああああああんん!!!」

 

「・・・葛城は深い傷を負ったみたいだがな」

 

「・・・・」

 

大泣きする葛城を横目で見ながら俺も生きていると実感し深いため息をついてしまった。

目の前では747の大きな機体が炎に包まれていた。

 

 

 

 

 




我ながら長いとか思った。
疲れたぜ・・・
面白いかどうかは知らんがな!←
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