〜ネイサン・ジェームズ〜
「あーつーいー・・・」
「・・・うるさいわよ」
「だって暑いんだし仕方ないじゃん・・・」
南方海域の哨戒任務を命じられて沖縄近くまで来たのはいいが暑い。
何せ陽の光を遮るものが何も無い海の上。
日光が痛いくらい眩しい。
「せっかく南の海なんだし楽しまないと損よ」
「じゃあ冷えたビールとおつまみ。あとタバコ」
「・・・あなたね・・・あとタバコは吸ってるじゃない・・・」
なんて言いながら哨戒を続ける。
今回は私とマーフィ、アンドロメダ、金剛と大和だ。
哨戒任務にしてはちょっと物騒なメンツではある。
「あー・・・せめて冷たいフルーツが欲しい・・・」
「あ、そうだ。皆さん、ラムネ飲みますか?」
「ラムネ?」
そう言って大和はどこからかラムネを5本取り出した。
「いいわね、頂きましょ」
「大和のラムネは最高ネー!」
私も1本貰って飲む。
よく冷えたラムネはとても美味しい。
これだけでもだいぶ戦力回復になる。
「まだまだあるので欲しい時は何時でも言ってくださいね」
大和姉さんマジ天使。
なんてことを思いながら残りを飲み干した。
「美味しかった、ありがとね」
「いえいえ」
「大和ー!もう1本プリーズネー!」
金剛は2本目を飲み出していた。
ほのぼのした空気。
このまま何もなく任務が終わってほしいな・・・
なんて思ってた時だった。
こういう時に限って何も無かった試しがない。
レーダーに光点が映る。
速度や反射からしてミサイルの類いだ。
「ヴァンパイア、ヴァンパイア、ヴァンパイア!!飛翔体接近!」
「こっちも捉えた、迎撃?」
「ええ、迎撃するわよ!」
「了解。SM-3、諸元入力」
目標の速度は約400ノット。
巡航ミサイルあたりか?
「SM-3発射始め!」
私とマーフィからミサイルが発射される。
「データ解析します、お待ちください」
「了解」
「私達はどうするネ?」
「ちょっと待ってて。たぶん近くに敵艦がいる」
ミサイル攻撃をしてもいいが鎮守府の懐事情で燃料があっても弾薬がない。
ミサイルは私達の持ってる分しか当分ない。
「敵を見つけたら私達のレーダーで着弾観測をする。それでお願い」
「了解しました」
「了解ネー!」
その時、ヘッドセットを付けたアンドロメダが何かを受信した。
「ジェームズさん、通信です!」
「通信?」
「はい、こちらに向けてのです」
「なにそれ・・・いいよ、ヘッドセット貸して」
アンドロメダからヘッドセットを借りて付ける。
「・・・もしもし」
《どうだね我が艦隊の攻撃は!》
「いやどうだねって聞かれてもこっちに来る前に落としたけど」
《ふっふっふ・・・あれは我が艦隊の武装の中でも最弱よ・・・》
「あ、そ・・・」
何かすごく面倒くさそうだ。
「分析完了しました。えと・・・敵は南方棲鬼です!」
「またどえらいのが来たわね・・・トマホーク数発程度じゃダメージすら入らないかも・・・」
《ふふ、まだまだ攻撃は続くわよ・・・》
その声の後だった。
「ヴァンパイア、ヴァンパイア、ヴァンパイア!!新たに2発接近!」
「まだくるの・・・面倒臭いなもう・・・」
「ぶつぶつ言ってないで撃ちなさい!」
「はいはい・・・SM-3、発射」
再び、2発のミサイルが飛翔していく。
「インターセプト五秒前・・・スタンバイ・・・マークインターセプト!」
「目標1発撃墜しました!」
「2発目が来るよ、SCAT待機、CIWS対空戦闘用意」
「主砲、発射用意!」
マーフィが先に主砲で迎撃を開始した。
「目標・・・見えました!・・・って何あれ!?」
双眼鏡を持ったアンドロメダが叫んだ。
「何が見えたの!?」
「えと・・・えっと・・・あの・・・」
アンドロメダは言いにくそうだ。
というか何が来てるんだ。
「もういい!射程に入った!」
マーフィは主砲を撃ち始める。
数秒後に空中で爆発が起きた。
「撃墜・・・ふう・・・」
「で、何が見えたの?」
「えっと・・・その・・・形容し難いんですがその・・・羽とプロペラの生えたパンジャンドラムが・・・」
「なにそれ!?」
「What!?」
・・・なんだそれ。
心の底からそう思った。
なぜパンジャンドラムにプロペラと翼を生やす必要がある。
元々紅茶キメたような物にプラスでマーマイトあたりキメててもうヤバいとしか言いようがない。
「わ、私が言うのもなんですが紅茶キメてるネ・・・」
英国生まれの金剛がドン引きしてる。
私はさっきの無線で南方棲鬼を問いただしてみる。
「・・・あんたは紅茶でもキメたの?」
《ふふっ・・・驚いてるわねぇ・・・》
ええ、そりゃそんな物が羽生やして飛んできたら誰でも驚くと思いますよ。
《あれはね・・・私達の提督直々に開発した最新兵器なの・・・これで日本なんて終わりよ》
「あー・・・そうなんだ・・・ちなみにそれ作ってる時何か飲んでた?」
《んー・・・紅茶飲んでたわね。結構大量に。何か最近、紅茶飲んでないと震えが止まらないって言ってたわぁ》
完全にキマってますがな。
とりあえず、もう面倒臭い。
帰ろう。
「みんなー、帰るよー」
「え、ちょっ、帰るの?」
「深海棲艦が英国面に落ちたってだけでも重要な情報だよ」
「意味わかんないわよ!というか、敵のボスいるんだから!」
「あれほっといても無害だと思う」
マーフィと帰る帰らないの話をしてるとレーダーに何かを補足した。
さっきのパンジャンではない。
「敵、南方棲鬼及び敵艦隊!!」
「ほら来たわよ!!」
「出てこなきゃほっといて帰ったのに・・・」
敵は5キロ程度の所に出現した。
目視でも確認出来た。
《あー、あー、聞こえるぅ?》
「アイツ、スピーカー使ってるよ・・・」
《艦娘のみんなー、ここが墓場よ》
「・・・だってさ」
「だってさじゃないわよ!攻撃用意!!」
「・・・トマホーク・・・要らないか、大和、金剛、私達が観測するから撃っちゃっていいよ」
「わ、分かったネ!」
「了解です!全主砲、斉射!!」
「ファイアー!」
耳をつんざく砲撃の音。
砲弾は綺麗な放物線を描いて南方棲鬼に降り注ぐ。
大したダメージは無さそうだ。
《ちょっと!痛いわよ!人がまだ喋ってるでしょ!それならこっちにも考えあるから覚悟しなさいよ!》
「だって、怒ってるよ」
「なんであなたはそんなに落ち着いてるの・・・?」
「無線聞いてたらね・・・」
「ジェームズさん!南方棲鬼が何か用意してます!」
南方棲鬼の近くに何か緑色の物が見えた。
私は双眼鏡で確認する。
「・・・パンジャンだねあれ」
「・・・ええ、すっごくパンジャンドラムね」
《ふふっ、見えてるかしら。これで貴方達も終わりよ》
「あぁ・・・ええ、深海棲艦の脳みそが終わってるって事ね」
《違うわよ!!》
「なんで聞こえんのよ・・・」
マーフィももはや呆れ果てていた。
《これはね、燃料気化爆弾搭載のパンジャンドラムよぉ。色々と改良を加えて最強のパンジャンドラムとなったの》
最強のパンジャンドラムというパワーワード。
「大和、3式弾で撃っていいよ」
「え、えと・・・いいんですか?」
「うん、もう面倒臭いからパンジャンドラムごと吹き飛ばす」
「りょ、了解しました!」
再び9門の46cm砲が火を吹いた。
その砲弾はちょうど敵の真上で爆発する。
ついでにパンジャンドラムも誘爆した。
レーダーから南方棲鬼以外の光点が消失した。
「あれ硬いわね・・・」
「だね。とりあえず近づいて降伏勧告でもしようよ」
南方棲鬼に照準したままゆっくりと近づく。
「終わりだよ。あんたの敗因はどう考えても紅茶のキメすぎ」
南方棲鬼は爆発の熱で服が破けてやたらセクシーなことになっていた。
「紅茶キメてるなんて言わないでよ!これでもあの人何日も寝ずに頑張ってたんだからぁ!」
「その努力どこかに回せって説教してやったほうがいいと思う・・・」
「・・・沈めなさいよ・・・」
「え?」
「沈めればいいじゃない・・・敵の私を・・・」
南方棲鬼は涙目でそう言ってきた。
私はマーフィと顔を見合わせた。
「・・・」
無言で砲を向けるマーフィ。
その時、南方棲鬼の指に何か光る物を見つけた。
「?」
私がそれを見ようと手を伸ばすと
「や、やめて!」
「その指の何?」
「これだけは・・・つけたままで沈みたい」
その言葉で私は何となく察した。
結婚指輪かその類だろう。
「マーフィ」
「・・・分かってる。もういいわ。行きなさい」
「え?」
「別に貴女が憎い訳じゃないの。待ってる人が居るんでしょ。早く帰らないと紅茶のキメすぎで倒れるんじゃない?」
「・・・」
「周り全滅させといてアレだけどね・・・」
マーフィは苦笑いでそう言った。
「あ、ありがとう・・・この恩は必ずパンジャンで・・・」
「要らないわよ!!!」
パンジャンドラムの恩返し。映画化決定。
なんてワードが頭の中に浮かび笑いそうだった。
南方棲鬼は何度かこちらを振り返りながらゆっくりと潜航していった。
「はぁ・・・今度こそ帰ろう」
「そうね・・・疲れたわ」
「後味悪い結果にならなくて良かったです」
大和は微笑みながら南方棲鬼が帰っていった方向に向かって言った。
「まぁね・・・」
妙な疲労感を覚えながら帰路についた。
〜提督〜
「報告は以上だよ。」
「了解、ご苦労さん」
ジェームズからの報告を受け一息付く。
「あ、そうだ。お前あてに何か来てるぞ」
「え?」
俺は昨日届いた小包を出す。
「なんだろこれ。開けてみてくれる?」
「お前な・・・平気で上官に・・・」
これ爆弾だったらどうすんだ・・・
まぁ事前に検査は終わっているので安全ではあるが。
「開いたぞ・・・ってなんだこれ。南方棲鬼と・・・あとこれ向こうの提督か」
「ラブラブな写真送り付けてくれちゃって・・・」
向こうも向こうで楽しくやってんだな・・・なんて海軍本部が聞いたらボコられそうな事を思う。
「あと手紙・・・なんじゃこりゃ・・・」
中には高そうな紅茶のセットとパンジャンドラムの模型が入っていた。
というか、なぜパンジャンドラム。
「これがパンジャンドラムの恩返し・・・ふふっ」
「何笑ってんだ・・・」
しかもよく見たらラジコンだこれ。
パンジャンドラムのラジコンって・・・
「まぁいいや・・・とりあえず外出するなり部屋で休むなりしててくれ」
「うん、今日は外出してくるよ、じゃあお疲れ様ー」
「はいよー」
ジェームズが執務室を出ていったあと俺は少しこのパンジャンドラムのラジコンが気になり遊んでみる事にした。
「これどうやって曲がってりすんだろ」
とりあえず床に置いてスイッチを入れると車輪のブースターに火がついた。
なかなかリアルだな。
「これで前進かな?」
レバーを倒した時だった。
「ただいまなのですー」
「あっ」
「えっ?は、はにゃぁぁぁぁぁ!?」
電に突進して足に当たった瞬間爆発するパンジャン。
まさかの炸薬入。
「い、電ぁぁぁぁ!!!」
俺は急いで駆け寄る。
「大丈夫か!?」
「けほっ・・・大丈夫なのです・・・」
「良かった・・・」
よく見たら何故か服だけ綺麗に破けて体は無傷だ。
「い、電、服がだな・・・」
「にゃっ!? 」
一瞬で顔を真っ赤にする電。
というか無駄にエロい破け方をしてる。
エロい。
「あ、あんまり見ないでほしいのです!」
「これが夜ならなぁ・・・」
「な、なにを言ってるのですか!!」
「んや、可愛いなーって」
「にゃっ!?し、司令官さんのバカなのです!」
「はは、いつもなら平気な顔してるのにな」
「してないのです!!どんなイメージなのですか!!」
なんて執務室でイチャコラしてた。
ちなみに後からラジコンの説明書をみたらその深海提督手作りのラジコンで炸薬も入ってるが人体には無害でも何故か服だけ破ける特殊な火薬を使ってるらしい。
あとそれ砲弾に詰めようかと思ってるとか書いてあった。
・・・やめて欲しいようなやって欲しいような・・・
なんて思いながら残りの仕事を始めた。