5月なのにもう暑い。
心の中で嘆きながら鎮守府を巡回していた。
今日は第六駆逐隊は演習で秘書をネイサン・ジェームズに任せていた。
「これ終わったらアイスでも食いに行くか・・・」
「アイスねぇ・・・冷たいビールのほうが私はいいかな。あとタバコ」
「そこは可愛らしくアイスで喜べよ」
「・・・わーい!私アイス大好きー!提督さんカッコイイ☆」
ジェームズは普段のキャラ・・・というか初対面の時のキャラを更にぶりっ子にしたような感じになった。
たぶんコイツの事を何も知らなかったら可愛いと思えただろう。
というか額に青筋が浮かんでる。
あと視線に殺意を感じる。
「誰がそこまでしろと言った・・・あと怖い」
「可愛い女の子に向かって怖いとは聞き捨てならないよ」
「拘束した人間の膝に22口径とは言え10発以上の弾丸ぶち込むヤツのどこが可愛いんだ」
「22口径っていうちっちゃい弾丸使うあたり女子力高いとか思わないの?」
「女子力(物理)か女死力の間違いだろ・・・」
「まったく提督ってホント電以外には冷たいよね」
「そうか?」
「まぁ、私はそれくらいの扱いのほうが楽でいいんだけど。で、あとここだけでしょ?」
「あぁ、ここで最後だな」
「じゃあささっと終わらせてアイスでも食べに行こうよ。提督の奢りで」
「お前・・・」
そう言いながら俺は戦闘指揮所の扉を開ける。
指揮所とは言え、ここは基本的に鎮守府近海における艦娘以外の部隊の指揮を行っている。
また展開している艦娘がどこにいるのかを表示しているモニターなどがある。
艤装に取り付けた発信機の信号を衛星が拾ってモニターに表示している。
「どうだ調子は」
「あ、提督。バッチリです。」
そのモニターの前に座っている青年はヘッドホンを外して俺の方を振り向く。
「演習のほうはどうだ?」
「現在、ターゲットドローンを使った対空戦闘中ですね」
「そうか」
今回の演習は鹿島の練習巡洋艦として新規配置艦娘に教育が出来るようにさせることも目的としている。
「ま、あとはよろしくな」
「了解です」
俺はそう言って指揮所を出た。
ジェームズは外で呑気にタバコを吸っていた。
「終わり?」
「あぁ、これで終わりだな」
「じゃ、行こっか」
「どこにだ?」
「アイス食べに行くんでしょ」
「あー・・・そんな約束してたな」
「提督の奢りだからね」
「・・・はいはい」
何となく甘い物が楽しみという雰囲気がジェームズから出ていた。
何だかんだ女の子らしい所もあるな・・・なんて父親のような気持ちで見ていた。
「どうしたの?」
「いや、何だかんだ女の子らしい所あるなって思ってな」
「・・・それどういう意味?」
「アイス食べに行くのが楽しみって雰囲気出てたから」
「そ、まぁいいよ。それよりも提督って私のこともしかしてあんまり女の子扱いしてない?」
「お前そういうの嫌いそうだからな、正直あんまり」
少し怒ってくるかと思ったが意外な返事が帰ってきた。
「さすが提督・・・なのかな、よく見てるね」
「あれ、怒るかと思ったのに」
「苦手だよ、私は女の子扱いされるのって・・・実際、見た目が女の子なだけで中身は実戦経験豊富なイージス艦だからね」
そういうジェームズは何か悲しそうだった。
「・・・きっとあんな事が無ければ私もマーフィみたいに女の子らしいというかお淑やかな性格になれたのかな」
「どうだろうな・・・正直、実戦経験豊富な現代艦艇って言ったらケストレルやアンドロメダ、いそかぜだしな。あとバーベットか」
「ケストレル達は戦争だったんでしょ?私のは人間の汚い部分とだよ。まぁ突っかかっても仕方ないけど・・・あ、間宮見えてきたよ」
「・・・苦労してんだな・・・」
ジェームズの記憶がどういうものかイマイチイメージがつかないからそういう返事しか出来ないが本人は気にしていないようだ。
なんて話してる間に間宮に着いた。
「いらっしゃいませー!あれ、提督?電ちゃんとじゃないんですか?」
「今日は演習行っててな・・・コイツにはまぁ仕事に付き合ってくれたしそのお礼って感じかな」
「ふふ、まるで親子みたいですね」
「・・・こんなお父さんやだ」
「・・・・・・地味に傷つくからやめろ・・・」
ジェームズに傷つけられた所で席に案内された。
席についてメニューを開いた。
「そういえば私、日本の和菓子って食べた事ないな」
「ありゃ、そうなのか?マーフィは抹茶と一緒に食べる和菓子は最高だって言ってしょっちゅう来てるらしいぞ」
「あー、そういえば何かそんな話してたかも」
「まぁ何でも好きなの行けばいいぞ、俺は適当に冷たいコーヒーでも飲んでるから」
「そう?じゃあこの和風パフェにしとこうかな」
「はいよ」
近くのボタンを押して注文を受け取ってもらう。
そういえば間宮に来る時は大体電とだったから違うヤツと来るのは何か新鮮だ。
「お待たせしました、注文は?」
「和風パフェとアイスコーヒー頼む」
「はい、了解しました」
間宮はメモを持って厨房に戻っていった。
「そういえばジェームズはマーフィと外出とかしないのか?」
「どしたの?急に」
「いや、何となく。一応姉妹だろう」
「ホント・・・一応・・・ね」
ジェームズは少し悲しそうな顔になる。
「私の中じゃちゃんと姉って記憶があるのに向こうにはそれがないからね・・・私の中じゃアーレイバーク級は100隻以上あるのに彼女の中じゃアーレイバークは60隻くらいしか居なくて彼女が1番最新型で妹もまだ作られてないんだから・・・」
「・・・まぁ、なんだ。記憶が違うとは言え、同じアーレイバークなんだ。それは違わないだろ」
「まぁね、だから向こうも私を妹のように扱ってくれるけど・・・やっぱり何だか私は妹キャラって感じでね」
「それはまだ慣れてないから・・・って言いたいけどな・・・まぁ、マーフィなら受け入れてくれるよ」
「知ってる、マーフィが優しいのは妹の私がよく知ってるよ」
ジェームズはちょっと笑顔でそう言った。
なんてしてる間に注文した物が届いた。
「じゃ提督、いただきます」
「はいよ」
パフェを味わいながら食べるジェームズを見ながらのんびりコーヒーを飲みふと、伝票を見た。
「ブフッ!!」
「うわぁぁ!?どしたの!?」
珍しくジェームズが大きな声を出す。
「あ、いや・・・うん、なんでもない・・・」
「なにそれ・・・まぁコーヒーかからなかったからいいけど・・・」
「・・・・・・」
高い。
すんごく高い。
俺のコーヒーが200円なのに対してパフェのお値段なんと3500円。
ちらっとメニュー表を見たら最高級抹茶に日本の中でもかなり有名な和菓子店が間宮用に作ってくれたアンコにその他もろもろ日本の味を詰め込んだ高級パフェだった。
幸いジェームズは味わいながら食べていてくれた。
時々幸せそうな顔をしている。
「さすが女子の食べ物・・・」
俺はそう呟いた。
〜ネイサン・ジェームズ〜
「は〜・・・ごちそうさま。何か日本の味って感じだったよ」
「は、はは・・・そりゃ良かった・・・」
「何でそんな顔が引きつってんのさ」
「気のせいという事にしといてくれ・・・」
「?」
なんだコイツ。
とか思いながらも美味しいものが食べれて満足だ。
「んで、まだお仕事あるの?」
「んや、今日はもういいぞ。外出するなりなんなりしてくれ」
「了解、んじゃねーごちそうさまー」
私は手を振って隊舎に帰る。
「どこか行こうかな・・・」
なんて考えながら隊舎の廊下を歩いているとトイレから何かの物音と苦しそうな声が聞こえてきた。
「・・・・なにこれ」
興味本位と何かあれば助けるつもりでトイレに入る。
耳を済ましていると・・・
「い、いそかぜ・・・誰か来ちゃうから・・・」
「ふふ、この時間ならこのトイレは誰も来ませんよ。それより昨日はお世話になりました」
「ちょ、ちょっとまっ・・・あっ!」
「ふふ、私のうらかぜ・・・・」
・・・・・・・・これが噂のいそかぜとうらかぜか・・・
しかも鍵かかってないし・・・
私はドアを開けた。
「・・・・・」
「・・・・・」
2人と目が合う。
「・・・・何してんの?真昼間から」
「・・・・・あの」
いそかぜが何か言おうとしている。
というか洋式便座にうらかぜ縛り付けて何やってるのこの人は・・・
「ここ・・・美味しいですよ」
「何言ってんの!?」
うらかぜの股間を指さしてそんな事を言う。
久々に人にツッコミを入れた気がする。
「・・・もういいや、この事は誰にも言わないから・・・」
「いやあの、せめて助けよう?!私昨日からずっといそかぜに部屋でも色々されててそろそろ過労気味なんだよー!」
「いや面倒臭いし」
「薄情者ォォォォ!!!」
そんな叫び声を無視してドアを閉めた。
「よし、私は何も見ていない。これで皆幸せだよね」
そういう事にしておこう。
というかしておきたい。
私は自分の部屋まで急いだ。
「・・・・・・もしかしてここも?」
部屋の中からはマーフィの声が聞こえる。
声というか喘ぎ声というか・・・
シンビルスクという名前も聞こえる。
確かマーフィに憑いてる潜水艦の幽霊だったような
私は意を決して扉を開ける。
「シ、シンビルスク・・・も、もうやめ・・・ジェームズ帰ってくるかも・・・」
『えへへー、ジェームズさんはお仕事中ですからね!昨日は出来ませんでしたし!』
「も、もうやら・・・やすませて・・・」
全裸のマイケル・マーフィさんが全裸の半透明で浮遊してる女の子にイジメられていた。
物凄い絵面だった。
私はそっと気づかれないようにドアを閉めた。
たぶん今私は泣きそうな顔をしてるかも知れない。
「・・・まともなのは私だけか・・・」
たぶん半泣きになっている。
私は逃げるように執務室に向かった。
〜提督〜
さーて・・・久々に平日なのに午後休みだし何すっかな。
なんて考えながら私物のパソコンを開く。
もし厳しいというか陸軍の連中がこれ見たら懲戒処分を食らうだろうな・・・
そのへん緩い海軍で良かった。
「うーむ・・・とりあえずFall〇ut4で111のアイツとなるか」
そう呟いてゲームを起動しようとした時誰かが入ってきた。
目線を上に上げると半泣きのジェームズが。
・・・あのジェームズが半泣き!?
「ど、どうした!?」
「て、ていとくぅぅ〜・・・もう部屋帰りたくない・・・」
今にも泣きそうな声で訴えてきた。
というかジェームズが泣くほどって何だ、マジで何があった。
「と、とりあえず落ち着け・・・ソファーでも座れ、な?」
「うん・・・」
嘘だろ。
普段のキャラが一変してか弱い女の子みたいになってる。
明日にはこの鎮守府に砲弾の雨が降るんじゃなかろうか。
「とりあえずコーヒーでいいか?」
「その前に涙ふけるもの欲しい・・・」
「涙?」
よく見るともう泣いてらっしゃった。
「ちょ、ちょいまて!えーっと・・・あぁ、これでいいや!」
今朝洗濯して汗でもかいた時に使おうと思っていたタオルを渡した。
「ありがと・・・」
涙声だ・・・。
「そんで、どうしたんだ?」
「マーフィが・・・うぇっ・・・」
「わぁぁ!!泣くなって!」
「うぇぇ・・・私だって泣く時には泣くのにぃぃ・・・」
「分かった、分かったから。泣きやめ。な?」
「もうちょっと待って・・・ぐすっ・・・」
「・・・お前が泣くほどって何があったんだ本当に・・・」
俺はそれが心底心配だった。
あのジェームズだ。
人の膝に22口径ぶち込んでも動じないジェームズが・・・ってこれはさすがに失礼か。
「あのね・・・」
「お、おう・・・」
「部屋に帰ったら・・・マーフィが裸で・・・」
「オーケー、もうあとは何が起きたか全て理解した」
「ほんとに・・・?」
「あぁ・・・全裸のシンビルスクも居てマーフィがめちゃくちゃされてたんだろ」
「・・・みてたの・・・?」
「違うわ!」
それにしても自分の姉が目の前でめちゃくちゃされてる所を見たら泣きたくなるだろう。
「・・・落ち着くまでここに居ていいぞ・・・あと2時間は終わらんからな・・・」
「・・・」
ため息を付きながら滑走路を眺めていた。
そろそろ電達も帰ってくる。
「提督・・・」
「ん?」
振り向くと思いっきりジェームズに抱きつかれた。
「んんんんん!?!?」
「今はこうしてたい・・・」
「え、あー・・・どうすりゃいいのこれ・・・」
無下に引き離す訳にもいかない・・・
とりあえず撫でてやるか・・・
「ん・・・」
「落ち着くか?」
「うん・・・」
なんてしてる時だった。
「司令官さん!演習無事終了なので・・・す・・・」
「・・・・・」
俺は多分今物凄い顔をして固まっていると思う。
そして電も固まっている。
俺の鳩尾付近には泣きながら抱きつくジェームズとその頭を撫でてる俺の手。
誤解だと言えばいいのだが完全にお互い硬直していた。
「し」
「し・・・死!?」
俺は死を確信していたら・・・
「司令官さんの浮気者なのですぅぅぅ!!!びぇぇぇぇぇ!!!」
「待ってくれ違ァァァァァう!!!!」
遠のく電の声と俺の必死に誤解だと訴える声が虚しくも鎮守府の司令部に響いた。
何かキャラ崩壊起こしてるような(